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ステロイドとワクチンの話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から事務仕事をして、
その合間にPCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はステロイド剤とワクチンの話です。

気管支喘息の患者さんや免疫抑制状態の患者さん、
また膠原病の患者さんは、
今回の新型インフルエンザワクチンの、
優先接種の対象となっています。

気管支喘息の患者さんは、
重症の場合は、ステロイド剤を使用しています。
膠原病の患者さんも、
ステロイド剤を使用している方が多くいらっしゃいます。
ステロイドというのは、
皆さんもよくご存知のように、
免疫を抑える、免疫抑制剤の一種です。

つまり、今回の優先接種の対象者には、
免疫の働きの低下している人が、
多く含まれているのです。

免疫機能の低下している人にワクチンを打つということには、
どのような意味があるのでしょうか?

ワクチンというのは、
弱くした病原体や、その一部分を投与することにより、
身体の免疫を働かせて、
その病原体による病気を予防しよう、
という方法です。

従って、この方法が効果を挙げるためには、
身体の免疫が正常に働くことが、
前提条件である、という言い方が可能です。
抗原で刺激しても、抗体を造る働きが不充分であれば、
ワクチンの効果は期待出来ないからです。

また、生ワクチンというのは、
弱めたとは言え病原体そのものですから、
免疫の高度に低下した人に接種すれば、
その病気に感染してしまう可能性も、
ないとは言い切れません。

そんな訳で、高度に免疫の低下した人には、
生ワクチンは接種してはいけない決まりになっています。

ただ、現在日本で接種されているインフルエンザワクチンは、
新型も季節性も含めて、生ワクチンではなく、
病原性のないウイルスの一部だけを使用した、
「不活化ワクチン」です。

この「不活化ワクチン」は免疫の高度に低下した人に接種しても、
その病気に罹る、ということはありません。
従って、通常接種することに問題はありませんが、
その効果は常識的に考えて、
かなり限定的なものであると思われます。

要するに、「不活化ワクチン」を免疫の低下した人に接種しても、
あまり効果はないと考えられるのです。

その一方で、免疫の低下した人は感染にも弱く、
インフルエンザにも罹り易く、
重症化もし易いと考えられます。

この辺にワクチンという手法の限界があり、
ジレンマがあります。

それでは、免疫の低下した人に、
インフルエンザワクチンは接種すべきなのでしょうか?
それとも接種しても意味がない、と考えるべきなのでしょうか?

この疑問はちょっと大雑把過ぎるかも知れません。
もっと具体的に考えてみましょう。

免疫抑制剤として、最も多く使用されている薬剤は、
おそらくステロイドでしょう。
より正確には「糖質コルチコイド」とその誘導体です。
飲み薬としては、プレドニンがその代表です。

プレドニンを飲んでいる人は、
新型インフルエンザワクチンを接種した方がいいのでしょうか?
それとも打っても意味がないので止めた方がいいのでしょうか?

その答えはステロイドの使用量によります。

通常プレドニンの量として、1日20mg以上を飲んでいると、
免疫の働きはかなり強く抑えられていて、
ワクチンを打っても、その効果は殆どないと考えられています。
この状態で生ワクチンを打てば、
その病気に感染してしまう可能性があります。
従って、そうした方は生ワクチンを打ってはいけません。
インフルエンザの不活化ワクチンを打つこと自体は、
差し支えはありませんが、その効果は殆ど期待出来ない、
と考えられます。
その一方で、1日10mg以下の使用であれば、
生ワクチンに関しても、基本的には接種可能です。
ただ、その効果は矢張りある程度限定的と考えるのが妥当です。
実際少量のステロイドを使用している患者さんで、
ワクチンの効果をみた文献はあまりなく、
その実際の効果は不明である、
というのが正直なところだと思います。

僕が検索した範囲では、
小児の膠原病などで、
免疫抑制剤やステロイド剤を使用しているお子さんに、
インフルエンザワクチンを接種してその効果を見た文献があり、
予防効果が確認出来た、という結果でしたが、
例数も40例程度と少数であり、
その効果はインフルエンザに罹らなかった、
ということで評価しているだけなので、
そこから何らかの結論を引き出すのは、
困難と思われました。

より広い意味合いで言うと、
アレルギーというのも一種の免疫異常です。
アレルギー性鼻炎や花粉症では、
「抗アレルギー剤」という種類の薬が使われますが、
これも広い意味で言えば、一種の免疫抑制剤です。

厳密な検証がされている訳ではありませんが、
アレルギーの薬を長く飲んでいると、
感染症にも罹り易くなることは、
多分皆さんも何となくお感じになっているのではないか、
と思います。

従って、そうした方へのワクチンの効果も、
やや限定的なものになるのではないか、
というのが僕の今の考えです。

いずれにしても、個々の病気の方に対するワクチンの効果が、
しっかり検証されている訳でもなく、
インフルエンザワクチンに関しても、
その効果を示すデータの殆どは、
健康な成人か高齢者を対象としたものであるにも関わらず、
免疫が抑えられた状態の患者さんへのワクチンの接種を優先させる、
という専門家と行政による判断は、
僕には根本的に謝っているように思えてなりません。

今日は免疫抑制剤とワクチンの効果についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 17

ととろん

初めてコメント?質問させて頂きます。
3児の子を持つ母親です。新型インフルエンザに不安を感じてる毎日で、色々検索をした結果、このホームページにたどり着きました。以来、毎日拝見させて頂いております。大変勉強になり感謝しております。
質問させて頂きますが、今回のステロイド薬のお話は、吸入薬についても同じ事が言えるのでしょうか?息子が、気管支喘息で、パルミコートを使用しております。この場合はインフルエンザワクチンの効果はどうなるのでしょうか? お手数ですが、ご意見を聞かせて頂けないでしょうか?
by ととろん (2009-11-06 21:02) 

まみしゃん

お忙しいなか、ご苦労さまです!

膠原病と呼吸器科に通院していますが、ご参考までと思いまして。

プレドニンは1日1錠と少量ですが、ずっと飲んでいます。
テオドールや抗アレルギー薬も、飲んでいます。

膠原病のドクターは季節性のワクチンも「ぜんぜん、問題ありません」と仰いますが、免疫抑制剤の処方を検討されるくらい体調の悪化を自覚している身としては迷うばかりです。

呼吸器科のドクターは「受けたほうがいい」と仰いますし、甲状腺のドクターは「どうせ、罹ったらタミフル飲むようになるんだし・・・」と仰います。

昨年生まれて初めて受けた時は、同じく初めて受けた息子は全く問題なかったのですが、私は微熱とだるさが3日くらい続きました。

外に出ないのがいちばんかと思いますが・・・ひとりではないですし、そういうわけにもいきませんしね^^;

通院がいちばんのリスクのような気がします!
by まみしゃん (2009-11-06 22:43) 

fujiki

ととろんさんへ
コメントありがとうございます。
吸入薬の体内への移行は非常に微量のため、
少なくともワクチンの効果に影響を与えるようなことは、
100パーセントないと考えて頂いてよいと思います。
ご心配される必要はありません。
by fujiki (2009-11-07 08:33) 

fujiki

まみしゃんさんへ
コメントありがとうございます。
「通院が一番のリスク」と言われると、
僕も耳が痛いです。
でも、事実ではありますね。
新型インフルエンザのワクチンについては、
まみしゃんさんの場合、
季節性より慎重に考えた方がいいかも知れません。
by fujiki (2009-11-07 08:36) 

まみしゃん

石原先生、インフルエンザじゃない患者さんより医療従事者のかたがもっとも高リスクですよ!

甲状腺のクリニックは、新型インフルエンザのワクチンも当たらないとドクターが仰ってました^^;

北海道は、第一波が落ち着いてきたようですね。

これから季節性が増えてくるのでしょうが・・・夕刊に季節性ワクチンも足りないと掲載されていました。

昨日の国会答弁は、確かに笑えました・・・

新型のワクチンは、私もですが息子にも受けさせたくないですね。
以前にお話ししたとおり、関連性はないと言われても麻疹ワクチンのあとに肝炎になったので・・・

通学&バイトで毎日外出していますが、おかげさまで身近には発症者はいません。

息子は私が総合病院に通院することでインフルエンザになるんじゃないかと、心配しています。
by まみしゃん (2009-11-07 17:52) 

ととろん

お返事ありがとうございます。
吸入ステロイド薬、全く問題ないとの事で
安心して続けられます。

色々と勉強になります。
毎日拝見するのを楽しみにしております。
また宜しくお願いします。
by ととろん (2009-11-07 20:08) 

てん

今4歳の喘息男児(咳はでますが喘鳴などの発作はこの1年間で1回あっただけです)にワクチン(季節性、新型いずれも)うけさせるべきか悩みに悩んでいる中でこのブログに出会いました。

幼児への効果の低さ、、それなのにこの流行時に計4回も通院するのかという不安、報道の有無を言わさぬ加熱振りと一大臨床実験のような接種の奨励、免疫反応のこと、新型ワクチンの10mlバイアルの問題・・・素朴に疑問に感じ、しかしかかりつけ医からは「そういう考えは珍しい」といわれそれ以上聞けないことに関して書かれていて思わずコメントさせていただいています。お忙しいことと思いますのにもうしわけありません。また診察もしていないのに答えられるはずもないこともわかった上でお感じになっていることだけでも教えていただけるとありがたいです。

オノンを1年間(その他にキュバールを1日1回)服用していますが抗アレルギー剤ということで何か影響があるでしょうか?
喘息患者は重症化しやすいとのことでワクチンが当然といわれているのですが、ワクチンそのものに限定的な感染予防のほか重症化予防はほんとうに期待できるのでしょうか?
重症化している例だけがでてきますが、罹患してなおっている分母の中に喘息患者がどのくらいいるかなどの統計はでているでしょうか?(分母自体がみつけにくくとまどいます)
重症化のほかに喘息自体の悪化についての情報は何かでているでしょうか?

よろしくお願いいたします。

by てん (2009-11-07 21:01) 

てん

ちなみにかかりつけ医は「脳症にかかった人の中にワクチンをうっていた人はいないから」と話されていました。
たしかに1999-2000の統計ではそうなっていたように思いますが、その後ワクチン接種者にもでていたはず。
現在全体像としてはいかがなのでしょうか?

by てん (2009-11-07 21:05) 

或るケミスト

お疲れ様です。
机上の空論でしか対応できない行政の無策ぶりに現場の人たちが振り回されているのは本当に気の毒です。

先日のインフル様の症状(38.5℃、背中の痛み、喉の痛み)が出て、熱は7度台になったとはいえ、痰、やけどのように喉の痛みが激しいのと、声枯れ、おまけに鼻の中にヘルペスが発生しチクチクしたので先週週明け早々に耳鼻咽喉科に行きました。
医師曰く「たぶんこの喉の腫れ方は流感ちゃうで。発熱後48時間以内やったら保険でタミフル出してもええねんけど。それにしても、あんたの齢の割には扁桃腺でかいなあ。無呼吸症候群出てもおかしくないで。鼻の中のヘルペスはまあほっとかなしゃあないわ」といわれ、薬を処方してもらいました。急性咽頭炎との診立て
トミロン200mg×3を二日間服用後にメイアクト100mg×3を二日間服用、セレスタミン、ロキソニン、ステロイド点鼻薬を処方されました。受診時は喉が焼ける様にヒリヒリして夜も眠れない有様でしたが、熱も下がり喉の痛みはすっかり消失しました。ただ、咳が今頃になって少し出ますが・・。

咽頭炎でステロイド内服とステロイド点鼻を出されたのも初めて、また同系列の抗生剤を2種類使うのも初めて、うがい薬も一切出されずと小生にとっては珍しい処方内容でした。
かなり炎症がひどかったんでしょうな。
by 或るケミスト (2009-11-08 04:28) 

fujiki

てんさんへ
コメントありがとうございます。
オノンのような薬に、ワクチンの効果への影響はない、
というのが公式の見解だとは思います。
ただ、僕は抗アレルギー剤は免疫抑制剤の一種、
という考え方なので、
弱いながらも、影響はあるのではないか、と思っています。
重症化の予防という発言の根拠は、
ワクチンを打った高齢者の方が、
打たなかった高齢者よりも、入院が少なかった、
といった幾つかのデータを元にしたもので、
個別の病気や、たとえば脳症のような合併症に対して、
はっきりとした重症化阻止効果がある、
という説得力のあるデータは存在しないと思います。
喘息患者についての、まとまったデータもあまりないと思います。
むしろ僕は一定の感染防止効果は存在すると考えていて、
少なくとも集団接種をした場合の、
集団感染の予防効果は、
データも多く、その存在ははっきりしています。
ワクチンは当然罹らないために打つのです。
「罹ることはあるけれど、重くはならない」
というのは、確かに以前そうした理屈が言われたことはありますが、
あまり根拠のある考えではないと思います。
(ワクチンの誘導する抗体が感染防御抗体ではないことから、
そうした理屈が一時唱えられたのです)
殊更に行政がその理屈を振りかざすのは、
今回の接種が失敗した場合の、
アリバイ作りのように思えてなりません。
by fujiki (2009-11-08 22:29) 

fujiki

或るケミストさんへ
コメントありがとうございます。
急性炎症にステロイドを使うのは、
1つの考えで、僕も注射でハイドロコルチゾンを、
200mgくらい使うことが時々あります。
「サイトカインストーム」のような悪化の形態を考えると、
事例によっては過剰な免疫反応を抑えるために、
ステロイドを使用することは理に適った方法です。
ただ、実際には事例によっては、
免疫を抑制することで、
却って感染を悪化させてしまうリスクがある訳です。
何を指標にして免疫の異常亢進を判断するのか、
というのが解決出来ていない問題なのだと思います。
by fujiki (2009-11-08 22:36) 

てん

お返事をありがとうございました。

個別に重症化を予防するという根拠は薄く、「むしろ僕は一定の感染防止効果は存在すると考えていて、
少なくとも集団接種をした場合の、
集団感染の予防効果は、
データも多く、その存在ははっきりしています。」なのだとしたら、
現在感染が多い年齢層で、集団生活の機会も多い、なおかつ乳幼児よりも接種による予防効果が高いと言われる、学童、青年層と乳幼児の親、また施設入所などの高齢者を優先として、社会全体の感染を低下さることによって、結果的にハイリスクの方を守る方が公衆衛生にかなっていると考えるのは素人考えでしょうか。


専門家が知恵と経験を絞って施策を決めているはず、でもその施策を素人目でみると、どうも引っかかる、納得いく説明を聞く機会もない、という中で何を信じればいいのかわからなくなっています。ということで、まだまだ子供の接種への迷いは続きます・・・。



by てん (2009-11-09 17:21) 

fujiki

てんさんへ
てんさんの言われる通りだと思います。
今回の優先接種の順位は、
基本的にはアメリカのCDCの頂きで、
自主性はないものなのですが、
大きな違いは時間差があり過ぎて、
意味を成さないことになっている点です。
優先接種も声の大きな学会や団体の希望を、
そのまま入れたために、
結果的に訳の分からないものになってしまったのだと思います。
by fujiki (2009-11-09 21:39) 

てん

これまでの先生のブログを今日さかのぼってじっくり読ませていただいた中に、接種の対象について私が書いた上記のようなことはすでに何度も書かれていました。読み込まずコメントしてしまい失礼いたしました。

近ければ是非子供の主治医になっていただきたいのに残念です。

もうひとつ質問させてください。
お答えしづらいことであればお答えいただかなくてけっこうです。
先生の診療所では幼児(4歳児)に対しては積極的にワクチンをすすめていらっしゃいますか?それとも希望があった場合という形でしょうか?
by てん (2009-11-10 00:29) 

fujiki

てんさんへ
4歳児では海外用量に比べて、
国内用量は極端に少なく、
ワクチンの効果は限定的と考えられます。
従って、その点をご説明した上で、
ご希望があれば接種する、という方針で、
基本的には対応しています。
by fujiki (2009-11-10 08:34) 

てん

ありがとうございました。

重ね重ね六合通り診療所が遠いことが残念です。
by てん (2009-11-10 15:03) 

さくら

初めてコメントをさせていただきます。
自身のワクチン接種に関して調べており、
先生のブログに辿りつきました。


海外で猫に噛まれ狂犬病ワクチンを接種しているのですが、
プレドニゾロンを服薬した過去があります。

5月→プレドニンを10mgを2週間、5mgを3週間。計5週間で服薬は終了しました。


狂犬病曝露後ワクチンは7月13日から打っているので、プレドニン中止とワクチン接種まで1ヶ月半ほど空きがあるのですが、
それでも免疫が抑制されている場合はあるのでしょうか?

初めてのコメントで大変不躾で申し訳ありません。
発症すれば致死率100パーセントと聞き、不安でいっぱいです。
もしお答えいただけるのであれば大変ありがたいです。
by さくら (2015-08-26 21:30) 

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