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癌の予後とLDH(乳酸脱水素酵素)との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
LDHと癌の予後.jpg
昨年のBritish Journal of Cancer誌に掲載された、
LDHという簡単な血液検査と癌の予後との関連を検証した論文です。

癌の予後を簡単な検査で判定する方法はないでしょうか?

腫瘍マーカーと呼ばれる一連の検査は、
一部の癌に対しては、
確かに癌の予後と関連を持つ検査です。
ただその診断能と有効性には、
多くの限界のあることもまた事実です。

ここにLDH(乳酸脱水素酵素)という血液検査があります。

その名前と通り、
乳酸から水素を取り除く反応を触媒する酵素です。
細胞で利用されるブドウ糖は、
酸素のある状態では分解されてピルビン酸になりますが、
酸素の欠乏した状態では、
乳酸がLDHにより分解されてエネルギーとして利用されます。

癌細胞は正常な細胞と比較して、
酸素のある状態でも、
乳酸をよりエネルギー源として利用しており、
そのためLDHの活性も亢進しているという知見や、
癌遺伝子とLDHをコードする遺伝子がリンクしている、
という知見などがあります。

LDHが上昇する主な原因は、
炎症などにより身体の細胞が壊れ、
細胞内の酵素が血液中に増加することによりますが、
そうしたメカニズム以外に、
癌においてはそれ自体が、
LDH上昇の原因となっている可能性があるのです。

実際に多くの癌でLDHが初期から増加している、
というデータがあり、
胚細胞腫瘍やリンパ腫など一部の癌では、
LDHにより癌の予後が推定出来る、
という報告もあります。

ただ、それ以外の個々の癌において、
LDHがどの程度、癌の経過や予後に関係しているのかは、
これまでにあまりまとまったデータが存在していませんでした。

そこで今回の研究では、
スウェーデンの疫学データを活用して、
種々の癌におけるLDHの数値と、
その癌の予後の関連性を検証しています。

LDHの数値については、
その測定法での基準値を超えているか、
そうでないかで単純に2つの分けています。
測定法も単独ではないので、
数値として比較することは困難であったようです。

1986年から1999年に掛けて、
癌を診断された5799名を解析したところ、
平均8.2年の観察期間において、
診断前の時点のLDHが高値群は、
正常群と比較して、
その後の総死亡のリスクが1.43倍(1.31から1.56)、
癌による死亡のリスクが1.46倍(1.32から1.46)、
それぞれ有意に増加していました。
つまり、癌と診断される前(3年以内)のLDHが上昇していると、
その後の生命予後は悪いという結果です。

癌の種別による検証では、
前立腺癌、肺癌、大腸癌、胃食道癌、婦人科癌、造血組織由来癌で、
有意な癌死亡率の増加が認められていました。
一方で頸部腫瘍、膀胱癌、肝臓癌、腎細胞癌、膵臓癌、
乳癌、悪性黒色腫、中枢神経系の癌では、
有意な癌死亡率の増加は認められませんでした。

この結果をどのように臨床に活用するかは、
まだ明瞭ではありませんが、
たとえば前立腺癌のような、
基本的には予後が良い癌の場合には、
LDHの上昇があれば、
予後はやや悪い可能性を考えて、
それを治療をするか否かの選択に、
活用するなどの方法が考えられます。

今後のデータの蓄積を期待したいと思いますし、
簡便な検査であることを考えると、
個々の癌の診療に、
うまく活用されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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