So-net無料ブログ作成

狂犬病とそのワクチンの話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

狂犬病という病気があります。

犬をはじめとする動物に噛まれた後、
一ヶ月以上経ってから、
その特有の症状が現われ、
症状の出てからでは、
たとえ治療を行なっても、
ほぼ100パーセント死亡する、
という恐るべき病気です。
回復した事例は、
世界でも数例しか報告されていないのです。

その存在は何と紀元前23世紀の文書にまで遡り、
人間とこの病気との関係が、
遥か昔から続いていたことを窺わせます。
狼男や吸血鬼の伝説は、
この病気から由来するものだと言われています。
この病気の原因は、
リッサウイルスという名前のウイルスです。
狂犬病というのは、ウイルス感染症なのですね。

狂犬病は主に、
ウイルスに感染した犬に噛まれることで起こりますが、
実は狂犬病自体は全ての哺乳類に感染するので、
コウモリやキツネ、アライグマなどによる感染の事例も、
少数ですが報告されています。

その症状は動物に噛まれてから数ヶ月して、
まず発熱やのどの痛み、咳やだるさなどの、
所謂風邪症状で始まります。
それから1週間ほどして、
今度は不安や興奮が強くなり、
ちょっとした刺激で神経が過敏になり興奮し、
痙攣を起こして激しい痛みを生じます。
水を飲む時に筋肉が痛むので、
水を怖がる「恐水症」と、
風が顔に当たるとのどの筋肉が痙攣するので、
風を怖がる「恐風症」が特徴的です。
更に進行すると全身の痙攣から意識がなくなり、
最後は呼吸が出来なくなって死亡します。

症状が始まってから、治療する方法は殆どありません。
従って、この病気への対応は、
予防に尽きるのです。

狂犬病は日本では1957年以降、
自国での感染の発生はなく、
1970年にネパールから帰国後に亡くなった方が、
1名のみ報告されていましたが、
2006年になって、フィリピンから帰国後の男性2名が、
相次いで発症し、亡くなられるという事態が起こりました。
幸いその後日本国内での発生は認められていませんが、
いつ発生してもおかしくない情勢であることは、
多くの専門家の指摘するところです。

近年インドでは、年間17000人を超える患者さんが報告されています。
また、中国、パキスタン、バングラデシュ、ミャンマーなどのアジアの国でも、
年間1000人以上の患者さんが報告されています。
ただ、新型インフルエンザの事例を考えても、
この数字が氷山の一角であり、
少なくともその数倍の患者さんがいるであろうことは、
ほぼ確実と考えられます。

とすれば、インドや中国などの国に、
ある程度長期間滞在される方は、
予め狂犬病のワクチンを打っておくことが、
絶対に必要であると考えられます。

ところが…

この狂犬病のワクチンが、
実際には極端に品薄の状態で、
予防のために使用することはほぼ不可能なのです。

僕は去年の夏に、中国に行かれる予定の方から、
ワクチンを打ちたいという依頼を受け、
卸に問い合わせをしましたが、
慢性の品薄で、使用は出来ない、との返事でした。

そして、今度は先週に同様の依頼を受け、
再び卸に連絡を取ると、
現状では卸は関与が出来ず、
直接販売元の製薬会社に聞いて欲しい、
との答でした。

それで、その製薬会社の担当者に連絡を取ると、
現状では調達は極めて難しい、との返事です。
本数が少ないため、まず一部のVIPや、
自衛隊の隊員向けの接種が優先されます。
次に国内で患者さんが発生したり、
ウイルスを持つ可能性のある動物に噛まれた時、
などの治療目的の使用が優先されます。
それらの目的に使用する分を差し引いて、
ようやく海外出張などの予防目的の使用が許可されます。
ただ、日本では半年間に3回接種する方法が決められているので、
渡航する場合には、半年前までに申し込まないと、
受け付けてはくれません。

従って、一応申し込みはしましたが、
今回もほぼ絶望的な状況でした。

何故このように狂犬病ワクチンは不足しているのでしょうか?

通常の説明はこうです。

日本で作られている狂犬病のワクチンは、
ニワトリの細胞でウイルスを培養した不活化ワクチンです。
これは副作用の少ない非常に優れたワクチンとされていますが、
国内1箇所のみで作られていて、
ウイルスの増殖に時間が掛かるため、
年間に5万本作るのが限界なのだそうです。
それでも、2006年までは大きな混乱はなかったのですが、
2006年の患者さんの死亡が大きなニュースになり、
需要が急速に高まって、
現在のような事態を招いたのだと言われています。

皆さんはこの説明に納得されますか?

僕はどう考えてもおかしいと思います。

2007年にそうした事態になることは、
理解は出来ます。
しかし、今年は既に2009年で、
需要が拡大してから、もう3年が経過しています。
その間、状況が全く改善しないのは何故でしょうか?
1つの施設の製造量に限界があるのなら、
他の施設でも製造出来るような体勢作りが、
何故出来ないのでしょうか?
もしそれが不可能であるのなら、
安全性の確認出来る海外の製品を、
輸入し使用出来るような体勢作りを何故しないのでしょうか?
輸入ワクチンが、自己責任で接種されているのが、
実状でありながら、
それを改善しようという努力も、
まるでなされていないように見えるのは何故でしょうか?

どう考えても行政の怠慢のように、
僕には思えてなりません。

これでもし、国内での発生が確認されたら、
一体どんなことになるでしょうか?
一種のワクチンパニックのような状態になり、
多分大量のワクチンを緊急輸入するようなことになるのでしょう。
そんな事態になる前に、
安定したワクチンの供給体制の確立を切に望みたいと思います。

感染症の脅威は、
決して新型インフルエンザだけではないのです。

そして、多くの分野において、
行政の怠慢が、
国民の健康を脅かしているように、
僕には思えてなりません。

政権交代で、何らかの変化があるといいのですが…

皆さんはどうお考えになりますか?

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 2

kei☆

はじめまして。ワクチンを調べてて、たどり着きました。
狂犬病、以前テレビで見て、ワクチンがいかに大事かを知りました。

ちょうど、日本のワクチンの製造や認可が、
どれだけ遅れてるのかと、素人ながらに驚き、
ブログでグダグダ愚痴っていましたが、
こちらのブログで、肺炎球菌のことなどを、読ませていただき、
また、さらに、遅れをとってることに驚きました。

効果のあるワクチンはもっと庶民の手の届くところに、
常においてほしいです。
by kei☆ (2009-08-31 23:58) 

fujiki

kei☆さんへ
コメントありがとうございます。
役人は事勿れで責任を回避するので、
専門家が主導して自分で責任を持つような体勢が作られないと、
この問題は解決しないという気がします。
ただ、ワクチンを含めて薬剤は、
必ず副作用などの負の側面があるので、
そのバランスを取りながら方針を決めるのは、
日本のような安全最優先の社会では、
なかなか困難な側面があるようです。
by fujiki (2009-09-01 08:31) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0