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「ゾニサミド」の話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

先週「ゾニサミド」という抗痙攣剤が、
パーキンソン病に効果があるとの報告より、
新たに今年パーキンソン病の薬として再発売されたところ、
何と以前の100倍の薬価が付いた、
との新聞記事がありました。

以下新聞記事を抜粋します。

難病のパーキンソン病の新薬として、大日本住友製薬(大阪市)が今年3月に発売した「トレリーフ」が、同社が以前から同一成分で販売している抗てんかん薬「エクセグラン」の100倍以上の価格で販売されている。 既存の薬が、別の病気への効能が認められ、新しい商品名で認可される例はあるが、医療関係者からは「臨床試験に費用がかかるとはいえ、100倍もの価格差はおかしい」との声が出ている。 トレリーフは、脳内神経伝達物質の働きを強める作用がある「ゾニサミド」を有効成分とし、薬価は1錠(25ミリ・グラム)1084・9円。成分が同じエクセグラン1錠(100ミリ・グラム)38・5円と比べ、同じ量で比べた価格差は112・7倍だ。 薬は病気ごとに認可され、薬価は製薬会社の申請に基づき厚生労働相の諮問機関「中央社会保険医療協議会」が算定する。厚労省医政局は「用量、用法が大きく異なるため、トレリーフは他の抗てんかん薬ではなく、類似のパーキンソン病治療薬と比較して算定する方が適切と判断された」とする。 同社は「エクセグランの臨床試験を独自に重ねた結果、パーキンソン病への効能が判明したため、別の新薬として承認申請し、認められた」と説明する。 パーキンソン病は、医療費の大半が公費補助される特定疾患の一つで、認定患者は2007年度末で約9万2000人。 患者の1人で、脳挫傷後のてんかん予防にエクセグランを1日4錠服用しているという東京都世田谷区の女性(56)は、「1日の薬代はエクセグランは154円だが、トレリーフだと16錠で1万7000円になる」と話す。公費補助で自己負担はないというが、「その分は国民負担」と戸惑いも示す。 国立精神・神経センター病院の村田美穂・神経内科医長の話「ゾニサミドは安く、パーキンソン病にも使いやすいと思い臨床試験にもかかわった。公費補助対象外の軽症患者はトレリーフに手を出しにくいと感じるのではないか」

まあ、酷い話ですね。
薬価制度というのは、
日本の医療制度の理不尽さの、
代表みたいなもので、
一時日本の農業の閉鎖性の代表のように言われた、
米価制度に似た仕組みです。
端的に言えば、国が勝手に薬の値段を定め、
勝手にそれを変えることを許さない制度です。
先発品だけに適用されるものならともかく、
自由競争である筈の「ジェネリック薬品」まで、
現実には国によって価格が決められています。

薬価は上の記事にあるように、
「中央社会保険医療協議会」で決められています。
この怪しげな名称を見ただけで、
公正中立な組織などではないことは、
皆さんにもお分かりかと思います。

薬価の決定は製薬会社の生命線です。
だってそうでしょう。
値段が倍になれば、簡単に利益も倍になる仕組みです。
それでいて、価格が途中で上がることなど、
万に1つもありません。
発売後数年は固定された価格は、
それからどんどん下がり続けます。
新薬の価格が、研究費を上乗せさせたものになるため、
ある程度高額になるのは止むを得ないところですが、
良い薬であるにも関わらず、
ある程度の年数が経てば、
どんどん値段が下がり、
その多くは採算割れのような水準になってしまいます。
その商品の質ではなく、
ただ年数だけで値段が下がってゆくのです。
資本主義の世の中で、
こんな理不尽なことがあるでしょうか。
物価は上昇しても、
薬は値段が下がり続けるのです。

これがどういう結果を生むかと言えば、
製薬会社は常に定期的に新しい薬を出さざるを得ず、
その薬にはやや法外な高い値段が付けられます。
それは画期的な新薬がどしどし発売されれば、
それに越したことはありませんが、
現実にはそんなことはなく、
以前の薬と殆ど違わないのに、
画期的新薬と称される薬の方が、
圧倒的に多数です。

ここで新聞記事にある事例を見て頂きます。

ゾニサミドは商品名がエクセグラン。
大日本製薬という日本の製薬会社が、
1989年に開発した痙攣止めの薬です。
これは日本で開発された唯一の抗痙攣剤です。
他の抗痙攣剤とは異なる、
ちょっと特殊な構造を持ち、
他の抗痙攣剤の効き難い難治性のてんかんに、
その適応が認められています。

当初アメリカでの発売も予定されていましたが、
治験の段階で、尿路結石の副作用が多数認められたため、
海外での承認はされませんでした。
日本の治験では尿路結石はあまり報告がありません。
これは僕の推論ですが、
おそらく結石の核になるような要素がこの薬の代謝物にはあり、
海外では脂質の摂取量が多いために、
尿路結石が多発したのではないでしょうか。
とすれば、日本でも脂肪の摂取が増えている現状を考えると、
この副作用は今後増加する可能性があります。

この薬は、抗痙攣剤ですから、
基本的には脳の興奮を抑える薬です。
ところが、この薬にはそれ以外に、
セロトニンやドーパミンなどのモノアミンを介した神経伝達を、
促進させる作用がある、と考えられています。
神経を抑制する薬の筈なのに、
その一方で神経を活性化させる薬でもあるのです。

パーキンソン病にこの薬が効くという発見は、
上の記事にもコメントを寄せている神経内科の医師が、
偶然に使用したことからだった、
と本人が文章にしています。
パーキンソン病の患者が、たまたま痙攣発作を起こし、
ゾニサミドを使用したところ、
パーキンソン病の症状自体が、
劇的に改善したのです。

パーキンソン病は脳のドーパミンが不足する病気です。
ゾニサミドは抗痙攣剤であると共に、
脳のドーパミンの合成を増やすような作用を持っているのです。

このことから治験が繰り返され、
その薬自体の適応を増やすのではなく、
新たなパーキンソン病の新薬として、
再発売する計画が持ち上がったのです。

製薬会社は合併を繰り返し、
住友大日本製薬と名前を変えていました。

基本的には成分が同じであるのに、
新薬になると100倍の値段になるというのは、
どう考えても常軌を逸した話です。
日本で開発された薬であり、
ある特定の製薬会社に、
それなりの利潤をもたらそう、
という意図があったのではないか、とは推察されます。

ただ、ここで皆さんに分かって頂きたいことは、
ある薬が当初とは別の用途に使用されることは、
往々にしてあり、
その場合、もし元の薬の名前のままの適応追加であれば、
薬価が上がることなどない、
という理不尽なシステムです。

誰かの気分で簡単に100倍の値段が付いてしまうのであれば、
その逆の事態もまた存在するのです。
多くの優れた薬が、
医療費削減の名の下に、
不当に安い価格を設定され、
インチキ新薬を連発しないと、
経営が成り立たないのが製薬業界です。
100倍の値段は法外ですが、
逆に言うと、優れた薬である抗痙攣剤のゾニサミドが、
その100分の1の値段というのはどうでしょうか?
要するに抗痙攣剤としてのゾニサミドの薬価も、
極端に切り下げられ、
不当に安い値段が付いている、という意味でもあるのです。
薬の値段がこのようにいい加減に、
杜撰に決められているということが、
日本の医療水準を下げ、
薬剤の副作用を増やしている要因でもあります。

日本の薬価制度というのは、
言ってみれば、年功序列賃金のようなものです。
ただ、この場合は逆年功序列です。
ただ単に新しいだけで、価格は上がり、
古いというだけで価格は下がります。
そこには、その商品の能力を評価しようという姿勢は、
微塵もないのです。

ある薬に適応が追加され、その有効性が確認されれば、
価格もそれによって改定されるべきです。
特許期間も適応追加によって延長されて然るべきでしょう。
その代わり新薬は本当に画期的なものに限って認めるべきです。
そうすれば、トータルに考えれば、
患者さんの負担もむしろ減り、
製薬会社も新しい薬ではなく、
優れた薬をより多く売ろうとするようになるでしょう。
良い商品、患者さんに役に立つ商品に、
その分適正な範囲で高い価格の付くのは当然のことです。
新薬でありさえすれば、高い値段が付き、
新薬を売らなければ儲からない、という構造が、
医療全体を歪めているのではないか、と思うのですが、
皆さんはどうお考えになりますか?

今日はゾニサミドと薬価についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 4

iyashi

私も最近発売されたクラビット500mg錠にも疑問を感じていました。

ニューキノロン系抗菌剤は血中濃度を一気に上昇させた方が効果的な事は以前から言われていたことです。

しかし少し前までは1日量600mgを分3で使用する場合は重症感染症の場合だった筈です。

実際にベタに6錠分3で使用していると、査定でカットされていました。

それが今になって如何にも最近判ったかのように新薬として500mg錠が発売されたのです。

勿論新薬扱いなのでジェネリックは使用できません。

それであったら適応追加で済む話なのではないでしょうか?

しかもいずれはクラビット100mg錠は姿を消すらしいです。

要するに100mg錠はジェネリックにまかせて自分たちは500mg錠の市場を独占すればいいという考えなのでしょうが、私も最近実物を患者さんにお渡ししましたが、高齢者などにはとてもそのまま服用できるような大きさのものではありません。

医療費削減のために厚生労働省はジェネリックを推進している傍ら、このような製剤に認可を与えるという矛盾をどう考えているのか.....。
by iyashi (2009-08-10 12:42) 

fujiki

iyashi さんへ
コメントありがとうございます。
最近ようやく海外なみの用量が認められるようになった、
というのはある意味進歩ではあると思うのですが、
今までの抗生物質の用量設定は、
そのまま放置されているのですから、
矛盾だらけの話だと思います。
最近合剤がやたらと多いのも、
製薬会社と国の騙し合いのような部分があります。
ジェネリック推進で見かけ上医療費抑制と言いながら、
ばんばん新薬を承認しているのですから、
おかしな話ですね。
もっと本質的な議論が必要だと思います。
それにしても、あの錠剤の大きさは酷いですね。
僕は250mg錠しか使っていません。
by fujiki (2009-08-10 16:50) 

臨床研修医

ミルクアルカリ症候群のキーワードでやってまいりました研修医です.
とても思慮深い内容でいたく感銘をうけました.定期的にお邪魔して勉強させて頂きたいと思います^^ ご多忙のなか更新作業大変でらっしゃると思いますが影ながら応援致しております.
by 臨床研修医 (2009-08-23 18:30) 

fujiki

臨床研修医さんへ
コメントありがとうございます。
そう言われると恐縮です。
研修医時代はもっと勉強しておけば良かったと、
今思うと反省点ばかりです。
大事な時期だと思いますので、是非頑張って下さい。
by fujiki (2009-08-23 20:59) 

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