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喫煙歴に関わらない低線量CTによる肺癌検診の有効性(日立市の疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
CT検診日立市.jpg
2019年のJapanese Journal of Clinical Oncology誌に掲載された、
茨城県日立市のCTによる肺癌検診の結果をまとめた論文です。
この雑誌はオンラインのみで、
日本の臨床研究を取り扱う英文誌です。

肺癌検診がどうあるべきか、
というのは国内外で議論となっていることで、
概ねヘビースモーカーかかつてのヘビースモーカーに限定して、
低線量CTによる検診を行うというのが、
欧米で現状認められている方法です。

日本においては自治体によっては、
CTによる肺癌検診が行われていますが、
国の癌検診の指針は胸部レントゲンと喀痰検査となっています。

癌検診というのは、
それを行うことによって、
その癌による死亡のリスクが低下することが確認されることが、
世界的にはその大きな要件となっています。

肺癌検診においては、
欧米において精度の高い大規模な臨床試験によって、
ヘビースモーカーに限定した対象者では、
低線量CTによる検診で、
肺癌による死亡のリスクが20%程度低下することが確認されています。

ただ、このようにヘビースモーカーに対象者を限定した検診は、
日本ではあまり馴染まないので実現しないのが実際です。

検討はされても、
「なんで自分は対象にならないんだ」
というようなクレームが必ず後から入って、
結果として限定しない住民検診となることが殆どだからです。

それでは、日本流の肺癌検診手法でも、
低線量CTを用いた肺癌検診には有用性があるのでしょうか?

茨城県の日立市は、日立製作所の創業地で、
1998年から50歳以上の日立製作所の従業員や家族、退職者を対象として、
低線量CTによる検診が始まっています。
その後日立市と日立製作所が協力して、
2001年からは一般住民に対しても同様の検診が開始されています。

その検診の有効性を検証する目的で、
今回の臨床研究では、
日立市の住民で、
低線量CT検診を1回以上施行した17935人を、
胸部レントゲンによる検診のみを受けた15548人と比較して、
その効果を比較検証しています。

例数は多いのですが、
予め対象者を登録して経過を追うような試験ではなく、
後からデータを解析したものです。

その結果、
低線量CT検診群では、1.5%に当たる273件の肺癌が診断され、
0.4%に当たる72名が肺癌のために死亡し、
4.9%に当たる885名が多くの原因により亡くなっています。

一方で胸部レントゲン検診群では、
1.1%に当たる164件の肺癌が診断され、
0.5%に当たる80名が肺癌のために死亡し、
7.6%に当たる1188名が多くの原因により亡くなっています。

年齢、性別、喫煙歴を補正して比較した結果として、
胸部レントゲンのみの検診と比較して、
低線量CTによる検診の受診群は、
観察期間中の肺癌罹患率が1.23倍で、
肺癌による死亡リスクが51%、
総死亡のリスクも43%、有意に低下していました。

これを非喫煙者とライトスモーカーに限って解析すると、
肺癌による死亡リスクは59%、
総死亡のリスクも79%、有意に低下していました。

これはそのまま見れば、
今までの常識を覆すような度肝を抜くようなデータで、
非喫煙者であっても、
CT検診を行うだけで総死亡のリスクが8割近く低下する、
というのですから、
これほど効率的な癌検診はない、
ということになります。

そんなことが本当にあり得るのでしょうか?

個人的な現時点での見解としては、
はなはだ疑問です。

この研究ではCT検診群と胸部レントゲン群の背景が、
かなり異なっているので、
別個の背景の違いが、
死亡リスク低下の原因となっている可能性が否定出来ません。

今後より詳細な検証が必要であると思いますし、
その進捗に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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