So-net無料ブログ作成

腸内細菌と認知症との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
バクテロイデスと認知症.jpg
2019年のScientific Reports誌に掲載された、
認知症と腸内細菌叢との関連についての論文です。

これは国立長寿医療センターや久留米大学などの共同研究です。

腸内細菌と病気との間に関連がある、
という話は以前からあります。

ただ、少し前までの考え方では、
Biffidobacterium属の所謂ビフィズス菌や、
Lactobacillus属などの所謂乳酸菌が、
下痢などを改善して腸を快調に保つ作用から、
「善玉菌」として尊重され、
その一方で病原性の大腸菌やウェルシュ菌などが、
「悪玉菌」として捉えられて来ました。

大人では多数を占めている、
嫌気性菌であるBacteroides属や、
嫌気性連鎖球菌は、
「日和見菌」というような名称で呼ばれ、
悪玉でも善玉でもなく、
それほど大きな役割は果たしていない、
という半ば無視されているような扱いでした。

ところが最近になり、
実はBacteroides属(バクテロイデス)に代表される、
嫌気性腸内細菌が、
肥満や糖尿病に代表される生活習慣病において、
予防的な働きをしている、という知見が、
相次いで発表されるようになりました。

このトレンドの裏には、
遺伝子検査により、簡便かつ正確に、
腸内細菌の分布状況が検査可能になったことが、
大きく影響しています。
それまでのデータは、
検出が簡単な菌が、
より多く分布しているという誤解があったからです。

また腸内細菌の分類自体も、
16SrRNA遺伝子の種別により行われるようになり、
腸内細菌は、
グラム陽性のフィルミクテス門と、
グラム陰性のバクテロイデス門とに、
大きく二分されて理解されるようになりました。

最近の知見においては、
小児と成人のいずれにおいても、
また動物実験においても、
その比率的にバクテロイデス門が減少し、
フィルミクテス門が増加すると、
肥満やそれに伴う血糖の上昇などが生じ易い、
という報告が集積されています。

従来善玉菌とされていたラクトバチルス(乳酸菌の1つ)は、
フィルミクテス門に属し、
その増加は関節炎や血糖上昇のリスクを増加させる、
という報告があります。

善玉菌の代表のように言われるビフィズス菌は、
乳児期には腸内細菌の主体であるのですが、
5歳以降くらいのデータでは、
その比率が多いと肥満や血糖上昇に結び付きやすい、
という報告があります。

これはシンプルに考えると、
乳児期には当然母乳のみで栄養を賄うことが想定されているので、
乳糖を分解するビフィズス菌が主体で良いのですが、
その時期を過ぎて色々な食品を摂取するようになると、
それに応じて乳酸菌の比率は下がるのです。
この比率がそのままであると、
むしろ肥満などの病気に結び付くのです。

つまり、どうやらバクテロイデスなどのバランス的な増加が、
肥満に関連する病気の予防には、
最も相関があるようなのです。

このように、
肥満と腸内細菌叢との関連については、
ほぼ結論が得られつつありますが、
認知症と腸内細菌叢との関連については、
あまり明確なことが分かっていません。

そこで今回の研究では、
2016年からの1年間に国立長寿医療センターのもの忘れセンターを受診した、
60代から80代の128人の腸内細菌叢の検査と、
認知症の診断のための検査を施行して、
腸内細菌叢と認知症との関連を検証しています。

その結果、
腸内細菌叢がバクテロイデス優位(30%を超える)であると、
少ない場合と比較して、
認知症のリスクが有意に抑制されていました。
この認知症リスクとバクテロイデス優位の細菌叢との関連は、
多変量解析において、
他の認知症関連因子と独立しており、
アポEの遺伝子変異などより、
強い関連が認められました。

要するに、
バクテロイデスが多いと、
認知症になりにくい、
ということを示唆する結果です。

バクテロイデスが多いと肥満にもなりにくく、
認知症にもなりにくいというのですから、
「バクテロイデス最強」というのが、
最近の腸内細菌のトレンドであるようです。

ただし…

上記文献の記載でもあるように、
多変量解析をするには例数が不足しており、
必ずしも適切な結果とは言えないようですし、
腸内細菌叢と認知症リスクに関連があると言っても、
たとえば性別が女性であることの方が、
今回の検証ではより強い関連が認められているので、
この結果を信用することはまだ時期尚早だという気がします。

今後より症例数を増やした検証に期待をしたいと思いますし、
より精度の高い検証によって、
腸内細菌叢と認知症との関連が解明されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(付記)
コメント欄でご指摘を受け、
一部記載を修正しました。
(平成31年2月19日午後4時修正)
nice!(6)  コメント(2) 

nice! 6

コメント 2

Perrier

いつも勉強させてもらっております。「善玉菌の代表のように言われるビフィズス菌も、フィルミクテス門に属し・・・」についてですが、先生は2017年の上記URL「その医療の常識、本当ですか?」で「これも善玉菌の代表のようにいわれるビフィズス菌も、アクチノバクテリア門に属し・・・」と書かれていますが、ビフィズス菌は、アクチノバクテリア門ということでよろしいでしょうか?お忙しいこととお察しいたしますが、よろしくお願い致します。 Perrier
by Perrier (2019-02-19 11:30) 

fujiki

Perrierさんへ
アクチノバクテリアは放線菌なので、
ビフィズス菌がアクチノバクテリアに属する、
というのは正しい記載で良いと思います。
記事にあるビフィズス菌がフィルミクテス門に属する、
というのは、
英文の腸内細菌の総説から取ったもので、
確かにそうした記載があるのですが、
他に同様の記載は見つからないので、
単純に誤りであるのかも知れません。
その部分は誤解を招くので削除しました。
ご指摘ありがとうございます。
by fujiki (2019-02-19 16:08) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。