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原発性アルドステロン症の術後評価の国際基準(2017年作成) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
原発性アルドステロン症の予後判定.jpg
今年のthe Lancet Diabetes Endocrinology誌に掲載された、
片側副腎切除を施行された原発性アルドステロン症の患者さんの、
予後判定を国際的に行った結果をまとめた論文です。

原発性アルドステロン症は、
アルドステロンという水と塩分を保持する役割をするホルモンが、
過剰に分泌されることによって、
高血圧や低カリウム血症を生じる病気で、
治療抵抗性の高血圧の患者さんの2割はこの病気である、
という報告があるほど、
高血圧の原因としては多い病気です。

この原発性アルドステロン症は、
片側の副腎に腺腫というしこりがあって、
そこからアルドステロンが分泌される場合と、
両側の副腎に複数の過形成というしこりがあって、
そこからホルモンが分泌される場合とがあります。

両側性の場合には通常薬による治療が選択され、
片側のみにしこりがある場合には、
その切除の手術が検討されることが一般的です。

それでは、片側の副腎切除術を施行した場合の、
治療の成功率はどのくらいでしょうか?

これはどのような基準で治療が成功したと判断するのかによって、
異なって来る事項です。

手術前には高かったアルドステロンが正常化し、
低かったカリウムが正常化するという検査値で考えると、
成功した手術であればほぼ100%検査値は改善します。
これを生化学的寛解(biochemical remission)と呼んでいます。
これまでの報告では、
専門施設の手術後の生化学的寛解率は、
96から100%と報告されています。

しかし、原発性アルドステロン症の主症状である高血圧が、
手術後に治る患者さんはそこまで多くはありません。

手術の治療後に高血圧の症状が改善することを、
臨床的寛解(clinical remission)と呼んでいますが、
この臨床的な寛解率は報告された施設や地域によって、
非常にばらつきがあり、
報告では16から72%とされています。
要するにてんでバラバラです。

何故こうした違いが生じるのかと言うと、
それは1つには臨床的寛解についての明確な国際基準のようなものがなく、
報告する個々の施設や研究者の独自の基準によって、
臨床的寛解が決められている、と言う点が大きいと考えられます。

このように基準がバラバラであれば、
施設や地域の違いを比較検証することは出来ません。

そこで今回世界中の研究者が協力をして、
一定の手術後の寛解の基準を定め、
それに基づく寛解率をそれぞれの施設の患者さんで適応して、
その世界的な比較を初めて試みました。

今回参加しているのは世界12か所の専門施設です。
具体的には、オーストラリア、フランス、ドイツ、イタリア、アメリカ、
ポーランド、スロベニア、ニュージーランド、日本が協力し、
日本では横浜労災病院、東北大学医学部附属病院、
国立病院機構京都医療センターが協力しています。
まず片側副腎切除後の改善の評価を、
次の6段階で行うことを取り決めています。

①臨床的完全寛解(Complete clinical success);これは術後に降圧剤なしで外来血圧が140/90mmHg未満が維持されることです。
②臨床的部分寛解(Partial clinical success);これは降圧剤の減量が可能になるか、術前と同じ治療で血圧は術前より低下している状態です。
③臨床的改善なし(Absent clinical success);これは術前と同じ治療で血圧が同等であるか、むしろ悪化する場合です。
④生化学的完全寛解(Complete biochemical success);これはカリウム値とアルドステロン濃度、アルドステロン・レニン比が正常となることです。
⑤生化学的部分寛解(Partial biochemical success);これは一定の数値の改善があるものの、術後も異常値が続いている状態です。
⑥生化学的改善なし(Absent biochemical success);これは術後もカリウム値やアルドステロン分泌の異常が術前と変わりなく継続するものです。
以上の6段階の判定は術後3か月後に最初に行い、
術後半年から1年後に最終判定を行うとされていて、
最終判定後も1年毎に判定は継続するとされています。
(以上の文面の訳語は個人訳で正式ではありません)

この判定基準で個々の専門機関の患者さんを判定したところ、
全体で705名の患者中、
臨床的完全寛解率は37%、
施設間での差は17から62%と幅の広いものになっていました。
ちなみに最も臨床的完全寛解率が高かったのはオーストラリアで、
日本の3施設の臨床的完全緩解率は、
東北大学附属病院が63例中28.6%、
横浜労災病院が76例中46.0%、
京都医療センターが40例中42.5%となっていました。

臨床的部分寛解率は47%、
そして生化学完全寛解率は94%でした。

臨床的完全寛解率は、
男性より女性が高く、
術前の高血圧の程度が軽く、
年齢も若いほど高い傾向が認められました。

世界中の一流の専門機関において、
このような統一基準での比較がされたことは非常に有意義なことで、
今後はこの基準をより広く活用することにより、
本当の意味での原発性アルドステロン症の予後が、
明確になることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(付記)
数字に誤りと不充分な点がありましたので、
その部分の修正を行ないました。
(2019年9月20日午前8時22分修正)
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コメント 4

ゆま

先生!取り上げてくださってありがとうございます
日本から参加の三病院はいずれも、押しも押されもせぬ、原発性アルドステロン症を診ている代表的な病院ですね。そこですら切除後臨床的完全寛解が40%代なのですね。
現実は患者が考えるよりも甘くはないようですね。ありがとうございました。
by ゆま (2017-09-19 11:54) 

ゆま

先生、教えてください。
3つの病院のうち、京都医療センターは片方の副腎を丸ごと取ると思うのですが、横浜労災病院と東北大学病院は、片方の副腎を丸ごと取る場合もあれば、副腎を取らないで腺腫のみの摘出やラジオ波焼灼の場合もあると思います。また、その場合、片側だけでなく、両側の腫瘍の場合もあるような気がします。

この国際的な研究は、「片側の副腎を丸ごと取った」場合のみなのでしょうか、それとも「手術(腺腫のみ摘出やラジオ波含む)になった」ものは全部、なのでしょうか。

ここを見てみたのですが、よくわからなくて。。。すみませんが、もしお分かりになりましたら教えてください。
https://translate.googleusercontent.com/translate_c?depth=1&hl=ja&prev=search&rurl=translate.google.co.jp&sl=en&sp=nmt4&u=https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5572673/&usg=ALkJrhg64sMkCQjEwYw3bNTnvzIKcDpizQ
by ゆま (2017-09-20 00:04) 

fujiki

ゆまさんへ
日本の施設の臨床的完全緩解率の数値は、
東北は28.6%で40%代ではありませんでした。
その点修正しました。
手術法についての記載はないのですが、
片側に病変があると診断して、片側の手術をした場合を、
カウントしているように思います。
後は施設側の判断に任されているような感じです。
ちなみに横浜労災病院のデータは、
2013年から2015年の片側事例トータル163例中、
76例が解析対象になっています。
東北大学は2011年から2014年の73例が対象で、
実際に解析されているのは63例です。
by fujiki (2017-09-20 08:33) 

ゆま

詳しい回答をすごく早くありがとうございます!!
片側性の診断で副腎を片側取る手術をした場合のようなのですね。
片側事例でも解析対象に選ばれていないのは薬を選んだということでしょうか。。。東北大学病院は重い患者が送られてくるでしょうし、勢い臨床的完全緩解率は低めに出るのかもしれませんが、低いんですね。。。
ありがとうございました!!
by ゆま (2017-09-20 09:11) 

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