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川崎病を運ぶ風の話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
川崎病と中国からの風の関係.jpg
今月のPNAS(米科学アカデミー紀要)誌の電子版に掲載された、
川崎病という乳幼児に多い病気と、
中国北東部から日本へ向かう風との関連を分析した論文です。

トップネームはスペインの研究者で、
アメリカ及び、日本の自治医科大学と、
国立環境研究所(筑波)の研究者も名前を連ねています。

一部メディアなどでも報道されました。

川崎病というのは、
1967年に川崎富作博士によって初めて報告されたことで、
この名前があります。

1歳前後をピークにほぼ5歳未満で発症し、
インフルエンザのような急な高熱が持続して、
目が充血し、手足の先や舌が赤く脹れ、
全身に湿疹が出て、首のリンパ腺が脹れます。
BCG接種後のお子さんでは、
その痕が赤く脹れるのも特徴です。

最初はインフルエンザや湿疹を伴う感染症と、
見分けることは難しいのですが、
数日で他の疾患とは経過の違うことが明らかになると、
この病気が疑われます。

その病態の特徴は全身の血管の炎症で、
特に心臓を栄養する冠動脈という血管に炎症と起こると、
冠動脈瘤という血管のこぶを作る合併症が、
一番の問題となり、
入院の上アスピリンと免疫グロブリンによる治療が行なわれます。

経過は一部を除いて良好です。

さて、この川崎病の原因は今に至るまで不明です。

病状の経過は感染症を疑わせるのですが、
原因となるウイルスや細菌などは見付かっていません。
集団感染を疑わせるような事例はないのですが、
兄弟での発症事例などは報告されています。
また、地域的、時間的な流行のあることは明確で、
ある地域で流行した後で、
また別の地域で流行る、というようなことがあります。
ある年には非常に多い、
というようなこともあります。
何らかの環境要因や病因がなければ、
このような現象は説明が付きません。

この病気は日本に多く、
「流行」と言っておかしくはない形態を取りますが、
海外でも発症しているものの、
日本のような流行はしていません。
そこで何らかの体質的な関与があると考えられ、
発症し易さに関わる遺伝子の解析などが行なわれています。
この面では知見が少しずつ得られていて、
全てではありませんが、
遺伝的な素因で説明可能な部分があります。
幾つかの遺伝子のタイプも報告されています。

しかし、基本的には遺伝病ではありませんから、
別個の環境要因や病原体などの関与が
あることもまた間違いがありません。

しかし、それは一体何なのでしょうか?

上記の文献の研究者らは、
2011年に今回の知見の元になる論文を発表しています。
それがこちらです。
川崎病2011年論文.jpg
2011年のScientific Reports 誌に発表された文献です。
これは川崎病の日本における3度の流行後に、
アメリカのサンディエゴとハワイで、
小規模な流行が起こっていて、
それは中央アジアで発生して、
東方に移動し、太平洋を横断してアメリカ東海岸に達する気流が、
影響しているのではないか、
というスケールの大きな発想を、
気流の分析と疫学データを照らして解析したユニークなものです。

結論として症例数のピークが、
この気流の分布と強い関連を持っていると分析されています。

これはただ、お分かりのように、
1つの推論に過ぎないものです。

「風邪」という言葉でも分かるように、
昔の人は風に乗って邪悪な物が身体に侵入し、
それが病気を起こすと考えました。

あたかもそれを証明するような知見が、
この原因不明の病気で得られたのです。

しかし、現代の科学はここ止まりでは意味がありません。

仮に気流と疾病との間に関連があるとすると、
気流によって運ばれる何らかの物質や病原体などが、
病気の原因となっている可能性が考えられます。

従って、
次にするべきことは、
その大陸から日本に流れ込む風に含まれる物質の解析です。

今回の文献においては、
中国北東部から日本への気流と日本の流行との関連に絞って、
1970年から2010年の日本の川崎病の研究データと、
気象状況を解析しています。
その上で、飛行機から上空2000から3000メートルの気流のサンプルを採取して、
それに含まれる細菌や真菌の遺伝子を解析し、
それを地表のサンプル比較検討しています。

その結果…

矢張り過去の川崎病の流行時には、
中国からの気流が流行地域に強く吹き込んでいて、
その風の到来から、
概ね6時間から2.5日という非常な短時間で、
川崎病の事例の発症増加が認められています。
ここには明瞭な相関が認められています。

気流に含まれると想定される空気のサンプルの解析においては、
地表のサンプルと比較して、
地表では検出は殆どなかったカンジダの遺伝子が、
真菌の検出事例の54%を占めていました。

要は今回の解析結果においては、
カンジダのみが、
気流のサンプルにおける病原体としては、
特徴的な違いを示していたのです。

今回の結果をどのように考えるべきでしょうか?

カンジダの感染が川崎病の原因だ、
と考えるのは早急に過ぎます。

何より仮に感染であるとすると、
1日も経たないうちに発症が増加する、
という時間経過が説明出来ません。

1つの可能性としては、
カンジダに関わる抗原やその毒素のようなものが、
川崎病に過敏な体質に対して、
ある種の即時的な反応を起こし、
病気の発症に繋がった、ということが考えられます。

実際にネズミでは、
カンジダの抗原に反応して、
その後に血管炎が発症した、
という研究データはあり、
IL6などの炎症性サイトカインの増加が、
その誘因ではないかと考察されています。

ただ、勿論これは可能性の1つに過ぎず、
今回解析された病原体以外に、
たとえば粉塵や化学物質のようなものが、
別個に反応した可能性も否定は出来ません。

ここ数年川崎病は増加していて、
それが中国からの気流に乗る粉塵などのせいだと考えれば、
可能性は他にも色々と想定されます。

今後はより大気の広範な分析が必要だと思いますし、
実際にそうした大気に接触させて、
その反応を見るような検証も必要だと思います。

病気における大気の影響というのは、
実験の難しさもあって、
喘息や塵肺など、
明瞭な因果関係のある疾患は多く存在していながら、
解明が遅れている分野だと思います。

川崎病と言う病気が、
今後は一種の大気汚染による疾病という見方で、
捉え直される時代になるのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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