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インフルエンザのA型とB型に症状の違いはあるのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
インフルエンザのA型とB型の違い2015.jpg
これは2015年のPLOS ONE誌の論文ですが、
フランスでの複数年の疫学調査を元に、
インフルエンザのA型とB型の症状の違いについて検討したものです。

今日はこの論文と、
それからこれ以前の2つの報告から、
インフルエンザのA型とB型の症状の違いについて考えます。

今クリニックのある品川周辺でも、
インフルエンザが大流行しています。

2週間くらい前までA型とB型が拮抗していて、
数日前からはB型の流行が主体となっているように、
クリニックでの迅速診断の検出状況からは想定されます。

さて、以前はインフルエンザのタイプなどというものは、
あまり問題視されていませんでしたが、
近年の迅速診断
(鼻の奥に綿棒を突っ込む評判の悪いあれです)では、
A型とB型の抗原を別々に検出して表示するようになっているので、
A型とB型という2種類のインフルエンザの違いについて、
一般の方も診療の際に結構気にされるようになりました。

そこで外来で聞かれることが多いのが、
A型とB型と症状に違いがあるのか、
ということです。

比較的よく言われることが多いのが、
「B型はA型と比べて熱が高く上がらない」
という説や、
「下痢などのお腹の症状はB型に多い」
という説です。

ネットで医療記事を書いているその道の専門家とされる方が、
B型では熱が上がりにくいとか、下痢が多いと、
まとこしやかに書かれているのを見るが、
その情報の根拠は乏しく、
まともな論文では全て、
A型とB型の症状には違いがないと報告されている、
という趣旨のことを最近書かれていました。

それは本当でしょうか?

僕の記憶では迅速診断が一般の臨床で普及し始めた頃に、
臨床の専門誌のようなものの対談で、
ある感染症やウイルス学の専門家の座談会があって、
ある先生が迅速診断を多数例で行った経験として、
B型は不顕性感染が多くて、
胃腸症状も多いことに初めて気付いた、
という趣旨の発言をしていました。

論文にはおそらくまとまっていないと思いますが、
そうした意見が当時あったことは事実だと思います。

実際毎日インフルエンザの患者さんを、
何人も診察をしていると、
一定の傾向のようなものに、
個人的に気付くことは確かです。

症例報告として今では信用している人が多い、
咽頭の後壁の部分のリンパ濾胞の増殖の所見もそうですし、
少なくともその時に流行しているウイルスについては、
一定のパターンが見られると感じます。

たとえば先週以来大流行しているB型については、
熱は夜だけ上昇して昼には下がる傾向にあり、
初期には咳が強く、痰や鼻水は乏しい、
という特徴を感じます。

ただ、こうした個人の臨床医の所見や経験的な知見は、
今ではうっかり口にしたりSNSに書いたりすると、
誤解を招くことも多いので、
敢くまで経験則として、
心の中にしまっておいた方が安心です。

それでは、インフルエンザのB型では熱が出にくく、
胃腸症状が多い、という論文はないのでしょうか?

それはないこともありません。

こちらをご覧下さい。
インフルエンザのB型の特徴2003.jpg
これは最初の2015年の論文にも引用されている、
2003年のRespiratology誌の論文ですが、
久留米医科大学での単独施設で診断された、
トータル196例のインフルエンザ患者を、
A型のH1N1とH3N2,そしてB型の3種類に分けて、
それぞれの症状を比較したところ、
消化器症状はB型が有意に多く、
筋肉痛はH1N1が有意に少なく、
咽頭痛はB型が少ない、という結果になっていました。

発熱もH3N2(A香港型)が多く、
H1N1とB型はそれと比較すると少ないという結果になっています。

つまり、例数は少なく単年度の単独施設の結果ですが、
この時の結果は確かに、
B型は消化器症状が多く咽頭痛や熱は少ない、
と言っても間違いではない結果となっています。

それでは次に最初にご紹介した論文です。

これはフランスの疫学調査で、
2003年から2013年の10年間の、
トータル14423名のインフルエンザ事例を集計したものです。

この人数で複数年の経過を集積すると、
A型とB型の感染を、
何かの症状で明確に区別する、
ということは困難になります。

その一方で発症する年齢層には差が見られていて、
0から4歳と比較すると、
5から14歳での発症リスクは2.15倍(95%CI; 1.87から2.47)となり、
15から64歳での発症リスクは逆に0.83倍(95%CI; 0.73から0.96)と、
感染は少なくなっているという違いがあります。

細かくみると、
B型の2つ系統(ビクトリア系統と山形系統)にも、
症状や発症リスクには差が見られる傾向もあり、
年齢層によっては、
消化器症状はB型に多いという傾向も皆無ではありません。

今度はこちらをご覧下さい。
2013インフルエンザのB型の特徴.jpg
これはAmerican Journal of Public Health誌の2013年のレビューですが、
これまでのB型の特徴についての報告をまとめたものです。

こちらもA型とB型には症状の差がない、
というものがある一方、
たとえば台湾の報告で、
下痢はB型に多い、
という報告も紹介をされています。

要するにどの報告も、
A型とB型の症状には差がない、
というようには言っていないのです。
最初に紹介した2015年の論文は、
確かに題名はそうしたニュアンスですが、
本文では違いを完全に否定している訳ではありません。

症状から経過や予後に繋がる情報が得られたり、
インフルエンザのタイプが推測出来れば、
それは臨床上メリットのあることですから、
基本的にはそうした違いを探しているのですが、
B型トータルで見ると、
そうした違いは今のところはっきりしたものが見つかっていない、
ということなのです。

タイプ間の差より、
明確なのはむしろ年齢による症状の差である、
という可能性もある訳です。

発熱に関しては、
そもそも多くの研究では、
発熱を指標としてインフルエンザを疑っているので、
熱のあまり出ないインフルエンザは、
その多くが除外されているため、
データとして検出されにくい、
という傾向はあるように思います。

また、B型では平熱である期間が長い、
という「臨床的な印象」についても、
そうした発熱様式の差のデータというのは、
実際には殆ど存在していないので、
あるともないとも、
現時点では断定は難しいのではないかと思います。

従って、
現状では流行しているウイルスによって、
その症状には特徴のある可能性は高いけれど、
それを「B型の特徴」のように言うのはやや乱暴で、
そうしたものがあることを否定も出来ないけれど、
実証的なデータは乏しいのであるともないとも言えない、
という辺りが適切な表現ではないかと思います。

ネットの記事はいつものことですが、
「馬鹿は権威のある俺の意見に従え」という感じで、
文献を引用していても、
その趣旨をねじ曲げていることが多いのは、
いつもモヤモヤしたものを感じてしまうのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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