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亜鉛結合甲状腺ホルモン剤の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
T3と金属結合体の効果.jpg
2018年のThyroid誌に掲載された、
新しい甲状腺ホルモン製剤の効果についての、
動物実験の論文です。

甲状腺機能低下症の治療には、
通常T4製剤(商品名チラーヂンSなど)が使用されます。

ただ、甲状腺ホルモンにはT4以外に、
活性型のホルモンであるT3が存在しています。
甲状腺から分泌されるホルモンの大多数はT4ですが、
5μg程度のT3が毎日分泌されています。
そして、T4のうち25μg程度がT3に変換されて血液中に入ります。

それでは何故甲状腺機能低下症の治療には、
T3を使用せずにT4のみが使用されるのでしょうか?

これは以前には動物から抽出した、
甲状腺がそのまま治療に使用されていて、
それはT3とT4の混合であったのですが、
T3が過剰に摂取されることにより、
心臓に負担が掛かり、不整脈などを誘発することが、
明らかになったからです。

その後より安全なT3単独製剤が発売され、
T3とT4を併用する治療が試みられましたが、
数少ない介入試験の結果として、
併用療法とT4単独療法との間で、
予後の差がないという結果が得られたので、
その後は併用療法は下火となり、
ガイドラインでも特別な場合以外は、
甲状腺機能低下症のホルモン補充療法は、
T4製剤単独で行うことが推奨されるようになりました。

ところが…

上記文献(アメリカ甲状腺学会の機関誌でこの分野では代表的な専門誌です)
の序論の記載によれば、
アメリカで甲状腺機能低下症の治療を受けている患者さんのうち、
おおよそ5%はT3とT4の併用療法を施行されていて、
その比率は年々増加しているとのことです。

その理由は第一には、
患者さんが併用療法の方が症状の軽減に有効であると、
そうした実感を持つことが多いためであり、
T4単独療法ではTSHは正常化しても、
血液のT3濃度は低いレベルに伴うことが多いからです。

ただ、問題は通常使用されるT3製剤は、
内服後3から4時間でピークに達し、
その後は速やかに消失することで、
正常なT3濃度がほぼ一定(変動幅は5から10%以内)で安定していることとは、
大きな違いがあります。
従って、併用療法を施行する場合には、
1日数回に分けて少量のT3製剤を、
使用することが多いのですが、
それでも自然な状態とはかなりの開きがあります。
そして、この変動が大きいことが、
T3製剤の安全な使用においても大きな問題となります。

そこで、徐放型のT3製剤を開発する試みが、
海外では複数行われています。

本日ご紹介する論文では、
そのうちの1つとして、
微量金属の亜鉛をホルモンと結合させることにより、
インスリンと同じように、
ゆっくりと吸収されるように調整された、
亜鉛結合甲状腺T3製剤のカプセルを、
甲状腺機能低下症のネズミに使用して、
通常のT3製剤の内服時と比較を行っています。

その結果、
通常のT3製剤と比較して、
遙かに血液中のホルモンの変動は少なく、
その効果も安全性も、
勝っている可能性が高いことが確認されました。

日本の専門の先生は、
甲状腺機能低下症の治療はT4製剤で充分で、
それで患者さんの症状が改善しない時には、
「それは甲状腺とは関係ありません」
と断定的に言われる方が多いように、
患者さんからはお聞きするのですが、
本来T3とT4が適切なバランスで補充されることが、
理想的な治療であることは間違いがなく、
少なくともアメリカの学会においては、
そうした議論も行われているのですから、
患者さんの悩みや不安には、
もう少し柔軟に対応して欲しいなあ、
とはいつも思うところです。

いずれにしても、
より自然な動態を取るT3製剤が臨床に導入されれば、
甲状腺機能低下症の治療は劇的に変わることは間違いがなく、
今は甲状腺機能低下症の治療は、
T4のみで充分と主張されている多くの専門家が、
掌を返すことは確実であると、
今のうちに予言をしておきたいと思います。

それでは今日はこのくらいで

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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