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ヘリウムガスの吸入による空気塞栓症について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ヘリウムガス吸入による空気塞栓症.jpg
1996年のAnnals of Emergency Medicine誌に掲載された、
ヘリウムガスの吸引により、
空気塞栓症を呈した初めての症例報告です。

先日バラエティ番組の収録で、
声を変える目的で吸引したヘリウムガスにより、
12歳の少女が脳の空気塞栓症を来し、
意識不明の重体で病院に運ばれた、
という報道がありました。

吸引したボンベというのは、
バラエティグッズとして販売されているもので、
ヘリウム80%、酸素20%の混合ガスが、
0.94MPa(メガパスカル)の充満圧で充填されていました。

何処にでも売っている、
この遊具のような商品を吸入しただけで、
どうして意識不明になるような脳卒中の症状が、
少女に起こったのでしょうか?

空気塞栓症というのは、
やや紛らわしい病名ですが、
英語ではgas embolismですから、
ヘリウムを含むボンベ内のガスが、
塊となって脳の血管に詰まった、
と言うことを意味しています。

口から高圧でヘリウムのような気体を吸い込むと、
それは肺でガス交換をする袋である、
肺胞に圧力を掛けます。
そこで実験的には60から80mmHgの圧力が掛かるだけで、
肺胞の一部が裂け、
その破れ目から気体が肺静脈という血管に、
入り込む可能性があることが証明されています。
(気圧性外傷という意味合いです)

肺静脈は心臓に繋がり、
そこから全身に血液が大動脈を介して運ばれます。
そのために、
肺胞の破れ目を介して肺静脈に侵入したヘリウムガスの塊は、
心臓から頸動脈を経て、
脳内の血管に至り、
そこで血管を詰まらせることによって、
一種の脳卒中である、
脳空気塞栓症を来したのです。

ヘリウムは水には比較的溶け易い物質です。
それで血管内に入ったヘリウムガスが、
何故すぐに血液に溶けなかったのか、
と言う点がもう1つの疑問になります。

これについては理屈と実際とに違いがあります。
ヘリウムガスは水に溶け易いので、
空気塞栓症のリスクが少ないとして、
カテーテル治療に使用するバルーンを膨らませる気体として、
以前は使用されたのですが、
患者さんの体内でバルーンが破裂して、
血管に空気塞栓症を起こす事例が複数報告されました。
それで犬などで動物実験を行なったところ、
実際には炭酸ガスよりも空気塞栓を来し易い、
と言う事実が明らかになったのです。

つまり、意外にこのような形で侵入したヘリウム主体のガスは、
塊のまま血管を移動して、
血管を閉塞させるリスクがあるようです。

上記の症例報告では、
風船を膨らませるのに使用する高圧のヘリウムのタンクから、
ヘリウムガスを吸い込むことで症状が発症しています。

同様の報告は数例がその後なされているのですが、
いずれもそうしたボンベからの吸入で、
パーティーグッズのような器具からの吸入では、
明確な事例の報告は今まであまりないようです。

しかし、
前述のようにかなり低圧でも、
条件によっては肺胞の破壊は起こり得るので、
今回のような事例があっても、
そう不自然なことではないのです。

おそらく吸入された方の肺活量が小さく、
深吸気で多くのガスを一気に吸い込むなど、
悪条件が幾つか重なったことで、
こうした器具では滅多には起こることはない、
気圧性外傷が誘発されたもののように想定されます。

今回の事例がそうしたメカニズムで生じたものかどうかは、
報道などの内容だけからは何とも言えないのですが、
そうした現象が起こり得ることは念頭に置き、
そのリスクには留意する必要があるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 2

bpd1teikichi_satoh

Dr.Ishihara然し驚きましたね、ヘリウムは深海に潜水する際
窒素酔いを防止する為に、窒素の代わりに入れる事は良く知られていますし、ヘリウムに拠って奇妙に声が変わり、玩具に成っている事は知っていましたが、其れによって事故が起こるとは・・・・ヘリウム
は不活性気体だから安全と言う論理が成り立たない場合が有るのですね!
by bpd1teikichi_satoh (2015-03-19 17:34) 

fujiki

bpd1teikichi_satoh さんへ
コメントありがとうございます。
理屈と実際に起こることとが、
意外に違う、ということが結構あるようです。
by fujiki (2015-03-20 08:02) 

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