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可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)の話 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
トウガラシの頭痛.jpg
2018年のBMJ Case Rep.誌の症例報告ですが、
世界一辛い唐辛子を食べて、
その直後に脳の血管攣縮を起こしたという、
インパクトのある面白さから、
一般のニュースでも取り上げられているものです。

まず、紹介されている事例をご説明します。

35歳の男性が、
激辛コンテストのような大会で、
ギネスで認定されている、
世界一辛い唐辛子「キャロライナ・リーパー」を食べたところ、
その直後から後頭部から首にかけての激しい痛みが起こり、
それが頭全体に広がりました。
その後日に何度も、
雷に打たれたような痛みの発作(雷鳴様頭痛)が、
彼を襲います。

数日後に救急病院を受診して精査が行われました。
脳内出血やクモ膜下出血は否定されましたが、
CTによる血管造影で、
次のような所見が認められました。
こちらです。
唐辛子による血管攣縮.jpg
左のAが頭痛時のもので、
矢印の部分が異常に収縮した血管を示しています。
右のBは症状が改善した5週間後のもので、
同じ場所の血管が、
明らかに太く映っているのが分かります。

血管攣縮というと、
心臓を栄養する冠状動脈という血管に起こる、
冠攣縮性狭心症が有名ですが、
脳の血管にも同様の攣縮が起こり、
それが激しい頭痛などの原因となることが報告され、
2007年に可逆性脳血管攣縮症候群という名称が提唱されました。

その原因は不明の場合も多いのですが、
大麻などの麻薬や、
抗うつ剤のSSRI、片頭痛治療薬のトリプタン製剤などが、
その原因薬物として報告されています。
妊娠も誘因として報告されています。
突然起こる雷鳴様と表現されるような激しい発作性の頭痛がその特徴で、
その診断は脳のCTやMRIなどの造影検査で、
出血などが否定され、血管の攣縮が確認されれば確定します。

この病気は基本的には一時的なもので、
後遺症などは残さないのですが、
元々の血管に脆い部分などがあると、
攣縮をきっかけとして脳梗塞に至ったり、
クモ膜下出血や脳内出血を合併する事例も報告されています。
つまり、そう甘く見ることも危険です。

治療はカルシウム拮抗剤
(海外ではニモジピン、国内ではベラパミル)が、
一定の有効性があるとして使用されていますが、
その効果を疑問視する意見もあるようです。

今日は激辛唐辛子で誘発される頭痛という、
ちょっと興味深い症例報告についての話題でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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帯状疱疹予防ワクチン発売 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
帯状疱疹予防ワクチン発売.jpg
グラクソ社の2018年3月23日の発表資料ですが、
日本初の帯状疱疹予防ワクチンが国内製造販売承認を得た、
という内容です。

このワクチンについては過去にも何度か取り上げています。

現状有効性の確認されている、
唯一の帯状疱疹予防の不活化ワクチン、
HZ/suワクチンと呼ばれている、
免疫増強剤を添加したワクチンが、
近いうちに日本でも使用可能となるようです。

今日は帯状疱疹を予防するワクチンについてのこれまでの経緯を、
まとめておきたいと思います。

帯状疱疹は身体に帯状の湿疹が出来、
強い神経痛を伴う病気で、
症状自体は一時的ですが、
その後に帯状疱疹後神経痛という、
その名の通りの辛い神経痛が長く残ることがあります。

この病気は水ぼうそう(水痘)と同じウイルスの感染によって起こります。
初感染は水ぼうそうという形態を取り、
おそらくは神経節という部分に、
残存しているウイルスが、
身体の細胞性免疫が低下すると、
再燃して帯状疱疹を起こします。

通常水ぼうそうのウイルスに感染したことがあるかどうかは、
血液の抗体の上昇で判断し、
抗体が上昇していれば、
再び水ぼうそうに感染することはないのですが、
身体に潜んでいるウイルスが、
帯状疱疹という形で再燃することは、
抗体が陽性であっても起こり得るのです。

水ぼうそう自体の予防は、
抗体があれば充分ですが、
帯状疱疹の予防には、
このウイルスの抗原に反応する、
CD4陽性のTリンパ球という、
免疫細胞の産生が必要と考えられています。

水ぼうそうに罹ってしばらくの間は、
こうした細胞も多く存在しているので、
帯状疱疹は予防されているのですが、
時間が経つと次第にその数は減り、
年齢と共にその産生能自体も低下するので、
帯状疱疹が発症し易くなる、
という理屈です。

さて、帯状疱疹を予防するには、
抗原刺激を与えて、
それに反応するリンパ球が増えれば良いということになります。

その方法として、
通常考えられるのはワクチンの接種です。

水痘ワクチンは生ワクチンで、
このウイルスを弱毒化したそのものです。

通常小さなお子さんに2回接種して、
水ぼうそう自体を予防することを目的としています。

それでは、
このワクチンを大人に打てば、
免疫は再び賦活され、
帯状疱疹が予防されるのではないでしょうか?

この目的で国産のワクチンより、
基準値としては10倍以上多い抗原量を持つワクチンが、
帯状疱疹予防用に開発され、
アメリカにおいて大規模な臨床試験が行われました。
商品名はZOSTAVAXです。
その結果は2005年のNew England…誌に発表されています。

それによると、
50から59歳の年齢層においては、
帯状疱疹用の強化水痘ワクチンの1回接種によって、
帯状疱疹の発症が70%抑制され、
60から69歳では64%、
70歳以上では38%の抑制が認められた、
という結果になっています。
打った場所の腫れや痛み以外には、
目立った副反応は見られていません。
ワクチンの有効性は接種後10年は維持されますが、
発症の抑制が有意に確認されているのは、
8年までというデータがあります。

このように、
強化水痘ワクチンを接種することによって、
ある程度の細胞性免疫の賦活が起こり、
帯状疱疹の発症が、
一定レベル予防されることは間違いがありません。

ただ、数字を見て頂くと分かるように、
満足の行く効果とは言えません。

日本においても1990年代の早い時期に、
国産の水痘ワクチンを高齢者に接種した場合、
50から69歳で約90%、
70歳以上で約85%で、
接種による細胞性免疫の上昇が認められた、
という研究結果が報告されています。

しかし、これは敢くまで細胞性免疫に動きがあった、
というだけのもので、
それが帯状疱疹の予防に充分なレベルであるのかを、
実際に確認しているものではありません。

日本においては、
従来から使用されている水痘生ワクチンが、
そのまま50歳以上の帯状疱疹予防への適応となり、
2016年の4月より承認され、
添付文書の改訂が行われました。

日本の文献には国産の水痘ワクチンの力価は、
欧米の帯状疱疹予防用の物より、
基準値としては低いけれど、
実際にはその力価はかなり幅のあるものなので、
平均するとほぼ同等の効果が期待出来る、
という記載が多く見られ、
今回改訂された添付文書においても、
海外の帯状疱疹予防ワクチンと同等のもの、
という考えから、
臨床的な有効性のデータは、
海外データがそのまま引用されています。
しかし、直接比較をして効果を検証しているものではないので、
その真偽は定かではありません。

要するに、
国産のワクチンを帯状疱疹予防に使用しても、
有効であるかどうかの、
精度の高いデータは存在していないのです。
(この点については、ほぼ確実と思うのですが、
全ての知見に目を通している訳ではないので、
もしデータが発表されているようでしたら、
優しくご指摘を頂ければ幸いです)

さて、前述の海外データでも分かるように、
水痘の生ワクチンを高齢者に使用した場合、
その効果は高齢になるほど減弱し、
70歳以降での接種の意義はあまり大きいとは言えません。
また、生ワクチンという性質上、
高度に免疫の低下した患者さんや、
骨髄幹細胞移植後の患者さんなどは禁忌となっています。

そこでより効果が高く、
高齢者や免疫の低下した患者さんにも、
使用の可能なワクチンの開発が、
海外においては進められました。

2015年のNew England…誌に、
その第3相臨床試験が発表されています。
それがこちらです。
50歳以上の帯状疱疹ワクチン.jpg

使用されたワクチンは、
今回本邦発売のグラクソ社のもので、
HZ/suワクチンと命名されています。

これは水痘・帯状疱疹ウイルスの一部の糖蛋白抗原に、
細胞性免疫の強い増強作用のある、
AS01Bという免疫増強剤(アジュバント)を添加したものです。

このワクチンを2ヶ月間隔で、
2回筋肉注射をして、
その後平均で3.2年の経過観察を行ない、
その間の帯状疱疹の発症を、
偽ワクチン接種群と比較しています。

トータルの事例数は年齢50歳以上の15411例で、
それを7698例のワクチン接種群と、
7713例の偽ワクチン群にくじ引きで振り分けます。

結果は全体と、
50から59歳、60から69歳、70歳以上という、
年齢毎に解析もされています。
これは勿論、
強化水痘生ワクチンの臨床試験の結果と比較するためです。

その結果…

トータルでは観察期間中に、
偽ワクチン群では210例(年間1000人当たり9.1例の発症率)
の帯状疱疹が発症したのに対して、
ワクチン接種群では6例(年間1000人当たり0.3例)に留まっていて、
ワクチンの有効率は97.2%(93.7から99.0)と算定されました。

これを年齢層毎に見ると、
50から59歳の有効率が96.6%、
60から69歳の有効率が97.4%、
70歳以上の有効率が97.9%で、
年齢に関わらずに高い有効率が維持されていることが分かります。

両群の有害事象の頻度は、
ワクチン接種群が高くなりましたが、
その多くは接種部位の腫れや痛みで、
自己免疫疾患の発症や死亡リスクなどについては、
両群で明らかな差は認められませんでした。

帯状疱疹の予防という観点では、
ここまで有効なワクチンはこれまでになく、
この結果はかなり画期的なものと言って良いと思います。

ただ、この試験結果では、
70歳以上の年齢層の対象者は、
ワクチン接種者で1809名、
コントロールを含めても3632名です。

これでは70歳以上の高齢者への、
効果と安全性を確認するには不充分ということで、
同一試験の延長として、
同じ第3相の臨床試験として、
ワクチン接種群が6950名、
コントロール群が同じ6950名、
平均年齢が75.6歳で、
全て70歳以上の高齢者においてのデータが発表されています。
平均の観察期間は3.7年です。
それがこちらです。
70歳以上の帯状疱疹ワクチンの効果.jpg

観察期間中に、
ワクチン接種群での帯状疱疹の発症率は、
年間1000人当たり0.9件(実数で23件)であったのに対して、
コントロール群では9.2件(実数で223件)で、
ワクチンの有効率は84.2%(84.2から93.7)と算出されました。

年齢別に見ると、
70代が90.0%で、
80歳以上が89.1%です。

これを2015年に発表された、
50歳以上の年齢層の試験と合わせて解析すると、
70歳以上の16596例のデータとして、
ワクチンの有効率は91.3%(86.8から94.5)で、
帯状疱疹後神経痛の予防効果は88.8%(68.7から97.1)でした。

重篤な有害事象は、
コントロール群との間で有意な差はありませんでした。

この結果を見る限り、
70歳以上の年齢層においては、
従来の水痘生ワクチンやその抗原量を調整したワクチンでは、
帯状疱疹予防効果は不充分で、
免疫増強剤を使用したサブユニットワクチンに軍配が挙がる、
ということになります。

ただ、これはZOSTAVAXとの直接比較ではありません。
両者の臨床データを確認してみると、
ZOSTAVAXのコントロール群の方が帯状疱疹後神経痛の頻度は多く、
より感染が悪化しやすいような対象が、
選ばれている、という可能性があります。

従って、全く同じ対象群で比較すれば、
サブユニットワクチンとそれほどの差はないのではないか、
という推測も可能なのです。

今回のグラクソ社の臨床試験のデータの中には、
日本のものも含まれていて、
上記報道資料の記載によれば、
日本のみの解析でもほぼ同等の効果があったようです。

このワクチンが帯状疱疹予防に有効であることは、
ほぼ間違いがありませんが、
免疫増強剤を添加したワクチンが、
高齢者に使用されることは、
本邦ではこれまであまりなかったことでもあり、
その導入後の経過については、
慎重に情報を収集してゆきたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コーヒーの代謝への影響の新知見 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
コーヒーの代謝変更作用.jpg
2018年のJournal of Internal Medicine誌に掲載された、
コーヒーを飲むことによる身体の変化を、
多くの代謝産物の分析で検証した論文です。

これまでに何度も触れているように、
コーヒーを1日3から4杯程度飲む習慣が、
糖尿病や心血管疾患、一部の癌、パーキンソン病などのリスクを低下させ、
生命予後にも良い影響を与えることは、
国内外の多くの疫学データが一致して示しているので、
ほぼ間違いのない事実と思われます。

ただ、その原因がどこにあるのかと言う点については、
必ずしも明らかではありません。

コーヒーに含まれる生理活性物質として、
有名な物は何と言ってもカフェインですが、
カフェインには抗炎症作用や強心作用などがある一方で、
血圧を上昇させたり不整脈を誘発するなど、
身体に有害と思えるような作用があることも知られています。

コーヒーの作用がカフェインの作用と同一であるとすれば、
別にそれがコーヒーである必要はない訳で、
カフェインのサプリメントでも良く、
またお茶など他の飲み物でも同じ筈ですが、
そこのところはまだ差があるかどうかはっきりしません。

コーヒーにはカフェイン以外にも、
100種類を超える生理活性物質が含まれている、
というように言われていますが、
その役割は意義もはっきりとはしていないのです。

今回の研究はフィンランドにおいて、
47名のコーヒー愛飲者を対象として、
最初の一か月はコーヒーを一切飲まず、
次の一か月は1日に4杯(1杯150ミリリットル)のコーヒーを飲み、
その次の一か月は1日に8杯のコーヒーを飲んで、
その終わりの時期に、
血液中の115種類の代謝物を測定して解析します。

その結果、
当然影響するカフェインとキサンチン関連の代謝産物以外に、
ステロイド代謝の代謝物や、
脂質代謝に関連する代謝物、
また身体のバランスを調節するとされるエンドカンナビノイドの代謝物などに、
コーヒーの飲用による増加や減少などの明確な変動が認められました。
この全ての意味合いは不明ですが、
一部は脂肪の分解に結び付く変化や、
食欲の低下に結び付くような変化も示唆されていて、
カフェイン以外のこうした代謝産物の増減などの効果が、
コーヒーの作用に関連しているという知見は、
これまでにあまりないもので、
今後こうした面でも検証も期待をしたいと思います。

コーヒーはなかなか面白いですよね。

最近はツボなのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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原発性アルドステロン症の治療による予後(イタリア臨床データの解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
PAの予後と心房細動.jpg
2018年のHypertension誌に掲載された、
原発性アルドステロン症の治療と、
その予後の差についての論文です。

原発性アルドステロン症というのは、
副腎の腺腫もしくは過形成によって、
水や塩分を身体に保持する役割のある、
アルドステロンというホルモンが過剰に分泌されて、
それにより血圧が上昇し、
血液のカリウム濃度が低下するという病気です。

以前は稀な病気と考えられていましたが、
最近では高血圧の患者さんに、
簡単なスクリーニングの血液検査が、
各種のガイドラインで推奨されるようになり、
実際には多くの患者さんがいることが分かって来ました。

原発性アルドステロン症の病態が明らかになるにつれ、
通常の本態性高血圧症と比較して、
その生命予後や心血管疾患のリスクなどが、
より悪いのではないか、
というデータが複数報告されるようになりました。

ただ、データの多くはカルテを後からまとめたようなもので、
患者さんを登録して長期間経過をみたようなものは、
殆どありません。

原発性アルドステロン症の治療は、
片側の腺腫であれば手術による治療が、
両側の過形成であればアルドステロン拮抗薬などの薬物療法が、
通常は行われています。
しかし、この治療により、
患者さんの予後が改善するかどうかについても、
そのデータは限られたものしかありません。

今回の臨床データはイタリアで行われた、
高血圧症における原発性アルドステロン症の頻度と、
その予後を検証した、
PAPY研究という臨床データを解析したもので、
通常の本態性高血圧と原発性アルドステロン症の、
長期間の治療による予後の差を比較しています。

対象となっているのは1125名の高血圧の患者さんで、
中間値で11.8年という長期の経過観察が行われ、
最終的に解析が可能であったのはそのうちの1001名でした。
その内訳は本態性高血圧として投薬治療の行われた894名と、
原発性アルドステロン症で手術が行われた41名、
そして過形成との判断で薬物治療が行われた66名です。
ほぼ11%が原発性アルドステロン症の患者さんだった、
ということになります。

治療を行なった本態性高血圧の患者さんと比較して、
血圧の数値は補正した上で、
原発性アルドステロン症の患者さんでは、
生命予後は悪い傾向を認めましたが、
有意な差はついていません。

心血管疾患の中で明確な差が付いたのは心臓細動のリスクで、
投薬治療を継続した原発性アルドステロン症の患者さんは、
本態性高血圧と副腎の手術後の患者さんより、
1.82倍(95%Ci: 1.08から3.08)
有意に心房細動の発症リスクが増加していました。
手術治療をした原発性アルドステロン症の患者さんでは、
そうしたリスクの増加は認められませんでした。

今回のデータは元々原発性アルドステロン症の、
高血圧の患者さんの中での有病率を見たものなので、
実際のこの病気の患者さんの数自体はそう多くはなく、
事例にバイアスがあるという可能性も否定は出来ません。
心房細動のリスク以外にはあまり差がなかったようなので、
本当にそれが治療の差によるものなのか、
判断はまだ難しいところだと思います。

ただ、中間値で10年を超える経過観察が行われたデータは、
この分野ではあまり例がなく、
原発性アルドステロン症を治療してアルドステロン値を正常化することにより、
将来的な不整脈のリスクを低下させる可能性を示したものとして、
意義の大きな結果であると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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せん妄の治療に安全な薬は何か? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
リスパダールと非定型精神病薬の比較.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
せん妄の治療に使用する薬の安全性を比較した論文です。

せん妄状態というのは意識障害の一種で、
典型的なものは集中治療室で患者さんが突然暴れだしたり、
認知症の患者さんが、
夜中に混乱して騒ぎ出すような状態のことを指しています。

こうした時には所謂安定剤はあまり効果はなく、
むしろせん妄を助長することもあるので、
抗精神病薬と呼ばれるタイプの薬が、
使用されることが通常です。

この目的で多く使用されて来た薬の代表が、
ハロペリドール(商品名セレネースなど)です。

ハロペリドールはせん妄のコントロールに、
有用性の高い薬剤ですが、
その一方で錐体外路症状や不整脈の誘発作用など、
副作用や有害事象の多い薬でもあります。

そこで非定型精神病薬と呼ばれる薬が開発されました。
非定型精神病薬はオランザピン(ジプレキサ)やクエチアピン(セロクエル)、
アリピプラゾール(エビリファイ)などがその代表で、
錐体外路症状が少ないことが特徴です。

このためにせん妄状態の治療においても、
ハロペリドールのような古いタイプの抗精神病薬より、
非定型精神病薬が第一選択として使用される流れになっています。

ところが…

せん妄の治療などにおいて、
ハロペリドールより非定型精神病薬がより安全である、
という根拠はそれほど確かなものではありません。
せん妄や認知症に対する古いタイプの抗精神病薬の使用が、
患者さんの生命予後に悪影響を与えるというのは、
ほぼ間違いのない事実ですが、
それと比較して生命予後の改善に非定型精神病薬が結び付いた、
というようなデータはあまり精度の高いものがありません。
そのため、アメリカのFDAは定型と非定型の区別なく、
認知症へのこうした薬剤使用のリスクを警告しています。

古いタイプの抗精神病薬と比較した時の非定型精神病薬の安全性は、
あまり明確なものではないのです。

今回の研究はアメリカの複数の医療機関において、
心筋梗塞の急性期の入院中に、
せん妄などのために古いタイプの抗精神病薬である、
ハロペリドールを使用した場合と、
非定型精神病薬である、
オランザピン、クエチアピン、リスペリドンを使用した場合を、
比較検証したものです。
6578名の抗精神病薬が使用された患者さんのうち、
1688名はハロペリドールが使用され、
4910名は非定型精神病薬が使用されていました。

患者さんの背景などを補正して比較したところ、
非定型精神病薬と比較して、
ハロペリドールの使用により、
使用7日間の死亡リスクは、
1.50倍(95%CI; 1.14 から1.96)有意に増加していました。
具体的には非定型精神病薬の使用時に、
患者さん100人1日当たり1.1名の死亡があったのに対して、
ハロペリドールの使用時には1.7名と増加していました。

ただ、この死亡リスクの増加は、
治療開始4日目でピークとなり、
5日目以降では有意な差はなくなっていました。

このように若干の差が、
入院時のせん妄に対する両者の薬剤では認められましたが、
ハロペリドールの使用期間は、
非定型精神病薬と比較して短く済んでいるので、
明確にハロペリドールのリスクが高いとも言い切れず、
現状では両者の薬剤とも、
心臓病の患者さんには一定のリスクがある、
というように考えておくのが良いように思います。

ただ、臨床の現場においては、
こうした薬剤の使用が必要となることもまた、
稀なことではないのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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