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本谷有希子「静かに、ねえ、静かに」 [小説]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が、
午後2時以降は石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
静かに、ねえ、静かに.jpg
本谷有希子さんが2018年に刊行した、
3つの短編からなる作品集を読みました。

これはつい先日この本の巻頭にある、
「本当の旅」という作品を元にした、
本谷さん自身の演出によるお芝居を、
鑑賞したので興味を持って読んでみたものです。

本谷さんは演劇の人という思いがありましたし、
食わず嫌いで小説は読んだことがなかったのですが、
この作品はとても面白くて一気に読んでしまいました。

以下少しネタバレしますので、
作品を読了後にお読み下さい。
面白いです。

これは3つの連作的な短編集なのですが、
いずれも比較的最近世間を賑わした、
「事件」を想定して、
そこに至るまでの当事者の心理を、
繊細かつやや扇情的に綴ったものです。

海外であまりに無防備な旅をした若者が、
被害に遭ってしまうお話と、
酔っ払って車の下で寝ていた家族を、
ひき殺してしまう話、
そしてファミレスで不潔な行為をわざわざして、
それを動画で拡散してしまうという話。

そのいずれもが、
テレビやネット、週刊誌で記事を見れば、
「なんでまあ、そんな馬鹿なことを」とか、
「ちょっと考えれば駄目だと分かりそうなものなのに」
と条件反射的に思ってしまうような、
DQNネタ的なものです。

それを心理的に丹念に分析し解きほぐして、
ひょっとしたら自分の人生にも、
こうした落とし穴が掘られているのかも知れない、
と思わせてしまうのが本谷さんの技巧の鮮やかさです。

特に「本当の旅」の、
他人の善意を信じる、という執着、
そして「でぶのハッピーバースデー」の、
自分は幸福になってはいけない、という執着は、
読了後に生々しく後を引きます。

こうして読むと傑作と言って良い「本当の旅」なのですが、
この間観た舞台版は、
何か無理に若者の気持ちを理解しようとして、
それを老人に対して、
「ほら、今の若者というのはこうした奴らですよ、馬鹿でしょ」
と媚びているようで、
ちょっと鼻持ちならない感じがしたのです。

小説は決してそんな感じはしないのに、
生の役者が演じる舞台というのは不思議だなあと、
見比べてそんなことを思いました。

こうしたところが、
芝居と小説の本質的な違いなのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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