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「彼女がその名を知らない鳥たち」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
彼女がその名を知らない鳥たち.jpg
沼田まほかるさんの原作を、
白石和彌監督がほぼ忠実に映画化し、
魅力的で実力派のキャストが顔を揃えた、
「彼女がその名を知らない鳥たち」を観て来ました。

これは原作がとても良いのですよね。

湊かなえさんと比較されることの多い、
イヤミスのまほかるさんですが、
湊さんよりは格段にミステリーの趣向は上手いですし、
僕は湊かなえさんは嫌いですが、
まほかるさんはそう悪くないと思います。
僕の読んだ中では「彼女がその名を知らない鳥たち」が、
その持続する凄まじい熱量というか、
筆圧のようなものが素晴らしくて、
この手の話としてはラストを含めて、
格別目新しくはないのですが、
キャラは抜群に立っていますし、
ミステリーとしての趣向も成功している、
完成度の高い作品だと思います。

ラストには独特の余韻がありますし、
絶望的な中に陶酔的なカタルシスがあって、
ラストの一文も見事に決まっています。

題名も良いですよね。
多分大した意味はないと思うのです。
謎めいていて、要するに、
「彼女が何かを知らない」
というのがポイントなのだと思うのですが、
そこに幻惑的で無意味な装飾句を付けて、
不可思議な感じを出しているのだと思うのです。
映画では鳥を飛ばしたりして、
それなりの意味をそこに含ましているのですが、
多分それはあまり意味のあることではなく、
「ティファニーで朝食を」と同じで、
映画というのは本質的に、
そうしたジャンルなのかも知れません。

仕掛けのある話なので、
あまり内容を言えないのですが、
どちらかと言えば原作を読んでから、
映画を観て頂いた方が良いと思います。
ラストの衝撃性は、
矢張り原作に分があるように思うからです。

ただ、映画もかなり頑張っています。

蒼井優さん演じる主人公が、
元の恋人の竹野内豊さん演じる黒崎のところに、
電話をしてしまうと、
その折り返しで奥さんが出てしまうというところがあるのですが、
映画では幻聴として黒崎の声が聞こえ、
その場面が浮かぶという表現になっています。
それからDVDに記録された黒崎と主人公との性行為の映像など、
黒崎の登場場面の不気味さの表現の仕方や、
中嶋しゅうさんの最初の登場のさせ方など、
映画のオリジナルの趣向がなかなか成功しています。
この辺り、演出も優れていますし、
台本も原作をリスペクトしながら、
効果的に映像化するために、
非常に時間を掛けて練られていることが分かります。

ただ、不満はラストで、
原作のシャープさと比較すると、
色々と工夫をし過ぎて、
同じ場面を何度も重ねすぎて、
結果として緊迫感が損なわれているように感じますし、
情緒的に盛り上げるのであれば、
デ・パルマの「愛のメモリー」くらいに、
仰々しくやって欲しかったと思います。
ちょっと中途半端でしたよね。
原作のラストの一言と似た台詞を、
最後にブラックアウトで声のみで聞かせるのですが、
これは原作を尊重しているようで、
映画的表現になっていないので、
あまり感心しませんでした。
最後は絵で締めて欲しかったですね。

後松坂桃李さん演じるゲス男が、
主人公にキスをするのは、
原作では2回目に訪問した時なのですが、
映画では最初の訪問の時なので、
それが原作より展開を唐突にしていました。
元々不自然な展開ではあるのですが、
これは原作通りであった方が、
良かったのではないかと思いました。

キャストは蒼井優さんが抜群の安定感で、
この役でヌードにならないのは違和感がありますし、
何となく大竹しのぶ化が危惧されますが、
今回は良かったと思います。
阿部サダヲさんは原作のイメージとは少し違うと思うのですが、
結果としては違和感はありませんでした。

竹野内豊さんと松坂桃李さんが新旧ゲス男で共演するのですが、
こちらもなかなか見応えがあったと思います。

そんな訳で不満もあるのですが、
原作の好きな方にも、
充分満足が出来る映画に仕上がっていたと思います。

なかなかお薦めです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「ジグソウ:ソウ・レガシー」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は石田医師が外来を担当し、
午後は石原が担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
ジグソウ:ソウ・レガシー.jpg
第1作がこれまでにない新しいホラー・スリラーとして、
大ヒットし、
これまでに7作品がシリーズとして製作された、
「ソウ」シリーズの最新作が、
今ロードショー公開されています。

日本では乙一さんの小説などがあるので、
公開当初はそれほど目新しいという印象はなかったのですが、
ある日気がつくと見知らぬ部屋の中にいて、
謎の声が聞こえ、
サバイバルのための残酷なゲームが始まる、
という趣向の面白さと、
徹底した「痛さ」を感じるような残酷描写、
そしてラストに意外な真相が明らかになり、
それを超高速の早回しのように説明するネタばらしなど、
必ずしもこのシリーズがオリジナルとは言えないのですが、
1つの定番の趣向として確立され、
その後のホラーやミステリーに多大な影響を与えました。

ただ、シリーズの常で、
初期の新鮮さは次第に失われ、
残酷描写だけが売り物の粗雑なスリラーにレベルダウンして、
7作目をもって一応の打ち止めとなったのです。

さて、今回久しぶりに復活した「ソウ」シリーズの新作は、
ゲーム殺人鬼のジグソウが、
死亡して10年後が舞台となっています。
死んだはずのジグソウをそのままコピーしたような、
連続殺人が起こり、
何処かで死のゲームが行われているらしい、
という話になり、
その死のゲームの模様と、
それを追う捜査官や検死医の行動が並行して描かれ、
途中で死んだ筈のジグソウが実は生きているの?
という話になり、
そして意外な真相が明らかになります。

正直これまでの「ソウ」シリーズを観ている人には、
ほぼほぼ真相は分かってしまうような内容です。
過去作のあるものと良く似たトリックが使われています。

ただ、そうした点を差し引いても、
原点に戻ろうという姿勢が強く感じられて、
とても楽しく観賞出来ました。
台本もなかなか練り上げられていたと思いますし、
即物的な残酷描写も悪くありませんでした。

悪趣味でグロな映画であることは間違いがありませんので、
万人向きではありませんが、
こうした物がお好きな方には、
「今回のソウは悪くないよ」
くらいは言って間違いがないと思います。

マニアにはお勧めです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「セブン・シスターズ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日はもう1本映画の話題です。

それがこちら。
セブンシスターズ.jpg
イギリスなどの合作で、
ちょっとユニークなSFサスペンス映画、
「セブン・シスターズ」を観て来ました。

これはオリジナルのストーリーが、
なかなか斬新で面白いのです。

遺伝子操作によって作られた作物の副作用で、
多胎児が増えるという異常が発生し、
人口が爆発的に増加したヨーロッパで、
人口を減らすために夫婦で1人の子供しか認めない、
という政策が実行され、
2人目以降の子供が生まれると、
保護されて冷凍睡眠にすると説明されます。

そこである資産家の娘が七つ子を産んでしまうので、
資産家は7人の娘を隠して教育を行い、
月曜日から日曜日という曜日の名前を1人1人に付けて、
その曜日のみ同じ人間として外出し、
他の曜日は家から出ない、
という奇想天外な仕掛けで、
7人1役で1人の女性を、
実際には曜日毎に別の姉妹が演じる、
という人生のプランを編み出します。

姉妹は30歳になり、
それぞれに個性はありながら、
曜日毎に1つの人格を演じ続けるのですが、
ある日最も祖父に従順で完璧な人格を演じていた、
「月曜日」が姿を消します。
翌日「火曜日」がその捜索のために外出しますが、
彼女もまた姿を消し、
その裏には7人の姉妹を抹殺しようとする、
大きな陰謀があるらしいことが分かって来ます。

ね、なかなか面白そうでしょ。

舞台はヨーロッパのようですが、
一人っ子政策というのがちょっと古めかしい感じで、
僕達も昔は人口増加の恐怖におののいたのですが、
実際には人口が減少に向かうと、
高齢化の方が余程恐怖なのが分かって来て、
人間というのは賢く見えて、
そんなことも分からない愚か者であったのかと、
自分も含めて嫌になります。

ただ、それ以外の部分については、
とても面白く物語は出来ていて、
国家の陰謀のように思われた物語が、
ラストになって家族の愛憎劇に落とし込まれる辺りも、
定番ではあっても良い感じで、
クライマックスもなかなか盛り上がりますし、
ちょっとデパルマの初期作のような情感があって、
惹き付けられました。
ただ、個人的にはデパルマのように、
ロマンチックな音楽をガンガン掛けて、
スローモーションも駆使した大仰な見せ場にして欲しかったのですが、
演出は実際にはもっと抑制的でした。
でも、良かったです。

こうした発想の映画は以前にもあったと思いますが、
同じ顔をした7人の姉妹が同じ画面で活躍するというのは、
最近の映像技術があってこそのビジュアルで、
ナオミ・ラパスの1人7役がなかなか素敵で、
特撮もとても良く出来ていますし、
適度に残酷描写も交えたアクションも、
なかなかの迫力です。
脇も政府の大物にグレン・クローズ、
姉妹の偏執狂的祖父にウィレム・デフォーと役者は揃っています。

トータルにはややB級映画ですが、
とても楽しめますし、
アイデアが抜群の娯楽作に仕上がっていたと思います。

これはなかなかのお薦めです。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「ブレードランナー2049」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日は映画の記事が2本です。
まず最初がこちら。
ブレードランナー.jpg
1982年に公開されたカルトSF映画「ブレードランナー」の、
35年ぶりの続編が今ロードショー公開されています。

オリジナルの「ブレードランナー」は、
今はもうない渋谷パンテオンで公開時に観ています。

映画館は当時はガラガラでした。
ビジュアルは非常に印象的で凄いなと思いましたが、
イメージ映像のようで正直それほど乗れませんでした。

ただ、その後ビデオ化されるとジワジワと人気が上がり、
ディレクターズカット版が再公開されるなど、
むしろ時間が経つにつれてその評価は高いものとなったのです。

オリジナルの舞台となっているのは、
人類の大半が汚染された地球を逃れて宇宙に移住し、
レプリカントという人間の労働力の代用となる人造人間が、
人間に対して反乱を起こすという設定の未来で、
2019年という設定になっています。

もう来年の話ですね。

今回の続編は前作から30年後の2049年が舞台で、
従順なレプリカントが新たに製造されている世界で、
主人公はライアン・ゴズリングが演じる、
レプリカントを追跡する自身もレプリカントの捜査官です。

オリジナルのリドリー・スコットは制作総指揮に廻り、
監督はカナダの俊英ドゥニ・ビルヌーブです。

これはどんなものかと思って初日に観たのですが、
個人的にはなかなか良かったです。
アイマックスの3Dで観た映像は、
リアルさを追求した美しいもので、
一部はオリジナルとほぼ同じ風景を再現しながら、
より広い視点で、
様々な荒廃した地球の風景を見せています。

オリジナルの「ブレードランナー」も、
SF仕立てのフィルム・ノワールだったのですが、
今回の続編も前作の空気感そのままのノワールになっていて、
その点には好感が持てました。

主人公も従順なタイプのレプリカントで、
3D映像しか持たないAIの恋人と恋に落ち、
それが人間とレプリカントとの愛と対比されます。
肉体を持たないAIの女性が、
肉体を持つ娼婦と一体化することで、
主人公とセックスをする場面などは、
切なく美しく倒錯的な場面に仕上がっていました。

主人公と対決する美貌で凶悪なレプリカントを演じた、
シルビア・ホークスがとても素敵で、
悪役美女フェチの僕としては、
これだけで大分点数が上がりました。

監督のビルヌーブは、
今年公開されたSF映画の「メッセージ」も、
繊細な描写を積み上げて静かな感動に至る、
という段取りが素晴らしくて、
地味ですがとても魅力的な映画でした。

この作品でもその資質は生かされていて、
普通このような大作であれば、
もっと目を惹くようなドンパチをしたくなるところなのですが、
そうした部分は最小限に抑え、
滅び行く地球の感覚的描写と、
人間、レプリカント、そして今回はAIと、
それぞれの愛にターゲットを絞って、
繊細なドラマを紡いでいます。

評論家の批評は概ね悪いのですが、
個人的には「分かってないな」と感じました。
ただ、3時間近くの上演時間を、
悠然たるテンポで流して行きますから、
退屈に思われる方も多いとは思います。

そんな訳で万人向けの映画ではありませんが、
オリジナルのノワールの部分がお好きな方は、
満足をされるのではないかと思いますし、
「ダンケルク」と同様、
アイマックスで観る質感のある映像は、
一見の価値のあるものだと思います。

それでは次に続きます。
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「愛を綴る女」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当します。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
愛を綴る女.jpg
マリオン・コティヤールが主演のフランス映画、
「愛を綴る女」を観て来ました。

これはイタリア人作家による「祖母の手帖」という作品が原作ですが、
映画を観た後で興味を持って読んでみたところ、
舞台をフランスに置き換えたばかりではなく、
ほぼ別の作品と言って良いほど改変されていたので、
ちょっと驚きました。

原作は祖母、両親、自分という3代のエピソードを、
人間の心と愛の不思議を縦軸にして、
散文詩的に描いたもので、
そのうちの父方の祖母のエピソードのみを抽出して、
その祖母を主人公に構成されているのが映画ですが、
そのエピソード自体も大きく変更が加えられていて、
ディテールはイタリア映画みたいなのですが、
全体の印象はハリウッドの文芸映画のようで、
どんでん返しということでもないのですが、
クライマックスにちょっとした仕掛けのある、
トータルにはかなり不可思議な映画になっていました。

人気者のマリアン・コティエールが演じる、
原作の「祖母」は、
幻想と現実との区別が不可分で、
多くの男性と平然とふしだらな行為に及ぶ一方で、
純粋な愛と言う架空の幻想を追い求めるような性格です。
男性とのトラブルを繰り返して悪評も立ってしまうので、
心配した母親が、
真面目一徹の男やもめの中年男を夫にしますが、
主人公は夫を愛していないと公言してはばかりません、
夫は性欲のはけ口として性風俗に通いますが、
途中から主人公は風俗嬢と同じ行為を、
夫にするようになります。

この奇妙で倒錯的な関係が続く中、
主人公は尿路結石の痛みに苦しみ、
温泉療養に山の中の療養所に入ります。
と、そこで傷病兵の男性と運命的な出会いをし、
恋に堕ちた後で、
主人公は子供を身ごもるのです。

2人は別れ、主人公は愛していない夫の元に戻りますが、
息子は生まれピアニストに成長します。
コンクールのために訪れた町は、
かつて愛した傷病兵の住んでいたところであることを知った主人公は、
彼との再会のために町を彷徨います。

映画はその場面から始まり、
回想に入り、
そして後半で再び同じ場面に戻ると、
その後に意外な真相が待っています。

僕は仕掛けのある話が好きなので、
この設定自体は嫌いではないのですが、
やや唐突で作品の流れに合わない感じがしたのと、
写真の件などがかなり強引で不自然なので、
本当に原作でも同じような話なのだろうかと思って、
原作を読んでみると、
前述のように話は大きく違っていました。

原作にも同様の一種のオチはあるのですが、
もっと繊細で文学的なもので、
壁の中から祖母の手帖と1通の手紙が見つかって、
それで真相が明らかになる、
というロマンチックな趣向になっています。
写真の話などは勿論ありません。

小説が映画になって大きくその趣きを変えることは、
勿論しばしばあることですが、
今回はどう考えても改悪と言って良いもので、
原作通りに3代のクロニクルとして映画化しても、
悪くない作品になったように思うので、
この大味な改変は非常に残念に感じました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「アウトレイジ 最終章」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当します。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
アウトレイジ.jpg
北野武監督の「アウトレイジ」シリーズの、
完結編となる「アウトレイジ 最終章」が、
今ロードショー公開されています。

「アウトレイジ」シリーズは最近のたけし映画では、
一番のヒット作で、
かつての東映の実録やくざ映画を、
たけし流にアレンジしたものですが、
「ソナチネ」などの焼き直しの感はあるものの、
開き直ってパロディに徹しているのが一般の観客には観やすく、
ちょっと不必要なほどに豪華なキャストが、
全てヤクザに扮して、
罵倒や恫喝の台詞芸と顔芸、
唖然とするほど即物的な暴力描写を連ねて、
それ以外の要素はほぼ何もない、
という潔い世界が展開されています。

今回はマンネリとか老害とか悪口を言われることは承知の上で、
ラスト以外はほぼかつての東映やくざ映画と同じ話にして、
たけし演じる狂犬大友が暴れまくります。

西田敏行、ビートたけし、塩見三省と、
3人とも病み上がりの高齢者が、
泥臭く滑稽な凄みを秘めた、
滋味に溢れた芝居を見せてくれます。

特に動きも台詞も不自由ながら、
残忍でお茶目で奇怪なやくざを演じた塩見三省さんが、
個人的には殊更印象に残りました。

今回一番のもうけ役は、
事件の発端となるトラブルを起こした、
お調子者で変態のやくざを演じたピエール瀧さんで、
ちょっと他のキャストとの不公平感はありますが、
こういうキャスティングもたけし映画ならではです。

好き嫌いはあるので、
全ての方が気に入るような映画ではありませんが、
一発撮りの緊張感に満ちた場面の数々は楽しく、
偉大なマンネリ映画として、
頭を空にして楽しむのが一興で、
個人的にはとても楽しいひとときを過ごすことが出来ました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「ユリゴコロ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
ユリゴコロ.jpg
沼田まほかるさんのミステリーの原作に、
吉高由里子さんと松坂桃李さん、
松山ケンイチさんという魅力的なキャストが顔を揃えた、
映画「ユリゴコロ」を見て来ました。

結構どぎついところもあるスリラーですが、
主役格3人の演技にはなかなか見応えはあります。
ただ、後半はかなりオヤオヤという感じになるので、
トータルにはあまり見て良かったという気持ちは残りませんでした。
B級映画と言って良いのですが、
その割にはキャストが豪華なので、
松山ケンイチさんの真面目な苦悩演技など、
結局どう見て良いのか当惑する感じになるのです。

これは先に原作は読みました。
湊かなえさんに似たスタイルで、
サイコスリラー的な雰囲気なのですが、
ミステリ―としての構成はあまり上手くはなく、
ディテールのグロテスクさや嫌やらしさが、
リーダビリティの中心となっています。
ニーリイのような、
登場人物の年齢を読者に誤認させるような技巧を、
一応使っているのですが、
全く成功はしていません。
殺人者の手記と現実の事件とが交錯していて、
面白いのは主に手記の部分ですが、
桐野夏生さんの「グロテスク」や、
湊かなえさんの諸作の焼き直し的な感じもします。
ただ、ラストはちょっと突き抜けたような感じがあって、
主人公2人の道行には余韻が残ります。

映画はほぼ原作通りの展開で、
特にほぼ忠実な手記の部分が面白いと思いました。
リストカットを繰り返すみつ子(佐津川愛美さん怪演)と、
吉高由里子さんとの血みどろ交流は、
原作でも一番生理的につらい部分ですが、
映画でも薄目で見るのがギリギリくらいの過激さを見せてくれます。
原作の病院を自宅に変えた趣向も、
成功をしていたと思いました。

松山ケンイチさんと吉高さんとの場面は、
昔の日活や東映のやさぐれ映画のような雰囲気を、
構図も色彩も上手く模倣していて、
古風で面白い感じを出していました。
日活と東映が制作している映画ですから、
これは明らかな狙いなのだと思います。

ただ、松坂桃李さんがメインの現実パートは、
原作自体かなり未整理でゴタゴタしているのですが、
それを整理したのが却って失敗していて、
特に原作の借金を抱えた駄目夫を、
映画では組織的なヤクザにしてしまっているので、
派手にしたかったという意図は分かりますが、
展開が現実離れしてしまって、
完全な失敗になっていました。

そこが全くの絵空事なので、
ラストに感動的な場面らしきものを持って来ても、
間抜けにしか思えない結果となっていたのです。

湊かなえさんに続いて、
沼田まほかるさんも映画化が続いていますが、
適度にどぎつくグロテスクで、
構成もゆるく出来ているところが、
もっとカッチリしたミステリーよりも、
映像化には向いているのかも知れません。

最後にこの作品の吉高さんの役作りはちょっと疑問で、
ラーメン屋さんを殺す時の顔などには、
明らかに「この野郎」みたいな感情が見えているのですが、
それではサイコパスではないので、
彼女の雰囲気でこの映画は成功している部分が大きいのですが、
本人はそのキャラクターを、
とても理解をしているようには思えませんでした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「パターソン」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
パターソン.jpg
ジム・ジャームッシュ監督の新作「パターソン」が、
今ロードショー公開されています。

バスの運転手の平凡な日常を、
淡々と1週間描くだけの映画、
というような説明がされていたので、
どんなものかなあ、と、
観るかどうかかなり迷ったのですが、
観て本当に良かったと思いました。

確かに前半はその通りの内容なので、
中段の水曜日と木曜日の辺りは、
ちょっときつい感じもあるのですが、
月曜日から始まった物語が、
金曜日から週末に掛けて、
他人から見ればとても些細な、
しかし、主人公にとっては人生を揺るがすような展開を見せ、
そして最後には号泣するような感じとはまるで違う、
とてもジンワリとした、
心に沁み通るような感動が待っています。

その最後の勘所に、
永瀬正敏さんが絡んでいる、
というところもとても嬉しいのです。

今年これまでに観た映画の中で、
観終わった瞬間にもう一度観たくなったのは、
この作品が初めてでした。

これはとてもとてもお勧めします。

以下少し作品の内容に踏み込みますので、
鑑賞後にお読み下さい。
この映画は予備知識はない方が絶対良いです。

作品はニューヨークに近いパターソンという小さな町(実在)に住む、
名前もパターソンというバス運転手の青年の、
月曜日から翌週の月曜日の朝までの1週間を、
妻との目覚めから運転手の仕事、
そして夜のバー通いという日課を基調音として、
ジャズのアドリブのように、
少しずつ微妙な変化を交えながら、
綴ってゆきます。

パターソンは地元出身の詩人に傾倒していて、
毎日自分の秘密のノートに、
自作の詩を綴るのが人生の楽しみになっています。

日常は極めて淡々と展開し、
そこに日常をテーマにした詩(実在の詩人のもの)が、
映画の主人公の自作として紹介されます。

時事ネタ的なものは全く登場しませんし、
日常に変化が起こるとしても、
バスの電気系統が故障して、
乗客を降ろす事態になったり、
バーでお客の揉め事があったり、
妻が高いギターを通販で買って、
カントリー歌手になりたいと言ったり、
と言う程度のことです。

妻は主人公の詩が気に入っていて、
それを是非コピーに取って読ませて欲しいと、
何度もその約束を主人公としますが、
主人公はあまりそれを真面目に聞いていません。
2人には子供はおらず、
ブルドックを1匹飼っています。
家の前の地面に固定された郵便受けは、
何度主人公が治しても、
何故か夕方にはいつも曲がっています。

こうした微妙な伏線が、
週末にある悲劇を起こします。

主人公が土曜の夜に妻と観る映画は、
実際のユニバーサルの1930年代の古典的怪奇映画、
「獣人島(the Island of Lost Souls)」です。
これはウェルズの「モロー博士の島」が原作で、
奇怪な獣人達が主人に反逆するのですが、
それも微妙に伏線になっているのです。

この映画には人生の素晴らしさと、
その儚さと切なさの全てが入っています。

ジャームッシュにして初めて為し得たある種の境地で、
水墨画を見るようなわびさびの美しさがあります。

最後に登場する謎の日本人永瀬正敏が、
また最高なのです。

もう終わってしまいそうな単館上映ですが、
とても素晴らしい作品なので、
ちょっと無理をしても是非ご覧下さい。

これはもう絶対のお薦めです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「散歩する侵略者」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
散歩する侵略者.jpg
僕の大好きな黒沢清監督の新作が、
今ロードショー公開されています。
これはイキウメの前川知大さんの戯曲(後に小説化)が原作で、
二重の意味で興味のある作品でした。

「散歩する侵略者」は前川さんの代表作の1つで、
イキウメで何度か再演されていて、
今年も映画化に併せての再演が控えています。
別に集客のあるスターが出演するという訳ではないのに、
完売で追加公演まで決まる盛況のようです。

僕もイキウメ版は一度観ましたが、
人間の「観念」を奪い取る宇宙人、
という発想自体は如何にも前川さんというものなのですが、
妻の「愛」を奪った宇宙人が苦悩する、
というラストにはやや脱力する感じがありました。
しかも、このラストを再演の度に前川さんは直していて、
それも腰が据わらない感じがして納得出来ないのです。

僕はイキウメも前川さんのお芝居も大好きなのですが、
この「散歩する侵略者」は正直あまり好きではありません。

このそれ自体観念的な地味な戯曲を、
どうやって黒沢監督は映画化するのだろうと思うと、
1950年代くらいの侵略SF映画のテイストで、
なかなか鮮やかにスペクタクル化していました。
原作のテイストは「観念」を奪うという趣向のみ残して、
後は昔懐かしいSF娯楽映画の、
やや歪んだ不思議な世界が、
見どころ満載で展開されていたのです。

1950年代はアメリカを、
目に見えない共産主義の恐怖が覆っていて、
それが赤狩りに繋がるのですが、
その「見えない侵略者」がSFに変化して、
「盗まれた町」や「惑星アドベンチャー」に代表される、
一連の侵略物SFが生まれました。
パターンはほぼ一緒で、
住民が密かに宇宙人に入れ替わってしまい、
いつの間にか人間は少数派となり、
主人公達はその恐怖の中に逃げ回ることになるのです。

今回の作品は中でも「惑星アドベンチャー」との類似が顕著で、
そこでは田舎町の住民が1人ずつ宇宙人に入れ替わり、
少年と犬だけが真実を知って宇宙人に闘いを挑み、
警察や軍隊も登場して活劇が繰り広げられるのです。

これをそのまま今の日本を舞台にやろうと言うのは、
ちょっと常軌を逸しているようにも思えるのですが、
それが意外にそうでもないのではないか、
という計算が、黒沢監督の頭にはあったのではないかと思います。

つまり、今の世界はほぼほぼ、
50年代の侵略SFの荒唐無稽さに近いのではないか、
今の世界を表現する最適な方法は、
実はこうした荒唐無稽さにこそあるのではないか、
と言う計算です。

そしてその計算は、
ある程度正鵠を射ていたように思います。

長谷川博己さん演じるジャーナリストや、
主婦でデザイナーの長澤まさみさんが、
人類が滅びると理解していながら、
宇宙人の方にシンパシーを感じてしまったり、
宇宙人と戦っている筈の国家が、
得体の知れないインチキ集団のようにしか見えなかったり、
宇宙人自体の無防備な無軌道さにしても、
微妙に日本の今とリンクしているように思えるのが、
ある意味とても恐ろしく感じます。

押しも押されぬ大家となった感じの黒沢監督ですし、
昨年の「クリーピー」にしても、
「ダゲレオタイプの女」にしても、
かなり暗く重厚な感じの作品でしたから、
もうそんな感じなのかなと思っていたのですが、
今回の作品は黒沢監督のキャリアの中では、
初期作を思わせるようなアナーキーで破れかぶれのような感じもあって、
笑えるかどうかはともかくとして、
スラプスティックなコメディのような描写もあります。

黒沢監督の作品をあまり観慣れていない方には、
何処までが本気なのか分からない気分になるかも知れません。
僕も正直キョンキョンが出て来るラストなどは、
ぶっ飛び過ぎていて如何なものかなと思いますし、
堂々と「愛」という観念の素晴らしさを盛り上げるのも、
原作通りとは言え、
かなり気恥ずかしい思いもするのですが、
「愛」を奪うラストは、
「ドクトル・ジバゴ」と同じと考えれば、
文学と言えるようにも思います。

黒沢清監督の映像の大ファンとしては、
オープニングの血まみれ女子高生が道を歩き、
ワンカットで後ろで車が大爆発というショットからして凄いですし、
監督が以前からこだわっているという銃撃戦を、
今回は派手にやっているのも嬉しい気がします。
パトカーのガラスを手で突き破っての拳銃発射とか、
ワンカットでの銃の乱射、
女子高生の宇宙人を即物的にはねる車のシーンにも凄みがあります。
長谷川博己さんが死ぬ爆撃のシーンなどは、
おそらく黒沢監督のフィルモグラフィの中で、
最も派手でハリウッド映画的な、
アクションスペクタクルではないでしょうか?
主人公の夫婦2人の道行に、
異様な色の夕景がバッと広がる辺り、
ドライブインの部屋で語らいながら、
窓の向こうは何か凄いことになっている、
というようなお馴染みの描写も素敵でした。

これはまあ黒沢監督が、
滅びに一直線の今の世界を笑ってしまおう、
という怪作で、
吉田大八監督の「美しい星」も、
同じような発想の作品でしたが、
間違いなく出来は「散歩する侵略者」の方が上でした。

これはとてもお勧めですが、
受け付けない方も多いと思います。
どうかその本質を見誤らないように、
黒沢版惑星アドベンチャーを、
楽しむ気分で観て頂ければと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「三度目の殺人」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。
朝からちょっと買い物に出て、
今戻って来たところです。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
三度目の殺人.jpg
福山雅治さんと役所広司さんの主演で、
是枝裕和監督の新作映画が今公開されています。

是枝監督のこれまでの路線とはかなり異なる、
福山雅治さん演じる弁護士と、
殺人自体は自白しながらコロコロと発言を変える、
役所広司さん演じる再犯の殺人犯との対決を描いた、
裁判物のサスペンスです。

これはフィルム・ノワールなんですよね。
フリッツ・ラングやジョン・ヒューストンの、
モノクロのハードボイルド映画みたいな感じ。
ヒッチコックの「めまい」や、
「セブン」や「羊たちの沈黙」、
黒沢清監督の「CURE」辺りも入っているんですが、
基本的には1940年代くらいのノワールが基本ラインなんだと思います。

広瀬すずさんは、
現在の是枝監督のお気に入りだと思うのですが、
足の悪い少女を演じていて、
学校から制服の上に深紅のダッフルコートを着て、
足を引きずりながら下校する姿を、
弁護士の福山雅治が尾行するんですよね。
これだけでノワールの呼吸で、
なかなか良い感じの絵になっているのです。

この映画の広瀬すずさんは、
とても美しく魅力的です。

主演の2人もとても良いんですよね。

福山雅治さんの弁護士の、
何か斜に構えた屈折した造形も、
それらしくてなかなか良い感じですし、
対する犯人の役所広司さんも、
レクター博士の向こうを張ったような、
凄みのある芝居、それでいて、
ちょっと弱い人間的な苦悩も見せていて、
それが矛盾せずに1つの人格に溶け合っている辺りも、
なかなかに凄いと思います。

話はある意味とてもありがちで、
読めてしまうような感じがある一方で、
ラストはかなりモヤモヤする感じになっているのですが、
映像的なディテールが上手いですよね。
謎の十字架のサインというのは、
「CURE」の頂きと思いますが、
ラストの十字路に繋がるのは洒落ていますし、
役所さんが飼っていた鳥を殺して、1羽だけ逃げて、
それが後半に戻って来たり、
福山さんの今は離れている娘さんがウソ泣きをして、
それが最後に福山さんの本物の涙に繋がったり、
雪の北海道の雪だるまの思い出が繋がったり、
ともかく丹念に絵的に考えていると感心します。

撮り方も何度も何度も繰り返される接見で、
役所さんと福山さんを隔てている硝子が、
後半溶けたように見えたり、
2人の顔が反射でオーバーラップしたりと、
凝りに凝っています。

日本映画で裁判ドラマというと、
野村芳太郎監督の「事件」とかをどうしても思い浮かべるので、
ああいう、クライマックスで日本的情念大爆発みたいな、
そうしたものをどうしても少し期待してしまうのですが、
この作品にはそうしたカタルシスはなく、
重要人物の告白が、
結局なされないままに終わってしまい、
司法としての幕引きがされてしまう、
というモヤモヤしたものになっていて、
その後の接見でもそうしたものは何も出て来ないので、
ストレスは溜まるのですが、
色々考えた上で、
福山さんの無自覚な一筋の涙と、
十字路での当惑で終わるというのが、
是枝イズムなのかも知れません。

2時間を超える長さですが退屈はしませんし、
客席の反応も悪くありませんでした。
ヒットしてくれたらいいな、
と思いますが、
どうなのでしょうか?

観てから感想を友達と話したくなるような映画です。
そこそこお勧めです。
ただ、個人的には司法の意味を問う、
というような映画ではなく、
フィルム・ノワールの是枝監督版として、
観るのが正解のように感じました。
その路線としてはとても良く出来ていると思いますし、
何度も観返したくなる、
「残る映画」になっていると思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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