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リバーロキサバンの生命予後への影響について(2017年台湾のデータ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
リバーロキサバンの死亡リスク.jpg
今年のJournal of the American Heart Association誌に掲載された、
ワルファリンに代わる抗凝固剤の2種類を、
生命予後などの点から比較した台湾の疫学研究の論文です。

最近評判があまり良くないリバーロキサバンに、
またあまり良くない結果が認められています。

ワルファリンに変わりうる抗凝固剤が、
最近次々と発売され、
その評価もほぼ定まった感じがあります。

ただ、それではこうした新しいタイプの抗凝固剤のうち、
どの薬がより効果があり、より安全性が高いのか、
というような点については、
まだ定まった見解はありません。

直接トロンビン阻害剤であるダビガトラン(プラザキサ)が先陣を切り、
その後リバーロキサバン(イグザレルト)、
アピキサバン(エリキュース)、
エドキサバン(リクシアナ)と、
凝固因子のⅩa因子阻害剤と呼ばれる薬が、
次々と発売され実際に臨床で使用されています。

この新しいタイプの抗凝固剤の、
患者さんの側からのメリットは、
ワルファリンのように定期的に血液の検査を行ない、
その効果を確認する必要がなく、
また納豆などの食事制限がないという点にあります。

その効果は各薬剤の承認時の臨床試験では、
良くコントロールされたワルファリンと同等の、
血栓症や塞栓症の予防効果を持ち、
有害事象である重篤な出血の発症については、
ワルファリンより概ね軽微である、
と報告されています。

ただ、それではこうした新しいタイプの抗凝固剤のうち、
どの薬がより効果があり、より安全性が高いのか、
というような点については、
まだ定まった見解はありません。

最初に発売されたダビガトランにおいて、
重篤な出血の事例が問題となり、
そのためアメリカでは2から3倍ダビガトランより、
リバーロキサバンの処方が多いようです。

その一方で2016年2月のBritish Medical Journal誌の解説記事では、
ROCKET-AFと題された、
リバーロキサバン(イグザレルト)の臨床試験において、
ワルファリンのコントロールが、
正確に行われていなかったのではないか、
という問題点が指摘されています。

個々の薬剤の臨床試験のデータのメタ解析の論文では、
薬剤間に少なくとも明瞭な効果や安全性の差はない、
という結果になっています。

しかし、それが実地臨床においても成り立つかどうかは、
実際の臨床に近いデータが必要です。

ブログでも以前ご紹介した、
2016年のJAMA Internal Medicine誌の論文では。
アメリカの健康保険のデータを活用して、
65歳異常の非弁膜症性心房細動患者で、
ダビガドランもしくはリバーロキサバンを新規で開始した、
トータル118891名(ダビガトランの処方52240例、リバーロキサバンの処方66651例)
のデータを解析して、
両者の血栓症予防効果と有害事象の差を検証していました。

その結果…

平均で4ヶ月の観察期間において、
血栓塞栓症の発症リスクには両群で有意な差はなく、
脳内出血のリスクはリバーロキサバンの使用において、
ダビガトランの使用と比較して、
1.65倍(1.20から2.26)有意に増加し、
重篤な脳内出血以外の出血系合併症も、
1.48倍(1.32から1.67)有意に増加していました。
消化管出血に限っても、
矢張りリバーキサバン使用群において、
1.40倍(1.23から1.59)有意に増加していました。

死亡リスクには両群で有意な差はありませんでしたが、
年齢が75歳以上に限定した場合と、
血栓塞栓症のリスクが高いと想定される、
CHADS2スコアが2を超える患者さんに限定すると、
リバーロキサバン使用群での死亡リスクの増加が認められました。

このように、この研究においては、
明確にリバーロキサバンの出血系合併症のリスクは、
ダビガトランを上回っていました。

この原因について上記文献では、
リバーロキサバンが1日1回の薬剤であり、
その有効性を24時間維持するために、
結果的には抗凝固作用が、
必要以上に強くなっている時間帯があるのではないか、
という仮説を提示しています。

今回ご紹介するデータは台湾のもので、
アメリカの2016年の論文と同じように、
健康保険のデータを活用する形で、
非弁膜症性心房細動に対して、
新規のダビガトランの使用事例と、
新規のリバーロキサバンの使用事例の、
効果と予後を比較検証しています。

2012年から2014年に掛けて、
ダビガトランの新規処方事例は10625例、
リバーロキサバンの新規処方事例は4609例です。
これを直接全体で比較した場合と、
4600例のダビガトラン処方事例に、
マッチングさせた同じ4600例のリバーロキサバン事例を、
比較した場合の両方を比較しています。

その結果、
総死亡のリスクについては、
マッチングさせた同数での比較では、
1.44倍(95%CI;1.17から1.78)、
直接全体での比較では、
1.47倍(95%CI;1.23から1.75)、
ダビガトランよりリバーロキサバンの方が有意に高くなっていました。

また輸血を要する消化管出血のリスクについても、
マッチングさせた同数比較で1.41倍(95%CI;1.02から1.95)と、
有意にリバーロキサバン群で増加していましたが、
直接全体での比較では1.20倍(95%CI;0.92から1.56)と、
高い傾向は見られるものの有意ではありませんでした。

抗凝固剤の主な効果である、
虚血性梗塞や心筋梗塞、閉塞性動脈疾患のリスク、
また脳出血のリスクについては、
両群で差はありませんでした。

要するに今回のデータにおいても、
ダビガトランと比較してリバーロキサバンの使用は、
有害事象のリスクを増し、
生命予後にも悪影響を与えるという可能性が示唆されました。

2016年のデータはアメリカのもので、
リバーロキサバンの用量も全て1日20mgであったのですが、
今回は通常量が15mgと日本と同一で、
21%が20mgを使用し、4%は10mgを使用、
ダビガトランも86%は1日220㎎という低用量が用いられています。
つまり、人種も用量も日本に近い条件です。

今回のデータでリバーロキサバンのリスクは、
かなり明確になったと言っても良く、
今後のこの薬の適応については、
より慎重に判断した方が良さそうです。

ただ、今血栓塞栓症予防目的でリバーロキサバンを使用されている方は、
自己判断で中止をされないようにして下さい。
ここに提示されたデータは、
ダビガトランと比較するとややそうした傾向がある、
というレベルのものであり、
まだ結論が出ているということではありません。
最新の医療データをなるべく広範にご紹介をしたい、
と言う趣旨で記事にしたもので、
特定の薬剤や治療に対する不安を煽ることが目的ではありません。

他の薬への変更は1つの選択肢ですが、
変更時には血栓塞栓症のリスクが高まる可能性もあります。
どうか、主治医の先生にご相談の上、
慎重な判断をよろしくお願いします。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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