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カテーテルアブレーションの長期予後(心不全合併心房細動での検証) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
カテーテルアブレーションと予後.jpg
2018年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
心不全を合併した心房細動の患者さんに、
カテーテルアブレーションという治療を行った場合の、
患者さんの長期予後を検証した論文です。

カテーテルアブレーションというのは、
血管から挿入したカテーテルによって、
心臓の一部を焼却するという治療です。

何故心臓の一部を焼いてしまうのかと言うと、
不整脈を起こす原因となる、
異常な興奮をするような場所を焼却することによって、
不整脈が起こらないようにしようというのです。

その効果は、
発作性上室性頻拍というタイプの不整脈では、
90から98%と非常に高い奏効率を示していますが、
一方で心房細動という高齢者に非常に多く、
脳卒中の大きな原因となっている不整脈では、
その経過によって60から95%とかなりのばらつきがあります。
(数字は日本不整脈心電学会のサイトより引用)

また、一旦アブレーションにより洞リズム(通常の脈)に戻っても、
再発してしまうことが稀ではなく、
アブレーションに伴って脳梗塞を発症することも、
0.3から0.5%には見られると報告されています。
(数値は前述のサイトより)

心房細動はまた高率に心不全を合併します。

上記文献の解説記事(editorial)の記載によれば、
新たにうっ血性心不全を発症する患者さんの5割以上は、
心房細動を合併していると報告されています。
逆に新規に心房細動を発症する患者さんのうち、
3分の1近くがうっ血性心不全を合併しているという報告もあります。
心房細動が長く続けば、
心臓の働きが低下して心不全になっておかしくない一方、
心不全があって心臓に負担が掛かれば、
それが原因となって心房細動が生じることも充分考えられます。

つまり、
どちらが原因でどちらが結果かという疑問の答えは、
そう簡単なものではありません。

それでは心不全を合併した心房細動では、
カテーテルアブレーションをすることが、
患者さんの予後の改善に結び付くのでしょうか?

実はこの答えも、
あまり明確にはなっていません。

1999年と2008年に発表された介入試験の結果では、
抗不整脈剤による治療との比較において、
心不全をした合併心房細動患者に対するカテーテルアブレーションは、
洞リズムの期間を延長はしたものの、
心機能の改善や生命予後には、
明らかな効果を認めませんでした。

今回の臨床試験は、
心不全を合併した心房細動の患者さんをを、
カテーテルアブレーションをした場合と、
それ以外の保存的治療のみを継続した場合とにくじ引きで分け、
60ヶ月(中央値37.8ヶ月)という長期の経過観察を行っています。

心不全はNYHA分類でⅡ度以上、
心機能の指標である駆出率が35%以下が条件となっています。
例数はカテーテルアブレーション群が179名で、
保存的治療群が184名です。
万一のリスクのために全例で除細動器が埋め込まれていて、
24時間の脈拍の記録も取られている、
というちょっと特殊な研究です。

その結果、
観察期間が37.8ヶ月の段階で、
総死亡と心不全の悪化による入院を併せたリスクは、
保存的治療群と比較してカテーテルアブレーション施行群では、
38%(95%CI; 0.43から0.87)有意に低下していました。
個別には総死亡のリスクが47%(95%CI; 0.32から0.86)、
心不全による入院のリスクが44%(95%CI; 0.37から0.83)、
心血管疾患による死亡のリスクが51%(95%CI; 0.29から0.84)、
それぞれ有意に低下していました。

また、60ヶ月経過した段階で、
保存的治療群と比較してアブレーション施行群では、
心機能の指標である駆出率が、
8%有意に改善していました。

保存的治療群の22%が洞リズムであったのに対して
アブレーション治療群では63%が洞リズムとなっていました。

これはかなり画期的な結果で、
カテーテルアブレーションをすることによって、
明確に生命予後が改善し、
心機能も長期的に改善しています。
ただ、全例でアブレーションにより洞リズムに改善している、
という訳ではないので、
この改善が何によってもたらされたのかは、
まだ検証の余地を残していると思います。
また、今回の研究は例数はそれほど多くなく、
アブレーションは専門施設で経験のある術者によってのみ施行されているので、
現状より広くアブレーションが行われることが、
一般の患者さんの予後を、
同じように改善するという保証はまだありません。

従って、この問題はまだ解決したとは言えませんが、
今後心房細動に対するアブレーションの適応は、
より広くなるきっかけとはなるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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