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人工呼吸の患者さんにおける胃薬の効果について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

昨日よりは調子は上向きですが、
まだ調子の悪さは続いています。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ICUの患者さんでの胃薬の比較.jpg
今年のJAMA Intern Med誌に掲載された、
人工呼吸器を装着している患者さんに対して、
H2ブロッカーとプロトンポンプ阻害剤という、
2種類の胃薬を使用した場合の、
患者さんの予後を検討した論文です。

重症の病気で集中治療室に入り、
人工呼吸器を装着している患者さんにおいて、
高率に発症する合併症の1つが、
胃潰瘍などの消化管出血です。

上記文献にある海外の統計によれば、
患者さんの10から25%にそうした兆候が認められ、
5%で出血が生じるとされています。

こうしたストレスによる消化管出血の予防のために、
胃酸を抑えるような胃薬が使用されます。

古くから使用されていたのが、
ガスターなどのH2ブロッカーというタイプの胃薬で、
最近ではより強力な胃酸の分泌抑制作用を持つ、
オメプラゾールやタケプロンなどの、
プロトンポンプ阻害剤が専ら使用されています。

ただ、胃酸を抑えることは、
胃酸による殺菌作用も同時に抑えることに繋がり、
そのため状態の悪い患者さんでは、
肺炎やクロストリジウム・デフィシル菌という、
抗生物質の使用により増殖する細菌の感染などを、
増加させるというリスクも想定されます。

これまでH2ブロッカーやプロトンポンプ阻害剤による、
胃潰瘍などの予防効果は、
複数の臨床試験で確認はされていて、
概ねH2ブロッカーよりプロトンポンプ阻害剤の方が、
有効性が高い、という結果になっています。

しかし、
その多くは人工呼吸器を装着しているような、
重症の患者さんを対象としたデータではなく、
重症の患者さんでは感染症のリスクもより高いものになるので、
また別個の結果が出る可能性もあります。

そこで今回の研究においては、
アメリカの71の医療施設において、
24時間以上人工呼吸器を装着して治療を受けた、
トータル35000人以上の成人患者さんを対象に、
48時間以上のH2ブロッカーもしくはプロトンポンプ阻害剤の使用と、
人工呼吸器装着後48時間以降の、
消化管出血や肺炎、デフィシル菌による感染の発症リスクを、
比較して検証しています。

最初から患者さんを登録して経過を見るのではなく、
後からデータを分析したタイプの疫学研究です。

その結果…

消化管出血を起こした患者さんは、
H2ブロッカー使用群では2.1%であったのに対して、
プロトンポンプ阻害剤使用群では5.9%、
肺炎では27%に対して38.6%、
デフィシル菌感染症では2.2%に対して3.8%と、
いずれもH2ブロッカーよりプロトンポンプ阻害剤の使用により、
合併症のリスクが増加する、
というびっくりするような結果になりました。

勿論肺炎のリスクやデフィシル菌のリスクが、
プロトンポンプ阻害剤で増加するのは、
酸の抑制が強いため当然とも言えるのですが、
そのリスクの増加よりも、
消化管出血自体の発症がより多かった、
というのが予想外の結果です。

H2ブロッカーを使用する場合と比較して、
相対リスクが2.24倍になるのですから、
これは無視出来ません。

しかし、本当にこうした現象があるのでしょうか?

上記文献ではH2ブロッカーには動物実験において、
粘膜障害後の酸化ストレスを軽減する作用が報告されていて、
そうした点が有効に働いた可能性もある、
というように書かれていますが、
こうした点はまだ推測の域を出ません。

ただ、必ずしも強く胃酸を抑制することが、
消化管出血の予防に結び付くものではない、ということは、
事実である可能性が高く、
今回の知見は敢くまで人工呼吸器装着中の患者さんに限ったものですが、
今後より患者さんの背景も考慮して、
こうした知見の積み重ねが必要だと思いますし、
単純にH2ブロッカーよりプロトンポンプ阻害剤の方が効果の強い薬だ、
というような先入観は捨てるべきなのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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りんご

こんにちは。いつも興味深くブログを拝見しております。今回のブログ記事についてではありませんが、お伺いしたい事があります。
ずいぶん昔のブログ記事になりますが、肺癌が大きくなる速度についてを読ませて頂きました。
私は33歳、喫煙はしておりませんが、肺癌を早期発見するにはどの様に検査をしていけば宜しいのでしょうか。
半年前の胸部CTでは異常はありませんでした。一年に一度の胸部CTをするか、半年に一度レントゲンを撮るか悩みます。
by りんご (2014-04-30 11:36) 

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