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男性ホルモンを使うと嘘を吐かなくなる? [ゆるい論文]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
テストステロンが嘘を予防する..jpg
2012年のPLOS ONE誌に掲載された、
男性ホルモンの使用により嘘を吐かなくなるという、
ちょっと信じがたいような心理研究の論文です。

非常に面白いのですが、
そんなことがある訳がない、
というのが常識的な考えで、
特に追試が行われている、という感じもなく、
掲載されているのが、
速報性重視でネットのみのPLOS ONEですから、
ゆるい論文という扱いが妥当だと思います。

どうか真顔では読まないようにお願いします。

テストステロンは男性ホルモンで、
脳の発達にも大きな影響を及ぼし、
また社会生活における行動の仕方にも、
影響を少なからず及ぼしている、
と言われています。

男性ホルモンは男性の攻撃的な言動と、
関連があるとする報告があります。
こうしたネガティブな面がある一方で、
プライド(自尊心)や向上心にも、
影響を及ぼしているという、
ややポジティブな側面もあります。

誰も見ていない場所で、
目先の損得のために嘘を吐くという行為は、
プライドが低いと発生しやすいという考え方があります。

それが事実であるとすると、
男性ホルモンであるテストステロンの使用により、
男性は嘘を吐かなくなるのではないでしょうか?

この仮説を大真面目に検証しているのが今回の研究です。

対象は平均年齢24歳の健康な男性91名で、
試験の実行者にも本人にも分からないように、
くじ引きで2つのグループに分け、
一方は試験の前日に男性ホルモンのゲルを皮膚に塗り
(テストステロン50㎎相当)、
もう一方は偽薬を同じように塗って、
その翌日に心理テストのような試験を行います。
外用剤の効果は21から24時間は持続すると想定されています。
検査が終了してから血液検査を行い、
テストステロンの外用剤が有効であったかを確認します。

心理テストの項目の中に、
サイコロを振ってその目を申告すると、
その目の数に従って報酬が支払われる、
というものがあります。

これが誰も見ていないので、
実際にはサイコロの目は違っていても、
高い報酬の数字を申告すれば、
要するに嘘を吐けば、
報酬は高く支払われるということになるのです。

その試験の結果を解析すると、
最も報酬の高い目の申告された頻度は、
実際に想定される確率分布より遥かに高かったのですが、
偽薬より男性ホルモン使用群で、
その頻度は有意に低くなっていました。

つまり、嘘を吐いて報酬を高く受け取った人は、
偽薬より男性ホルモン使用者で少なかったということになります。

検査法も厳密で結果も比較的クリアなものなのですが、
健康な若者の男性ホルモンの濃度を、
少し上昇させただけで嘘を吐かなくなる、
というのは如何にも不自然で、
何か別個の要因があったのではないか、
とどうしても考えたくなります。

ただ、はっきり嘘とも断定は出来ません。

これが事実なら男性ホルモンが低下する高齢男性は、
全て嘘吐きということになりますが、
「うーん。ひょっとしたらそうかもね…」
などと思えてしまうところが、
なかなかしたたかな結果だとも思うのです。

今日は男性ホルモンを使用すると、
たちどころに嘘を吐かなくなるという、
ゆるい論文についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

「恋愛をするとボケない」のエビデンス [ゆるい論文]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
恋愛で神経成長因子が増加する.jpg
2006年のPsychoneuroendocrinology誌に掲載された、
脳神経の再生を促す物質が、
恋愛の初期には沢山分泌されるという、
「ほんまかしら…」という感じの論文です。

内容的には面白いのですが、
なるほど、と思う反面、でもなあ…という側面もあり、
Medline などで検索しても、
その後目立った追試のようなものはないようです。

従って、「ゆるい論文」というカテゴリーにさせて頂きました。

事実としてではなく、
雑談のネタ程度に思って頂ければと思います。

昔は脳神経の細胞は、
再生はしないで減少するだけ、
というように考えられて来ました。

しかし、現在では一定の条件があれば、
脳神経細胞も再生したり、
それまでにない神経ネットワークが作られたりすることが、
大人になってからもあると考えられています。
中でも間違いのないのが、
認知症で減少することが知られている、
海馬の神経細胞の再生です。

こうした一旦障害を受けたり減少した神経細胞が、
再生したり分化する時に必要な物質が、
神経栄養因子(neutrophins)です。

この神経栄養因子のうちの1つが、
神経成長因子(NGF)と呼ばれている蛋白質で、
神経細胞や免疫細胞などで産生分泌され、
神経細胞や神経ネットワークの再生や分化に携わります。

このNGFは情動に関わる神経の興奮にも関連があり、
アルツハイマー型認知症ではその分泌が早期に減少しますし、
うつ病でも減少します。
その一方で強迫性障害や全般性不安障害では、
NGFの濃度は血液中でも増加することが複数報告されています。

それでは、恋愛はNGFにどのような影響を与えるのでしょうか?

それを大真面目に研究したのが上記の論文です。

イタリアにおいて、
情熱的な恋に堕ちたばかり、
という若い男女(平均年齢24.4歳で19から31歳まで)を募集し、
恋に堕ちて半年以内という条件で、
恋愛スケールのようなもので、
その熱愛レベルを数値化します。

それを同年齢で恋などしていない、
という寂しい人達をコントロールにして、
両群で各種の神経栄養因子を血液で計測、
その違いを比較しています。

更には最初の調査から1年から2年後に、
同じ対象群に同様の調査と血液検査を行います。

恋愛群とコントロール群は、
共に58名が登録され、
恋愛群のうちの39例では、
1から2年後の再検査も行われています。

その結果…

神経栄養因子の中でNGFのみが、
恋愛群ではコントロール群より有意に増加していました。
そして、熱愛のスコアの数値と、
NGFの血液濃度も有意な相関を示しました。
つまり、熱愛度が高いほど、
熱烈な恋愛ほどNGFは上昇していた、
という結果です。

更に同じパートナーとその後1年以上過ごしている時点で、
同じ検証を行うと、
当然ですが熱愛のスコアは以前より低下していて、
それに伴ってNGF濃度も、
コントロール群と同じレベルまで低下が認められました。

つまり、
NGFは恋愛の初期の「くるったような」状態では、
明確な増加を示していましたが、
恋愛も安定期に入ると、
その増加は認められなくなったのです。

NGFが強迫性障害の時に増加する、
という現象から考えて、
恋愛もある種の強迫であって、
その時に脳で起こっていることは、
それほど違わない、と考えると、
なるほどと思えなくもない結果です。

ただし…

NGFは精神的に不安定な状態や変動のある状態では、
結構変動することが知られていますから、
単純にそうしたことを示しているだけで、
「恋愛すると認知症が予防出来る」
というのはちょっと飛躍があるようにも思います。
また、これはそもそも持続する反応ではないので、
それが脳に及ぼす影響も、
また一時的なものであるようにも思います。

そもそも恋愛というのはかなり主観的な現象ですから、
この結果をもって恋愛と神経成長因子との関連を論じるのも、
かなり無理があるようにも思い、
そんな訳でこうした研究は、
何処か香ばしく、ゆるいものになっているように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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よろしくお願いします。

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焼酎は水よりも血糖を下げる!? [ゆるい論文]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前中で診療は終わり、
午後は事務作業や大掃除の予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
飲酒後の血糖値.jpg
今年のPeerJ誌に掲載された、
非常に不思議な雰囲気の論文です。

PeerJというのは、
比較的掲載のハードルが低い、
オープンアクセスでウェブのみの医学誌です。

そこに発表された論文の評価は、
発表されたこと自体にあるのではなく、
いわばウェブの読者がその値打ちを決める、
というタイプの雑誌です。
PLOS oneというのも同じタイプの医学メディアです。

今日ご紹介する論文は、
鹿児島大学の研究者によるものです。
鹿児島大学の医学部には心身内科学という講座があり、
二日酔い防止薬の特許を取っていたりする、
ほんのりと香しいにおいがするような教室なのですが、
そこの研究者と、
農学部の焼酎・発酵学教育研究センターの、
共同研究ということのようです。

内容はなかなかに凄いもので、
焼酎が身体に良いことを証明するために、
おそらくスタッフか学生でしょうか、
6人のボランティアに、
別々の日にビール、焼酎、日本酒、水を、
食事と一緒に飲んでもらい、
その後の血糖やインスリンの数値と、
飲酒後の睡眠時の脳波などの解析を行っています。

食事は病院食ということのようで、
お酒の量はアルコールで40グラムというのですから、
なかなかの酒量です。

ビールは1リットル、
焼酎は1.5合、日本酒も1.5合で、
それぞれ水で1リットルに薄め、
そして水も1リットルです。
これを病院食の夕食と一緒に、
午後7時からの30分で飲み干します。

こんなことをして体調を崩さないのかと不安に感じるところですが、
案の定、6人のうち1人の女性は飲み干すことが出来ずに、
リタイアしたと書かれています。
(これはパワハラではないのでしょうか?
非常に気の毒です)

その結果がまた驚くべきもので、
ただの水を飲んでも食後1時間の血糖値は、
140mg/dLに上昇しているのにも関わらず、
焼酎を飲んだ時には100mg/dLくらいしか上がっていません。
一方でビール1リットルを飲んだ後では、
血糖値は180mg/dLくらいまで上昇しています。

つまり、これを見る限り、
焼酎は糖尿病の治療薬としても有効なレベルで、
水を飲むよりも食後血糖を低下させ、
インスリン分泌も抑えています。

本当にこんなことがありうるのでしょうか?

焼酎には糖質が少ないので、
あり得ない結果ではないのですが、
だからどうなんだ、
それでトータルに健康的とか、
糖尿病を予防するとかと言って良いのか、
と突っ込みどころは色々とありそうです。

まずデザイン的に疑問なのは、
短時間で1リットルの水分やアルコール飲料を、
一気飲みするという人工的な条件です。

こうしたことをするのであれば、
まず食事とは別に空腹でアルコールや水を飲み、
その時の血糖値の推移を測定してから、
そこに食事を加えた効果を比較するべきではないでしょうか?

1日アルコール換算で25グラムを超える飲酒を継続することは、
健康に害のある可能性が高い、
というのが現在の基本認識であるかと思いますが、
40グラムという、
それを遥かに超える量のアルコールを一気に飲ませて、
それで食後血糖が低下したから焼酎は健康的だ、
というような結論は、
何処かお花畑のにおいを感じてしまいます。

ただ、読むとケトン体や乳酸なども測定をされていて、
冗談でこんな実験をしたとも考えにくいのです。

睡眠時の脳波も真面目に計測されています。
その結果は水とビールと比較して、
REM睡眠に至るまでの時間が、
日本酒と焼酎ではより短かった、
というものでした。
要するに深酒をすると眠りが浅くなっているという結果で、
こんなことをわざわざ証明するために、
ボランティアに焼酎の水割りを1リットル飲ませたのか、
と思うと、
何か頭がぼんやりとしてしまいます。

結論はなかなかに興味深いのですが、
食事内容も病院食だと言うだけで、
完全に同一とは書いてありませんし、
どのくらいの間隔でこの飲酒実験が繰り返されたのかも分かりません。
人数も5人ではちょっとな、と思います。
飲酒量はせめて健康に害がないとされる、
1日20グラム程度にとどめるのが、
倫理的には適切ではなかったかと思います。

この論文をそのまま真に受けて実行される方も、
いないとは思いますが、
内容的に焼酎の水割りを1リットル食事の度に飲めば、
糖尿病が予防出来ると読めなくもないのですから、
真面目に引用をされている医療者の方もいるのですが、
ちょっとおかしいのではないかと、
個人的には思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
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