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特発性肺線維症に制酸剤は有効か?(2018年の検証) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
制酸剤による線維症の効果.jpg
2018年のEuropean Respiratory Journal誌に掲載された、
特発性肺線維症に対する制酸剤治療の、
有効性をこれまでのデータから再検証した論文です。

特発性肺線維症は、
肺の間質と呼ばれる部分が肥厚し、
次第に線維に置き換わって、
肺炎などの急性増悪を繰り返しながら、
悪化してゆく原因不明の病気で、
ある種の体質を持つ人が、
加齢や感染症、喫煙などの誘発因子の影響で、
発症すると考えられていますが、
その原因の詳細はまだ不明です。

ステロイドや免疫抑制剤などを含めて、
多くの治療が試みられてはいますが、
その治療成績はまだ満足のゆくようなものではありません。

この特発性肺線維症の患者さんでは、
胃酸が食道や咽喉まで逆流する、
胃食道逆流症の頻度が多い、
という疫学データがあり、
胃食道逆流症が特発性肺線維症の増悪因子ではないか、
という見解があります。

急性増悪を来した肺線維症の肺から、
胃酸の成分が検出された、
という報告もあり、
このことは逆流した胃酸が気管に入り、
それが誤嚥性の肺炎の原因となって、
肺線維症の急性増悪に結び付いているのではないか、
という可能性を示唆しています。

プロトンポンプ阻害剤を使用している患者さんは、
そうでない患者さんより生命予後が良いのではないか、
という報告も最近見られますが、
まだ確認されたものではありません。

2015年に改訂された特発性肺線維症の国際的診療ガイドラインでは、
「強く推奨する」とされる治療薬は今のところ1つもなく、
「条件に応じて推奨する」という治療薬は4つで、
ピルフェニドンとニンテダニブという抗線維化薬と、
急性増悪時のステロイド治療、
そして胃食道逆流症への制酸剤の治療です。

ただ、実際に制酸剤の効果がどの程度のものであるのか、
という点についてはまだ結論は出ていません。

2013年のLancet Respiratory Medicine誌に掲載された、
これまでの3つの臨床試験をまとめて解析した論文によると、
プロトンポンプ阻害剤やH2ブロッカーなどの制酸剤の継続治療により、
未使用と比較して呼吸機能の低下が一定レベル抑制されていました。

ただ、データの精度はそれほど高いものではなく、
実際の患者さんの生命予後に改善が見られるかどうか、
という点については明らかではありません。

今回の論文はより広く文献を集め、
特発性肺線維症に対する制酸剤の効果を、
患者さんの生命予後に絞って再解析したものです。

その結果、
複数の観察研究のデータをまとめて解析した結果として、
確かに制酸剤の使用により、
特発性肺線維症の患者さんの総死亡のリスクは低下していましたが、
本来治療効果の比較には使用出来ない期間も、
観察期間にされているという、
試験デザイン上の問題が認められ、
それを補正して検証したところ、
その有意差は消失してしまいました。

つまり、
制酸剤の使用により、
肺機能の低下が一定レベル抑えられることは、
ほぼ実証されていますが、
それが患者さんの生命予後の改善に、
結び付くものであるかどうかは、
まだ明らかではないようです。

このように、
最近発売された抗線維化薬を含めて、
明確に現時点で生命予後を改善したという治療が、
1つも存在していないという点が、
特発性肺線維症の治療の現時点での限界で、
今後複数の治療法の併用を含めて、
生命予後の改善に結び付く治療が模索されているのが、
現状ということになるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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萌芽

教えて頂きありがとうございます。
ツイッターで紹介させて頂きました。
by 萌芽 (2018-06-27 20:32) 

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