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マラソンと突然死について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
マラソンの突然死論文.jpg
今月のNew England Journal of Medicine誌に掲載された、
長距離走の最中とその直後に生じた、
心臓の停止とその原因についての文献です。

これはアメリカの急性の心疾患のデータベースから、
2000年の1月から2010年の5月までの、
マラソンとハーフマラソンの大会中の、
心臓停止の事例を調査したものです。
トータルの参加者数はのべ1000万人を超え、
そのうち59例の心臓停止が報告されています。
マラソンの事例が40例で、
ハーフマラソンの事例が19例です。
そのうちの死亡の事例は、
全体の71%に当たる、
42例に上っています。

それではこちらをご覧下さい。
マラソン死亡原因の図.jpg
これは心停止の原因を、
生存者と死亡者とに分けて、
図表にしたものです。

赤い色分けの部分が生存者で、
青い色分けの部分が死亡者です。

HCMというのは、
肥大型心筋症という、
心臓の筋肉の壁が厚くなる病気のことで、
PHCMというのは、
確定ではないけれど、
HCMが疑われる、という意味です。
両者を合わせると、
実に49%がこの病気の可能性が高い、
という結果になっています。
しかも、お1人も助かった方がいません。

肥大型心筋症というのは、
不整脈や虚血による突然死を、
来たし易い病気の代表で、
かつ若年の死亡者の多いのが特徴です。
実際に20代から30代の死亡者が多いのです。

症状が出ないうちに、
確実に診断することは難しいのですが、
半数は遺伝性とされているので、
突然死やこの病気の親族がいないかどうか、
という点がまず重要で、
次に心電図の変化がないかどうかが、
鑑別点になります。
疑いがあれば心臓の超音波検査を行ないます。
ただ、進行しないと診断の付かないケースもあります。

一方で赤い部分で最も大きな括りになっている、
Myocardial ischemia というのは、
所謂狭心症や心筋梗塞のことで、
これは通常は中年以降で、
特にタバコや高血圧、糖尿病や高脂血症など、
動脈硬化のリスクの高い人に多い、
という特徴があります。

マラソン中に心筋梗塞が起こるのは、
細くなっている血管が、
過度の運動によって血液が流れ難くなり、
心臓に酸素が行かなくなって起こる、
という説と、
脆くなっている血管で、
動脈硬化のプラークという不安定な部分が剥がれ、
それが血栓となって詰まるのだ、
という説の2つがあり、
結論は出ていないのですが、
上記の文献の著者の意見は、
主体はプラークの剥離ではなく、
血流の低下ではないか、
というものでした。

実際、
この括りの心停止を起こされた方は、
全例が生存しており、
これは一時的な血流の低下により、
症状の起こった可能性を示唆しています。

一時的な虚血から、
心室細動という不整脈を起こすのですが、
それを電気ショックによりその場で治療すると、
もう運動の負荷が取れた状態なので、
自然と改善に向かうのです。

仮にプラークが詰まったとすれば、
確かにすぐには改善しない筈で、
死亡の事例がもっとあっておかしくはない、
と言う気がします。

しかし、こうした方でも、
その場で電気ショックをしなければ、
亡くなってしまったり、
低酸素で脳に後遺症の残る可能性が高くなるので、
すぐに電気ショックの施せるような体制作りが、
何よりも重要なことなのです。

さて、今回の検討においては、
長距離走における心停止のリスクは、
184000人当たり1人と算出されています。
これは中年層のジョギングの突然死のリスクが、
7620人に1人となっているのと比較すると、
遥かに低い数値です。
(両者ともアメリカの統計です)
これはマラソンに参加するような人は、
それ以前にそれなりの健康管理をして、
練習もしている方が多いからと想定されます。

ただ、常にリスクのあることは事実で、
体調の悪い時には無理に参加せず、
電気ショックの機器(AED)を含む医療体制も、
しっかり確認した上で参加することが、
まずは重要ではないかと思います。

更に20代や30代においても、
突然死はないことではなく、
自分の身体に過信を持つことなく、
体調管理を優先に考えて、
若い皆さんも長距離走に臨んで頂きたいと思います。

今日はマラソン中の突然死についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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恵子

いつもブログを読んでいます。初めてコメントを書きます。
15年くらい前に、高校の行事のマラソンで弟の同級生の子(16歳)が走っている最中に倒れ、死亡しました。きっと、両親にしてみれば
「なぜうちの子が突然・・?高校の指導に問題はなかったのだろうか?」
という釈然としない気持ちでしょう。その子が事前に心臓の病気がないかどうかチェックしていたかは分かりませんが、不意の事故はとても悲しいものですね。
by 恵子 (2012-01-18 04:19) 

fujiki

恵子さんへ
コメントありがごうございます。
HCMに関しては突然死を完全に防ぐことは、
非常に難しい問題だと思います。
マラソンの事前の健康チェックについても、
色々な意見があり、
非常に難しいところです。
by fujiki (2012-01-18 08:14) 

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