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「たかが世界の終わり」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

本日4本目の映画の記事にあります。

それがこちら。
たかが世界の終わり.jpg
カナダの新鋭グザヴィエ・ドラン監督が、
フランスの劇作家の戯曲を原作に映画化し、
豪華キャストの台詞劇として構成した新作映画が、
今封切り公開されています。

昨年のカンヌ国際映画祭のグランプリを獲得しています。

カンヌのグランプリは昨年の「ディーパンの戦い」もきつかったのですが、
今回は更にきつい作品です。
娯楽性はほぼ皆無の台詞劇で、
舞台戯曲の映画化でありがちですが、
台詞の微妙なニュアンスが分からないと、
理解不能という感じの作品なので、
正直ひたすら苦痛な鑑賞になりました。

かと言って、内容が難解だ、ということではなく、
物語は比較的明確で意図も不明な感じではなく、
音効の入れ方などはキャッチャーな感じなのですが、
台詞のニュアンスが分からないと、
何もない物語はひたすら単調で、
急に登場人物が興奮したり怒ったりするところもあるのですが、
その理由が明かされることもないので、
観る側はひたすらモヤモヤしてしまうだけです。

物語は家族から断絶して家を出た主人公が、
劇作家として大成し、
12年ぶりに家族の元を訪ねる、
というところから始まります。

彼はもう死期が迫っている、
ということがモノローグで明かされますが、
その詳細は不明で、
最後まで不明のままです。

彼は実家で自分がもう死ぬ、
という話をする筈だったのですが、
結局は話をすることは出来ず、
何も分からず、何も進展はしないままに、
物語は終わってしまいます。

主人公はどうやらホモセクシャルでHIVに感染し、
それで死期が迫っている、
ということのようです。
ただ、予備知識がないとそんなことは、
本編を観るだけでは全く分かりませんし、
家族がキスを嫌がったりと、
におわすような描写は確かにあるのですが、
それで分かれというのも随分と不親切な話ですし、
分かったところで特に面白いという訳でもありません。

日本映画でもこういうタイプの話はありますし、
ニュアンスが分かると、
もう少し面白く観ることが出来るのだと思います。
多分台詞のディテールにも妙味があるのだと思いますが、
それを察しろというのも無理があります。

ほのかに見える田舎の景色の空気感とか、
面白そうな描写もあるのですが、
タルコフスキーみたいに、
草原を風が渡るだけで物語などなくても気分が良い、
というような感じにはならず、
ああ、ちょっとムードがあるね、
くらいで終わってしまいます。

そんな訳でフランス語のニュアンスが分からないと、
ほぼ理解不能の映画で、
そうした素養のある方以外には、
お薦めは出来ない作品です。

褒めている評論家の方もいらっしゃるのですが、
おそらくは社交辞令か嘘を吐かれているように、
個人的には思います。

無駄に時間を使ってしまいました。

それでは次に続きます。

「スノーデン」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

本日3本目の映画記事になります。
それがこちら。
スノーデン.jpg
社会派のオリバー・ストーン監督が、
アメリカを揺るがしたスノーデン事件を、
得意の虚実ないまぜの手法で映画化した作品を、
もう上映終了スレスレの映画館で観て来ました。

これは、まあまあ面白い、という評が多かったので、
観ることにしたのですが、
あまり面白くはありませんでした。

オリバー・ストーン監督というと、
膨大な情報を駆使した映画作りというイメージがあり、
少し事件についてお勉強出来れば、
という興味で鑑賞したのですが、
今回の作品では主人公の人物像も、
何かぼんやりしていて魅力がありませんし、
どうやって盗聴していたのかという具体的な部分や、
アメリカの諜報機関の内部の雰囲気や様子、
情報が暴露されてからの国家間の駆け引きなど、
面白いと思えるような情報が、
殆ど描かれていません。

物語は香港のホテルで、
スノーデンとマスメディアの記者が会い、
報道に向けての流れが始まるところから、
そのインタビューの回想という形で、
彼の情報機関との関わりが描かれます。
段取り重視の非常に薄っぺらな描写で、
ネットニュースでも分かる程度の情報が、
そのまま流されるだけという印象です。

よくある「世界仰天ニュース」の、
再現VTRくらいのレベルの物語なのです。
これはもう、ガッカリしてしまいました。

基本的にはスノーデンを英雄視しているというスタンスです。
最後は映像でアメリカの聴衆の前にスノーデンが現れ、
拍手喝采して終わるという感じになるのですが、
そんな単純なものだろうか、
と疑問に思ってしまいます。
スノーデンの人間性に全く踏み込んでいないので、
全てが薄っぺらで説得力がないのです。

個人的にはとても時間の損でした。

それでは4本目の映画の記事に続きます。

「ラ・ラ・ランド」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日2本目の記事も映画の話題です。
それがこちら。
ララランド.jpg
前評判の高かったミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」を、
初日の新宿の映画館で観て来ました。

これがビックリで最初の5分間、
声やボーカルの音が流れず、
一旦静止画像になってお詫びが流れ、
それから15分押しくらいで再開されました。
ただ、上映された作品の音声も少しバランスが悪く、
問題のある感じでした。
デジタルになってからの映画館で、
こんなことは初めての経験でした。

色々なことがありますね。

これは詰まらない映画ではないのですが、
期待が大きかっただけに、
「それほどじゃないな」というような感想を、
どうしても持ってしまいました。

主役の2人は抜群に良いので、
2人の演技を見ているだけで、
まあ元は取っているな、という感じにはなるのです。

新しい感覚のミュージカル映画、
というようなものをイメージしていたのですが、
あまりそうした感じではなくて、
特に前半30分くらいは、
演技を少しして急に歌いだし踊りだすという、
昔懐かしいミュージカルをそのままやっています。
それが主役2人はミュージカルのプロではないので、
歌も踊りも素人の感じです。
他のダンサーも一糸乱れぬダンス、という感じでもなく、
歌も鼻歌みたいな感じで、
露骨にアフレコである上に、
歌い上げるようなところもありません。

これは素人芸として見せたいのか、
下手糞なプロとして見せたいのか、
良く分からない感じです。

中段以降はあまりミュージカルシーンはなく、
普通のハリウッドメロドラマのパターンになります。
プラネタリウムでデートをすると、
星空にフライングになって影絵になったりするのも、
真面目にそのままやっているのですが、
あまりに古めかしくてその意図を疑ってしまいます。

ラストは「シェルブールの雨傘」みたいになるのですが、
あり得た未来をイメージして、
涙を浮かべてそれで終わりというのも、
どうもあまりに予定調和でクラクラしてしまいます。

台詞などはお洒落でセンスが良いのだとは思いますし、
ダンスに入る段取りなどもパロディめいて面白い部分があります。
ただ、トータルにはミュージカルというには、
あまりにミュージカル場面がお粗末で、
それでいて新しいものを目指したという感じもないので、
「本当にこれでいいの?」
という疑問が最後まで抜けませんでした。

音効は悪いままだったので、
2回くらい観ないとな、とも思うのですが、
正直1回でいいかな、
という感じの作品でした。

ちょっと残念です。

それでは3本目の映画に続きます。

「リップヴァンウィンクルの花嫁」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも、
石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はまずこちら。
リップヴァンウィンクルの花嫁.jpg
昨年の春に公開された岩井俊二さんの新作映画が、
先日1回のみ品川のシネコンで上映されました。

これは評価が高かったのですが、
昨年見逃がしていたので、
これはチャンスと思って映画館に足を運びました。

岩井俊二監督の作品は、
「Love Letter」と「スワロウテイル」しか観ていないので、
あまり良い観客ではありません。
両方ともヒットした作品ですが、
正直あまりピンとはきませんでした。

ただ、今回の作品はとても面白くて、
特に前半の1時間半くらいは目がスクリーンに釘付けになり、
作品世界に完全にのめり込みました。

主人公の黒木華さんが次々と理不尽な不幸に襲われるのですが、
先の読めない展開が斬新で、
ディテールも演出も面白く、
岩井俊二さんは天才ではないかしら、
と思いを新たにしました。

実際にはここまでが前置きで、
そこから本筋の「リップヴァンウィンクルの花嫁」の話に入るのですが、
本筋も確かに面白いものの、
バランス的にやや長過ぎる感じがするのと、
そこまで黒木華さんの「移動」で見せる物語が、
本筋に入ると謎のお屋敷という場所に固定されるので、
物語が少し弾まなくなるのです。
ただ、Coccoさんの最後のモノローグは、
凄まじくも素敵でした。

「コンビニへ行くと、自分が選んだ品物を、自分のためだけに、袋に詰めてくれていて、それを見るだけで世界の優しさに身体が壊れそうになる。それがつらいのでお金で物を買うのだ。世界が幸せで満ちているので耐えられなくなる」
というようなことを例の調子で言うのですが、
とてもとても素敵で衝撃的で、
こちらまで幸せな世界に耐えられなくて死にそうな気分になるのです。

その後の皆で裸になって泣いたりするのは、
ちょっと余計に感じました。

岩井俊二さんの独特の世界ですが、
今回の作品はこなれていて分かりやすく、
入り込みやすい作品でした。
プロの役者さんが主体のキャストですが、
それでいて全編がドキュメンタリーや素人の記録映像の様に撮られています。
独特の空気感の映像と、
わざわざ隠しカメラみたいな位置からのアングルが、
無造作に見えて極めて技巧的で完成度が高く、
そうかと思うと実際に隠しカメラの映像だった、
という落ちまで用意されています。
黒木華さんが全てを捨てて彷徨うところでは、
一転して非常に美しい都会の廃墟が、
スクリーン一杯に広がるのです。
実に素晴らしいバランス感覚でした。
2人の花嫁を上から撮った長いワンカットも、
勿論最高です。

役者は黒木華さんが振幅の大きな受けの演技で素晴らしく、
Coccoさんも存在全体を画面に残し、
また綾野剛さんの得体の知れない心地良い存在感も抜群でした。

テーマには重く暗い部分もあるのですが、
どんな苦境でも平然と生きることしか選択肢にない、
黒木さんの生き様が一筋の光として利いていて、
これは岩井監督の「こんな世界でも貪欲に生き続けろ」
という強いメッセージだと感じました。

ちょっと長過ぎることを除けば、
文句のつけようのない傑作で、
最近詰まらない映画を何本も観てしまったので、
本当に清々しく心に残りましたし、
この作品を大きな映画館の大スクリーンで観られて、
本当に幸せでした。

それでは2本目の映画記事に続きます。

「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

今日は休みなので趣味の話題です。

今日はこちら。
ミス/ペレグリンと奇妙なこどもたち.jpg
ティム・バートンの新作ファンタジー映画を、
新宿の映画館で観て来ました。

ティム・バートンはそこそこ好きなのですが、
「シザーハンズ」以外は、
面白いのに何かが物足りないというか、
何処か決定的な部分で少ししくじっているような感じが、
観終わるといつも残ってしまいます。

今回の作品はオープニングの原色のフロリダの風景から、
如何にもティム・バートンという絵作りでいいな、と思いますし、
時空を超えて永遠に同じ1日を繰り返す「奇妙なこどもたち」に出会うまでも、
ややまどろっこしい感じもありますが、
なかなか上手く出来ています。

少し不満に感じるのはその後の展開で、
対決する敵がかなり間抜けで、
隙だらけの感じなので物語が盛り上がりませんし、
肝心のこどもたちの親代わりのミス・ペレグリンが、
実際には殆ど活躍しないのも物足りません。
主人公の少年も、
簡単に親を捨てて奇妙なこどもたちと行動を共にしてしまうので、
あまり情感や切ない気分が、
醸成されることもないのです。

このように物語としての練り上げは不足しているのですが、
その代わりに奇妙なこどもたちや、
まがまがしい怪物や悪党などのビジュアルは、
ディテールまで作り込まれていて素晴らしく、
大量の骸骨騎士なども参戦する活劇や、
沈んでいた幽霊船が浮上するスペクタクルなどまであって、
2時間余りを退屈させることなく見せきる技量は、
いつもながら素晴らしく魅力的です。

そんな訳でバートンファンには楽しめる作品ではあるのですが、
物語が重層的に盛り上がるという感じではないので、
風変りなビジュアルを楽しめない方には、
退屈に感じるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

「湯を沸かすほどの熱い愛」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
湯を沸かすほどの熱い愛.jpg
昨年から公開中の日本映画「湯を沸かすほどの熱い愛」
を新宿の映画館で観て来ました。

あちらで少しこちらで少し、
という感じで公開されているので、
すっと行きにくい感じです。

宮沢りえさんの難病ものということですし、
死に瀕した女性を主人公とした家族再生の物語と聞くと、
如何にも手垢に塗れた古めかしい感じがします。
題名も泥臭くて何かセンスを感じませんし、
予告編を見ても、
とても面白そうな感じがしません。

そんな訳であまり封切り時には、
積極的に観ようと思わなかったのですが、
その後の評判が非常に良いので、
これは意外に良いのかも知れない、
と思って少し無理をして観て来ました。

鑑賞後の感想としては、
とても魅力的な日本映画で、
かなり感心しましたし、
何度か涙腺も緩みました。

監督は古い日本映画を非常に研究されている方だと思います。
幾つかこれはあれだな、
と思うようなところがあるのですが、
それが嫌味な感じにはなっていません。

宮沢りえさんが末期癌で2から3か月の命と宣告され、
残された命を使ってある決意をする、
というところまでは「生きる」以来、
何を今更の感のあるテーマです。

ただ、主人公の考えることが、
自分中心の身勝手な行動であったり、
住民のために子供の遊べる公園を作る、
というようなものではなく、
自分が人生において責任を持つべきことを、
生きている間に自分の責任で解決する、
という地に足の付いた終活なので、
それがまず物語として新鮮です。

しかもそれだけで終わりかと思うと、
途中からロードムービー風の趣向になり、
奥行のある人間関係が次第に明らかになると、
胸が熱くなるような感動の瞬間が待っています。

更にラストでは今度はアングラチックな趣向があり、
一気に不可思議な領域まで、
観客の心を運んでくれます。

正直ラストの趣向はそれまでとは違和感があり、
受け付けない方もいると思うのですが、
僕自身はそれを含めてこの作品が大好きです。

不満を言えば医療に関わる部分が絵空事に過ぎる点と、
死の間際でも宮沢りえさんがメイクをしているように見えることで、
診断した病院の医者の台詞も不自然ですし、
治療を拒否していながら、
倒れて救急で病院に担ぎ込まれるのは、
医療従事者の視点からは、
随分ひどいなあ、と思います。
更には至れり尽くせりのホスピスにすぐに入所が出来、
それも豪華な個室のようなのですが、
それは設定上成立は到底しないように思います。

余計なお世話ですが、
僕に医療監修を任せてくれれば良いのに、
とちょっと思ってしまいました。

オリジナルの脚本はそれ以外は非常に良く出来ていて、
別にミステリーではないのですが、
前半のちょっとした違和感が、
しっかりと伏線として後半に活きて来る部分や、
意外性のある展開に妙味があります。

演出は特に物に語らせるのが上手く、
何度も登場する風呂屋の煙突が、
最初はまず煙が出ない状態を見せ、
途中でモクモクと上がる煙を見せ、
最後は色の付いた煙が上がるのを見せるのが効果的で、
死の宣告を受けた主人公が、
暗い風呂屋の浴室で蹲っていると、
娘からの電話の着信で、
ほのかな光が闇の中に灯るところなど、
その小さな光が主人公を救う絆を感じさせて、
凡手ではありません。

シネマスコープの画面が上手く生かされていて、
役者のアップや美しい日本の風景、
向かい合う2人を横に長く配したカットなど、
映画館で映画を観る醍醐味を感じさせます。
ラストでは満を持したように、
60年代のカルト映画のようなタイトルバックが、
ドーンと出るのもその狙いが鮮やかでした。

役者は病中も綺麗に撮り過ぎていることを除けば、
主人公の宮沢りえさんが素晴らしく、
ダメ男を憎めない飄々とした感じで演じた、
オダギリジョーさんも非常に良い感じです。

更にいじめられる内向的で屈折した宮沢さんの娘を、
これまでにもこうした少女ばかりを、
何度も演じている杉咲花さんが演じているのですが、
これまでの集大成と言って良い非常に説得力ある、
魅力的な芝居で演じていて、
彼女のこれまでの代表作と言って良い、
充実した芝居になっていました。

この作品は風呂屋の家族を描いたミニマルな世界ですが、
それでいて世界を内包するような大きなテーマを持っています。

人間の社会がいつまで経っても残酷で不幸であるのは何故でしょうか?

この作品で語られていることは、
それは人間が自分の人生の責任を果たさないままで、
過去を忘却したり死んでしまったりすることにある、
という強いメッセージです。

作品に描かれた主人公の最後の生の足掻きから、
自分の人生を見返して観客の1人1人が、
自分が生きている間に果たすべき責任について、
考えるきっかけになれば素晴らしいことだと思いますし、
大仰に社会や政治を叫ぶような作品よりも、
遥かに観客の心の届くものが大きいように思います。

昨年中に観ていれば、
確実に昨年のベストの1つに選んでいた快作で、
如何にも日本映画らしい日本映画として、
迷われている方がいれば是非にとお勧めしたいと思います。

面白く、骨があり、感動的で素敵で、
そして少し変な映画です。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

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「エリザのために」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

日曜日は趣味の話題です。

今日はこちら。
エリザのために.jpg
珍しいルーマニア映画で、
カンヌでパルムドールを受賞したこともある、
クリスティアン・ムンジウ監督の新作が、
今ロードショー公開されています。
この作品も2016年のカンヌ国際映画祭の監督賞を受賞しています。

地味な単館上映の作品ですが、
ミヒャエル・ハネケのミステリーに似ている、
というような批評があったので、
それは意外に面白いのじゃないかしら、
と思って足を運びました。

映画館は高齢の方が多く、
この人たちがこの映画を観て、
一体何を考えるのだろうか、
と少し考え込んでしまいました。

悪い映画ではないのですが、
ヨーロッパ映画にありがちな、
余白が多いタイプの作品で、
謎は殆ど明らかにはなりませんし、
画面の凝集度も高くはなく、
ラストは大甘のハッピーエンドになるのも、
何かもやもやしてしまいました。

ごめんなさい。
あまりお勧めの感じではありません。

主人公は外科医で、
妻とはあまりうまくいっておらず、
1人娘を溺愛しているのですが、
大学受験の娘がケンブリッジに入学が決まりかけていて、
最終試験の前日に暴漢に強姦をされかかる、
という事件が起こります。

毎日学校まで主人公は車で娘を送ってゆくのですが、
たまたまその日は本人が少し前で下してと言うので、
校門までは送らなかったのです。
主人公は娘の高校の女教師と不倫をしていて、
事件の一報を不倫現場で聞いたりもするので、
主人公はその事件に責任を強く感じます。

エリザは平常心で試験を受けられるような状態ではなく、
父親は知人の警察署長からそそのかされて、
政治家を介してエリザの試験の点数を、
不正に水増ししようと画策します。
しかし、当のエリザは父親には拒絶的で、
謎の行動を繰り返し、
強姦犯人の捜査にも何故か非協力的です。
政治家は点数かさ上げの見返りに、
自分の肝臓移植の順番の繰り上げを要求するので、
主人公は二重の不正に手を染める羽目になるのです。

果たして主人公の綱渡り的な不正は、
どのような顛末を迎えるのでしょうか?
単純に見える強姦事件の裏に、
何が隠れているのでしょうか?

人物関係は複雑に絡み合い、
登場人物のそれぞれが秘密を抱えていて、
それぞれに行動を起こして物語が展開するので、
日本のテレビドラマに近いようなストーリーラインです。

もちろん、もう少し雰囲気重視で、
距離感のある展開ではあるのですが、
それほど内容に深みがあるという訳ではなく、
あまり掘り下げもないままに物語は終わってしまいます。

やたらと2人の人物が会話をする場面が多く、
そうした場面は殆どが長回しのワンカットで撮影されています。
なので、しばらく2人とも後ろを向いて話していて、
それから少し移動して横向きになる、
というような流れが多いのです。
悪くはないのですが、
それほど構図にこだわった完成度の高い長回しという訳でもなく、
同じような場面が多いので、
作品が単調になったきらいがありました。

ハネケに似ているというのは、
結局ミステリーめいたドラマが、
解決されないままに終わってしまう、という点だけで、
ハネケのような残酷さや凄みは、
この作品からは感じられませんでした。

アメリカ映画と日本映画だけでも詰まらないので、
ヨーロッパや中近東の映画にも手を伸ばそうと思うのですが、
数は沢山あるものの、
公開はすぐに終わってしまいますし、
以前よりあまりフィルターを通さずに公開されている印象なので、
好みの作品を探すのは、
なかなか難しいなと思いました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

「ドクター・ストレンジ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも、
石原が診療を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
ドクターストレンジ.jpg
マーベルコミックのスーパーヒーローものの新作、
「ドクター・ストレンジ」をアイマックス3Dで観て来ました。

マーベルコミックの映画化は暗い話が多いですし、
世界観や正義の捉え方も嫌らしいし、
続編に次ぐ続編で多くの作品が絡み合っていて、
知識がないと何が何やら人物関係が分からないことが多いので、
あまり好んで観ないのですが、
今回の作品はニューヒーロー登場編なので、
予備知識は必要ありませんし、
上演時間も115分と長過ぎず、
見どころは満載なのでなかなか楽しめました。

自動車事故に遭った天才外科医が、
チベットの秘法で時空を操る魔術師となり、
闇の力を復活させようとする悪党と戦うのですが、
魔術の師匠にも秘密があって…
と言う感じでストーリーも凝っていますし、
語り口も巧みで人物も魅力的なので、
娯楽作品としては誰でも楽しめる作品に仕上がっています。

設定は矢張りちょっと嫌らしくて、
世界の秩序を守るスポットが3か所あって、
それがニューヨークとロンドンと香港、
ということになっています。
その3か所が悪に制圧されると世界は終わりなのです。
要するに世界はアメリカとイギリスと中国とで分け合って、
支配されているのが正義という発想で、
トランプさんの頭の中みたいな世界です。
まあでも多分、その通りなのだから仕方がありません。

何よりこの作品は映像が圧倒的で、
「インセプション」の町が折りたたまれるビジュアルが、
圧倒的な大スケールで繰り広げられるのですが、
本当に細部まで目が眩むが如くに作り込まれていて、
3D効果も圧倒的です。
また、主人公が多重世界に投げ込まれるような場面があるのですが、
そこのビジュアルも本当に圧倒的で、
実際に別世界を体感したような気分になります。

これは絶対大画面の3Dで体感する意義があります。

凄まじいですよ。

ただ、この作品はそれだけではなくて、
キャストも非常に魅力的なキャラが揃っています。

主人公のベネディクト・カンバーバッチの、
尊大だけれど憎めない感じも良いですし、
かつての同僚の救急医の女性を演じた、
ヒロインのレイチェル・マクアダムスもとても良い感じです。
魔法合戦なのですが、
死に掛けた時はガールフレンドの救急救命医に、
病院のERで助けてもらうのです。
こういう発想はクレヴァ―で楽しいと思います。
更には主人公の師匠を演じるティルダ・スウィントンが、
人間離れのした美しさで、
ストーリーの核になっています。

もちろん観終わった瞬間に忘れてしまうような、
そんな映画ではあるのですが、
ビジュアルは現在の特殊技術の到達点と言って良い完成度で、
ストーリーの完成度も高く、
キャストも充実しているので、
暇つぶしに何か映画を、という向きには、
是非にとお勧めしたいと思います。
是非大画面の3Dでご覧ください。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: 総合医学社
  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 単行本


「沈黙ーサイレンスー」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
沈黙.jpg
遠藤周作の原作をマーティン・スコセッシが監督し、
多くの日本人キャストが出演した話題の映画を、
封切りの映画館で観て来ました。

これは「ミッション」と同じような、
「キリスト教宣教師受難もの」という括りの映画で、
日本が主な舞台になってはいますが、
それは「異教徒の棲む異界」としての日本で、
現実の日本を描いた歴史もの、
というような感じではありません。

オープニングの雲仙での熱湯掛け拷問の場面など、
石井輝男監督の残酷時代劇かと思いました。

ただ、詩情に溢れる隠れキリシタンの村人と、
ポルトガル人の宣教師との交流などは、
悪い感じではありません。

後半は転びキリシタンとなった宣教師の、
数奇な後半生を描く、という感じになり、
「ラスト・エンペラー」にも似た味わいです。

日本が主な舞台になっていて、
日本人キャストが多く出演している割には、
日本という感じがあまりしないのは、
実際の撮影は全て台灣で行われているためかも知れません。

漁村は日本の漁村には見えませんし、
長崎や江戸も、微妙にへんてこりんな感じで、
空気感が矢張り違います。
こんな家屋は絶対になかった、
というような不思議な日本家屋が多く登場します。

それで徹底した時代考証を行った、
と威張っているようなことがパンフレットには書かれているので、
何か複雑な心境にもなります。

言語もポルトガル人が英語を話し、
日本人が日本語と英語を当然にように話します。
それでいて「キリシタン」などの、
ポルトガル語由来の言葉が、
割と頻繁に台詞に登場するので、
何処か珍妙な感じはあります。

ただ、それが悪いということではありません。
「ラスト・サムライ」と同じくらいには日本で、
アメリカ人が真面目に日本を表現すると、
こんな感じになるのだと思います。

その意味でもこれは日本とは違う「異界」で、
キリスト教徒が苦しむという映画で、
そう思って観るのが正解なのだと思います。

窪塚洋介さんは彼のキャリアで、
間違いなく最高の芝居で、
それだけでも観る値打ちはあります。

ただ、彼の役はアメリカ映画によく出て来る、
ただの「馬鹿」で、
それ以上でもそれ以下でもありません。
長いものに巻かれ、
主人公を悪意なく裏切り続けるのですが、
それを俯瞰的に投げ出すように描いています。
原作でもその通りで、
普通もう少し2人の魂の交流があったり、
何かに気づく瞬間があったりしても良いのでは、
というように思うのですが、
そうしたことはまるでないのです。
遠藤周作さんはそうした意味で、
多分に欧米人的な感性を、
持っている方だったのかも知れません。

イッセー尾形さんの悪代官も、
原作の好々爺のイメージとはちょっと違いますが、
狡猾で一筋縄ではゆかない悪党を、
よく骨肉化していたと思います。
これも彼の映像の代表作と言って良い芝居ではないでしょうか。

笈田ヨシさんと塚本晋也さんの村人も、
最後の水責めの体当たりの芝居を含めて、
入魂の演技だったと思います。

このように、日本人キャストに、
入魂の芝居をさせるスコセッシは、
矢張り名監督だという思いはします。

作品としてはちょっとピンと来ない部分はあり、
特に最終的に神様の言葉が、
ナレーションとして流れてしまうのですが、
それも良くないのではないか、
というように思うのですが、
日本人キャストのそれぞれに凄みのある熱演を見るだけでも、
一見の値打ちはあると思います。

「ラスト・サムライ」と同じくらいのレベルでお勧めです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

本能寺ホテル [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前中は石田医師が外来を担当し、
午後は石原が担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。

今日はこちら。
本能寺ホテル②.jpg
万城目学さんが台本に関わってトラブルになったのでは…
という事実は不明ですが変な噂が先行した、
フジテレビ印の映画を観て来ました。

多分詰まらないだろうな、とは思ったのですが、
仕事帰りに妻と映画を観るのに、
タイミングが合う上映時間のものが、
この作品しかなかったので足を運びました。

予想をかなり超えるくらいに詰まらない映画で、
封切り初日にも関わらず、
映画館は閑散としていました。
ほぼ確実に短期間で打ち切りになるので、
ご興味のある方は早くご覧になった方が良いと思います。

以下ネタバレを含む感想です。

もしこれから観たいと思う方は、
鑑賞後にお読み下さい。

ただ、お勧めはしません。

これは歴女人気を当て込んだ作品だと思うのです。

綾瀬はるかさんが古都京都で、
本能寺の変前日の本能寺に紛れ込み、
信長に感化されて、
最後は歴史教師を志します。

彼女は人生の目標があまりなく、
勤めていた会社が倒産したために、
何となく付き合った男性と結婚を決めてしまったのですが、
婚約者の実家のある京都で、
ホテルの予約を間違えてしまい、
そのために「本能寺ホテル」という不思議なホテルに迷い込みます。

そこのエレベーターで金平糖を噛むと、
何故か1982年の本能寺にタイムスリップしてしまいます。

そこで現代にはいないタイプの信長という男性に、
恋をしてしまった主人公は、
歴史を変えても構わないと、
信長に光秀が裏切ることを前日に告げるのですが、
信長は自分の命より大切なものに殉じると、
秀吉に密かに手紙を送って後を託し、
自らは死んでゆきます。
それを知った主人公は、
愛のない婚約を解消し、
歴史教師になる道を選びます。

秀吉の中国大返しが成功したのは、
事前に信長から手紙を受け取っていたからだった、
というのが一応のポイントで、
それ以外には特に目新しい点はありません。

万城目さんが盗られたという小ネタとは何でしょうか?
金平糖?
そのくらいしか思いつきません。
そもそも筋の工夫など皆無に近いからです。

タイムスリップものということではなく、
人生の岐路に立っている若い女性が、
神秘的な経験をして、
それをきっかけに人生を問い直す、
という物語で、
日本映画にはありがちな古典的趣向です。

先に数少ない良い点から言うと、
京都に広範にロケをしていて、
馴染みのある場所が綺麗に撮影されていて美しく、
綾瀬はるかさんの主人公と、
堤真一さんの信長は、
綺麗にそして格好良く撮られています。
あと本能寺の変の場面はスケール感があります。
これだけ大掛かりで綺麗な本能寺の変は、
あまりこれまでの映像にはなかったという気がします。

ただ、オリジナル・ストーリーで、
万城目さんが関わっていた、と言う話の真偽はともかくとして、
台本にはかなり紆余曲折があり、
色々と凝ろうとしては失敗し、
結局は何も新味のない物語に、
ならざるを得なかったのかな、
というようには感じました。

綾瀬さんの物語が、
もっと書き込まれていないといけない筈ですが、
オープニングから過去と現在を、
交互に切り替えるというような編集になっていて、
分かりにくいですし、
中途半端です。
主人公がホテルの予約の間違いに気づくところなど、
ミュージカルもどきの変なコメディ演出をしているのですが、
全体からは浮いていて訳が分かりません。

綾瀬さんの役柄もちょっと分裂気味で、
本来は歴史に詳しい女性でなければならない筈なのに、
「天然キャラ」を活かしたかったのか、
途中では歴史のことなど何も知らない、
というような感じにしているので、
ラストで歴史教師になる、
というのが完全に矛盾しています。

現在から過去に持ち込まれたものとして、
胃薬のビンと勧誘のチラシがあるのですが、
何の意味もありませんし、
最後は燃えておしまいです。

風間杜夫さんの役も八嶋智人さんの役も意味ありげなだけで、
何も明らかにされないままに終わってしまいます。

このようにすべてが未整理で、
意味ありげなだけに終わっています。
「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」
のオープニングの巧みさはどうでしょうか?
比較するのも恥ずかしい感じがしますが、
映画というものを、
かなり舐めているように思えてなりませんでした。

ただ、よく考えてみると、
かつての角川映画の多くも、
質的にはあまり変わらなかったような気もします。

凡作でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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