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レニン・アンジオテンシン系の話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻る予定です。

それでは今日の話題です。

先週「原発性アルドステロン症」の話をしましたが、
今日はそれに絡んで、もう少し大きく、
レニン・アンジオテンシン系の話をします。

レニン・アンジオテンシン系、とは何でしょうか?

一言で言えば、
人間の身体にあって、
重要な塩分を保持するためのシステムのことです。

ちょっと歴史的な話をします。

レニンという物質の発見は、
1898年という昔のことです。

腎臓病の患者で、心臓が肥大して脈が強いことを観察し、
その原因が、腎臓から出る物質によるのではないか、
と考えたのです。
そして、ウサギの腎臓から、
血圧を上げる作用のある物質を抽出し、
それを「レニン」と名付けました。

その後、1956年になって、
馬を使った実験で、
レニンは単独で血圧を上げるのではなく、
幾つかの物質の相互作用を引き起こし、
その結果として、血圧が上昇する、
という仕組みが明らかになったのです。
それが、「レニン・アンギオテンシン系」です。

その概略はこうです。

腎臓に入る血管の血液の量が少なくなると、
それがレニンの分泌刺激になります。
レニンが分泌されると、
それが血液中のアンジオテンシノーゲンという物質を、
アンジオテンシン1という物質に変換します。
アンジオテンシノーゲンというのは、
肝臓で作られるα2グロブリンという、
蛋白質の一種です。
そうして出来たアンジオテンシン1は、
ACE(アンジオテンシン変換酵素)という酵素の働きで、
アンジオテンシン2になります。
この時の酵素ACEは、血管の内側の細胞から分泌され、
特に肺に多いことが分かっています。

さて、そうして出来たアンジオテンシン2は、
それ自身強力な血圧上昇作用のある物質です。
それと同時に、副腎を刺激して、
アルドステロンというホルモンを放出させます。

つまり、レニンはアンジオテンシン1と2を介して、
アルドステロンを上昇させるのです。

アンジオテンシン2は、血管の筋肉を収縮させ、
そのことにより血管はぎゅっと締まって、
その結果として血圧は上がります。

アルドステロンは塩分を身体に溜め込むことにより、
血液の量を増やし、その結果として血圧が上がります。

つまり、こと高血圧ということで考えると、
最大の悪玉はアンジオテンシン2ということになります。

血圧とは血管の抵抗と血液の量とで決まり、
アンジオテンシン2が上昇すれば、
そのいずれもが過剰になるからです。

それでは、何故アンジオテンシン2が存在するのでしょうか?

これは仮にアンジオテンシン2が存在しないとすれば、
どうなるかを考えてみれば良く分かります。

血管が広がり、塩分が身体の外に出てしまうと、
人間の身体は塩を掛けられたナメクジのように、
干からびてしまいます。

そもそも生命は海で生まれ、
陸へと上がりました。
その時点で、身を守っていた外界の「塩水」はなくなったので、
陸上の生物は、自分の身体の中に、
「塩水」を保持する必要があったのです。
その「塩水」保持装置こそが、
レニン・アンジオテンシン系です。

人間が塩分を殆ど取らなくても生きていられるのは、
レニン・アインジオテンシン系があるからです。

しかし、一方で身体に塩分が過剰に入ると、
本来塩分が不足することを想定したシステムなので、
だぶついた塩分を排泄することが出来ず、
血圧は常に上昇し、
それが臓器障害の原因ともなってしまうのです。

レニン・アンジオテンシン系が、
過剰に亢進して起こる病気の代表に、
「腎血管性高血圧」があります。

この病気は動脈硬化や血管の炎症などの結果として、
腎臓に入る動脈が、
異常に細くなることによって起こります。

最初にお話したように、
レニンは腎臓にあって、
腎臓に入る血液の量に反応し、
それが少なくなれば分泌されます。
これは通常では、腎臓に入る血液の量が少なくなれば、
当然全身の血液の量も少ないからです。
しかし、腎臓の血管が細くなる病気では、
全身の血液の量には問題はないのに、
腎臓に入る血液の量だけが少ないのです。
当然そのことに反応してレニンが上昇し、
アンジオテンシン2が上昇すると、
塩分が溜め込まれ、血管が締まって、
血圧は上昇してしまいます。

この病気を疑うポイントは、
お腹に聴診器を当てて、
血管の雑音を聞くことで、
お腹の横の方に雑音が聞かれれば、
腎臓に入る血管が、狭くなっていることを推測出来ます。

僕が教わった教室の教授は、
高血圧の患者さんでは、
必ずお腹に聴診器を当てて、
お腹の雑音を聞くように、
と話していました。

ただ、これは簡単なことのようで、
外来の全ての患者さんに実践するのは、
なかなか出来ることではありません。

現在日本で、
おそらく最も多く使われている血圧の薬は、
ARB(アンジオテンシン2受容体拮抗薬)というタイプの薬です。
商品名ではディオバン、ブロプレス、ニューロタン、アバプロ、などがそれです。

これはアンジオテンシン2の受容体にくっついて、
アンジオテンシンがくっつくのを邪魔し、
結果としてアンジオテンシン2が、
あまり働かなくなるようにする薬です。

レニン・アンジオテンシン系のチェックをするには、
通常はレニン活性とアルドステロンを測定します。
「レニン活性」というのは、
レニンそのものを測るのではなく、
レニンがどれだけのアンジオテンシノーゲンを、
アンジオテンシン1に変えたかを測定した数値です。
このレニン活性が高ければ、
全身の血液や塩分の量が少ないか、
腎臓に入る血管が細くなっていることを意味し
(稀にはレニン産生腫瘍というものもあります)、
逆に低ければ、水分の過剰な状態か、
「原発性アルドステロン症」を疑います。

アンジオテンシン2を直接測ればいいではないか、
と思われる方がいるかも知れませんが、
この物質はすぐに分解されてしまうため、
安定して測ることが難しいのです。
従って、通常はレニンとアルドステロンの測定で、
アンジオテンシン2の量を推定するという訳です。

心不全では有効な血液の量が減るため、
レニンが上がり、アンジオテンシン2も上昇します。
ところが、心臓でアンジオテンシン2が増えると、
それが更に心臓の筋肉を痛め付ける、
ということが分かっています。

この場合にはARBのような薬で、
アンジオテンシン2の働きを抑えることが有用で、
そのために、ARBは高血圧以外に、
心不全にも使われているのです。

人間は本来それほどの塩分なしでも、
身体の環境を維持出来るように作られています。
つまり、塩分節約型のシステムなのです。
しかし、現代の生活は、
塩を身体に過剰に溜め込むことが多く、
それに対応する仕組みが、
残念ながら身体にはありません。
そのため、塩分保持のシステムである、
レニン・アンジオテンシン系を、
人工的に抑え込むような治療が行なわれます。
しかし、本来は過剰な塩分こそが問題なのであり、
それこそが人間の身体を健康の保つ秘訣でもあるのです。

ちょっと雑駁な話になりましたが、
今日はレニン・アンジオテンシン系の総説でした。

それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ゆみ

先生こんにちは。お久しぶりです。以前インフルエンザ後の呼吸困難でご相談させてもらったものです。あれから咳止めの漢方をやめても咳は出てないです。後鼻漏はまだ続いてます。微熱は落ち着いてきたようで日によってはたまに36℃8ぐらい昼に行きますが夜には下がります。
以前は行けなかった近くのコンビニにもゆっくりですが行けるようになり少しずつ動き頑張ってます。食事もきちんと三食食べてます。現在は薬は何も飲まずにいます。後鼻漏が中々治らないので副鼻腔炎なのかな?と少し心配です。耳鼻科ではレントゲンで異常はなかったですがCTを撮らないと分からないでしょうか?
少し腫れてるのと粘膜が荒れてるから血が出やすいねと言われ鼻血の薬をつけてネブライザをしその後は鼻血は落ち着いてます。
鼻水も前ほど喉に詰まるような感じはしません。自然に治るまでにはやはり時間がかかるでしょうか?
by ゆみ (2010-02-24 17:49) 

fujiki

ゆみさんへ

副鼻腔炎のチェックには、
MRI が確実だと思います。
CTと違って、放射線被爆はありませんので、
その点でもよりお勧めは出来ます。
ただ、レントゲンで所見がなければ、
少なくとも大きな問題はなさそうだ、
ということは言えるかと思います。

もう少しお時間は掛かるかも知れませんが、
そのままご様子を見ても良いのでは、
と僕は思います。

ご参考になれば幸いです。
by fujiki (2010-02-24 19:08) 

ゆみ

お返事、ありがとうございます。
MRIですね。ついこの前ですが首のMRIを撮りました。気管と食道が写っていて見てもらいましたが特に異常はなかったです。鼻もMRIで見る事が出来るのですね。
耳鼻科の先生はレントゲン異常なしだしちくのう症とかもないだろうと言ってました。
もう少し様子を見てみます。また何か質問させて頂くときはよろしくお願いします。アドバイスありがとうございました。
by ゆみ (2010-02-24 20:48) 

まさ

はじめまして、こんにちわ。
ちょっとお尋ねします。現在ニューロタンを飲んでいます。ARBはアンジオテンシンⅡ(AⅡ)をブロックしますが、ブロックされたAⅡはどこへ行くんでしょうか?何か他へ作用しないのですか?
またAⅡが効かない結果、腎臓はレニンを作り続けると思うのですが、それによる腎臓の負担はないのでしょうか?またそのレニンあるいはAノーゲン、AⅠ、ACE等による他への作用はないのでしょうか?
よろしくお願いします。
by まさ (2012-02-26 01:04) 

fujiki

まささんへ
完全にブロックする、
ということは実際には有り得ないので、
「過剰な作用」を抑制する、
というくらいの意味合いで考えた方が良さそうです。
完全にブロックしてしまえば、
身体は塩分を維持することが困難となり、
多くの問題が生じます。
レニンはARBの使用により、
当然増加するので、
そのことに弊害があるのではないか、
という意見もあります。
直接レニン阻害剤という薬もあり、
そちらの方が良いのではないか、
という意見もありますが、
臨床的にはしっかりとした結論は出ていないようです。
こうした薬は、
理屈と実際に使用してみた時の効果とは、
意外に違いのあるもののようです。
by fujiki (2012-02-27 08:23) 

まさ

こんにちわ、迅速なご返事ありがとうございます。

ご説明でニューロタンの理解が深まりました。
また臨床的には結論が出てない等のお話で、
現状がわかり今までより納得して薬を服用できます。

今のところ25mm1日1錠です。
これからも塩分を控え、なるべく進行しないようにしたいと思います。
余談ですが、柿の葉茶をここ7~8年間愛飲してます。
ありがとうございました。
by まさ (2012-02-27 14:01) 

さんらんぼ

いつも、レニンアンギオテンシンシステムが
分かりにくくて困っていましたが、この説明がとても分かりやすくて、すんなり理解できました。
ありがとうございました!!
by さんらんぼ (2014-05-22 07:37) 

fujiki

さんらんぼさんへ
コメントありがとうございます。
そう言って頂くと大変うれしいです。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2014-05-22 07:49) 

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