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インターロイキン13と喘息のオーダーメイド治療の話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻る予定です。

昨日も3枚書きました。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
インターロイキン13と喘息文献.jpg
アメリカの医学誌New England Journal of Medicine誌の、
今月号に掲載されている、
喘息の新しい治療法についての話です。

喘息はご存知のように、
気道の慢性のアレルギー性の炎症で、
炎症を起こした気道は刺激に対して非常に敏感になり、
すぐに収縮して呼吸が困難になる発作を起こします。
気道の分泌物が増加することも、
発作を重症化する原因となります。

この喘息の治療のために、
通常吸入ステロイド剤が使用されます。
ステロイドは強力な抗炎症作用があり、
好酸球というアレルギーに係る白血球を減少させるので、
喘息のコントロールの基本的な薬と考えられているのです。

吸入ステロイドだけでコントロールの困難な患者さんでは、
それに加えてもっと直接的に気道を拡張させる薬剤や、
アレルギーを抑える薬剤が、
一緒に使用されます。

ただ、こうした治療の効果は100%ではなく、
中には今挙げたような治療を、
全て行なっても、
コントロールの困難な患者さんが、
一定数は存在することも事実です。

ある海外の大規模臨床試験の結果によると、
中等度の重症度の喘息の患者さんの3分の1は、
1年間ステロイドの吸入と気管支拡張剤を併用しても、
充分なコントロールには至らなかった、
とされています。

また、より重症の喘息の患者さんを対象にした研究では、
更に上記に治療に加えて、
アレルギーに大きく係る免疫グロブリンである、
IgEという蛋白質に対する抗体を使用しても、
4割の患者さんでは充分なコントロールには至らなかった、
という結果でした。

こうした結果の示すものは、
気管支喘息の患者さんは決して均質ではなく、
吸入ステロイドが有効な患者さんもいれば、
それほどの有効性を示さない患者さんもいる、
という事実です。

それでは、吸入ステロイドの効く患者さんと、
効かない患者さんとを、
予め見分けることは出来ないのでしょうか?
仮にそれが出来るとすれば、
吸入ステロイドの効果の少ない患者さんに対して、
有効な治療法はあるのでしょうか?

その点において最近注目をされているのが、
身体においてリンパ球などが放出する、
インターロイキンと呼ばれる物質の作用です。

インターロイキンには多くの種類がありますが、
喘息との関連性で注目されているのが、
インターロイキン4とインターロイキン13の2種類です。

この2種類のインターロイキンは全く別個のものではなく、
インターロイキン4がくっつく受容体2種類のうちの1種類には、
インターロイキン13もくっつくことが出来る、
などの共通点があり、
実際には特に喘息などの発症においては、
インターロイキン13の方が、
より重要な役割を果たしている、
と考えられています。

免疫のメカニズムは複雑怪奇ですが、
その調整役に働くリンパ球である、
ヘルパーT細胞には、
Th1とTh2 という2種類のタイプが存在します。
これは1型ヘルパーT細胞、2型ヘルパーT細胞、
くらいの意味合いです。

このうち喘息のようなアレルギー疾患に主に関連性があるのは、
Th2タイプのヘルパーT細胞で、
インターロイキン4も13も、
共にこのTh2細胞から分泌されるサイトカインです。

大雑把に言えば、
Th2細胞が多く存在していれば、
アレルギー疾患の指標の1つである、
好酸球も血液のIgEという免疫グロブリンも、
共に多く存在している可能性が高く、
インターロイキン4と13も、
多く分泌されている可能性が高いのです。

主にネズミを用いた実験から、
このインターロイキン4とインターロイキン13とを、
同時に阻害すると、
ネズミの喘息の症状は完全に消失します。
また、インターロイキン13のみを阻害すると、
IgEや好酸球は減少しないものの、
気道の敏感さと気道の粘液の産生は強力に抑えられることが、
立証されています。

この辺りの内容を図にしたものが、
New England…の同じ号にありましたので、
ちょっとご覧下さい。
インターロイキン13の作用の図.jpg
IL13と書かれているのが、
インターロイキン13のことです。
Th2細胞から放出されたインターロイキン13は、
好酸球やIgEを産生するB細胞に、
直接働き掛けると共に、
それ自体が気道を収縮させ、
また粘液細胞から気道粘液の産生も亢進させます。

免疫細胞を介する喘息の症状の発現には、
多くの因子が絡んでいますが、
免疫細胞を介さない症状の発現に関与しているのは、
ほぼインターロイキン13だけです。

吸入ステロイドは気道の好酸球を強力に抑え、
気道の炎症を抑える作用がありますが、
インターロイキン13を阻害する作用は、
あまりないものと考えられます。
従って、吸入ステロイドの効果が不充分な事例に対して、
インターロイキン13の作用を阻害するような薬剤の効果が、
期待出来るのではないか、
という考え方が生まれたのです。

そこで今回の文献では、
インターロイキン13に対する抗体である、
レブリキツマブという新薬を用いて、
吸入ステロイドなどの治療でコントロール不充分な喘息の患者さんに対する、
上乗せの治療効果を検証しています。

対象は吸入ステロイドを概ね1日500μg(フルタイドの換算です)以上使用しても、
コントロールの不充分な喘息の患者さん219名で、
110名くらいずつの2つの群に分け、
一方はインターロイキン13の抗体を、
1か月に1回のペースで6回皮下注射し、
もう一方は何の効果もない注射を、
同じように行ないます。

更に、どのような患者さんで、
この薬剤が効果を示すのかを検討するために、
血液のIgEと好酸球の数値による分類と、
血液のペリオスチンという数値による分類を行ない、
そのより小さなグループにおける、
インターロイキン13の抗体の効果も検討しました。

IgEと好酸球については、
日本の保険診療でも簡単に施行可能な検査です。
両者ともTh2細胞が優位になると、
刺激されてその数が増加するのです。
従って両者の数値はある程度、
Th2細胞の活性を反映していることになります。
上記の文献では、
IgEが100IU/mlを超え、好酸球の数が140個/μlを超えるものを、
Th2細胞優位と判断しています。

一方ペリオスチンというのは、
細胞外マトリックス蛋白質と呼ばれる、
身体の細胞の周りを固定している、
家の外塗の外壁材のような成分ですが、
インターロイキン13はこの蛋白質を増殖させ、
結果として気道の喘息による線維化の原因となる、
と言われています。
つまり、これもインターロイキン13の、
作用がどれだけ身体に及んでいるのかの、
1つのマーカーとなり得るものなのです。

それではこちらをご覧下さい。
インターロイキン13の喘息への効果の図.jpg
今回の文献の結果の、
肝になる図表です。

まず一番上のAの図表ですが、
インターロイキン13の抗体を使用して、
インターロイキン13の作用を妨害した方が、
呼吸機能の数値がやや改善していることが分かります。
使用後12週間で統計的に有意差が付いています。

真ん中のBの図は、
血液のペリオスチンの濃度が高いグループのみで、
同様の検討をしたものです。
全体よりも、大きな差が付いていることが分かります。

そして、一番下のCの図は、
ペリオスチンの濃度の低い群での検討ですが、
これは殆ど改善傾向が認められません。

つまり、血液のペリオスチンレベルを測定し、
その多い患者さんに限ってインターロイキン13の抗体を使用すれば、
より大きな効果が期待出来る、
というのが文献の著者らの見解です。

この文献はただ、
最初からペリオスチンの測定をしていたのではなく、
後から追加して結果を出しているように読めます。
最初は好酸球とIgEのマーカーで結果を出そうとしたのですが、
どうもそれはうまく行かなかったようです。

本来は吸入ステロイドで効果不充分の事例の多くは、
インターロイキン13の抗体の効果が望める筈ですから、
もっと全体で有意差が付いても良いのに、
それが今一つであったために、
より細かい分類を、
後から足さざるを得なかったのかな、
とも思えます。

この結果をどう考えれば良いのでしょうか?

インターロイキン13を阻害するような薬剤は、
かつてなかったものであり、
気管支喘息の患者さんの治療の選択肢を、
大きく広げる可能性を秘めたものです。
ただ、その適応は現在ではまだ明確ではなく、
今回のようなグループ分けも、
まだ不充分なものに思えます。
長期の成績も不明です。
更には免疫抑制剤が治癒したB型肝炎の再発をもたらしたように、
こうした免疫の根幹を変えるような効果を持つ薬剤は、
その使用には慎重であるべきだと思います。

こうした遺伝子工学から生み出された免疫調整剤は、
確かに治療の進歩ではありますが、
高価な薬でありまた使用によるリスクもまだ不明な点を残しています。
特に気管支喘息のように慢性の疾患の場合には、
その適応にはより慎重な姿勢が求められるもののように、
僕には思えます。

今日は気管支喘息の最新の治療の話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 6

pinktopaz

難しくてよく理解できませんが、何べんも読むつもりです。
by pinktopaz (2011-09-28 08:28) 

ごぶりん

ネズミの実験だと、IL-4と13inhibitorは喘息患者の方にとって夢の薬の様ですが、
そうは問屋がおろさない様ですね。
実際のところ、1口に喘息といっても、メディエーターの関与なんかに個人差があって
それが薬の有効性の差となっているんでしょうか。
製薬会社に勤めてた時は、IL-12までは知られてましたが、
図を見たら33もあるんですね~。
べりオスチンという物質の事は全然知りませんでしたので、勉強になりました。
有り難うございます。
by ごぶりん (2011-09-28 21:52) 

fujiki

prinktopaz さんへ
お読み頂きありがとうございます。
僕自身も咀嚼仕切れていない部分があるので、
内容がゴタゴタしているのだと思います。
by fujiki (2011-09-29 08:06) 

fujiki

ごぶりんさんへ
コメントありがとうございます。
こうした薬剤は現在の花形ですが、
効果のある反面、
予期せぬ重篤な副作用が報告されたり、
非常に高価で医療費を大きく押し上げたりと、
問題も多いのが実状だと思います。
by fujiki (2011-09-29 08:08) 

becchi

1年程前からブログを拝見させて頂いております。
薬学部学生、6年生の者です。はじめまして。

日々進化していく最新の医療に自分を乗せていかなければと痛感しております。
石原先生は毎日どのような媒体で医療情報を確認されているのでしょうか。もしよろしければ教えて頂きたく存じ上げます。
by becchi (2011-09-30 23:04) 

fujiki

becchi さんへ
コメントありがとうございます。
僕は大学時代は全く勉強していなかったので、
学部の6年生でそうした意欲をお持ちというのは、
本当に素晴らしいことだと思います。
一応New England…は毎号一通りは読んでいます。
Lancet とBMJ、JAMAの当たりは、
医療サイトで概略が出てから、
面白そうなもののみ読んでいます。
Nature、Scienceも医療関連のものがあれば…、
という感じです。
abstract のみを読んで、
論評されるような方が時々いらっしゃるのですが、
僕は基本的に原文の全文を、
必ず読んでから記事にするようには心掛けています。
メディカル何たら…のようなサイトも、
見てはいますが、
殆どが宣伝なので、
信用は全くしていません。
by fujiki (2011-10-01 08:37) 

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