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別役実「森から来たカーニバル」(2018劇壇ガルバ上演版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
森の中のカーニバル.jpg
山崎一さんが立ち上げた劇壇ガルバの旗揚げ公演として、
1994年に演劇集団円が俳優座劇場で初演した、
別役実さんの「森から来たカーニバル」が、
山崎さんの演出で上演されています。

これは初演は観ていません。

童話の舞台となるような田舎町が舞台で、
そこでは巨大な像が毎年同じ季節に、
森から町にやって来て、
意図はしていないものの巨大過ぎるので、
必ず多くの人間を踏みつぶして殺してしまいます。
町の人も皆がそのことを知っていて、
象を恐れ殺そうともするのですが、
結局は抗いがたいものとしてそれを受け入れ、
それをカーニバルと呼んで狂騒的な祭りに酔いしれ、
死んで行きます。

別役さんの作品としては、
初期の「スパイものがたり」などに近い雰囲気で、
寓話的な物語がコミカルかつグロテスクに、
歌や生演奏を交えて歌芝居風に表現されています。

ただ、後半は初演では岸田今日子さんが演じた、
老女の1人芝居的雰囲気となり、
若い男女が時空を超えたお茶会を続けて幕が下りるという、
「マッチ売りの少女」的な雰囲気となります。

正直ちょっと前半と後半のバランスが悪いな、
というような印象を持つ戯曲です。

ただ、別役さんの戯曲としては登場人物も多くて、
祝祭的な派手な部分があるので、
そのために今回の上演に選ばれたようです。

今回の上演はとても贅沢でクオリティが高いもので、
小劇場の上演とは思えないキャストも豪華ですし、
衣装や美術、音楽などの舞台効果的な部分にも、
とてもとても手間が掛かっています。

80分という上演時間がとても充実していますし、
細部まで見応えがあって、
一度だけでは勿体ないと思えるくらいです。

山崎さんの演出はケラさん演出の別役作品に近いテイストで、
原作の笑いを活かしてハイテンポで進行させてゆきます。
特に人物の登場のさせ方の間合いが面白いと思いました。
ただ、奇妙で個性的なキャラクターの肉付けと、
笑いの活かし方に関しては、
ケラさんの演出に一日の長があるかな、
というようにも思いました。

本田力さんのカーニバルの男や、
山崎さん本人の演じる牧師などは、
もっともっとヘンテコリンで良いと思うのです。
その辺りにちょっと物足りなさは感じました。

別役さんの戯曲の特徴は、
作品の中で個々の人物が成長したり変化することがなく、
最初から最後まである役割を全うするだけなのですが、
それを観客の側が最初は別の人格のように誤解して、
それが誤解であったと分かるところに、
物語の勘所があり、
上手くゆくとどんでん返しのようなショックを、
観客に与えることになるのです。

その観客に誤解させる、
という部分を理解していないと、
最初から最後まで変化しない人物を、
ただ必死に演じ続けるだけ、
ということになり、
物語が単調に流れてしまうのです。

今回の山崎さんの演出は、
その部分にやや問題があるように感じました。

また、象を恐れていた筈の人々が、
途中で挙って象に殺されたいと願い行動に移すのですが、
その部分の不気味さが、
全体の狂騒的な雰囲気に隠されてしまったようにも感じました。

いずれにしても、
小劇場演劇の英知を結集した素晴らしい上演で、
台本の弱さはありますが、
是非に是非にお薦めしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように

石原がお送りしました。
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