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慢性疾患の患者さんへのインフルエンザワクチンの効果について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
新型インフルワクチン作用論文.jpg
先月のBritish Medical Journal誌に掲載された、
2009年の所謂新型インフルエンザワクチンの、
特に優先的な接種対象者となった、
糖尿病など基礎疾患を有する患者さんに対する効果を、
検証した論文です。

国民総背番号制を取り、
医療情報が一元的に集計可能な、
デンマークで行なわれた大規模な研究です。

65歳以下の39万人近い数の慢性疾患の患者さんをピックアップして、
インフルエンザワクチンの接種の有無と、
その接種からの時間毎の新型インフルエンザ罹患率を集計し、
ワクチンの効果を多角的に検証しています。

使用されている新型インフルエンザワクチンは、
グラクソ社のアジュバント添加のワクチンで、
日本でも使用は許可されましたが、
実際には殆ど接種されなかったものです。
ただ、その免疫賦活効果は、
日本で使用された国産ワクチンを、
上回るものと推測されます。

新型インフルエンザの診断は、
全て遺伝子診断によって行われています。
主治医や医療機関からの依頼があれば、
全ての検体で検査が施行されたと書かれていて、
そのコストがどのようにして賄われたのかは記載がないので分かりませんが、
当時の日本の混乱を思い出すと、
本当に羨ましい思いがします。

この研究の一番のポイントは、
ワクチンを接種してどのくらいの期間が経てば、
実際の予防効果が生じるものかを、
あくまで臨床的に検証したところにあります。

よくインフルエンザのワクチン接種に見えた方から訊かれることは、
「ワクチンを打ってからどれくらい経てば、
インフルエンザに罹らなくなるのか?」
ということです。

この質問には、
これまであまり裏付けになる、
信頼の置けるデータが存在しませんでした。

確かに接種してから2~3週間が経つと、
血液の抗体価は上昇します。

従って、おそらくそのくらいの期間が過ぎれば、
ワクチンの効果は臨床的にも期待出来るだろうな、
ということは推測は出来ますが、
それでは多数例でワクチン接種後2週間以内の、
実際の予防効果を検証したデータは、
これまでにあまりなかったのです。

その点今回の論文では、
39万人近い慢性疾患の患者さんを対象として、
ワクチン接種後1週間以内、1~2週の間、そして2週間以降の、
それぞれの期間での新型インフルエンザの感染率と、
その間のインフルエンザによる入院の有無を検証しています。

その結果…

接種後7日以内の期間においては、
新型インフルエンザの罹患率は、
未接種者よりむしろ増加し、
入院する患者さんも増える傾向にあります。
そのリスクは未接種者の2倍以上です。

つまり、これだけを見ると、
ワクチンを打った方が、
打った直後の1週間に関しては、
打たない人より倍以上インフルエンザに感染し易くなる、
ということになります。

接種後1~2週間の間も、
最初の1週間ほどではありませんが、
未接種者よりやや感染し易い傾向は続きます。

そして接種後2週間を過ぎて初めて、
ワクチンを打った人の方が、
感染をし難くなります。
感染リスクはこの時点で49%の低下と計算されます。
ただし、入院のリスクには変化はありませんでした。

これはインフルエンザの診断は、
全て遺伝子診断で行なっているので、
かなり精度の高いデータと考えて良いのです。

こちらをご覧下さい。
新型インフルワクチン作用の表.jpg
ちょっと見辛いと思いますが、
今ご説明の内容をまとめた表になります。

もう1つ興味深いデータがあり、
新型以外の季節性のインフルエンザワクチンを、
接種していた方では、
未接種者に比較して、
新型インフルエンザの感染リスクが、
2.3倍高かったというものです。

新型インフルエンザが猛威を揮っていた時期に、
カナダで同様の知見が話題になったことを、
覚えていらっしゃる方も多いかと思います。

新型ワクチンの接種後1週間以内の時期にも、
予め季節性のワクチンのみを接種した状態でも、
いずれも通常より2倍以上新型インフルエンザに罹り易くなる、
というのは非常に興味深い現象です。

何故そんな現象が起こるのでしょうか?

論文の著者らの推測は、
元々対象者はインフルエンザに罹り易い人達であり、
そのために医療機関にも頻繁に受診し、
少しでも気になる症状があれば、
積極的に検査を希望するので、
そうした行動が、
結果として普通の人よりも、
見掛け上感染が起こり易いというデータに、
繋がったのではないか、
というものです。

確かにそうしたバイアスが、
影響している可能性はあると思います。

ただ、免疫の干渉など、
別個の可能性も否定は出来ないのです。

それでは今日のまとめです。

インフルエンザの感染は慢性疾患の患者さんでは起こり易く、
また一旦起こると重症化し易いという性質があります。
そのために、インフルエンザワクチン接種も、
優先的に行なわれる対象となっているのですが、
ワクチンの効果は実際に感染の防御という観点で見ると、
接種から2週間は時間が掛かり、
その間は感染するリスクが高いので、
より注意が必要と考えられるのです。

今日はインフルエンザワクチンの、
実際的な効果についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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