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シュトラウス「サロメ」 [オペラ]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は日曜日で診療所は休診です。
朝から駒沢公園まで走りに行って、
それから今PCに向かっています。
今日は午後から認知症の研修会に新宿まで出掛けます。
気は乗りませんが仕方がありません。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
サロメ.jpg
有名なビアズリーによる、
オスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」の挿絵です。

1891年に書かれた1幕劇で、
1905年にその戯曲の台詞そのままに、
1幕ものの短いオペラ作品となり、
元の戯曲自体は、
オリジナルのまま上演されることは、
現在では殆どありませんが、
このオペラ版は世界中の主だった歌劇場のレパートリーになり、
日本でも必ず1年に一度くらいは上演されています。

素材は聖書から採られていますが、
その展開はワイルド独自のものです。

預言者のヨカナーン(洗礼者ヨハネ)が、
ヘロデ王の宮殿にある水槽の牢獄に繋がれています。
ヘロデ王はキリストの到来を予言する預言者を、
捕らえたはよいものの、
殺すことが出来ずにいるのです。
ヘロデ王の腹違いの娘のサロメは、
ヨカナーンの聖性を穢そうとして叶わず、
へロデ王の前で「7つのヴェールの踊り」を踊ると、
その褒美にヨカナーンの首を求め、
切り取られた首に接吻して、
ヨカナーンを支配することに成功します。
ラストは唐突にヘロデ王が、
「あの女を殺せ」とサロメに死の宣告をします。

魅力的な筋立てですが、
何かしっくりしない点があります。
特に何故ラストでヘロデ王がサロメを殺すのか、
僕は未だによく分かりません。

ただ、原作の戯曲は詩的で、
読み物としてはよく出来ていて、
何だかよく分からないけれど、
闇の中に月光が差し込み、
耽美的な濃厚な匂いが鼻をくすぐるような、
独特の気分が全編を支配しています。

それでも、動きの少ない戯曲ですし、
実際に観れば退屈だろうな、
というのは想像の付くところです。
谷崎潤一郎や泉鏡花の戯曲のように、
どちらかと言えば読むことを想定された作品のように、
僕には思えます。
(泉鏡花の戯曲は勿論今も上演されていますが、
演出にはかなりの苦労があり、
かつまたそうした苦労をしても、
退屈な場面があるのはいかんともしがたいと思います)

オペラ版は当時としてはかなり前衛的な作品で、
僕が最初に観たのは、
新国立劇場のプロダクションでしたが、
殆ど寝ていたような記憶があります。

全上演時間が1時間40分ほどの1幕で、
やたらと大編成のオーケストラが、
ドギャン、ボボン、みたいな不協和音をかき鳴らし、
そこに時々妙に甘美な旋律が、
唐突に挟まったりもします。

作品は基本的に戯曲に忠実なのですが、
台詞はかなり刈り込まれているので、
原作の甘美で雰囲気は、
かなり薄めれたものになっていることは事実です。

このオペラの上演のポイントは、
主演のサロメをどう演じるのか、
という点が1つと、
ラストのサロメへの死の宣告を、
どう表現するか、
という点がもう1つです。

皆さんも概ねご存知のように、
それほどスタイルの良いオペラ歌手はあまりいません。

サロメ役は結構声量も必要で、
どちらかと言えばドラマチックソプラノの領域です。
そして、声量のある歌手は概ね恰幅が良く、
骨格ががっちりしているのに、
それでいながら、
妖艶な美女という役柄で、
しかも腹違いの父親を誘惑してヨカナーンを殺させるために、
エロチックな踊りを長々と踊らなければいけません。

7つのヴェールの踊りというのは、
要するに7枚に衣装を重ねて着ていて、
それを1枚ずつ脱いでゆくのです。
初演の時代はどうだったのかは分かりませんが、
現在の古典的な演出は、
最後に下着に近くなったような段階で、
御付の人が背後からサロメを隠す、
というような趣向になっています。

ヨーロッパの演出では、
概ね最後上半身は裸体になりますが、
(DVDの出ている英国ロイヤルの舞台はこのパターンです)
日本での上演は通常はそこまでの思い切りはなく、
ちょっと薄着になったような時点で終わりになる、
おいおいそれだけかい、
とがっかりするような演出が殆どです。

ただ、オデブちゃんのサロメで、
そんな踊りをされたら、
本人も観客も、
お互いに大変不幸なことになるので、
多くの「ふっくらダブダブ型の体型」の、
「これがサロメ?」
と世界中につぶやきたくなるような体型の、
サロメの皆さんは、
非常に控え目な、
踊りだか、ただお腹のお肉が自然に揺れているだけなのか、
何だか分からない仕草を延々と続けるだけで、
ちょっと薄着になるとそれで終わりになるのです。

これでヨカナーンの首が所望出来るでしょうか?

僕がヘロデ王なら、
ヨカナーンは生かして、
即刻サロメの首を切ります。

僕が実際に観た中では、
ヨーロッパの二線級の歌劇場の来日公演で、
フランス出身のソプラノ歌手が、
踊りで上半身は裸体になりました。
ただ、ぽっちゃり型だったので、
非常に不幸な感じになりました。

それで、最近の比較的前衛的な演出では、
踊り自体がないものが結構あります。
比較的最近ではバイエルン国立歌劇場の来日公演がそうで、
水のないプールみたいなセットで、
サロメは踊りの間中、
意味ありげな仕草をするだけで、
踊りませんし、
服を脱ぐこともありません。

また、つい最近前衛演出家のコンヴィチュニーが、
日本で演出した舞台がありましたが、
セットはシェルターのようで、
サロメは別に服を脱ぐこともなく、
何かセクシャルな仕草の真似事を、
延々とするだけでした。

前衛的な演出では、
他の部分は良いのですが、
踊りは矢張り困ります。
これはどう考えても普通に踊って全裸にならないと、
その退廃と暴力と性と権力との関わりという、
作品の枠組みが見えなくなってしまうので、
誤魔化すのはまずいのです。

もう1つ最後の「あの女を殺せ」
というヘロデ王の台詞ですが、
これは矢張り演出家も皆困るらしく、
小姓に刺されたり、銃に撃たれたりするような、
奇妙な演出も存在します。
つい最近のコンヴィチュニー版では、
客席にいた仕込みの役者が立ち上がり、
その台詞を叫ぶ、というパターンでした。

この演出は一般には不評でしたが、
僕はなるほどと思いました。

この作品では、
愛と支配は同一の地平で扱われ、
拒絶された愛を成就させるために、
相手を殺し、その首を切り取って、
その唇に接吻するのです。
その行為が現実世界で許されるのかどうか、
というのが最後の問い掛けで、
それを決めるのはおそらくヘロデ王ではなく、
観客の役回りなのです。

コンヴィチュニーの演出は、
その点を視覚化したものだと僕は思います。
ただ、一般にそれが反発を生むのは、
理屈をそのまま視覚化する、
という彼のスタイルの身も蓋もなさに対する、
ある種の拒否反応ではないかと思います。

最近の猟奇犯罪に結び付く部分もあり、
権力と性との関わりと言う点では、
一連の「阿部定もの」と似通った部分もあります。

サロメは結構現代的なテーマを孕んでいるのですが、
そのオペラの上演には、
色々な制約があり、
あまり満足の行く上演には行き当たりません。

21世紀の新たなサロメ歌手の登場を、
密かに待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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コメント 6

末尾ルコ(アルベール)

ワイルドの原作はひたすら好きです。
通俗ギリギリの大仰な言い回しが快感!(笑)

オペラ歌手の体型は確かに・・・。
太った「椿姫」なんかもきついものがありますよね(笑)

                             RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2011-03-06 11:41) 

yuuri37

確かに体型って・・・
きっといつか、バッチリな歌手が登場しますよ。
それまでは、お互い健康で元気にがんばりましょうね^^V
by yuuri37 (2011-03-06 17:46) 

fujiki

RUKO さんへ
コメントありがとうございまず。
大半のオペラの役は、
僕は歌がまともなら気にならないのですが、
サロメはちょっとそれでは駄目だと思います。
by fujiki (2011-03-06 20:43) 

fujiki

yuuri37 さんへ
コメントありがとうございます。
yuuri さんに負けないように、
どうにかテンションを上げたいと思います。
でも、この時間はちょっと憂鬱ですね。
by fujiki (2011-03-06 20:48) 

アミナカ

普段、人の悪口など言ったりしない人格者の伯父も、太めのトスカがラストに飛び降りるシーンの、ちょこんと台を降りるだけと、
オペラの感想をきいても、トスカがデブで…としか。私はあまり、テノールがズングリムックリでも、気にならないです。
かえって、ヒロインのソプラノより、メゾソプラノが綺麗だったりすると、
ありゃりゃと思う時があります。
理想のサロメは、あまりにビアズリーの挿絵の印象が強く、難しそうですね。
作品事態は、サロメの所有欲の強さにひかれます。
by アミナカ (2011-03-06 22:45) 

fujiki

アミナカさんへ
コメントありがとうございます。
トスカはグレギーナが矢張り良かったですね。
あの最後の飛び降りは、
体重の重い方だと、
確かにかなり不幸な感じになります。
あそこが間抜けだと、
最後の最後なので、
ちょっと辛いですね。
by fujiki (2011-03-06 23:10) 

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