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軽症脳卒中の再発予防へのチカグレロル使用の有用性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
軽症脳卒中への抗血小板剤2種併用療法の効果.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
軽症の脳卒中の再発予防における、
薬剤の選択についての論文です。

一時的に言葉が出なくなる、手に力が入らなくなる、
などの症状が出現して改善する、
一過性脳虚血発作と、
虚血性脳卒中と診断されるも軽症で、
退院の時点では全く後遺症はないか、
あっても軽微で日常生活には制限は生じない
(modified Rankin Scaleという指標で0か1)
軽症虚血性脳卒中においては、
後遺症はないか軽微であっても、
その後より重篤な脳卒中に進行したり、
再発して予後の悪化するリスクが、
高いことが知られています。

そのため予後の改善目的で抗血小板剤による治療が行われます。

こうした場合に最も多く使用されているのは、
低用量のアスピリンで、
それ以外にクロピドグレルやシロスタゾールも使用されています。

一方でこうした場合の予後改善には、
単剤の抗血小板剤では不充分で、
2種類の抗血小板剤を併用する必要があるのではないか、
という意見があり、
アメリカの専門家のガイドラインの1つでは、
弱い推奨として、
アスピリンとクロピドグレルを発作後24時間以内に開始し、
それを21日間継続する、
という治療法が記載されています。

これまでに3つの精度の高い臨床試験が、
アスピリン単独と併用療法を比較しています。
アメリカのみで行われた比較的小規模な試験と、
アメリカとヨーロッパ、オーストラリアなどで行われた大規模臨床試験、
そして中国で行われた大規模臨床試験です。

その3つの臨床試験を併せて解析したメタ解析では、
トータルで10447名の臨床データをまとめて解析した結果として、
一過性脳虚血発作と軽症虚血性脳卒中発症後24時間以内に、
クロピドグレルとアスピリンを併用すると、
アスピリンの単独使用と比較して、
総死亡のリスクには有意な影響を与えずに、
非致死性脳卒中再発のリスクが、
30%(95%CI: 0.61から0.80)有意に低下していました。
ただ、中等度もしくは重度の頭蓋内以外の出血のリスクは、
1.71倍(95%CI: 0.92 から3.20)
と有意ではないものの増加する傾向を示しました。
併用療法とアスピリン単独との差は、
開始後10日から明確になり、
21日間を超える使用では有用でないと推測されました。

要するに、
一過性脳虚血発作もしくは軽症虚血性脳卒中発症後、
24時間以内にアスピリンとクロピドグレルの投与を開始すると、
アスピリン単独の場合と比較して、
患者さん1000人当り20人の脳卒中の再発を予防可能です。
その一方で同じ1000人当り2人には、
中等度以上の出血系の合併症がそのために発症します。
この効果を得るためには10日以上の使用が必要である一方、
21日以上の併用には意味がないと考えられます。

さて、このクロピドグレルという薬の問題点は、
肝臓の薬剤代謝酵素であるCYP2C19で代謝され、
代謝物が効果を発揮するという薬であるため、
その酵素の活性が弱い変異があると、
同じ量でも効果が得られない可能性がある、
ということです。

ただ、臨床試験によってもこの遺伝子変異により、
効果の差があったとする報告がある一方、
あまり関連がなかったという報告もあって一致した結論が得られていません。

最近同種の目的で使用されるようになった、
チカグレロル(ブリリンタ)という抗血小板剤は
(日本では虚血性心疾患のみの適応)、
そのメカニズムが異なると共に、
代謝酵素がCYP3A4で、
クロピドグレルのような問題が生じにくいと想定されます。

そこで今回の第2相臨床試験においては、
中国の複数施設において、
軽症脳卒中もしくは一過性脳虚血発作を来した、
675名の患者さんをくじ引きで2つの群に分けると、
症状出現後24時間以内に、
一方はアスピリン100mgにクロピドグレル75mg(初回のみ300mg)
を併用し、
もう一方はアスピリン100mgにチカグレロル90mg(初回のみ180mg)
を併用して、
その90日間の予後と血小板機能を比較検証しています。

その結果、90日の時点での血小板機能は、
クロピドグレルと比較してチカグレロル群が、
有意に抑制されていました。
その違いは特にCYP2C19の変異がある群で大きくなっていました。
一方で脳卒中の再発については、
トータルでは両群に有意な差はなく、
脳の主要な結果の動脈硬化の強い群に限定すると、
チカログレロル群の方が55%有意に再発を予防していました。
両群の出血系の合併症には、
有意な差は認められませんでした。

このように、
血小板機能の抑制については、
クロピドグレルよりチカグレロルの方が安定していることは、
ほぼ間違いがありません。

ただ、臨床効果においては、
実際にはそれほどの差は見られておらず、
今度どのような患者さんにおいて、
よりチカログレルの有効性が高いのか、
個別の検証が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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