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リラグルチド問題を考える [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
今日は診療の後で健診の結果説明会に、
調布まで行くので、
帰りは9時過ぎになります。
昼に往診が3件あるので、
12時間以上、ボーっとする瞬間がない、
というのは正直ちょっときついです。

それでは今日の話題です。

今日は糖尿病の新薬の話です。

インクレチンという一種の消化管ホルモンがあって、
一般に使われている糖尿病の飲み薬とは別のメカニズムで、
インスリンの分泌を刺激し、
血糖を上げるホルモンを抑え、
そのことによって糖尿病を改善する、
という作用のあることが明らかになりました。

このインクレチンの存在自体は、
以前から知られていたのですが、
この10年くらいの間に、
その知見が集積され、
インクレチン関連の糖尿病治療薬が、
次々と開発されました。

日本では昨年の暮れに、
最初のインクレチン関連の飲み薬である、
DPP4 阻害剤が発売され、
大きな注目を集めました。

その後同種の飲み薬は、
3種類4剤を数えています。

しかし、以前にも何度か触れましたように、
発売から間もなく重症の低血糖の副作用が、
相次いで報告され、
逆の意味で大きな問題となったのも、
皆さんご存知の通りです。

さて、インクレチン関連薬にはもう一種類、
GLP-1 アナログという薬剤が存在します。

これは注射薬でインクレチンの1つである、
GLP-1 という物質を、
基本的にそのまま使用するものです。
ただ、インクレチンはインスリンのような、
アミノ酸が繋がった構造のホルモンなので、
飲み薬としては使用出来ず、
インスリンと同じような注射薬になります。

これも世界では幾つかの薬剤が既に開発済みですが、
1週間に一度の注射で良いという、
長時間型の薬剤が、
副作用のために開発中止になるなど、
どうもその安全性の面で、
疑問符の付く可能性が否定出来ません。

日本ではノボノルディスクファーマ社から、
2009年に発売されたリラグルチド(商品名ビクトーザ)が、
今年の6月に国内で発売されました。

海外の発売から、
数年は掛かるのが今までの通例でしたから、
この薬は非常に早く承認がされたのです。

この薬の効果は、
以前は良く使用されていた糖尿病の治療薬、
オイグルコンの2.5mg とほぼ同等、
と臨床試験では説明されています。

オイグルコンを1日1回飲む代わりに、
ビクトーザを1日1回注射するのです。
この薬はインスリンを大量に使うのと、
同じくらい高価です。
しかも、インスリンと同じように、
自己注射の管理料が算定されますから、
患者さんの負担は、
オイグルコンよりグッと増えることになります。

安い薬と同じくらいしか血糖は下がらず、
自分で注射をする、という行為が毎日必要になり、
それで医療費も数倍掛かるのですから、
それだけ考えると、
こんな薬はない方が良いような気がします。

しかし、それでも尚、
この薬が患者さんにも医者にも待望されていたのは、
この薬が膵臓の働きを改善させ、
将来的に糖尿病を治す、
という効果があるのでは、と考えられたからです。

糖尿病というのは、
端的に言えば膵臓の機能不全です。

一旦膵臓の機能がある程度落ちてしまえば、
膵臓の移植以外に、
それを元に戻す方法は存在しませんでした。

一時的な高血糖による膵臓のインスリン分泌不全は、
今までの治療でも改善することはあります。
しかし、ある程度膵臓の障害が進んでしまえば、
それを根本から改善出来る薬はありません。

オイグルコンやアマリールのような、
SU剤というタイプの飲み薬は、
膵臓を刺激して、
インスリンを強制的に出させる効果がありますが、
長期的には、
却って膵臓を弱らせてしまうことが、
多いことが知られています。

ビグアナイトと言われる薬剤は、
そうした膵臓の疲弊は少ないのですが、
それでもない訳ではなく、
その効果も弱いので、
単独での使用は日本では少なく、
またその薬特有の副作用も報告されています。

インスリンの注射は、
インスリンの足りない時に、
それを補うには合理的な薬剤で、
低血糖以外の副作用のないこともメリットですが、
頻回の注射が時に必要となり、
またインスリンが身体に過剰になることで、
動脈硬化が進行するなどの、
弊害も指摘されています。

その点リラグルチドは、
ネズミを用いた実験のレベルで、
膵臓のインスリン分泌細胞が、
障害されるのを抑え、
膵臓の細胞を増殖させ、
膵臓のインスリン分泌細胞の、
容積を増やす、という、
比較的クリアなデータがあります。

こうした結果の出た薬剤は、
それまでにはなく、
画期的なものです。

つまり、この結果が人間に適応されるものだとすれば、
1ヶ月程度の使用でも、
膵臓の容積は増え、膵臓の機能は復活することになるのです。

ただ、これはあくまで仮説です。

人間で証明されたものではなく、
今後少なくとも数年は経過を見ないと、
その人間に対する本当の効果は、
判明はしないのではないかと思います。

このようにリラグルチドは、
大きな可能性を秘めた新薬です。

臨床試験のレベルでは、
特に大きな問題になる副作用はありませんでした。

ところが…

今年の9月にびっくりする報告が製薬会社からありました。

この薬を使用した患者さんが、
使用の翌日に糖尿病性ケトアシドーシスを発症して、
死亡する事例が2例報告され、
それ以外にも、
7例の異常な高血糖の事例が報告されたのです。

何故血糖を下げ、膵臓を復活させる筈の薬で、
深刻なインスリン欠乏による、
死に至るような高血糖が認められたのでしょうか?

ちょっと長くなりましたので、
その話は明日に続けたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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