So-net無料ブログ作成

コレステロールと免疫との関連性について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
コレステロールと免疫との関連.jpg
今年のScience誌に掲載された、
コレステロールと免疫との意外な関連についての論文です。

コレステロールと免疫に、
関連性のあることは、
これまでの多くの知見から明らかですが、
そのメカニズムについては、
殆ど分かっていません。

たとえば、
コレステロールの前駆物質であるメバロン酸から、
コレステロールが生成される時に必要な酵素である、
メバロン酸キナーゼが欠損している、
メバロン酸キナーゼ欠損症という先天性の病気では、
身体が非常に感染症に弱くなり、
炎症が治らなくなる、
一種の免疫不全の症状を呈することが知られています。

このことはつまり、
コレステロールの代謝と免疫との間に、
一定の関係のあることを示しています。

しかし、その詳細は現時点では不明です。

高コレステロール血症の治療薬のスタチンには、
コレステロールを低下させるだけでなく、
歯肉炎などの慢性の炎症を鎮静化させ、
インフルエンザなどの感染症の予後も改善する効果がある、
という複数の報告があります。
これはただ、精度の高い臨床試験では、
証明はされていませんが、
コレステロール代謝と免疫との関連性を示唆するデータではあります。

それでは、
一体コレステロールと免疫との間には、
どのような関連性があるのでしょうか?

コレステロールが、
コレステロール25水酸化酵素により代謝されると、
25水酸化コレステロールという代謝産物が産生されます。

興味深いことに、
この反応を仲介するコレステロール25水酸化酵素は、
コレステロールの生合成を行なう肝臓にはなく、
マクロファージなどの免疫細胞に強く発現しています。

上記文献の著者らは、
この酵素が免疫系に及ぼす影響を検証する目的で、
この酵素の遺伝子の欠損したネズミを用いて、
多くの実験を行なっています。

そして、次のような関係を明らかにしています。

こちらをご覧下さい。
コレステロールと免疫との関連の図.jpg
これは上記文献を解説した、
今月のthe New England Journal of Medicine誌の、
解説記事にある図です。

左側はコレステロールの代謝経路を示していて、
右の図がマクロファージにおける、
コレステロールの代謝産物と、
免疫との関連を示しています。

身体にウイルスが侵入すると、
1型のインターフェロンが産生されます。
この1型インターフェロンは、
強力な抗ウイルス作用を持つと共に、
マクロファージなどの免疫細胞に結合して、
細胞内のコレステロール25水酸化酵素を誘導します。

この酵素の働きにより、
細胞内でコレステロールが代謝され、
25水酸化コレステロールが産生されると、
それがインターロイキン1βの産生をブロックします。

インターロイキン1βは炎症性のサイトカインで、
細菌の細胞膜の成分である、
リポ多糖によってもその産生が刺激され、
強力に炎症を起こしますが、
それが過剰に分泌されると、
サイトカインストームと呼ばれるような、
感染症の重症化に結び付いたり、
自己免疫疾患の原因となったりもします。

それを、
1型インターフェロンが、
コレステロールの代謝を介して、
抑える働きをしているのです。

1型インターフェロンには、
過剰な免疫反応を抑える働きがあるとされ、
自己免疫疾患などの治療に用いられているのですが、
今回の知見が事実であるとすると、
そのメカニズムは、
コレステロールの代謝産物である、
25水酸化コレステロールを介したものである、
という可能性がある訳です。

ここで問題となるのは、
それでは高コレステロールの治療薬であるスタチンで、
コレステロールを低下させることは、
身体の免疫にとって、
どのような影響を与えるのだろうか、
ということです。

シンプルに考えると、
コレステロールが多いほど、
その代謝産物である25水酸化コレステロールも多くなるので、
コレステロールの産生を抑えることは、
免疫の過剰な反応に繋がってしまいそうです。

しかし、一方でスタチンに抗炎症作用や、
過剰な免疫を抑制するよう効果もあることも、
動物実験を含めて多くの知見があります。

また、コレステロール25水酸化酵素の遺伝子が欠損したネズミでも、
免疫系には大きな影響はありながら、
コレステロールが高くなるような影響は、
殆ど見られていません。

更にはメバロン酸キナーゼ欠損症の治療にも、
スタチンが使用されて一定の効果があった、
と言う報告もあります。

つまり、スタチンの使用により、
免疫系にどのような影響が及ぶのかについては、
まだ錯綜した知見があって、
一定の結論に至ってはいないのです。

いずれ今回の知見の延長線上で、
スタチンの免疫細胞に対する影響も検証されると思うので、
今後の研究の結果に、
注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。

健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣

健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣

  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2014/05/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)





nice!(35)  コメント(4)  トラックバック(0) 

nice! 35

コメント 4

bpd1teikichi_satoh

Dr.Ishihara何時もとても興味深い記事、誠に有難う御座います。
コレステロール代謝と免疫についての知見教えて頂き有難う御座います。
妻も長くエゼチニブ(小腸コレステロールトランスポーター阻害薬)
の一つロスバスタチンカルスウム(商品名:クレストール)5mg/day
を使っていますが、此の薬と免疫系との関連性は如何でしょうか?
by bpd1teikichi_satoh (2014-11-17 09:41) 

fujiki

bpd1teikichi_satohさんへ
エゼチニブ(ゼチーア)は、
コレステロールの吸収を抑えるだけなので、
影響は殆どないと思います。
ロスバスタチンはスタチンですので、
影響は想定されるのですが、
現時点で良いとも悪いとも明確には言えません。
by fujiki (2014-11-18 08:05) 

武田

25HCではなく27HCは炎症を促進するという研究がありました。
http://www.cell.com/cell-metabolism/abstract/S1550-4131(14)00221-6
>The Cholesterol Metabolite 27-Hydroxycholesterol Promotes Atherosclerosis via Proinflammatory Processes Mediated by Estrogen Receptor Alpha

1つの分子だけで免疫全体を語るのは無理があるでしょう。
by 武田 (2014-11-18 22:48) 

fujiki

武田さんへ
コメントありがとうございます。
25と27とでバランスを取っているとすると、
それはそれで理屈は通るという気もします。
ただ、25についても、
ここでは触れませんでしたが、
相反するデータもあるようです。
ご指摘のように、
免疫は複雑ですね。
by fujiki (2014-11-19 06:25) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0