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東野圭吾「ガリレオシリーズ」 [ミステリー]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は祝日で診療所は休診です。
明日からは通常通りの診療です。

休みの日は趣味の話題です。

東野圭吾さんの名探偵ガリレオシリーズは、
これまでに3作の長編と、
5冊の中短編集が刊行されています。

東野さんのシリーズ物としては、
最も成功していると思いますし、
ほぼ全ての作品が、
福山雅治さんの主演でドラマ化され、
ドラマシリーズも現在放映中です。

今日はその全作品を、
僕なりに俯瞰します。

大きなネタバレはありませんが、
先入観を持たないでお読みになりたい方は、
まず原作をお読みの上下記をお読み下さい。

最初に僕の好みで言うと、
長編の「容疑者Xの献身」と「聖女の救済」、
「真夏の方程式」の3作品は、
全て読み応えのある力作で、
映像を見る前に原作を読むことを、
是非お薦めします。

最初に映画やドラマを見ると、
その興味は半減しますし、
絶対に後悔します。

ただ、
個人的には有名な「容疑者Xの献身」より、
残りの2作品の方が優れていると思います。

中短編は長編に比較すると質は落ち、
またその出来にはかなりの差があります。

その中では、
第3中短編集の「ガリレオの苦悩」に収められた、
「操縦る」と、
第4集の「偽装う」が、
優れていると思います。
この2編はドラマより先に読むことを、
これも是非お薦めします。

それでは最初からシリーズを追います。

①「探偵ガリレオ」
ガリレオ1.jpg
これはシリーズの処女作品集で、
同じ雑誌に掲載された、
5編の短編が収められています。
科学技術を使用した犯罪や、
超常現象のように見える事件を、
科学的に解決する、
というような体裁のものです。

湯川学という、
大学の物理学の助教授(後の記載は准教授)が探偵役で、
知り合いの刑事からの依頼で、
事件の捜査にアドバイスをするのです。

ストーリーはシンプルで、
いずれの作品もそれほどの捻りはありません。

一番の問題は、
森博嗣さんの自分を探偵役に見立てた、
ナルシスティックなシリーズに、
設定が非常に良く似ていることで、
この1作目を読んだ印象としては、
パクリのようにすら思えます。

僕はあまり乗れませんでした。

②「予知夢」
ガリレオ2.jpg
これは第2中短編集で、
4つの作品が収められていますが、
より超常現象を科学的に解明する、
という観点が重視されていて、
1作目の「怪奇大作戦」的なイメージは後退しています。

正直ミステリーとしての快感には乏しく、
森博嗣ミステリーの焼き直し的な感じもそのままです。

これも僕はあまり乗れませんでした。

③「容疑者Xの献身」
ガリレオ3.jpg
ガリレオシリーズ最初の長編で、
言わずと知れた直木賞受賞作です。

正直ここまで評価される作品かな、
という気はします。

良く出来たミステリーで、
湯川学のキャラも、
東野さんの独自なものになっています。

ただ、超自然現象が起こる訳でもなく、
科学的なトリックが使われている訳でもありませんから、
湯川学シリーズとしては、
事件の性質に違和感がないではありません。

最後は読者の情緒を煽るような場面が展開されますが、
無理矢理に最後に
「感動」を持って来たような感じがあります。

「鳥人計画」や「ブルータスの心臓」などの、
非常に屈折した東野ミステリーのラストに、
急に「秘密」や「手紙」の感動が待っていた、
というようなギクシャクした印象があるのです。

④「ガリレオの苦悩」
ガリレオ4.jpg
これはガリレオシリーズの、
3つ目の中短編集で、
バラエティに富んだ、
五つの作品が収められています。

これは僕の見解としては、
このシリーズの最も優れた中短編集で、
このシリーズに東野さんも本腰が入って来たな、
という感じを受けました。

どの作品も一筋縄ではいきませんし、
それぞれに新しさが付加されています。

個人的には「操縦る(あやつる)」が最も僕好みで、
優れた作品だと思います。

これは科学技術を利用した、
ユニークなトリックがあり、
意外に奥の深い心理の謎が後に残り、
最後にはちょっとした感動まで待っています。
特に感心するのは、
オープニングに登場する、
明らかにストーリーには関連しないと思われる人物群が、
最後になってしっかりと、
重要な役割を果たすようになる構成の妙で、
「容疑者Xの献身」でやろうとしたことが、
より純化されているような印象を持ちます。

ラストの「攪乱す(みだす)」は、
もろに江戸川乱歩的な通俗ミステリー世界で、
それほど東野さんに合っているようには思えませんが、
こんなのも出来るんだよ、
というような稚気のようなものを感じました。

⑤「聖女の救済」
ガリレオ5.jpg
「ガリレオの苦悩」と同時期に連載された、
ガリレオシリーズの第2長編です。

これは如何にも東野ミステリーという、
見事な作品です。
間違いなく「容疑者Xの献身」より優れています。

たった1つの毒殺トリックで、
全編を支えるという力技が鮮やかで、
犯人の造形とその心理の綾が、
際めて印象的に描かれ、
単純な情緒や感動ではない、
より深い余韻が読後に残ります。

そして、
如何にも東野ミステリーという、
屈折した一筋縄ではいかない感じも、
ちゃんと残っているのです。

今回のドラマで映像化されるようですが、
これは絶対原作より良くなるとは思えないので、
原作を先に読むことを、
心からお薦めします。

⑥「真夏の方程式」
真夏の方程式.jpg
2010年に雑誌に連載された、
ガリレオシリーズの第3長編です。

一種の避暑地もので、
仕事ではありますが避暑地を訪れた湯川博士が、
その場所で事件に遭遇し、
東京の刑事とも連携を取りながら、
事件の解決に当たります。

関係者の少年との交流もあり、
海からの風の匂いが漂って来そうな、
抒情的な感じと追憶の切なさは、
クックのミステリーにも似た味わいですし
(たとえば「夏草の記憶」や「闇をつかむ男」)、
中段までの展開は、
松本清張さんのミステリーにも似ていますが
(たとえば「砂の器」や「市長死す」)、
清張さんの作品の多くより、
遥かに緻密に構成されています。

事件の謎自体は簡単に解明されたように思えて、
その後に「ヒロインが何故それほどに海を愛するのか?」
というような心理の謎に移行する辺りが、
ワクワクするような感じがありますし、
最後のカタルシスは、
やや人間模様を複雑化し過ぎたきらいはありますが、
東野作品全ての中でも、
圧巻の部類です。

この作品は「容疑者Xの献身」を、
より深化させたところに成立していて、
読み比べると「容疑者Xの献身」の見方が変わる、
という面白さもあります。

お薦めです。

⑦「虚像の道化師」
ガリレオ7.jpg
ドラマ化を当て込んだようにして刊行された、
ガリレオシリーズの4作目の中短編集です。

4編が収録されていますが、
かなり作品の出来には凹凸があります。

中では「偽装う(よそおう)」が、
ミステリーとして緻密に出来ています。
叙述も繊細で引っ掛かりますし、
関係者が閉じ込められる理由も、
巧緻なものです。
ただ、湯川学が解明する事件としては、
そぐわないもののようにも思えます。

一方で「心聴る(きこえる)」は、
叙述には工夫が凝らされているものの、
トリックは余りに無理があります。

⑧「禁断の魔術」
ガリレオ8.jpg
ガリレオシリーズの8作目になる、
書き下ろしの中短編集です。

社会派推理的な内容に傾斜していて、
意外性などのミステリー色は、
これまでの作品中では最も希薄です。

正直これまでの作品のイメージで読むと、
ガッカリしますが、
「真夏の方程式」でも社会派ミステリー的な趣向はありましたし、
東野さんとしては、
そうした読者の反応は織り込み済みで、
また新たな方向へと、
舵を切り始めているのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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