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新規抗肥満薬ロルカセリンの有効性と安全性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日のため診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ロルカセリン.jpg
2018年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
抗肥満薬のロルカセリンの有効性と安全性を検証した臨床試験の論文です。

肥満症は特に先進国においては、
重要な健康上の問題です。
肥満は内臓脂肪の増加から糖尿病や高血圧の原因となり、
動脈硬化を進行させ、
膝や腰を痛めて転倒や骨折などの原因ともなります。

生活改善による無理のないダイエットが、
肥満症のベストの治療であることは間違いありませんが、
それを補助する有効な治療薬の必要性も、
また同じように確かなことです。

今のところ明確に有効で安全な肥満症の治療薬は、
存在していません。

ただ、その候補となる薬には多くの種類があり、
使用出来る薬の選択肢には、
現状日本と欧米でかなりの差が付いています。

日本で現状健康保険の適応されている治療薬は、
マジンドール(商品名サノレックス)のみですが、
欧米では脂肪の吸収を抑制する薬として、
オルリスタット(商品名ゼニカル)が使用可能で、
更に食欲の抑制剤として、
2Cサブタイプのセロトニン受容体作動薬である、
今回のロルカセリンが、
アメリカでは2012年に既にFDAの承認を得ています。

日本ではオルリスタットは未発売で、
同様のメカニズムを持つ脂肪吸収抑制剤の、
セチリスタット(商品名オブリーン)は、
2013年に製造販売承認が取得されたものの、
その後薬価収載の審議の段階で異論が出て、
結局販売はされずに塩漬けで数年が過ぎた上、
2018年の7月に武田薬品が未発売のまま権利を導入元の海外企業に返還する、
という奇々怪々な経過を辿って未発売となっています。

現状発表されている情報によると、
体重の減少効果が約2%で心血管疾患の予防効果も確認されなかった、
という点が問題視されたようですが、
それがそれほど問題であるのなら、
その前に承認がなされているのは何故なのか、
重大な安全性への懸念などではないのですから、
発売後に再度検証するという選択肢はなかったのか、
色々と疑問の残る判断ではあります。

欧米で発売済みの抗肥満薬であっても、
心血管疾患の予防効果が明確な薬など、
ほぼないのが実際であるからです。
明らかにもっと問題の多い薬であるマジンドールが、
使用を継続されているのは何故でしょうか?

どうも何か表に出ていないような事情はありそうです。

閑話休題(それはともあれ)…

今回のロルカセリンはアメリカでは2012年に承認されていますが、
同種のメカニズムを持つフェンフルラミンという薬が、
過去に心臓弁膜症などの有害事象のために使用禁止となった、
という経緯があるため、
その心血管疾患の対する予後への影響については、
まだ疑問視する声がありました。

そこで今回の市販後の臨床試験においては、
心血管疾患の既往があるか、そのリスクの高い肥満の対象者を、
くじ引きで2つの群に分け、
本人にも治療者にも分からないように、
一方はロルカセリンを1日20ミリグラム使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
1年間の治療後にその心血管疾患に関わる予後を比較検証しています。
対象者は12000名です。

その結果、
治療1年の時点で、
ロルカセリン治療群の38.4%が5%以上の体重減少を認めたのに対して、
偽薬群ではその比率は17.4%に留まっていました。

そして中間値で3.3年の経過観察において、
心血管疾患の発症リスクや生命予後において、
ロルカセリン群と偽薬群に有意な差は認められませんでした。

このようにこうした抗肥満薬では初めて、
比較的長期の観察期間において、
その有効性と、
生命予後を含む心血管疾患の予後においての、
安全性が確認されたのです。

日本においても今後肥満対策は、
健康施策の大きな柱となることは間違いがなく、
勿論公正な審査で治療薬を承認することは、
重要であることは間違いがありませんが、
抗肥満薬の内外格差については、
今後早急に検証をなされるべきではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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