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軽度認知障害へのコリンエステラーゼ阻害剤は逆効果? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アルツハイマー初期の薬物療法の有効性.jpg
2019年のAlzheimer Disease and Associated Disorders誌に掲載された、
軽度認知障害(MCI)や軽度のアルツハイマー型認知症に対する、
コリンエステラーゼ阻害剤治療の有効性を検証した論文です。

有効でないばかりか有害である可能性すらある、
というかなりショッキングな結果です。

ドネペジル(アリセプト)などのコリンエステラーゼ阻害剤は、
アルツハイマー型認知症の治療薬として、
その有効性は確立して幅広く使用されている薬です。

その有効性は認知症症状の進行を緩やかにして、
意欲低下を改善し、
問題行動にも一定の有効性が期待出来る、
とされています。

それでは、このタイプの薬を開始する、
最も適切なタイミングはどのような時でしょうか?

認知症という診断は確定しているけれど、
まだそれほど進行はしていない、
軽度から中等度の時期が、
おそらくは適切であろうと考えられています。

それでは、今後認知症に進行する可能性が高いけれど、
まだ認知症とは診断されない、
軽度認知障害(MCI)と呼ばれる時期に、
この薬を開始することは意味のあることでしょうか?

それについては、
まだ明確な結論が出ていません。

普通に考えると、
より早期に治療を開始した方が、
進行をそれだけ遅らせることが出来るので、
より有効であるように思います。

ただ、実際には軽度認知障害の時期に薬を開始した臨床試験では、
あまり明確な有効性が確認されていません。
一部有効であったとする報告はあるものの、
例数が少ないなどデータの信頼性はそれほど高いものではなく、
相反するような報告もあるからです。

そこで今回の研究では、
アメリカの専門医療機関において、
多数例の認知症の臨床データを解析し、
軽度認知障害もしくは軽度のアルツハイマー型認知症で、
コリンエステラーゼ阻害剤を使用した場合とそうでない場合とで、
その後の認知機能低下の進行を比較検証しています。

この場合の軽度の認知症というのは、
CDRという簡便な臨床評価基準があって、
その0.5から1点の範囲で定義されています。
これは0点は認知症の明らかな症状のない状態で、
1点というのは記憶については、
軽度の物忘れが常にあるような状態のことを指しています。

軽度認知障害もしくは軽度アルツハイマー型認知症の、
2242名を対象として検証したところ、
軽度認知障害群944名中34%に当たる322名と、
軽度アルツハイマー型認知症群1298名中72%に当たる932名が、
コリンエステラーゼ阻害剤を使用していました。

治療後の経過を比較したところ、
軽度認知障害と軽度認知症のいずれにおいても、
コリンエステラーゼ阻害剤治療群の方が未治療群より、
認知機能のその後の低下が強く認められました。

つまり、
認知症の早期に治療を開始すると、
むしろ認知症の進行が早くなるという、
ちょっとショッキングな結果です。

このデータは介入試験のような前向き試験ではないので、
たまたまそうした結果が出ただけで、
認知症の自然経過の違いを、
見ているだけという可能性もあります。

ただ、
軽度認知障害の段階でコリンエステラーゼ阻害剤を使用することは、
逆効果である可能性もあるという今回の指摘は、
医療者としては深刻に受け止める必要があり、
コリンエステラーゼ阻害剤はどのようなレベルの認知症の患者さんに、
どのような方法で用いることが最も適切であるのか、
今後より詳細な検証が必要であることは、
間違いがないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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