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「ヘッダ・ガブラー」(2018年栗山民也演出版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
ヘッダ・ガブラー.jpg
イプセンの名作「ヘッダ・ガブラー」が、
シス・カンパニーの賑々しいキャストと、
栗山民也さんの地味で暗い演出で上演されています。

イプセンは19世紀としては異様な感性を持った、
とても魅力的な劇作家ですが、
日本では「人形の家」が新劇の黎明期に取り上げられ、
自立する女性のシンボルのように、
その主人公が描かれたために、
お行儀の良いお芝居のように、
誤解されている感があります。

この「人形の家」からして、
実際にはかなりグロテスクで奇怪な作品で、
男女のドロドロとした愛憎が表現されているのですが、
今回上演されている「ヘッダ・ガブラー」は、
より複雑で変態的で奇怪で魅力的な作品です。

主人公のヘッダは高名な将軍の娘で社交界の花形でしたが、
平凡な学者を夫に選んでしまいます。
しかしそこにかつて自分が見限った若い学者が、
献身的な女性の助けで立ち直って現れます。

ヘッダは自分の選択が誤りであったことに苦悩し、
それを認めることを拒否して、
異様な妨害でかつての恋人を破滅させ、
自分も破滅への道を辿ります。

この物語の魅力は、
何と言っても主人公のヘッダの複雑な人格にあって、
特に自分がもたらした若い学者の死に様に、
自分の美意識に適うものがないことに絶望する、
という辺りの審美的な感覚に、
イプセンの天才を見る思いがあります。

キャストは主人公のヘッダを演じた寺島しのぶさんが、
時々朗読調になるのが難点ですが、
なかなかの座長芝居を見せてくれました。
美しくも尊大にも哀れにも見えるという、
その振幅の大きな差が魅力です。

夫役の小日向文世さんは、
その資質を活かした余裕のある快演で、
話のキーになる判事役の段田安則さんも、
なかなか渋く安定感のある芝居を見せてくれました。

そんな訳でなかなか充実した舞台だったのですが、
感心しなかったのが演出です。

栗山さんの演出は僕とは相性が悪くて、
良い時もあるのですが、
僕の観た多く舞台は鵜山仁さんほどではないですが、
地味で暗くて単調でイライラすることが多いのです。

残念ながら今回の舞台もそうでした。

比較的リアリズムの装置ですが、
高さが大きく引き延ばされていて、
単色の書き割りがただ上に伸びている、
という感じなので、
舞台に密度がなく安っぽい印象になってしまっています。
引っ越し公演の安手のオペラの舞台のようです。
これはもっとお金を掛けて細部の装飾などを、
緻密に再現するか、
そうでなければ舞台自体はもっと抽象化して、
個別の家具などで重みを演出するか、
どちらかにするべきではなかったでしょうか?
また、舞台の正面に階段があって、
その先が庭という体になって役者の出入りに使われているのですが、
そこのみがリアルな舞台から外れていて、
これも統一感がなく如何なものかと思いました。

照明も全体に暗くて、
特に舞台の最初を暗くするのは、
コクーンくらいの広さの劇場では、
遠くの観客に不親切なだけで、
大して効果はないので止めて欲しいと思いました。

舞台の中央に大きな鏡があり、
オープニングとラストにのみ、
その背後にヘッダの姿が浮かび上がります。

これも安手のオペラなどによくある趣向ですが、
ラストにヘッダがこめかみを銃で撃ち抜くのを、
イメージとして見せるのは、
駄目演出だと思いました。

その前にヘッダの陰謀で若い学者が死に、
その最後がヘッダの美意識に適うものであったかが、
台詞で議論され、
こめかみから心臓、そして陰部への暴発と、
幻想はめまぐるしく事実に打ち砕かれるのですが、
最後のヘッダの部分はこの死と呼応しているので、
それは言葉で語られるべきで、
実際に舞台に現れるべきではないと思います。
出すとしてももっと抽象的なイメージとして、
表現するべきではなかったでしょうか?

カーテンコールでは死んだ直後のヘッダが、
余韻を感じる間もなく、
すぐに舞台に出て来るのですが、
これもセンスがないと感じました。
ここは一呼吸置いて、
観客に主人公が死んだことを、
反芻してもらう必要があるからです。

今回の演出は、
申し訳ないのですがそんな感じで、
最初から最後まで駄目でした。

イプセンには他にも変態戯曲が沢山あり、
日本では殆ど上演されないものも多いので、
これからもイプセン劇の上演には、
なるべく足を運びたいと思っています。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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