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血圧の年齢による変化と認知症リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
血圧の年齢による変動と認知症リスク.jpg
2019年のJAMA誌に掲載された、
血圧の経年的な変動と認知症リスクとの関連についての論文です。

中年期(概ね40代から60代前半くらい)における、
高血圧や肥満などの心血管疾患のリスクが、
その後の認知症の発症に結び付いている、
というのは、
これまでの多くの疫学データにおいて、
ほぼ一致した事実です。

ただ70代以上の年齢における血圧値が、
認知症の発症や進行とどのように関連しているのか、
という点についてはまだ一致した結論に至っていません。

そこで今回の研究では、
アメリカの4つの地域において、
登録の時点で45から65歳の一般住民、
トータル15792名を登録し、
24年に渡る長期の経過観察を行なって、
その時点の血圧値と認知症リスクとの関連を検証しています。

血圧値は安静時に2回測定して平均し、
収縮期血圧が140mmHg以上、
もしくは拡張期血圧が90mmHg以上を高血圧と定義し、
収縮期血圧が90mmHg未満、
もしくは拡張期血圧が60mmHg未満を低血圧と定義しています。

登録時点の45から65歳を中年期と定義し、
観察期間の後半、年齢が66歳から90歳での測定を老年期と定義しています。

最終的に解析が可能であった4761名中、
11%に当たる516名が観察期間の後半で認知症と診断されています。

この研究においては、
アルツハイマー型や脳血管性などの、
認知症のタイプの分類はされていません。

ここで中年期から老年期の全期間において正常血圧であった人と比較して、
全期間において高血圧であった人は、
認知症の発症リスクが1.49倍(95%CI: 1.06から2.08)、
中年期では高血圧で老年期には低血圧に移行した人は、
認知症の発症リスクが1.62倍(95%CI:1.11から2.37)、
それぞれ有意に増加していました。
老年期の血圧値には関わらず、
中年期の高血圧はその後の認知症リスクを、
1.41倍(95%CI:1.17から1.71)有意に増加させていました。

このように、
これまでの知見と同じように、
中年期の高血圧は単独でその後の認知症リスクを高めていました。
そして、今回新たな知見として、
中年期は血圧が高く、老年期では低血圧になった人は、
老年期に高い人より認知症リスクが高くなっていました。

何故高齢者の低血圧は認知症のリスクになるのでしょうか?

これは2つの可能性があります。

その第一は認知症の前段階における脳の神経細胞の機能低下が、
何らかのメカニズムにより血圧の低下を招いていて、
それが低血圧の原因になっているのでは、
という考え方です。

この場合低血圧は認知症の原因ではなく、
むしろ結果です。

この考え方を支持する知見として、
これまでにも認知症の症状が出現する前に、
血圧の低下が認められるという報告があります。
また、今回のデータにおいて、
認知症の前段階と思われる軽度認知障害のリスクは、
中年期の高血圧と老年期の低血圧の組み合わせでのみ増加した、
という知見が得られています。

一方で老年期の低血圧が認知症の誘因となっているのでは、
という見解もあります。

高齢者の高血圧治療により、
若い人と同じように血圧を低下させると、
脳の調節機能が低下しているので脳血流が低下し、
それが脳の神経細胞にダメージを与えて、
認知症の進行に結び付くのではないか、
という考え方です。

高齢者で降圧治療をするとむしろ認知症が増えた、
という臨床データがあり、
この知見はこの考え方を支持しています。
ただ、最近の大規模臨床試験であるSPLINT試験においては、
高齢者においても血圧をより低下させた方が、
認知症のリスクも低下した、
という逆の報告もあり、
この点に関してはまだ結論に至っていません。

いずれにしても長期の血圧観察により、
これまでにあまり類のない知見の得られた意義は大きく、
今後このデータの分析や新たな知見の蓄積が、
認知症予防につながることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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