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2型糖尿病の患者さんにおけるアスピリンの癌予防効果(2018年日本の疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アスピリンの癌予防効果日本.jpg
2018年のDiabetes Care誌に掲載された、
日本人の2型糖尿病の患者さんにおける、
アスピリンの癌予防効果についての論文です。

アスピリンを代表とする消炎鎮痛剤に、
癌の発症予防と予後改善の効果がある、
とする報告は以前からありました。

そのメカニズムは、
必ずしも全て分かっている、
という訳ではありませんが、
消炎鎮痛剤の炎症を抑えるメカニズムの一部が、
癌の増殖に関わるシグナルを、
同時に抑えているためと、
概ね考えられています。

最も研究が進んでいるのはアスピリンで、
最近の幾つかの大規模臨床試験の結果として、
癌の組織型のうち、
腺癌というタイプの癌については、
間違いなくその予後を改善する効果があり、
より明確なのは、
特に大腸癌の転移の抑制効果です。

以前ご紹介した、
2012年のLancet 誌の論文では、
メタアナリシスの結果として、
大腸癌の転移のリスクを、
74%低下させた、
という画期的な効果が得られています。

2009年のJAMA誌の論文では、
大腸癌関連の死亡を29%抑制していますし、
今年のBritish Journal of Cancer誌の論文でも、
大腸癌の患者さんの全死亡リスクを、
23%有意に低下させる効果が得られています。

このように、
複数の一流の医学誌に、
別々の研究グループから、
同様の結果が集積されているのですから、
これはほぼ科学的事実なのです。

さて、
アスピリンの継続的な使用が、
大腸癌の予後を改善する効果のあることは分かりました。

ただ、
この効果にどの程度の地域差や人種差のようなものが、
あるのかという点はまだ不明確ですし、
アスピリンには消化管出血などの出血系合併症が少なからずあり、
予防効果とそうした有害事象とのバランスを、
使用に関してどう考えるかがまた問題となります。

今回の研究は日本において、
2型糖尿病の患者さんに対して、
アスピリンの心血管疾患に対する一次予防効果を検証した、
臨床研究のデータを活用して、
糖尿病の患者さんにおけるアスピリンの癌予防効果を検証しています。

糖尿病はそれ自体癌のリスクであり、
日本においては糖尿病の患者さんでは、
そうでない人より1.7倍癌のリスクが増加する、
というデータもあるので、
糖尿病の患者さんはアスピリンによる癌予防の、
有効な対象であると考えられるからです。

2536名の2型糖尿病の患者さんを、
中央値で10.7年という長期の観察を行った結果として、
トータルにはアスピリンの使用による癌リスクの低下は、
有意には認められませんでした。

年齢を分けたサブ解析においては、
65歳以上では有意なアスピリンによる効果はなかった一方で、
65歳未満の解析では、
喫煙や血糖コントロールなどの因子を補正した結果として、
アスピリンにより癌のリスクは34%
(95%CI: 0.43から0.99)有意に抑制されていました。
ただ、これもギリギリという感じです。

最もこれまでにデータの多い大腸癌のみでみると、
矢張り65歳以上では有意な差はなく、
65歳未満のみの解析では、
そのリスクはアスピリンにより52%
(95%CI: 0.15から0.97)有意に低下していました。
実際の大腸癌の発症件数は、
アスピリン群で27例、
未使用群で31例ですから、
こうした検証では対象者がもう少し多くないと、
検証は難しいように思いました。

このように今回のデータは例数と癌の発症数から、
明確な差を出すことは難しかったようですが、
現時点で日本人の集団において、
アスピリンの癌予防に有効性があるとは、
言えないのが実際であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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