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ビタミンDの高用量月1回使用の骨折予防への効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ビタミンDの転倒予防効果.jpg
今月のJAMA Intern Med誌にウェブ掲載された、
ビタミンDの補充療法の骨折や転倒予防効果を検証した論文です。

この問題については、
これまでにも何度も取り上げています。

ビタミンDはカルシウムの吸収を促し、
骨の形成に重要な働きをしているビタミンで、
性質としてはステロイドホルモンの一種です。

従って、血液のビタミンD濃度の低下は、
骨折や骨粗鬆症のリスクになります。
また、データのレベルはそれほど高いものではありませんが、
筋肉量と筋肉の維持にも、
ビタミンDが不足しないことが必要だ、
ということを示唆する報告もあります。

血液のビタミンD濃度が低いと、
総死亡のリスクが1.5倍程度増加する、
という2014年のBMJ誌のメタ解析の論文があります。
心疾患や脳卒中による死亡リスクも増加させ、
癌の既往のある患者さんの死亡リスクも増加させています。

従って、こうしたデータからは、
ビタミンDの不足を予防することにより、
骨折や骨粗鬆症の予防のみならず、
心臓病や脳卒中、癌の予防や予後改善に結び付くのでは、
という可能性が示唆されます。
それが本当であるなら、
まさに万能サプリメントです。

しかし、
ビタミンDをサプリメントとして使用した試みでは、
今のところあまりポジティブでクリアな結果は出ていません。

2012年にNew England…誌に載ったメタ解析の論文では、
トータルにはビタミンDの骨折予防効果は認められず、
使用量が1日800IU(単位)という、
比較的高用量を使用した場合のみで、
大腿骨頸部骨折のリスクを、
3割程度低下させる、
という結果が得られました。
これは主に施設入所の高齢者のデータです。
その骨折予防効果は、
血液中の25水酸化ビタミンDの濃度が、
60nmol/lを超えないと成り立たない、
というデータも同時に得られています。

一方で心臓病や脳卒中の予防効果を検証したメタ解析の論文では、
その予防効果は血液の25水酸化ビタミンDの濃度が、
60を超えない範囲でのみ成り立ち、
それを超えると逆にそのリスクを高める可能性がある、
という結果になっています。

つまり、
この2つのメタ解析のデータを一緒にして考えると、
骨折予防のためには、
高用量のビタミンDが必要であるけれど、
心臓病や脳卒中、癌の予後改善のためには、
むしろそれは良くない可能性があるという、
一見矛盾するような結論が得られるのです。

そして、有用であるとされる骨折や転倒予防についても、
かなり限定的にしか、
その効果は確認されていません。

今回のデータは骨粗鬆症や骨折と比較すると、
あまり検証がされていない転倒予防効果が、
ビタミンDのサプリメントにあるかどうかを検証したもので、
比較的大量のビタミンDを、
月に1回使用する、というやや特殊な方法が取られています。

スイスにおいて、
70歳以上で最近転倒の既往のある、
一般住民200名を登録し、
ビタミンD濃度を測定した上で、
本人にも試験の実施者にも分からないように、
くじ引きで3つのグループに分けます。

1つ目のグループは、
1か月に一度24000IUのビタミンD3を内服、
2つ目のグループは、
1か月に一度60000IUのビタミンD3を内服、
3つ目のグループは、
1か月に一度24000IUのビタミンD3に加えて、
肝臓で水酸化されたビタミンD3であるカルシフェディオールを、
300μg併用します。

これは意味合いとしては、
第1グループは毎日800IUを摂取し続けているのと、
ほぼ同じという考えで、
通常のサプリメントと同程度の量と、
その2倍以上の高用量、
そして強さとしてはビタミンD3の2から3倍に相当する、
水酸化ビタミンD3を更に上乗せしたグループでの比較なのです。

こうした処方を1年間継続し、
半年後と1年後に、
足の運動機能と転倒した頻度、
そして血液のビタミンD(25水酸化ビタミンD)の濃度を、
3群で比較検討しています。

トータルでの平均年齢は78歳で、67%が女性。
登録の時点で全体の58%の対象者は、
血液の25水酸化ビタミンD濃度が、
欠乏レベルとされる20ng/ml未満であったと記載されています。
(単位がゴチャゴチャしていてややこしいのですが、
1ng/mlがほぼ2.5mmol/Lに相当しています)

治療により、
水酸化ビタミンD濃度は上昇し、
そのレベルはカルシフェディオール併用群で最も高く、
次が高用量ビタミンD3群、
そして最も低いのが低用量のビタミンD3群でしたが、
低用量のビタミンD3群でも、
1年後まで平均で30ng/mlのレベルは維持していました。

しかし、下肢の運動機能には、
3つの群で有意な差は認められず、
転倒リスクに至っては、
高用量ビタミンD3とカルシフェディオール併用群が、
低用量ビタミンD3群より、
有意に高いという、
予想とは逆の結果になっていました。

この試験の低用量のビタミンD3でも、
これまでのサプリメントの試験では、
むしろ高用量と言える水準です。
この結果は要するに、
それを超えるような補充を行なっても、
高齢者の転倒リスクという点においては、
メリットはほぼないと考えて良い、
という結論になっているのです。

カルシウムでも同様のデータがありましたが、
どうやらビタミンDに関しても、
欠乏を補うようなレベルを超えて補充を行なっても、
トータルに健康へのメリットは、
あまり生じないと考えた方が良さそうです。

ただ、この問題ではいつも思うことですが、
日本で医療用として頻用されている活性型ビタミンDが、
海外の試験では殆ど用いられていないので、
たとえばこうした試験を、
活性型ビタミンDで行えば、
また別個の結果に至る可能性もある、
と想定されるのですが、
まともな大規模臨床試験が、
日本では実際には行われていないので、
この問題が解決されることは、
少なくとも近い将来には起こらないように思うのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 2

モカ

石原先生こんにちは。
いつも論文ありがとうございます。

3ヶ月ほど前に足首を骨折ました(涙)
今回の調査では骨密度は測っていないのでしょうか?
by モカ (2016-01-07 12:38) 

midori

遅ればせながら
新年あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

アレルギーなので普段気を付けているのですが、
昨日、うっかりしてマカダミアナッツ入りのお菓子を食べてしまい、
たちまち咽喉や胃腸の具合が悪くなり
残業を切り上げて帰りましたが、
今日もおなかの調子が良くありません。

一度、きちんとアレルギーの検査をしなければと
思っていたので、今週土曜日に伺おうかなと思っています。
(先生のご診察は午後ですか?)

調子が良かったら(品川まで出かけられる元気があれば)
伺いますので、よろしくお願いいたします。
by midori (2016-01-07 15:28) 

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