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胎盤エキスと血清療法の話 [科学検証]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
朝からカルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

昨日は胎盤エキスについての、
総論的な話でした。

今日はそのもう少し突っ込んだ話です。

まず胎盤エキスについての第2の疑問です。

Q2;胎盤エキスは人間の胎盤から抽出したとされていますが、一体どのようにして集められているのでしょうか?

胎盤エキスの注射薬1本の薬価は、
180円台です。
実際の販売価格はこれより高い可能性があり、
現実的には健康保険での注射は、
殆ど行なわれていないと思われますが、
それでも一応の調査は行なわれている筈で、
基本的にはこの値段でも供給は可能、
という判断がなされていると思われます。

しかし、これだけ安く大量の胎盤が集められているとすれば、
医療廃棄物として一旦廃棄された胎盤が、
実際には製薬会社に搬入されているのではないか、
という推測が現実味を帯びます。

産科の医師に聞いた話では、
通常胎盤は専門の「胎盤回収業者」によって、
医療機関がそのコストを払った上で、
廃棄されるのが一般的なようです。

これは僕が言ったことではなく、
数年前に民主党の女性代議士が、
国会で質問した内容の中にあったものですが、
一部の医療機関で、1つ1000円程度で胎盤が売買され、
それが製薬会社に納入されている、
という事例をその代議士は聞いた、
ということが公文書にも残されています。

これに対して、厚生労働省の担当者が答弁に立っているのですが、
その内容は「適正に処理されていると信じる」
という通り一遍なもので、
何か今までに調査が成された、とか、
今後調査がされる予定である、とか、
そういった事項は何1つ語られてはいません。

どうも、言えない理由があるのだな、
ということはここからも何となく推察されます。

現在流通している胎盤エキス製剤は、
メルスモンとラエンネックの2種類ですが、
いずれの薬剤も、
原料の胎盤は日本の妊婦から提供されたもので、
慎重な問診によりその安全性が確保され、
既往歴や感染症の有無なども、
血液検査で調べられ、
更にはC型肝炎やB型肝炎のウイルスからHIVウイルスなどの、
ウイルスが存在しないことは、
検査によって確認され、
狂牛病の原因の異常蛋白質のプリオンについては、
高圧蒸気滅菌によって、
蛋白質がアミノ酸に分解されるため、
無害である、とされています。

ただ、皆さんの胎盤が薬品として使用されるとすれば、
そのためには妊娠された皆さんの許可が必要な筈です。
厳密に言えば製薬会社の言うことが正しいとすると、
製薬会社には書類があり、
それを照らせば、どのアンプルの胎盤エキスは、
何処の誰から抽出されたものなのかを、
明確にすることはいつでも可能だ、
ということになります。

しかし、本当にそんなことが行なわれているのでしょうか?

この商品は1950年代に販売が開始されたもので、
当時は「売血」という行為が普通に行なわれていました。
従って、産婦人科の医院に依頼して、
胎盤を集めること自体は、
簡単なことであったと考えられます。

しかし、現在ではそれは不可能な筈です。
それでいて多くの胎盤エキスが流通している、
という現実があります。
僕は少なくとも感染症の検査等に関しては、
提供した妊婦の方の、
詳細な情報が信じるに足るものとは到底思えません。

次に胎盤エキスについての第3の疑問です。

Q;胎盤エキスにはどのような危険性が考えられるのでしょうか?

胎盤エキスの危険性は、その効果と裏腹なものと思われます。

胎盤エキスに効果があるのは、
その胎盤というものの持つ生命力が、
身体の危機に対して有効に働くためだ、
とされています。

元々は胎盤エキスは、胎盤の小さな切片を、
皮膚の下に埋め込む、という方法で始まりました。
この乱暴な方法は、
しかし、最近でも実際には密かに行なわれていて、
平成16年にはメルスモン製薬が、
そうした胎盤の切片を販売したとして、
厚生労働省から一定期間の業務停止の処分を受けています。

これを「組織療法」と言って、
「血清療法」に近い考えです。

「血清療法」というのは、
ある病気に罹って治った人の、
血液の成分が、その病気の治療に役立つ、
という考え方です。

「感染列島」という映画のラストで、
ウイルス感染患者に、感染から回復した患者の血液を、
輸血して助かる、という件がありましたが、
あれがその原始的な形ですね。

現在行なわれている「血清療法」は、
免疫グロブリンという抗体を構成する蛋白質を、
病気になった時に注射する、
という方法で行なわれていて、
免疫グロブリン以外の成分は、
慎重に取り除く方法で製剤が作られています。

ただ、これも血液製剤であることには間違いがなく、
そのリスクはゼロではないため、
必要最小限の使用に限定されて許可されています。

僕が以前使用していた注射薬に、
MSアンチゲンという薬がありました。

これはアレルギーの治療薬ですが、
実はアレルギーの患者さんの尿が、
その原料です。

これも血清療法の考え方で、
アレルギー患者さんの尿には、
アレルギーに対抗する物質が、
多く含まれているのでは、
という考え方ですね。
その主体はサイトカインなのでしょうが、
その組成が分かっている訳ではありません。
抽出された尿によっても、
その組成は違っているでしょう。

ただ、これが意外に効くのです。
週1回の注射で、
それ以外の治療は必要なく、
花粉症もOK、というケースが結構ありました。

しかし、この薬は現在では使用は出来ません。

狂牛病の異常プリオンの一件があってから、
製造中止を製薬会社が選択したのです。

これが現在の一般的な考え方です。

プリオンというのは感染性のある蛋白質で、
従来の感染症の考え方を一変させました。

ただの蛋白質の構造の違いが、
そうした深刻な変化を呼び得る、
ということが明らかとなった以上、
安易に人間の組織や血液の成分を、
治療に使うことは許されません。

製薬会社の説明では、
高圧蒸気滅菌で処理されているため、
プリオン蛋白は消滅している、
ということになっていますが、
それは本来おかしいのです。
胎盤エキスの有効成分の主体は、
サイトカインのような蛋白質の筈です。
それがアミノ酸のレベルまで分解されているとすれば、
そもそもこの薬の薬効は消滅してしまいます。

製薬会社の説明は、
この薬は効きませんよ、と言っているに等しく、
それは事実ではない、と僕は思います。
こうした薬剤は、ある程度の感染症のリスクなしでは、
その有効性は期待出来ないからです。

従って、蛋白質にも状況によっては感染性がある以上、
そのリスクを取り除くことは、
その成分が必ずしもはっきりしていない、
胎盤エキスのような製品では不可能です。
そのリスクを取り除いた時点で、
その薬効自体も消滅するからです。
胎盤エキスにはプリオン病を含めて、
それ以外の未知の感染症のリスクは、
確実に存在します。

従って、そのリスクと天秤を掛けた上で、
こうした薬剤の使用は考える必要があります。

つまり、安易に使用するべきではありません。

胎盤エキスにある程度の有効性があることは、
理屈から言っても明らかなものだと、
僕も思います。
しかし、それは中世の昔に、
脳のエキスで若返りを図った、
という話と同レベルのもので、
現在の医療の方向性とは相容れない性質のものなのです。

それが他の薬と同列に、
健康保険の守備範囲で、
厚生労働省から認可され、
保険医療機関でも平然と使用されている、
という現状に問題があるのです。

この薬はその性質上、
厳密な管理が必要ですが、
その上で健康保険の適応からは完全に外し、
保健医療機関で使用されるような現状は改めるべきです。

この薬を使用している医師の多くが、
自分が打っているものの実体と、
それ以外に自分が行なっている医療行為との整合性について、
あまりに無知であまりに無頓着であるように、
僕には思えてなりません。

今日は胎盤エキスの問題点について、
僕なりにまとめてみました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 9

akanenosora

はじめまして。
専門的なお話を興味深く読ませて頂いております。
nice! の押し逃げばかりですが。
以前にラエンネックを通販で購入して服用していた時期が
ありました。夜勤等で疲れが酷い時でしたので
高価でも仕方なく、しかし服用すれば身体は楽になって効果を
感じていたのですけれど。
狂牛病が話題になりだして、豚由来にすれば安全なのかとも
思ったりしていたのですが、効果が気になりそれ以後
プラセンター離れをしました。
歳を重ね家事のみの生活環境で、なのに胃潰瘍も治らず
パリエット錠が欠かせません。
プラセンターの事が脳裏をかすめたこの時期
先生のこのお話は、無知な私には意味深いものがあり
ました。安易に考えない方がよいのですね。
by akanenosora (2010-03-16 09:09) 

さーやん

歯槽膿漏で歯ぐきから出血しています
どうしたら止まりますかね~
by さーやん (2010-03-16 18:44) 

まみしゃん

昨日の記事から、今日の記事を興味深く待っていました。
先月くらいまで市販されている「胎盤エキス含有ビタミン剤」を飲んでいました。
病院で処方されるものとまったく同じではないでしょうが、成分的には共通項があるのかと思ってました。
去年の秋から4~5カ月くらいでしょうか・・・
冷えと痛みが主ですが、とにかく体調が悪いとドラッグストアのかたに相談したら薦められました。
これだけ通院しているのに、ビタミン剤は処方していただけなくて・・・更年期も絡んでいるからと言われて、それこそ藁にもすがる思いでいました。
でも、けっきょく良くも悪くもなりません^^;
時期がこなければ・・・というところかと思ってます。
by まみしゃん (2010-03-16 18:55) 

fujiki

akanenosora さんへ
コメントありがとうございます。

おそらくは内服のプラセンタエキスは、
無害なものだと思いますが、
それは薬効的にも、
「アミノサプリ」程度の組成の商品ではないか、
という気がします。

by fujiki (2010-03-16 20:48) 

fujiki

さーやんさんへ
清潔なガーゼで、出血部位を軽く押さえ、
それから口を良くゆすいで、
飲み薬はトラネキサム酸や、塩化リゾチームくらいでしょうか?
すいません。
ちょっと専門外です。
by fujiki (2010-03-16 20:52) 

fujiki

まみしゃんさんへ
コメントありがとうございます。

多分害のないアミノ酸入り電解質水、
みたいなものだと思います。


by fujiki (2010-03-16 20:54) 

えっと、霞ヶ関で認可されても

血液製剤の訴訟が終わっているわけではなく、、
先生の仰るとおり、人の生命に関する、医薬品安全管理者が、もっと働くべきかと思います。

・・・署名には協力します。

後は、先生の正義を貫くだけじゃないかとおもいます。

病院という医療機関に属していたとしても
たとえ、上司がヤブ罪師であろうと
正義をつらなて下さい。

ながされちゃいけないですよ。喧嘩は良くないけれど

私も、非加熱製剤問題で、沢山の恩師を失いました・・・

結局、私たちはサービス業です。
クライアントにとって、最大限のサービスを

距離は、遠いですが、応援しています。

お互い、頑張りすぎないように頑張りましょう。

先生もご存じの通り医療機関にとって、最も、Topな人間は患者かと思います。なかなか、理想的にはいかないですが

Samurai Wrote
by えっと、霞ヶ関で認可されても (2010-03-17 02:10) 

fujiki

えっと、霞ヶ関で認可されても、さんへ
コメントありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2010-03-17 08:31) 

hiro

間質性膀胱炎の頻尿と痛みに悩まされて、プラセンタ注射に行き着きました。ラエンネック3アンプルを週に2回ほど打っていると、日常生活に支障が出ないほどに症状が落ち着きます。そんな状態を数年続けていて、大丈夫なのだろうかと思ってネットで調べた所、先生の記事にたどり着きました。いろいろ考えさせられましたが、他に効く薬が無いので、今の所は、続けるしか選択肢は無いかなという感じです。本当は良くないんでしょうが。
by hiro (2018-11-19 01:32) 

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