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捏造とファンタジーの世界 [科学検証]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日は時事ネタめいた話です。

以下の記載は現時点までの報道と、
当該の研究者のこれまでの論文などからの推測です。
ほぼ事実に近いのではないかと、
現時点では考えますが、
誤りがあったり、
この問題の状況に変化の生じた場合や、
個人の尊厳に関わるような場合には、
削除させて頂きますので、
その点はご了承下さい。

特定の個人を誹謗中傷するつもりはありません。
ただ、僕も以前は研究にも関わっていたので、
他人事とは思えない部分もあり、
絶対に許せないと思える事項もありますので、
僕なりに検証をさせて頂きました。

まずこちらをご覧下さい。
捏造教科書.jpg
M先生という東大に一応の籍のある研究者が、
まだ臨床応用が一般にはされていない、
iPS細胞を用いた心筋移植という治療を、
アメリカの医療機関で行なったとする発表を、
アメリカのマイナーな学会で行ない、
それが山中先生のノーベル賞とのタイミングもあって、
読売新聞の一面で大々的に取り上げられ、
非常な注目を集めました。

しかし、
すぐにそれはおかしいのではないか、
という疑義が生じ、
論文の捏造まで疑われる事態になったことは、
多くの皆さんがご存知の通りです。

Nature誌は、
系列のレポートメディアである、
Scientific Reportsに、
今年立て続けに2つのレポートが、
M研究員のトップネームで、
掲載されていることもあって、
これはおかしいとすぐに調査に本腰を入れ、
10月12日に検証記事を掲載しました。

そこで取り上げられている書籍の一部が、
上記の画像になります。

これは万能細胞についての研究成果を纏めた書籍で、
その一部をご覧のように、
M先生が執筆しています。
一緒に名前があるのは、
その時点で籍のあった、
東大の形成外科学教室の、
おそらく上司の先生と、
医科歯科大学の大学院(修士)での指導教官であった、
総合保健看護学の佐藤千史先生、
そしてハーバードの胃腸科のドクター(?)の、
Chung先生です。

ただ、このうち佐藤先生は、
以前の恩師として、
意見を求められただけで、
研究には全く関与されていない、
と表明されていますし、
Chung先生は肝臓の細胞の培養について、
コメントを求められただけだ、
とこの先生も研究そのものへの関与を否定されています。
東大の上司の先生のコメントは、
今のところはないようです。
(別の論文の東大の共著者の先生は、
名前を載せる許可すらしていない、
とコメントをされています)

内容は山中先生が、
もっと複雑な手法を用いて成功させた、
iPS細胞の生成に、
2つの科学物質を使用するだけで、
簡単に成功した、
というビックリするようなもので、
そんなことが本当にあったら大変で、
M先生がノーベル賞に輝く日も近い、
というものですが、
まだ推測で確定ではないとはいうものの、
ほぼ間違いなく研究の実体はなく、
色々な論文や画像を切り張りして、
「ファンタジー」の世界で書かれた論文です。

次にこちらをご覧下さい。
捏造論文のオリジナル.jpg
これは2007年のCell誌に掲載された、
本家の山中先生のグループの論文です。

勿論M先生はファンタジー系の方ですが、
医療統計や論文のまとめ自体はプロなので、
全てを1つの論文から切り張りするようなことは、
していません。

しかし、
部分的には大胆なことをされています。

こちらをご覧下さい。
ウェスタンブロット説明オリジナル.jpg
これはオリジナルの方にある、
ウェスタンブロットという検査法の説明です。

次にこちらをご覧下さい。
ウェスタンブロット説明捏造.jpg
これは上記のM先生の書籍にある、
同じくウェスタンブロットの説明です。

使用した抗体の種類が少し少ないので、
その部分のみが削除されていますが、
それ以外の部分は、
見事に一語一句変わりません。
所謂コピペですね。
これは上記のNature誌の検証記事に、
指摘のあるものです。

ただ、これは一般的な検査法の説明文ですから、
同じ方法で検査をしてはいけない、
というものではないのです。

ただ、全く同じであれば、
○○らの方法により測定した、
のように記載して、
引用文献を付けるのが一般的ですし、
そうでなく書く場合には、
通常は文面は少し変えるのが常識的です。

つまり、
こうしたことをやってはいけない、
ということではないですが、
まともな人はこうしたことはしない、
ということは間違いがありません。

次にこちらをご覧下さい。
捏造版核の免疫染色.jpg
これはM先生の書籍にある画像です。
iPS細胞が生成されたことを、
細胞の免疫染色の画像で、
証明しているのです。
ただ、画像の大きさとそのカッティングのされ方が、
何か不自然な感じがします。
下の説明を見ると、
Bars=100mmと書かれていますが、
そんな大きな細胞はなさそうですし、
第一そのBarが見当たりません。

こちらをご覧下さい。
核の免疫染色オリジナル.jpg
これはオリジナルの同様の画像です。
よく見て頂くと、
画像の右下に、
その大きさを示す線があり、
ここにはお示ししませんが、
説明にはBars are 100μmのように書かれています。

要するに元はこうした画像であったのを、
都合の悪い部分をトリミングして、
何処から盗ったかバレないように加工したのが、
M先生の文献の画像です。
ただ、大きさを示す線を消してしまったので、
訳の分からないことになっています。

この画像そのものが使用された、
ということはなさそうですが、
おそらく同様の何処かの文献から、
当該の画像を取り出して、
トリミングし、
それを自分のものとして、
記載したのだと思います。

次にこちらをご覧下さい。
PCRとWBのオリジナル.jpg
こちらがオリジナルです。
iPS細胞が生成されたかどうかを、
PCRやウェスタンブロットという方法を用いて、
遺伝子の発現で見ているのです。

次にこちらをご覧下さい。
PCRとWBの捏造.jpg
これがM先生の同じ証明の画像で、
断定は出来ませんが、
同じ線を切り張りして作っているな、
ということがほぼ分かる作りになっています。

M先生は2000年代の前半くらいまでは、
肺癌の治療のリスクの解析とか、
C型肝炎の治療法の解析とかをされていて、
しっかりとした医療統計の分野の論文を書かれています。
例の抗癌剤のイレッサのリスクについても、
まとめになるような仕事をされています。

つまり、
臨床のデータを利用して解析をするプロで、
実際の臨床研究や基礎研究に、
直接関わるような仕事は殆どされていないように思えます。
大学院の修士論文は、
健診で見付かった胆嚢ポリープの予後についての解析です。

それが不可思議な感じになるのは、
2009年頃からで、
Hepatologyという雑誌に、
物凄い勢いで投稿を重ねています。

これは論文ではなく、
論壇のページで、
掲載された論文についての、
批評的な意見を述べるものですが、
概ね、
「お前の研究はまあまあだが、
俺は実はもっと凄い研究成果を挙げている」
という内容のもので、
自分のデータを示す表が、
ちょこっと1枚載せられていたり、
画像が1枚載せられていたりしています。

その内容が、
肝移植による肝細胞の組織から、
これまでにない方法で、
iPS細胞を生成した、
というものと、
C型肝炎の治療を開発したというもの、
更には肝臓癌の細胞を、
iPS細胞の手法を用いて、
無害な細胞に変異させることに成功した、
というようなものです。

こうした研究が実際に行なわれた、
ということはおそらくはなく、
これ以降の内容は、
ほぼ100%の「ファンタジー」です。

意味不明の批判をされた先生も、
誌上で反論すれば良さそうなものですが、
まともな反論はせず、
「貴重なご指摘ありがとうございます。
今後より良い研究に向けて邁進するつもりです」
のような差し障りのない回答で、
M先生のデータ自体には、
一切触れない、
という姿勢を取っています。

その後、
M先生の論文に近い体裁のものは、
2011年の最初に挙げた書籍の記述と、
今年のScientific Reports誌の2つのレポートで、
いずれもが、
実体のないファンタジーであることは、
ほぼ間違いのないことだと思います。

現時点での僕の感想としては、
M先生は元々のご性格もあると思いますが、
「ファンタジー」系の方で、
何かのストレスから、
ここ数年は現実からファンタジーの世界に、
完全に入られてしまったのではないかと思います。

勿論やってはならないことが行なわれたのは事実ですが、
実際には患者さんが不利益を蒙る、
というようなことはなく、
誰も被害には遭っていません。
患者さんに手術がされたようなことはないと思いますし、
ファンドからお金など出ていないと思います。

先生が研究者として仕事をされる道は、
今回世界中で完全に断たれたと思いますので、
社会的な制裁は充分に受けており、
ファンタジー系の方をこれ以上追い詰めることは、
正しい道ではないように思います。

先生の身に何かあったら、
誰がどう責任を取るのでしょうか?

勿論多くの税金由来の研究費が、
この先生の元に入っていたことは事実と思いますが、
無駄な研究に税金が使われることは、
現実には山のようにあることですし、
その検証が行われず、
ブランドネームで研究費が認められてしまうような実態が、
本当の問題なのです。
復興費と同じように、
適当な名目で、
同じ研究施設に、
既得権のように税金が流れる仕組みになっているのです。
(最近の報道が事実とすれば、
東大のM先生の名前を含む研究費は、
大きな問題です)

それに、
この先生をこれ以上追い詰めれば、
結局先生の生活費全般を、
税金から支出することになると思います。
要するに同じことです。

今回の責任の多くは、
僕は結果として「名前貸し」をすることになった、
何人かの「肩書きのある」先生にあると思います。

少なくとも発表内容や文献の草稿は、
事前にチェックし、
おかしな点は指摘する責任があったのではないでしょうか?

内容はどう考えてもまともではなく、
研究の実体がないことは、
明らかなのですから、
そこでストップの掛からなかったことが、
一番の問題であるように思います。

少なくとも僕が以前在籍していた教室でも、
教授は文献の内容を見た上でサインをしましたし、
学会発表などの前にも、
必ず皆の前で予行をして、
その内容を教室員で検討しました。
そうしたことがないのは、
どう考えても手抜きで、
その責任は厳密に検証されるべきです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 4

さくら

石原先生、こんばんは。
この話題については関西ローカルの早朝番組で辛坊治郎さんがとても砕いた(砕きすぎかも・・・)わかりやすい解説で説明してくれますので私もいくらか存じ上げておりますが、なにより問題は多額の研究補助費が東大関係だという肩書でこの人に簡単に送られていたことだと思います・・・。
当の山中先生は研究費が足りない為、カンパマラソンに打って出たりして頑張っておられました。山中先生ですらこんな状況ですからきっと他にも補助金を考えてもらってもよい研究があることかと思います。もっと中身を検討して、精査して、補助金が回るような仕組みになったらいいのですが・・・。何とも悔しい現実ですが。
by さくら (2012-10-15 22:56) 

fujiki

さくらさんへ
コメントありがとうございます。
ご指摘の通りで、
杜撰な審査で特定の研究機関に、
ざるのように研究費が流し込まれる仕組みが、
一番の問題と思います。
ただ、これはおそらく左程追求されることなく、
幕引きになるように思います。
当該の施設は、
そうした不祥事のウヤムヤな処理には、
最も長けている場所だと思うからです。
by fujiki (2012-10-16 08:18) 

恵子

先生こんにちは。
いろいろな報道を見ていると、恐ろしさを感じます
こういう可哀相な人間が実在するということ。それに騙されてしまう人がいるということ。
なぜ、すぐにバレるような嘘を平気で言うのかが一番不思議ですし、まったく理解できませんが、
それがファンタジー系ということなのでしょうね
iPSといえばこのM氏の話題、という目下のこの状況が残念です
by 恵子 (2012-10-16 12:14) 

fujiki

恵子さんへ
コメントありがとうございます。
まあでも、このくらいの話題がマスメディアにはフィットしていて、
山中先生が煩わしい思いから解放されれば、
それはそれで良いような気もします。
ただ、吊るし上げは不幸なことになりそうで、
非常に心配です。
by fujiki (2012-10-16 22:17) 

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