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唐十郎「吸血姫」(唐組・第61回公演) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも、
石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
吸血姫.jpg
唐組の30周年記念公演として、
状況劇場で1971年に初演され、
唐先生の全ての劇作の中でも、
代表作と言って過言でない作品の1つ、
「吸血姫」が唐組では初めて再演されました。

僕にとってこの作品は、
唐先生の作品の中でも最も愛着のある1本です。

勿論初演は観ていませんが、
最初に観たのは1982年頃にシェイクスピアシアターで上演されたもので、
その後大学時代に僕自身が演出をして
(許可は得ていません。すいません)、
大学劇団の本公演として上演しました。
その後新宿梁山泊が初演のキャストの大久保鷹さんを迎えて、
地下の劇団アトリエと花園神社のテントで上演した舞台を観ています。
唐ゼミでも上演されましたが、
これはさすがにもういいかな、
と思って行きませんでした。

今回の上演は期待もしましたが、
今の唐組の役者さんで、
果たしてあの芝居を上演出来るのだろうか、
唐先生の花形を久保井研さんがやるとして、
悪役の両輪である麿赤児さんの袋小路と、
大久保鷹さんの川島浪速を、
誰が出来るのだろうかと思っていたのですが、
実際に幕が開いてみると、
袋小路浩三を大鶴佐助さん、
ヒロインの海之ほおずきを大鶴美仁音さん、
川島浪速を久保井さんという座組になっていて、
なるほど唐先生の血脈を、
堂々と押し出す作戦かと、
言われてみればこれしかないなと、
納得の行くものがあったのです。

これで舞台が詰まらなければ話にならないのですが、
上演された舞台はキャストも演出も、
僕がこれまで経験した「吸血姫」の上演の中では、
間違いなくベストの出来映えで、
アングラ演劇というものの1つの典型であり、
今なお最高到達点でもある、
2幕の後半と3幕の怒濤のラストが、
今の観客にその真価が伝わるように、
ある意味初演以降で初めて再現されたことは、
ちょっと感涙さえ覚えたのです。

この作品は勿論、
1971年という時代性と切り離しては、
その面白さが伝わらない部分があり、
初演のキャストでなければ伝わらない部分もあるので、
その限界は当然あるのですが、
そうした点を考えると、
今回の上演は今望みうる最高のものと言って、
間違いはないように思います。

この作品は僕も演出までしているので熟知しているのですが、
通常の上演で頭を悩ますような勘所が幾つかあるのです。
その第一は2幕の風呂屋の上げ板の処理で、
これがどういう位置関係で出て来るのか、
どうやって引っ込むのか、
その点が何度戯曲を読んでもよく分かりません。
それから、3幕でさと子の人形と本人が、
鏡が回転すると交互に客席に向かう、
という部分があるのですが、
一体どういう位置関係と動きになっているのか、
これも良く分からないのです。

この2つの点に、
今回の上演では鮮やかな正解を提示していて、
なるほどそうかと、
特に回転する鏡については、
その場で拍手をしたい思いに囚われました。

今回の舞台の成功の一番は、
ヒロインを鮮やかに演じた美仁音さんと、
袋小路という元々麿赤児さんへの当て役で難役を、
格闘するように演じた佐助さんの熱演にあって、
唐先生の血脈が、
このようにして今回大輪の花を咲かせたということが、
昔からのファンにとっては、
とても嬉しく感動的なことだったのです。

上演時間は2時間半で、
3幕劇の2幕と3幕をそのまま繋げて、
1回の幕間で上演しています。
ノーカットでありながらこの尺に納めているのは、
人力車の登場など、
要所を鮮やかなカッティングで、
緩みなく展開させているからで、
今回の久保井さんの演出は、
いつも以上に冴え渡っていたと思います。
唯一の不満はいつの上演においても、
原作に書かれている「幌付きトラック」が登場しないことで、
これは一時期状況劇場のどさ回りに使用していたものだと思われますが、
一度くらいは本物のトラックが舞台にあり、
それが原作のト書き通りに、
テントの外へと出て行くというラストを、
観てみたいという思いはいつもあるのです。

そんな訳で終わるのが勿体ないくらいの上演で、
アングラ演劇の真価を、
感じることも出来る極めつけの舞台でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(8)  コメント(2) 

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コメント 2

かおりママ

ずっと見たいと思っていた「吸血姫」を見る事ができ
さらに昔状況劇場に通った友人と一緒に行く事ができて
感慨ひとしおでした。
彼女の亡くなった兄も唐の信奉者で、去年亡くなった友人にも
見せたかった舞台でした。
特に海のほおずきの美仁音ちゃん!佐助くん!
二人の啖呵や身振りが最高で、胸が熱くなりました。
この上は未見の又三郎もやっていただきたい。
私たちが行った時は麿さんがきてましたよ。


by かおりママ (2018-06-13 08:00) 

fujiki

かおりママさんへ
「風の又三郎」も大学時代に上演したのですが、
あれはノーカットでやると凄まじく長いので、
今上演するのはきついかも知れません。
でも、再演するならノーカットでないと意味がないと思うのです。
新宿梁山泊でも以前やりましたが、
最初の上演はほぼ原作通りでしたが、
2度目の上演はズタズタにカットされた再構成版になっていて、
途中で呆然として退場しました。
あと大久保鷹さんがやった夜の男がネックで、
あれをやって違和感のない今の役者さんは、
いないのではないかと思います。
個人的には「ベンガルの虎」と「風の又三郎」は、
まともな上演は無理だと思います。
「鉄仮面」あたりは是非観たいですね。
by fujiki (2018-06-13 08:35) 

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