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インクレチン関連薬による胆管細胞癌リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
健康診断などの仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
DPP4で胆管細胞癌が増える.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
頻用されている糖尿病治療薬で、
胆管細胞癌のリスクが増加するという、
臨床医としては気がかりな疫学データの論文です。

インクレチン関連薬は、
世界的には2006年からその使用が開始された、
新しいメカニズムの糖尿病治療薬です。

インクレチンの代表である、
GLP-1(Glucagonlike Peptide1)は、
主に小腸から分泌される一種のホルモンで、
ブドウ糖と同じように、
膵臓のインスリン分泌細胞を刺激して、
インスリンを分泌させる働きがあります。

このホルモンは食事と共に速やかに分泌され、
その後は速やかに分解されます。

GLP-1を持続的に膵臓の受容体に結合させれば、
血糖を低下させる効果があり、
他の飲み薬の血糖降下剤と比較して、
低血糖などの副作用を、
起こし難いというメリットがあります。

更には糖尿病の病因として、
最近注目されている、
グルカゴンの分泌を抑制する効果も併せ持っています。

また、
動物実験のレベルでは、
膵臓の細胞の再生や増殖に働く、
とされています。

つまり、
血糖を降下させるのみならず、
疲弊した膵臓の細胞を復活させる可能性があると言うのですから、
糖尿病の「夢の新薬」として、
その発売時にはかなりの期待が寄せられました。

このGLP-1関連の薬には、
大きく2つの系統があります。

その1つはGLP-1と同じように、
GLP-1の受容体に結合して作用する薬で、
GLP-1アナログと呼ばれています。

もう1つは身体に存在するGLP-1を、
速やかに分解する酵素である、
DPP4を阻害することによって、
結果としてGLP-1の効果を強めよう、
という薬で、
DPP4阻害剤と呼ばれています。

現行日本においては、
GLP-1アナログとしてリラグルチド(商品名ビクトーザ)と、
エキセナチド(商品名バイエッタ)。
DPP4阻害剤として、
シダグリプチン(商品名ジャヌビアとグラクティブ)、
ビルダグリプチン(商品名エクア)、
アログリプチン(商品名ネシーナ)、
リナグリプチン(商品名トラゼンタ)、
アナグリプチン(商品名スイニー)、
テネリグリプチン(商品名テネリア)、
サキサグリプチン(商品名オングリザ)
などが使用されていて、
糖尿病治療薬の一大勢力となっています。

このタイプの薬は日本においては、
海外以上に評価が高く、
2型糖尿病の第一選択薬に近い位置に、
現在では置かれています。

ただ、膵炎や膵癌のリスクを上げるのではないか、
などの有害事象や副作用の危惧が指摘されている薬でもあります。

今回問題視されているのは、
このインクレチン関連薬と胆管細胞癌との関連です。

胆管細胞癌は稀ですが早期発見が難しく、
予後の悪い癌として知られています。

胆管細胞にはインクレチンの受容体があり、
その刺激が胆管細胞の増殖に繋がる、
という知見があります。
こうした知見からはインクレチン関連薬と胆管細胞癌との関連が示唆されますが、
実際の臨床データにおいては、
胆管細胞癌自体の罹患率が低いこともあって、
これまでにあまり明確な関連が示されてはいません。

今回のデータはイギリスのプライマリケアのデータベースを活用したもので、
2007年から2017年に新規に糖尿病治療薬を開始した、
トータル154162名の糖尿病成人患者を対象として、
胆管細胞癌の発症リスクの差を比較検証しています。

その結果、
年間のべ614274名の観察において、
105件の胆管細胞癌が発症していて、
年間人口10万人当り17.1件という発症率になっています。

インクレチン関連薬以外の糖尿病治療薬の使用時と比較して、
DPP4阻害剤の使用では胆管細胞癌の発症リスクが、
1.77倍(95%CI: 1.04から3.01)有意に増加していました。
一方でGLP1アナログの使用では、
増加する傾向はあるものの有意ではありませんでした。

今回の結果をどう考えるかは微妙なところだと思いますが、
インクレチン関連薬の使用時には、
胆道系の異常の有無にも目を配ることが、
最低限必要なことではあると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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