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HbA1cの過剰検査とその影響について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
HbA1cの過剰検査.jpg
昨年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
糖尿病の管理に必須の検査が、
ガイドライン通りの頻度で活用されているかどうかを、
検証した論文です。

内容はかなり上から目線というのか、
一般の臨床医はどうせ馬鹿ばかり、
というようなニュアンスがあって、
感情的には抵抗があるのですが、
医療をコスト意識で考える観点からは、
重要な視点ではあると思います。

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という血液検査があります。
これは血糖が上昇すると、
酸素を運ぶヘモグロビンがある比率で糖化する、
という性質を利用したもので、
概ね1から2ヶ月(説により2から3ヶ月)の、
血糖コントロールの指標として利用されています。

この数値は平均した血糖値が高いほど増加するので、
この数値が高いことは血糖コントロールが悪いことを意味しています。

それでは通常の診療において、
どのくらいの頻度でHbA1cの測定は行うべきでしょうか?

日本で治療ガイドライン的に使用されている、
日本糖尿病学会の「糖尿病治療ガイド」では、
そうした点についての記載はありません。

血糖コントロールの目標は、
合併症予防のためには7.0%未満で、
血糖正常化を目指す際には6.0%未満、
と書かれていて、
HbA1cは過去1から2か月の血糖を反映する、
というようには書かれています。

血糖が常に変動するということを前提に考えると、
薬剤で糖尿病を治療している患者さんでは、
毎月1回HbA1cの測定を行なっても、
過剰な検査ではないようにも思われます。

その一方でアメリカのガイドラインにおいては、
血糖コントロールが安定していて、
妊娠中やインスリン注射を使用中ではなく、
合併症の進行や低血糖発作のない状態では、
内服薬で治療中の糖尿病の患者さんでも、
年間1から2回のHbA1cの測定が妥当である、
と明確に記載がされています。

上記文献の記載によれば、
HbA1cは3か月以上の血糖値を均してみた指標と考えられるので、
3か月より短いサイクルで施行をしても、
その間の変動は血糖コントロールの評価の混乱を招くだけで、
積極的な意味はない、
という認識になっています。

従って、
血糖コントロールがまだ不安定な状態や、
急激な変動が予想されるケースでは、
概ね3か月に一度の測定を行い、
血糖コントロールが安定して、
HbA1cが7.0%未満になったことが確認されれば、
それ以降の確認のための検査は、
半年から1年に一度で良い、
という考え方です。

日本の診療においては、
おそらく最低でも3か月に一度は、
HbA1cを測定することが、
一般的な診療行為となっています。
治療ガイドにはHbA1cは1から2か月の血糖を反映する、
と書かれていますから、
それが事実であるなら、
妥当な方針であるようにも思われます。

それでは、
安定した状態にある糖尿病の患者さんにおいて、
毎月HbA1cを測定するという診療には、
どのような問題があるのでしょうか?

まず一番は医療コストの問題です。

血糖コントロールが安定しているのであれば、
HbA1cの測定はそれを確認する意味合いしかない、
ということになり、
不必要な検査を繰り返すことで、
医療費は当然増大します。

それから、言葉が適切かどうかは分かりませんが、
「過剰診療」の問題があります。

お金さえ掛ければ、
毎日HbA1cを測定することも可能です。

毎日測れば微妙に数値は異なります。
時には妙に低い数値や高い数値が混じることもあります。
検査というのは常にそうしたものなのです。

この数値の変化にいちいち反応して、
薬の量を増やしたり減らしたりすることは、
医者は勿論良かれと思ってする訳ですが、
そもそもリアルタイムで変動するのではない指標を用いて、
そうした調整をすることは、
実態とかけ離れてしまう可能性が高く、
たまたま高めの数値が1回出ただけなのに、
薬の量を増やして低血糖を起こしてしまう、
というような結果になりがちなのです。

これが過剰診療の弊害です。

ただ、理想はそうでもアメリカにおいてさえ、
現実はもっと多くのHbA1cの検査が、
一般診療においては行われているようです。

今回の健康保険のデータを解析した結果によれば、
アメリカの18歳以上の2型糖尿病で、
2年以内の2回のHbA1cの数値が、
7.0%未満という安定したコントロールで、
インスリンは使用しておらず、
重篤な低血糖や高血糖の既往がなく、
妊娠もしていないという条件の、
31545名の患者さんの集計において、
55%の患者さんは年間3から4回はHbA1cの測定を行なっており、
6%の患者さんは5回以上の測定を行なっていました。

つまり、アメリカの一般診療においても、
年間3回以上のHbA1cの測定を、
6割以上の患者さんが受けているのが実際のようです。

上記論文では更に、
頻回のHbA1cの測定が、
薬剤の増量や追加に繋がり易い、
と言うデータを出していますが、
そのことが過剰診療として、
患者さんの状態に影響を与えているかどうかは、
今回のデータからは明らかではありません。

日本においては、
その場で検査結果が得られるHbA1cの測定器が、
クリニックレベルでも結構普及していて、
そうしたクリニックを受診される患者さんは、
毎月測定をされていることも、
多いのではないかと思います。
大きな病院においては、
安定した状態の糖尿病の患者さんは、
2から3か月に一度の診察が通例で、
その都度HbA1Cは測定されることが多いと思います。
健康保険の診療では、
毎月1回の測定はいけないとは書かれていないのですが、
実際には2から3か月に一度でないと、
コメントなしでは査定されることが多いようです。

そんな訳で、
定期的に受診されている患者さんでは、
何となく3か月に一度くらいの検査が、
スタンダードではないかと思いますし、
それが必ずしも悪いとは言い切れないと思うのですが、
問題はどのような状態の患者さんにおいて、
どのくらいの間隔でこの検査を行なうことが、
真に患者さんにとってのメリットが大きいのか、
そうした点についての、
科学的な検証にあるのではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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