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劇団☆新感線「修羅天魔~髑髏城の七人 Season極」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が診療を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
修羅天魔.jpg
晴海市場前のIHIステージアラウンド東京で、
劇団☆新幹線の新作公演に足を運びました。

昨年から1年以上にわたって、
「髑髏城の七人」の複数のバージョンが、
多彩なキャストで上演されていますが、
花、鳥、風、月という4つのパターンが終了した後で、
「極」として新たにほぼ新作と言って良い作品が作られ、
今上演が行われています。

この「極」の後は、
これも旧作の「メタルマクベス」がまた、
幾つかのパターンで上演を繰り返すことになるようです。

この客席が回転するというキャパ2000人の大劇場は、
通常にはない広角の舞台と、
舞台を横にスライドさせる代わりに、
客席が動くことによって、
スムースな舞台転換が可能となる点に特徴があります。

ただ、キャパの割にかなり舞台は遠い感じとなって、
臨場感は乏しくなってしまうことと、
舞台の奥行があまり取れないので、
平面的な印象になってしまうという、
欠点もまたあるように思います。

今回で開幕以来5つ目の演出となり、
僕はそのうちの「花」と「風」と「極」という、
3パターンを観たことになりますが、
基本的な舞台セットの構造は、
変わっていなかったので、
今のところ集客は好調のようですが、
お客さんが一巡してからどのくらい戻って来るのかは、
ちょっと微妙な感じもします。

今回の舞台は天海祐希さんと古田新太さんの、
がっぷり4つの共演が売り物で、
天海祐希さんの堂々たる座長芝居などは、
矢張り素晴らしいとは思うのですが、
正直2人以外のキャストは大分小粒な感じは否めません。
かつての新感線は毎回オールスターキャスト、
という感じが売りであったのですが、
今回のようにバージョンを変えつつのロングラン、
ということになると、
公演毎に集客の目玉となるキャストを揃え、
それがあまり重ならないように調整するので、
どうしても層は薄い感じの座組になるのが苦しいところです。

この「髑髏城の七人」は面白い芝居だと思いますが、
ここまで沢山のパターンが上演されると、
もう何が何やら分からないという感じもあります。

基本的にはシリアスな物語構造なのですが、
敵の天魔王は強そうなのに、
その部下はおバカなキャラばかりというのが、
いつもどうも違和感があります。
徳川と天魔王の部隊の激突、
というような趣向にしては、
それぞれの人数は10人もいないくらいなので、
この劇場を埋めるという感じにはならず、
どうしても隙間風が吹くような戦闘シーンになる、
というのが切ないところです。

一度くらいは100人超くらいのエキストラを使って、
大々的な活劇を見せて欲しいと思いますが、
無理なのでしょうか。

さて、今回の「修羅天魔」は天海祐希の極楽大夫が主役で、
剣の活劇ではなく銃の名手であるという点や、
天魔王が信長の影武者であるだけではなく、
信長自身かも知れないということから、
本能寺以前の場面もあるという点、
ラストに天魔王が家康の本陣に斬り込む、
という場面が用意されている点などが、
これまでのシリーズとはだいぶ様相を異にしていて、
ストーリーもよりシリアスになっています。

従って、これはこれで面白いのですが、
シリアスさが前面に立つ分、
本物の信長かも知れない天魔王の部下が、
コミカルなおバカキャラ揃い、
というのがバランスを欠いていました。

極楽大夫が遠方から銃で天魔王を狙う場面を、
非常に広角の横長に見せる趣向など、
回転劇場ならではの面白い趣向もありましたが、
総じて消化不良の部分も多く、
この作品の決定版というより、
1つの変奏曲という感じの作品になっていました。

劇団☆新幹線の奮闘には本当に頭が下がりますが、
この劇場を使い続けることが本当に新感線にとって良いことなのか、
ただ疲弊してしまうだけではないのか、
ちょっと危惧を覚えるような思いもあったのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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KUTO-10[財団法人親父倶楽部」(作・演出後藤ひろひと) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
財団法人親父倶楽部.jpg
工藤俊作さんのプロデュース公演、
KUTO-10の第17回公演として上演された、
後藤ひろひと大王の作・演出による
「財団法人親父倶楽部」を観て来ました。

これは1月に「源八橋西詰」という後藤大王のお芝居を観て、
「3月にもう一度小さな小屋で公演をして、
それからはもう小さなところではやらない」
というコメントを後藤大王がされていたので、
それはとても残念、と思い、
観ることに決めたものです。

主役は工藤俊作さん、保さん、久保田浩さんが演じる、
3人のそれぞれ異なる人生を歩んで来て、
余命幾ばくもないと告知をされた3人のおじさんで、
謎の財団の後藤ひろひと大王演じる男の導きで、
人生の最後にやりたくても出来なかったことを、
思いっきりやるという終活に乗り出します。

要するに3つのエピソードのオムニバスなのですが、
こうしたものが得意な後藤大王は、
硬軟自在、縦横無尽の語り口で、
巧みに物語を紡いでゆきます。

3つの物語にはそれぞれ特徴があるのですが、
個人的には久保田浩さんが演じた、
かつての小劇場のスターの話がツボでした。
とても滑稽でとても切なく、
それを久保田さんが演じるのがまた、
微妙に自虐的な感じもあって良いのです。

途中で後藤大王との割と長い絡みがあって、
これはもうかつての遊気舎時代を思わせて最高でした。
後藤大王の小劇場作品は、
アドリブの案配がとても良いですよね。
こうした呼吸が小劇場の醍醐味です。

4人のおじさん以外に、若手が2人加わっているのですが、
2人とも実に達者で勢いのある小劇場演技で、
これも大変感心しました。
特に藤本陽子さんの七変化と、
久保田浩さんとの惑星ピスタチオ風のインチキパントマイム合戦は、
最高のクオリティの馬鹿馬鹿しさで堪能しました。

ただ、その場面は設定としては、
久保田さんがかつての同僚で、
今はそこそこ売れている女優さんに、
会いに行く場面で、
如何にも後藤大王らしい泣かせの場面になるので、
こうしたところには、
もう少しベテランがキャスティングされないと、
せっかくの名場面が弱くなってしまったな、
というようには感じました。

欲を言えばラストのまとめ方が、
如何にも定番で面白みに乏しい、
という感じはあるのですが、
小劇場の楽しさと醍醐味が詰まった舞台で、
後藤大王本人の芝居も意外にたっぷりあって、
色々な意味で得をした気分で、
劇場を後にすることが出来ました。

これからも頑張って下さい。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「さらば!あぶない刑事にヨロシク」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
さらばあぶない刑事.jpg
細川徹さんの作・演出で、
「あぶない刑事」のパロディを、
皆川猿時さんと荒川良々さんが演じるという、
前回好評だったパロディ舞台の続編が、
今下北沢の本多劇場で上演されています。

前作に引き続いて足を運びました。

これはなかなか洒落ていて、
これから観る方の楽しみを奪うことになるので、
詳細は伏せますが、
最初から演劇ファンには楽しい趣向が連続します。
観客参加型で客いじりも楽しいですし、
前回の爆竹はまたありますし、
それ以外にも小道具が全観客に配布されるという、
力の入れようです。

役者さんもこれはもう芸達者の皆さんが揃っているので、
登場するだけでウキウキしますし、
前作は悪役不在という感じであったのが、
今回はゲストの河原雅彦さんが、
堂々たる悪役を演じて作品を引き締めてくれます。
後半はちょっと劇団☆新感線的なタッチになります。

ただ、それでも少人数の芝居で、
ほぼ全員が警察署員を演じるということになるので、
ストーリー的に弾まないという感じは前作と共通していました。
もう少し脇役と悪役に人数を使わないと、
ダブルキャストではギャグ以外の部分は弱いと感じました。

細川さんの作劇は、
割合といつもそうした傾向があるのですが、
設定やオープニングに凝りすぎて、
中だるみや息切れが生じ、
凝った設定を活かせないままに終わる、
というようなところがあって、
今回もそうした弊害は見られるように感じました。

荒川良々さんは僕は大好きで、
特に舞台での凶暴なまでのアドリブの冴えは、
藤山寛美の再来のようにすら思っていたのですが、
最近は映像の仕事が増え、
何かかつての凶暴さが丸くなって、
そのアドリブの冴えが鈍ったように感じます。
今回も正直あまり冴えたところがなく、
その点は少し残念でした。

そんな訳で大満足とは行かなかったのですが、
芸達者の揃った楽しい舞台で、
まずまず楽しむことが出来ました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

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「そして僕は途方に暮れる」(三浦大輔新作) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
そして僕は途方にくれる.jpg
元ポツドールの三浦大輔さんの新作が、
自らの演出で今渋谷のシアターコクーンで上演されています。

前作の「娼年」は全編がセックスシーンという怪作で、
それを東京芸術劇場で松坂桃李さんを主役でやり切る、
という力業に度肝を抜かれました。
今度は映画化するというのですからビックリしてしまいます。

今回の作品は原作ものを除けば、
2014年の「母に欲す」以来の新作ということになります。

オープニング、
藤ヶ谷太輔さん演じるフリーターの主人公が、
前田敦子さんが演じる恋人が仕事から帰って来るのを、
無為にベッドで寝たまま出迎える、
という場面からして如何にもポツドールという感じです。

その後の展開も恋人との喧嘩から始まって、
バイト先の先輩、友達、姉、母親、父親と、
自分に関わる全ての人との関係を、
自分から詰まらないことで断ち切って、
その場を逃亡するというドラマが連続します。

これもまあ、何処を切ってもポツドール、
という感じですね。

一旦はハッピーエンドかという展開がありながら、
ラストはまた主人公の希望は無残に打ち砕かれ、
文字通り主人公が途方に暮れて終わります。

前半の友達や恋人との関係は、
ポツドール時代に主に扱っていたテーマで、
ポツドール解散くらいの時期以降は、
「母を欲す」など父や母との関係に、
作劇のテーマは移って来ていました。

今回の作品はその総ざらいという感じで、
プロデュース公演という特色を活かして、
比較的幅のある年代のキャストが揃い、
物語にリアルな肉付けを与えています。

ただ、物語はポツドールそのものなのですが、
ポツドールにあった暴力性や過激さ、
かなり即物的なエロスなどの小劇場的な要素は、
ほぼ完全に排除されているので、
「地味な人情話がダラダラ続く」という印象になっていて、
シアターコクーンという劇場にも、
華のあるキャストにも、
作品はあまり合っていなかったような印象を持ちました。

設定はかなり三浦さんの一時期の私生活に、
近いものだったと想定されますから、
これまでの世界に一区切りを付ける、
という感じの集大成的な作品、
というように捉えるべきなのかも知れません。

演出は例の2段組の4つの部屋の場面を同時進行させる、
というようなポツドール的演出もあるのですが、
かつてのような緻密なものではなく、
取り敢えずちょっとそうした感じも入れてみた、
という程度に留まっています。

こうした演出は今は根本宗子さんに、
すっかり本歌取りされてしまった、
というような気にもなります。

そんな訳でかつてのポツドールの、
一時期は熱烈なファンの1人としては、
こうした毒気の抜かれた「ポツドールの廃墟」という感じの芝居には、
複雑な思いがあるのですが、
役者さんは皆良い芝居をしていましたし、
おそらくはこの作品も映像化されるのでしょうから、
三浦さんはもうどちらかと言うと、
「映画の人」になってしまったのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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三谷幸喜「江戸は燃えているか」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
江戸は燃えているか.jpg
三谷幸喜さんの作・演出で、
中村獅童さん、松岡昌宏さんがダブル主演の時代物が、
今新橋演舞場で上演されています。

これは勝海舟と西郷隆盛が話し合い、
江戸城の無血開城を決めたという、
有名な幕末の史実を元にしたもので、
中村獅童さんが勝海舟を、
藤本隆宏さんが西郷隆盛を演じ、
松岡さんは勝家に出入りしているイケメンの庭師、
という設定で、
腰の据わらない勝海舟の態度に業を煮やした、
松岡茉優さん演じる勝の娘が、
松岡さんの庭師を勝海舟の偽物にでっち上げて、
西郷隆盛と談判させる、というお話になっています。

1幕75分、2幕80分の2幕劇ですが、
舞台は勝海舟の家の縁側に固定されていて、
1幕は勝海舟の偽物が活躍し、
2幕は西郷隆盛の偽物が活躍する、
という三谷さんらしいシンメトリックな構成になっています。

基本的にはすれ違いと誤解からの喜劇で、
「君となら」に近い三谷さんの得意のパターンの家族劇です。

ただ、ラストは中村獅童さんの長台詞で締めくくられ、
真山青果さんの新歌舞伎めいたスタイルになっています。
おそらく元になっているのは「将軍江戸を去る」で、
そこでは戦争を回避するために、
山岡鉄太郎が将軍慶喜を説得するのですが、
それと同じような呼吸で、
「戦争は絶対してはいけない」と、
勝海舟が西郷隆盛を説得するのです。
三谷幸喜が新橋演舞場で、
真山青果をやる、と言う辺りに、
今回のお芝居の妙味があります。

通常シリアスな役柄に描かれる山岡鉄太郎を、
今回は飯尾和樹さんが演じ、
セリフもまともに言えないいい加減な山岡を見せる、
という辺りに、
三谷さんらしいある種の「悪意」のようなものを、
感じることが出来ます。

ただ、ラストに至るまでの展開は、
典型的な家族のシチュエーションコメディで、
今回の舞台はパルコ・プロデュースですが、
休館中のパルコ劇場に最も見合ったスケールの芝居、
という感じがあります。

真山青果っぽくなるラストだけは、
新橋演舞場の大きさが活きていましたが、
それまでの展開はちょっと小屋が大きすぎて、
散漫になるという感じがありました。
2幕は時々意識が飛びましたが、如何にも長すぎると感じます。
本来は1幕劇で2時間くらいで良いお芝居で、
それを演舞場用に、無理に引き延ばしたような感じがあるからです。

これは推測ですが、
元々はもっと小さな劇場向けに、
発想された作品ではなかったでしょうか。

そんな訳で大満足という感じではなかったのですが、
さすが三谷さんという、
観客を無理矢理でも満足させるような、
ある種のあざとさは見事で、
キャストは脇役に至るまで、
その役者さんが演じることで光るように、
極めて巧み肉付けされていますし、
演出もきっちりとした部分と、
獅童さんが大暴れするグダグダの場面との、
落差がまた上手いのです。

僕は松岡茉優さんが大好きなので、
彼女の仕草だけで眼福でした。
こうしたそれほど舞台での演技に長けていない、
映像中心の俳優さんを、
上手く使うのが三谷さんは実に巧みです。
今回も彼女の定番の表情や仕草や台詞を、
そのまま自然に舞台で再現しているのが素晴らしいと思います。

大抵の舞台演出家と称される人は、
「この娘の新しい面を引き出してやる」とばかりに、
無理な舞台演技をさせて失敗してしまうか、
この間の石原さとみさんのように、
大切な声をガラガラにさせてしまうのです。
その点三谷さんは、
役者さんの商品価値が何処にあるか、
観客がその役者さんの何を求めているのかを、
的確に判断してまた舞台で的確に実現する、
という点が素晴らしく、
その点では真のプロフェッショナルだと感じます。

ただ、如何にもあざといですね。

そんな訳で見て損はない舞台ですが、
演舞場の公演としては、
ちょっと疑問も残る作品ではありました。
三谷さんの戯曲としては、
「水準作」という感じかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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「岸 リトラル」(上村聡史演出版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

レセプトでバタバタしていて、
今日は遅い更新となりました。
診療は今もやっています。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
リトラル.jpg
レバノン出身でカナダで活躍している劇作家、
ワジディ・ムワワドの作品を上村聡史さんが演出し、
比較的渋いキャストを揃えた公演が、
11日まで世田谷シアタートラムで上演されています。

これは15分の休憩を入れて3時間半という長尺で、
話も暗いですし正直かなりしんどい観劇でした。

作家本人に近い若者が主人公で、
ある日父の死を告げられ、
ゾンビのように実体化した父親と、
これも幻想でしかない守護騎士と一緒に、
内戦で荒廃したレバノンに行き、
そこで父親の埋葬場所を探す旅に出る、
というお話です。

割と日本の小劇場的な手法で書かれた戯曲です。

幻想として登場する映画製作スタッフによって、
主人公の行為が時々「虚構化」されるのですが、
これなど寺山修司の「レミング」にそっくりの趣向です。
幻想の荒野で友達を募って西遊記めいた旅を続けるのも、
鴻上尚史の「ピルグリム」を彷彿とさせますし、
幻想の騎士とのメタ芝居的掛け合いなどは、
野田秀樹の芝居にも近い味わいです。

ただ、それが翻訳劇として上演されると、
台詞は如何にも説明調でくどいですし、
こうした形而上劇は、
イメージがすぐに観客と共有されるような感じがないと、
舞台が弾まないと思います。
どうしても遠い異国の話で距離感が邪魔をしますし、
それで延々と説明的台詞が続くだけの芝居を、
3時間以上見ていろというのは、
かなり無理があるように思います。

セットもそれなりに凝ってはいるのですが、
色彩を含めて全体に如何にもモノトーンで地味ですし、
暗い話を余計に暗くしているように思います。
たとえば「レミング」では、
映画製作スタッフの乱入時には、
色彩や舞台の印象を、
ガラリと変えて見せるような工夫がありました。
今回の舞台はそうした演出上の工夫に乏しく、
舞台面が大きく変貌するような、
ハッとするような瞬間がありません。
ビニールを広げて上に上げ、
照明の雰囲気を変えたりしているのですが、
それを時間を掛けてダラダラ準備したりするので、
とてもハッとするような気分にはなれません。

そんな訳で、
非常に意義深い上演であることは間違いがないのですが、
「演劇勉強会」といった感じで、
こなれた娯楽作には昇華していなかったことは少し残念でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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大竹野正典「夜、ナク、鳥」(瀬戸山美咲演出版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日最後の記事は演劇の話題です。

それがこちら。
夜、ナク鳥.jpg
2002年の所謂「黒い看護婦」事件を、
大竹野正典さんが2012年に大阪に舞台を移して書いた戯曲を、
オフィス・コット-ーネの企画で瀬戸川美咲さんが演出し、
松永玲子さん、高橋由美子さん、松本紀保さん、安藤玉恵さんという、
小劇場的にはこれ以上はないくらいの、
豪華絢爛な実力派女優陣が出演した期待の舞台に足を運びました。

これはちょっと微妙な舞台で、
4人の名女優の共演は、
文句なく素晴らしくて楽しむことが出来たのですが、
戯曲は悪くはないものの、
山場に乏しく人間の造形にも疑問があって、
瀬戸山さんの演出も、
良いところも沢山あるのですが、
男優陣の戯画化されたような扱いなど、
賛同しかねるような部分も多くありました。

内容は4人の看護師が保険金を掛けて、
付き合っている男性を殺害するというもので、
3人が結託して1人の男性を殺害した後の時点から物語りは始まり、
もう1人の看護師を巻き込んで、
その夫を殺害使用とするところで終わります。

キャストは4人の看護師と、
彼女達と関わりのある4人の男性で、
最初に殺された男性も、
幻覚か幽霊のように登場するという趣向です。

実際の事件は主犯格の女性に、
半ば支配され操られるようにして、
3人の共犯が犯行に及んだ、
ということのようですが、
この作品ではそうした支配被支配の関係はあまりなく、
心の奥底にある情念や渇望のようなものへの共感が、
4人の女性を結びつけた、
というような描かれ方をしています。

ただ、個人的には支配被支配の関係が明確にあった方が、
こうした物語は成立しやすく、
より説得力を持ったのではないかと思います。
実際の事件にあったレズビアン的関係の部分も、
この戯曲では省かれていて、
あくまで人間同士の共感的部分で、
関係が成立しているように描かれているので、
余計観念的で理解が難しかったように思いました。

勿論意図的にそうした作劇となっているのは分かるのですが、
観客の共感を得るのは、
かなり難しい挑戦ではなかったかと思います。

演出は鋭角なセットを組み、
巧みに舞台の奥行きを利用するところなど、
瀬戸山さんの手腕の見事さが感じられました。
抽象的なセットであるのに、
リアルに感じられると言う点の計算もさすがです。

ただ、いつものことですが、
脇役的な人物は極端に戯画化され、
非常に軽くしか扱われないので、
その点のバランスの悪さは強く感じました。

今回では女優さんに比較して、
男優さんの扱いは非常に軽く、
リアルな芝居も排除されています。

しかし、本来の戯曲のニュアンスは、
もっと両者を同じに扱っていると思うので、
この軽さは違和感がありました。

女優さんの芝居自体は見応えがありました。
僕の大好きな松永さんは、
さすがの風格でとらえどころのない悪を演じきり、
凜々しさが最近増して来た、
松本さんの迫力も良い感じです。
お話の軸となる4人目に巻き込まれる女性を演じた、
高橋さんの土に塗れたような芝居も凄みがあり、
安藤さんは今回はちょっとひいた感じでしたが、
独特の存在感でアンサンブルを高めていました。

そんな訳で素敵な芝居ではありましたが、
戯曲の世界には個人的にやや抵抗があり、
演出もややバランスに問題を感じました。

微妙です。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

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「密やかな結晶」(鄭義信脚本・演出版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日2本目の記事は演劇の話題です。

それがこちら。
密やかな結晶.jpg
小川洋子さんの1994年作のファンタジーを、
鄭義信さんが台本化して演出し、
石原さとみさんが主演を勤めた舞台が、
本日まで池袋で上演されています。
その後地方公演もあるようです。

これは一言で言えば、とても珍妙な舞台でした。

宣伝のチラシを見ると、
何かスタイリッシュで繊細な舞台を、
想像してしまいます。

原作を読むと、
一筋縄ではいかない、
非常に繊細で微妙な作品で、
小川さんらしい際どくてエロチックで、
危険な感じも潜んでいます。
それでいて表面的には純然たるファンタジーなので、
こんなものはとても演劇には向かなそうだな、
というように感じます。

こうした裏のあるファンタジーの舞台化としては、
蜷川幸雄さんの「海辺のカフカ」の演出が、
さすが蜷川という1つの超絶技巧を見せてくれました。
オープニングの光り輝くボックスが、
宝物を入れてシガー・ロスの曲に乗り、
無数に乱舞する情景の素晴らしさは、
今も脳裏に焼き付いています。
また、ケラさんは意外にこうした世界を、
オリジナルで巧みに見せるという藝を持っている演劇人です。

鄭さんはもっと泥臭いスタイルの、
アングラ志向の人間ドラマが持ち味ですから、
誰がキャスティングしたのかは分かりませんが、
およそ小川さん作のファンタジーの舞台化には、
向いていないように思えます。

果たしてその結果は如何に…
と持って劇場に足を運ぶと、
前半は何と「子供向けミュージカル」となっているので、
脱力してしまいました。

ある架空の島で、
1つずつ「物」が消滅してゆき、
心の中ではその消滅を記憶している人を、
秘密警察が探し出して捕らえてしまう、
という話なのですが、
秘密警察の連中が歌って踊り、
物語を説明するのです。

ベンガルさんが秘密警察のボスの山内圭哉さんに対して、
「関西弁を話すと、架空の島という設定に合わないよ」
みたいな「糞セリフ」を発するところなど、
あまりのひどさと詰まらなさに、
頭を抱えて下を向くしかありませんでした。

酷い芝居でした。

ただ、後半はかなり鄭さん得意のアングラ芝居に、
強引に内容を寄せていて、
それなりに見応えが出て来ました。

従って後半は、
ほぼ原作とは無関係な世界になります。

主人公の石原さとみさん演じる島の小説家は、
記憶を失わない体質の、
鈴木浩介さん演じる編集者を、
自分の家の隠し部屋に匿うのですが、
その編集者と山内圭哉さんが兄弟という設定になっていて、
2人の愛憎が表現されるのは、
いつも鄭さんのドラマに共通する、
兄弟の愛憎に物語りを寄せていますし、
ラストで鈴木さんが抱きしめる中、
石原さんが消滅してゆくのは、
唐先生の「少女都市」で、
ガラスになった少女を田口が抱きしめる、
という場面に明らかに寄せています。
こうした設定はいずれも原作にはないのです。
また原作では病死する「おじいさん」を、
島の老女達のリンチで殺害するのも、
如何にも鄭さんの世界です。

ラストでは最初に消滅した「薔薇」が、
舞台奥の暗闇で乱舞し、
そこに向かってセットが後退するのは、
要するにテント芝居のラストをやっているのです。
「愛してる」という言葉が消滅し、
それが最後に帰って来るという、
気恥ずかしくて死にそうになる展開も、
勿論原作にはない鄭さんのオリジナルです。

キャストでは石原さとみさんは、
なかなかの熱演を見せていましたが、
声が悪く、ラストなどは耳障りな金属音のように、
なってしまっていました。
彼女にアングラ芝居は似合わないと思いましたし、
もっと声を大切に使ってくれるような、
スタッフと仕事をして欲しいと思いました。
彼女の持ち味はこんなところにはない筈です。

ベンガルさんは好きなのですが、
今回はほぼアンサンブル的扱いで、
最近お元気のない感じではありますが、
この扱いは酷いな、と感じました。

そんな訳で、
どうしてこの企画が鄭さんだったのだろう、
という疑問ばかりが残る珍妙な舞台で、
小川さんの繊細な原作とは、
全くの別物ですし、
今年の観劇の中でも落胆度の高い芝居となってしまいました。

とても残念ですが、
企画をされる方は是非、
もっと適材適所ということを、
お考え頂きたいと思います。

それでは最後の記事に移ります。

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アガリスクエンターテイメント「卒業式、実行」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
卒業式、実行.jpg
こだわりのコメディを上演し続けている、
アガリスクエンターテイメントの新作公演が、
今サンモールスタジオで上演されています。

この作品は2015年に同じ劇場で上演された、
「紅白旗合戦」という作品のリニューアル版です。

この初演は僕が最初に観たアガリスクの公演でしたが、
演技などには稚拙な点があったものの、
高校の卒業式で「君が代」を歌うかどうかで、
生徒の代表と教師が対立して議論をするという、
非常に難しい話題に挑戦し、
お互いに合意の出来る到達点に達する、
という段取りを、鮮やかにコメディにしていて、
とても感心しました。
特に一旦決裂した議論が、
最後になって奇策により合意に向かう辺りの段取りが巧みで、
これは新しい才能だとちょっと興奮すら感じたのです。

今回再演されるということでとても嬉しかったのですが、
前回から3年が経って、
劇団員の皆さんが高校生を演じるのは、
正直ちょっと厳しい感じがしたので、
前回の生徒役が先生役にスライドして、
生徒は若手を起用するのではないかしら、
完成度の高い台本でしたから、
基本ラインは変えずに行くのでは…
というように予想していたのですが、
実際にはその予想は全て外れました。

まず、熊谷有芳さんの生徒会長など、
劇団員の生徒役はその多くが初演と同じに生徒を演じ、
内容自体は大幅に書き換えられていて、
初演は卒業式直前のやり取りであったものが、
今回は直前から始まって、
卒業式開始後のドタバタにスポットが当てられていました。

三谷幸喜さんの「ショー・マスト・ゴー・オン」という、
東京サンシャインボーイズ時代の人気作があり、
これはトラブル続出の舞台を、
舞台袖から描いたものでしたが、
今回の作品はそのオマージュとなっていて、
舞台袖から卒業式のトラブルを回避する、
というものになっていました。

正直高校生役には違和感のあるメンバーも、
多かったことは確かですが、
今回はおそらくそれは承知の上で、
「学生役から卒業」というニュアンスもあったのではないか、
というように感じました。
熊谷さんの生徒会長も、
沈さんの美術部員に淺越さんの吹奏楽部員など、
名人芸を見る気分で楽しむことが出来ました。

ラスト前の伏線回収の部分など、
コメディとしての精度もなかなか冴えていて、
セットの工夫も面白く、
僕が今まで観たアガリスクの舞台の中では、
一番セットは充実していてプロ仕様になっていた、
と感じました。

ただ、正直なことを言えば、
無理矢理「ショー・マスト・ゴー・オン」に寄せた、
という感じがあって、
構成的にはやや破綻しているようにも感じました。
三谷さんの作品では、
舞台を続行しようという気持ちでは、
一致している中でのトラブルなので良いのですが、
今回の作品では、卒業式が始まっていてもなお、
君が代を歌うかどうかで揉めているので、
そこに更にトラブルというのが、
未整理な感じがして、
卒業式を無事乗り切ろう、
という気分で観客が一致しづらくなるからです。

初演を変えたいという思いは分かるような気もするのですが、
君が代を巡る生徒と教師の議論のドラマとしては、
前作のような形式の方が矢張り正攻法で、
今回のような作品にするのであれば、
素材も含めて完全な新作であって欲しかった、
というのが正直なところです。
今回の内容なら、卒業式を邪魔するものは、
君が代や国旗以外のトラブルで、
良かったのではないでしょうか。

キャストは皆好演で、
個人的にファンの熊谷さんの生徒会長は抜群でしたし、
今回は主演と言って良い、
榎並夕起さんの頑張りが光っていました。

そんな訳で初演版を愛する者としては、
ちょっと違和感を覚えるところはあったのですが、
アガリスク版「ショー・マスト・ゴー・オン」として、
いつもながら「熱量」の高い、
コメディ愛に満ちた力作であったことは確かで、
これからも活躍に期待をしたいと思います。

頑張って下さい!

何も出来ませんが陰ながら応援しています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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唐組×東京乾電池コラボ公演「嗤うカナブン」 [演劇]

こんにちは。

北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
カナブン.jpg
唐組と東京乾電池の初めてのコラボ公演が、
今下北沢のスズナリで上演されています。

唐組からは久保井研さん、稲荷卓央さん、辻孝彦さんが、
乾電池からは谷川昭一郎さん、戸辺俊介さん、伊東潤さんが参加して、
男6人だけの芝居です。
川村毅さんが新作を書き下ろし、
柄本明さんが演出に当たるという、
小劇場のエッセンスが濃厚に詰め込まれた、
非常に凄みのある企画です。

こうしたイベントは、
意外に企画倒れに終わることも多いのですが、
今回は川村さんの劇作がなかなか素晴らしく、
とても完成度の高い、
川村さんとしては意外なほど分かりやすい作品に仕上がっていて、
柄本さんの手作り感のある、
いい加減なようで極めて緻密で懐の深い、
ほっこりとした演出がまた冴えていて、
キャストも味のある小劇場芝居の達人が揃っているので、
本当に素晴らしい舞台に仕上がっていました。

上演時間が80分弱という短さで、
それでいて充分な見応えがありますし、
集中力を切らさずに観終えるという感じがまた良いのです。

今年これまでに観た芝居の中では、
間違いなくベストの1本で、
年末の今年のベスト5に入れることも、
ほぼ決定した感じの傑作でした。

これはもう小劇場好きの方には、
絶対のお薦め品ですが、
1点だけ心配なのは普段お芝居をあまり観ない人の感想で、
おそらく乗り切れない方もいるのだろうな、
というようには思います。

客席は関係者が多いという感じで、
普通のお客さんは少ないという印象を受けましたが、
この芝居を関係者に独占させておくのは、
とても詰まらないと思います。

公演は2月14日までありますので、
迷われている方は是非劇場に足をお運び下さい。

これだけの小劇場演劇の傑作は、
そうざらにはありません。

以下ネタバレを含む感想です。
鑑賞予定の方は必ず鑑賞後にお読み下さい。

これは昔のピーター・ローレやハンフリー・ボガードが活躍した、
かつてのハードボイルド映画のパロディなのですが、
場所はパリで下北沢でもあるという、
国籍不明の雰囲気となっています。
80分という上演時間も、
昔のその手の映画の尺と同じになっているのです。
これだけでも粋ですね。

かつてジャズ・カルテットをしていた4人の男が、
ひょんなきっかけで銀行強盗に転職し、
盗んだ金を山分けして別れ、
15年の歳月が流れます。

落ちぶれながらも生活を続けていた4人ですが、
「カナブン」を名乗る謎の人物から、
過去をあばくような脅迫のメールが届いたことから、
4人の疑心暗鬼が始まります。

カナブンは誰なのか。
得体の知れない八百屋の男でしょうか?
自分を殺して欲しいと便利屋に依頼した、
新人の悪党候補なのでしょうか?
それとも4人の中にカナブンが紛れているのでしょうか?
新人を引き入れた5人は、
もう一度強盗を画策しますが、
それは罠で、残酷で滑稽な、
ハードボイルド活劇の幕が開くのです。

物語は二転三転して、
ラストはややシュールな世界に着地するのですが、
以前の荒くれで勢い重視の世界とは異なり、
今回川村毅さんが紡ぐ物語は、
きちんとハードボイルドの定石を押さえていて、
完成度の高いプロの仕事となっています。
人生の先輩に失礼ですが、
「こういうのもちゃんと出来るんじゃん!」
という感じです。
竹内銃一郎さんの「Z」や、
その元ネタである鈴木清順映画に近い感覚で、
タランティーノの「レザボア・ドックス」辺りも入っています。

それを飄々としたいつものタッチで、
鮮やかに肉付けした柄本さんの演出が素晴らしく、
映画看板のようなヘタウマの書き割りが、
地図にもなっていて、
ちんまりしたライトで、
その時の場所が照らされる、
という趣向も楽しいですし、
オープニングには「マルタの鷹」を彷彿とさせるような、
モノクロ映画風のタイトルバックがあるのも洒落ています。
それに続いて4人のジャズマンが、
後ろ姿でエアバンドで演奏するというシルエットにも、
とても素敵でニンマリしてしまうのです。
ちんまりし過ぎて失敗することも多いのですが、
今回の柄本演出は完璧でした。

そしてその柄本さんの掌に載った感じで、
円熟した6人の小劇場役者が熱演を繰り広げます。
稲荷さんの久しぶりの舞台姿も素敵ですし、
久保井さんも本領発揮の感じがあり、
対する乾電池勢も極めて堅実でかつ味があります。

今回だけでは惜しい舞台で、
是非また再演を希望したいと思います。
柄本さんやベンガルが登場しても、
違和感がない台本なので、
そうした重鎮版も、
また観てみたいという気がします。

こういうものに出逢うと、
芝居を見続けていて良かったと、
つくづく思う気分になるのです。
でもそんな機会は滅多になく、
「詰まらなかった、時間の無駄だった」
と肩を落として帰ることが殆どと言って良いのです。

皆さんも是非…

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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