So-net無料ブログ作成

若年性脳梗塞とその特徴について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

脳梗塞は中高年層に多い病気、
というのは一般的な常識ですが、
最近芸能人やそれに類する職業の方で、
30代や40代、中には20代において、
脳梗塞を発症する、
という事例が報道され、
健康上のトピックスの1つになっています。

脳梗塞というのは、
脳の血管の一部に、
何らかの原因で血が流れなくなることにより、
その血管が栄養している脳の領域の、
働きが低下し、
持続すればその領域の脳細胞が死滅する、
という病態のことです。

脳梗塞の原因は多くの場合、
動脈硬化の進行により、
血管が細くなり、
そこが最終的には出血して血の塊が詰まるか、
身体の別の場所に血の塊が出来て、
それが飛んで詰まることが、
原因となります。

この動脈硬化による脳梗塞は、
通常は高齢者に多く、
50歳未満には少ないのが特徴です。

一方で心臓の中に血の塊が出来る原因となる、
心房細動という不整脈は、
高齢者に多いのですが、
若い方にも生じることがあるので、
若年者でもこうした不整脈を持っていれば、
脳梗塞を起こす可能性があります。

さて、
脳梗塞全体からすれば、
その比率は低いのですが、
若年発症の脳梗塞も存在します。

ただ、若年発症の脳梗塞というのは、
まだ明確な定義の存在するものではありません。

15歳以下の発症は、
小児脳梗塞として別箇に考えるのが通例ですが、
若年性脳梗塞の上限の年齢に関しては、
40歳、45歳、50歳など様々な考えがあり、
未だ一定はしていません。

2004年に、
「若年性脳卒中診療の現状に関する共同調査研究」
という研究がまとめられています。

これは日本において、
若年性の脳卒中の傾向を調べたもので、
脳卒中という用語は、
脳梗塞に脳出血などを含む概念です。

この研究においての若年性脳卒中の頻度は、
脳卒中全体のうち、
50歳以下として8.9%、
45歳以下として4.2%、
40歳以下として2.2%となっています。
他の文献においても、
若年性を50歳以下とした場合に、
7.1~12.3%という数値がありますから、
概ね一致する数値になっています。

一方でイタリアでは同様の研究で、
45歳以下とした場合の比率が約1%となっていますから、
かなりの開きがあり、
これが診断や統計の取り方による違いであるのか、
それとも日本ではヨーロッパより数倍若年性脳卒中が多いのか、
というような点については、
まだ未解明の問題のように思います。

高齢者の脳梗塞は、
動脈硬化や高血圧、心房細動という不整脈との関連が強いのですが、
若年性の脳梗塞、特に年齢を40歳以下で考えると、
そうした因子の関連性はかなり低く、
それ以外の原因による脳梗塞が、
その多くを占めていると考えられます。

それでは、
40歳以下で発症する脳梗塞は、
どのようなメカニズムで起こるのでしょうか?

最も多く指摘されるのが、
脳動脈解離やもやもや病、
抗リン脂質抗体症候群など、
血管が体質的に詰まり易いことにより起こる脳梗塞です。

脳動脈解離というのは、
脳に繋がる動脈や脳の中を走る動脈の、
内膜という内側の部分が部分的に剥がれることで、
そこに血の塊が出来て血管が詰まったり、
出血したりすることによって、
脳梗塞や脳出血が起こります。

この現象は勿論高齢者にも起こりますが、
比率から言うと若年性の脳卒中に多いのです。

何故脳の血管の膜が裂けるのでしょうか?

幾つかの理由が想定されています。

まず、血管が生まれつき脆い場合で、
これは血管の膜を構成する繊維などの異常として、
幾つかの病気が知られています。

もう1つの原因は外傷で、
首に強い衝撃を受けたりすることにより起こるのです。

全ての脳動脈解離には、
その「裂ける」瞬間があり、
それは物理的なものです。

しかし、
通常ではそうしたことが起こるとは思えない、
ただ首を横にひねっただけで起こるような解離があり、
それは生まれつき裂け易い要因が、
血管側に存在するのだろう、
というように考える訳です。

2004年の前述の資料によれば、
若年性の脳梗塞のうち動脈硬化等との関連性が低いものでは、
最も多い原因がこの脳動脈解離とされています。

この脳動脈解離の特徴は、
まず解離の時点では痛みがあり、
その後に麻痺などの脳梗塞の症状や、
クモ膜下出血による激しい頭痛などが、
遅れて出現する、
ということです。

日本人の場合、
解離は椎骨脳底動脈と呼ばれる部位に多く、
そのため痛みは首の後ろ側や頭の後ろ側に起こることが多い、
とされています。

首に負荷が掛かるような運動をした時や、
首をひねった時に、
後頭部に一時的な強い痛みがあり、
それから数時間から数日後に、
脳梗塞やクモ膜下出血を疑わせるような症状が出現した場合には、
この脳動脈解離による脳卒中を疑います。

もやもや病も先天的な素因のある病気で、
脳の血管の一部が狭いままに成長し、
そのため血流を維持するために、
細い血管が沢山出来ます。
これがもやもや血管です。

この血管は充分な強度や伸展性がなく、
そのため血流が遮断されたり、
そこに出血が起こると、
脳梗塞やクモ膜下出血の原因になります。

この病気の初期には、
強く息を吹いたりした時に、
意識が遠のいたり、
手足の麻痺のような症状が、
一時的に出現することが特徴的な症状とされています。

今流行りのロングブレスダイエットのように、
強く長く息を吐くと、
めまいがするような気分になるのは、
一時的に脳に行く血液の量が減るからです。

この時に、
正常な人であれば、
脳の血管の太さを変えて、
血流量の調整をするのですが、
もやもや血管にはそうした働きが弱いので、
血流が一時的にゼロになり、
それだけで脳梗塞のような症状が出現するのです。

同じような病態に片頭痛があります。

片頭痛というのは、
脳の一時的な興奮による症状ですが、
この時前兆の時期には、
一時的に脳の血管が痙攣様に収縮します。
(これを攣縮と言いますね)

片頭痛の時に、
一時的に視野が狭くなったり、
手足が動かなくなることがありますが、
これはその攣縮の影響により、
一時的に脳の血流が途絶したことによる症状なのです。

この影響がもやもや病など、
何らかの要因で長引けば、
脳梗塞に移行する可能性もあります。

日本での統計はあまりまとまったものがありませんが、
欧米では若年の特に女性において、
片頭痛は脳梗塞の大きなリスクの1つと考えられています。

この片頭痛に伴う脳梗塞は、
高齢者にはあまりなく、
若年者に多いのが特徴で、
マラソンなどのゴール直後に、
心臓の血管の攣縮による突然死の事例が、
若年者で多く認められる点と合わせて考えると、
血管の痙攣様の収縮というのは、
血管の一種の過剰反応で、
反応性の低下した高齢者より、
むしろ若年者において、
梗塞のようなリスクに結び付き易いのかも知れません。

抗リン脂質抗体症候群というのは、
血栓を生じ易い体質を持つ、
自己免疫疾患の一種で、
習慣流産などの原因ともなる病気です。

このように、
若年層、特に40歳未満で起こる脳梗塞は、
高齢者のそれとは別個の原因で起こることが多く、
そのため治療にも別個の注意が必要です。

脳梗塞はその発症後すぐに、
血栓を溶かすような薬を使えば、
後遺症なく治る可能性が高い、
というような話はテレビなのでもよくされています。

これは一般論としては事実ですが、
たとえばもやもや病や脳動脈解離による脳梗塞の場合には、
血管は脆く非常に出血し易い状態になっているので、
使用したために却って出血を併発して、
病状が悪化する可能性もあります。

従って、
迅速にその診断を確定し、
血栓溶解剤の適応を、
より慎重に検討する必要があるのです。

それでは、
若年性脳梗塞は、
最近増えているのでしょうか?
それともそうではないのでしょうか?

この点については、
明確な結論はまだ出ていないように思います。

これは個人的な見解で、
根拠のあるものではありませんが、
仮に増加しているとすれば、
生活環境や栄養のバランスなどの要因により、
血管の脆弱性が増すようなことがあるのか、
ストレス耐性の低下などと同じように、
血管の敏感さも亢進していて、
高度の攣縮が起り易くかつ持続し易くなっているのか、
いずれかの原因が、
想定し易いように思います。

今日は若年性脳梗塞の総説でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(33)  コメント(3)  トラックバック(0) 

nice! 33

コメント 3

モカ

石原先生

こんにちは。

>首を横にひねっただけで起こるような解離があり

最近ネット上で「首をポキポキすると脳梗塞の原因になる」という記事をよく見ます。

http://matome.naver.jp/odai/2134058745310548501

気をつけたいです。
by モカ (2013-01-31 11:32) 

fujiki

モカさんへ
これは要するに、
脳動脈解離のことだと思います。
ただ、誰でもそうしたことが起こるのではなく、
血管内膜の脆弱性など、
体質的な因子の関与が大きいものと考えられます。
by fujiki (2013-02-01 08:20) 

たけ

こんばんは。先生、ひとつ質問させて下さい。
私は只今46歳、多分子供の頃から片頭痛もちで、今も時々出ます。閃輝暗点?でしたっけ?あのチカチカした光が出現しますし嘔吐や片目の瞼が動きにくくなったりします。あと完全慢性化していない心房細動もあります。こちらも症状は結構昔から経験していました。この二つは何らかの関連性があるという説もあるのでしょうか?
どちらにせよ、私は脳梗塞のリスクが大きいことは確かですね。
by たけ (2013-02-02 22:41) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0