So-net無料ブログ作成
  • ブログをはじめる
  • ログイン

降圧治療時の腎機能低下をどう考えるか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
SPRINT試験と腎機能低下.jpg
2018年のAnnals of Internal Medicine誌に掲載された、
降圧剤治療と腎機能低下との関連についての論文です。

有名なSPRINT試験のサブ解析のデータです。

慢性腎臓病は心血管疾患のリスクになり、
透析が必要な腎不全へと進行するリスクが高く、
生命予後にも大きな影響を与える病気です。

高血圧も心血管疾患の大きなリスクであり、
そのため慢性腎臓病の進行予防のためにも、
血圧を適正なレベルに保つことが、
重要であると考えられています。

ただ、それでは目標とする血圧をどのレベルにするべきか、
という点については、
未だ結論に至っていません。

KDIGOという国際的な慢性腎臓病のガイドラインでは、
尿中アルブミンが30mg/g cr未満の場合には、
降圧目標は140/90mmHg未満を、
尿中アルブミンが30mg/g cr以上の場合には、
130/80mmHg未満を、
血圧の目標値と定めています。
それとは別個にヨーロッパの降圧ガイドラインでは、
慢性腎臓病の降圧目標値は140/90未満 と定められていて、
特に尿タンパクによる区分けはありません。

2015年に発表されたSPRINT試験では、
慢性腎臓病を含む集団において、
収縮期血圧が140mmHg未満を目指す通常のコントロールと、
120mmHg未満を目指すより厳密なコントロールを比較して、
より厳密なコントロールを行った方が、
心血管疾患のリスクも総死亡のリスクも低下した、
という結果が報告され非常な注目を集めました。

その一方でより厳密な降圧において、
急性の腎障害のリスクは増加しており、
慢性腎臓病の患者さんのみの解析では、
全体と同等の傾向はあるものの有意にはならなかったので、
本当に慢性腎臓病においてもより厳密な降圧が、
患者さんの予後に良い影響を及ぼすかどうかは、
結論が出ていません。

SPRINT試験においての一番の問題は、
急性の腎障害や腎不全が、
強化コントロール群で多く発症していることで、
元々腎障害のない患者さんで、
eGFRという腎機能の指標が、
降圧により30%以上低下して、
慢性腎臓病の基準に達するリスクは、
強化コントロール群で通常コントロール群の3.49倍(2.44から5.10)
有意に増加していました。

ただ、この腎機能の低下が、
降圧に伴う腎血流量の低下によるものなのか、
それとも腎臓組織自体の障害によるものなのかは、
明確ではありません。

今回の検証においては、
SPRINT試験における162例の経過中の慢性腎障害の事例を、
年齢などをマッチさせた腎障害を発症していない162例と比較して、
登録時と試験開始後1年における、
尿中の腎障害や尿細管障害のマーカーとの関連を検証しています。

その結果強化血圧治療群において、
糸球体濾過量の数値は低下していても、
腎臓障害や尿細管障害を示すマーカーは、
むしろ改善傾向を示していて、
血圧を強化コントロールすることによる腎機能の低下は、
腎実質や尿細管の障害によるものではなく、
腎血流の低下によるものの可能性が高いことが示唆されました。

これは敢くまで治療後1年までのデータなので、
腎血流の低下が持続することで、
結果的に腎実質の障害を招くことも、
可能性としては否定出来ませんが、
降圧治療による腎機能の低下を、
クレアチニンから推算する糸球体濾過量のみで判断することは、
その本質を見誤る可能性もありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(6)  コメント(0) 

nice! 6

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。