So-net無料ブログ作成
検索選択
仕事のこと ブログトップ
前の10件 | -

医療事故調査制度について [仕事のこと]

こんにちは。
石原藤樹です。

本日から北品川藤クリニックが開院します。
数日は電子カルテなど新しものづくめなので、
お待たせすることが多いと思います。
どうかご了承下さい。

10月1日から北品川藤クリニックは開院しますが、
今年の9月から10月に掛けては、
医療行政においても、
節目となる幾つかの変化があります。

そのうちの1つは、
今年の10月1日から、
新しい医療事故調査制度が始まる、
ということです。

これは去年の6月18日に成立した、
医療法の改正の中に含まれているもので、
それが今年の10月から実際に行われることになったのです。

医療には予期しない急変や死亡は付き物です。

病院に入院中や治療後の急死は、
患者さんの体に、
何らかの急な変化が起こったためかも知れませんし、
薬などの治療の副作用であったり、
医者の処置に問題のあった可能性もあります。

医者にとっても、
何故患者さんが急変したのか、
ということはとても知りたいことですし、
もし自分の治療や処置に問題があったのであれば、
それを知ることは、
その患者さんにとっては残念ながら手遅れですが、
今後そうした患者さんを出さないために、
重要な情報になります。

これまでの制度では、
こうしたケースは「異状死」とされ、
警察へ届け出ることが義務付けられていました。

しかし、
全ての予期せぬ死亡が「異状死」ということになると、
警察も全てに対応は出来ませんし、
警察の捜査が入れば、
それが医療のミスによる犯罪である、
というイメージがあるので、
遺族は医者に対して不信を持ちます。

また、
医療機関もおおごとになることを嫌うので、
結果として届出はせずにうやむやにすることが多くなります。

これが後から問題となって、
遺族の訴えで警察が捜査に入り、
医療機関が警察への届けをしなかったことが、
犯罪であるとして処罰の対象になるような事例が、
多く起こるようになりました。

これではいけないということで、
決められたのが今回の制度です。

異状死の届出自体は残っているのですが、
犯罪の疑われるようなケース以外は、
届出は不要と運用が変わり、
その代わりに医療機関や医師(管理者)が、
原因不明の急死で医療の関与も否定出来ないケースを、
「医療事故」と認定。
事故の原因調査を医療機関で行なうとともに、
第三者機関である「医療事故調査・支援センター」への報告を行います。

このセンターというのは、
当面は医師会や大学病院などに、
部署が設けられるということのようです。

このセンターは医療機関に対しては、
事故の調査のサポートを担い、
遺族に対しては、
相談の窓口となります。

院内での調査の結果は、
遺族に説明され、
その後センターへも報告されます。

遺族からの依頼があれば、
センターが医療機関とは別個に
、独自の調査を行なうこともあります。

この制度は基本的には、
同じような「医療事故」の再発防止が主な目的になります。
医療機関や医師の責任追求が目的ではないのです。

その辺りのポリシーをどう考えるかが、
今回の仕組みを評価するかどうかのポイントになります。

予期せぬ医療と関わる可能性のある患者さんの急死の、
原因を追求することは、
患者さんの遺族にとっても、
医療機関や医師にとっても、
意義のあることは間違いがありません。

しかし、一番難しいのは、
その結果をどのような形で発表し、
記録に残すのか、ということで、
今回の仕組みでも、
その点が大きな議論となり、
院内調査については、
遺族への説明は口頭でも良いことになっています。

最初から患者さんの死に、
ご遺族が不信を持っている場合には、
勿論これで納得する筈がありませんから、
センターへの再調査が依頼されることになり、
その結果は報告書として交付されることになります。

その結果は、
そのまま医療過誤の訴訟にも直結しますから、
果たして何処まで踏み込んだ報告書が再調査で作成されることになるのか、
という点が一番のポイントと思われますが、
具体的な指針のようなものは、
まだないように思います。

センターは医師会や大学病院が担う、
ということになると、
医師会はこれまでも医療過誤の仲裁に当たっていた訳で、
それでも充分な解決が得られない事例が、
問題となって来た経緯がある訳ですから、
これまで以上に踏み込んだ結論に至るかは、
甚だ疑問に感じますし、
大学病院にそうした当事者能力があるのか、
という点も疑問に感じます。

院内調査には、
多くの費用やマンパワーが必要ですが、
そうした手当を国が殆どしてはくれない、
という点も充実した調査を端から困難にしているようにも思います。

制度が出来たことは、
一歩前進であることは間違いがありません。

しかし、
実際に運用される制度は、
かなり玉虫色の、
面倒なことには踏み込まず、
ただただ医療現場への負担を強要するだけの側面のあるものなので、
今後実際の事例において、
どのような報告がされ、
どのような経緯を辿るのかを、
注視する必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

無菌性膿尿の原因について [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から意見書など書いて、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今月のthe New England Journal of Medicine誌に、
無菌性膿尿という、
一般的で見落とし易い兆候についての総説記事が掲載されました。
今日は勉強の意味で、
その内容を元に整理してお話します。

膀胱炎というのは、
女性に多く非常にポピュラーな感染症です。

膀胱内に細菌が侵入して増殖することによって、
おしっこは濁ったり血尿になり、
頻尿や残尿感、排尿痛などの不快な症状が出現します。

濁ったおしっこには、
白血球が検出されます。
つまり「膿み」です。

おしっこを顕微鏡で見て、
視野に3個以上の白血球がある状態を、
「膿尿(pyuria)」と呼びます。

さて、膿尿は通常は細菌性膀胱炎のサインです。

それで、この膿尿が見られた場合には、
尿の細菌培養の検査を行ないます。

培養で細菌のコロニーが検出されれば、
その細菌の量にもよりますが、
細菌性膀胱炎であることが確定します。

ここで膿尿はあるのに、
細菌培養で菌が検出されないことがあり、
それを「無菌性膿尿(Sterile Pyuria)」と呼ぶのです。

これは実際には意外に多く、
上記解説記事中の記載では、
一般住民での検査において、
女性の13.9%、男性の2.6%に認められた、
とされています。

無菌性膿尿では頻尿や排尿時の痛みなどの、
膀胱炎様の症状が出現することもあり、
また無症状のこともあります。

それでは、明らかに細菌性膀胱炎と思われるような症状があり、
膿尿が存在しているのに、
培養で菌が検出されないのは、
一体どのような理由によるのでしょうか?

シンプルな原因の1つは、
直近の抗生物質の使用です。

膀胱炎を繰り返しているような患者さんは、
自分で抗生物質を飲まれることも多く、
また他の理由で処方された抗生物質が、
影響することもあります。

抗生物質の使用により、
培養で菌は増殖し難くなるので、
見かけ上「無菌性膿尿」という状態になるのです。

この場合は通常に細菌性膀胱炎として治療し、
経過を見て、膿尿が改善すれば問題はありません。

しかし、それ以外の原因でも、
無菌性膿尿は起こります。

最も見落としてはならない無菌性膿尿の原因は、
性器尿路の結核です。

性器尿路の結核は、
肺結核以外の結核菌感染としては、
最も多いものです。

その初発症状は血尿と膿尿で、
進行すれば腎臓やその周辺組織、骨盤内臓器などに、
病変が広がる可能性があります。

結核菌は特殊な培養を必要とするので、
通常のおしっこの細菌培養では検出されません。
また、おしっこの結核菌の培養での、
陽性率はそれほど高いものではないので、
性器尿路結核を疑った場合には、
おしっこの結核菌の遺伝子検査をする必要があります。

結核以外に多くの性行為感染症も、
無菌性膿尿の原因となる可能性があります。

淋病やクラミジアは、
性器の感染症の代表で、
淋病の原因である淋菌は細菌ですが、
非常に生存し難い菌なので、
細菌培養では検出されないこがしばしばあります。
従って、こうした病気を疑った場合にも、
矢張り遺伝子検査で確認する必要があります。

更には単純ヘルペス感染症や帯状疱疹でも、
その病変が性器に近いと、
無菌性膿尿が起こることがあり、
湿疹がはっきりしない場合には、
無菌性膿尿のみが所見となることもあります。

また、真菌などによる尿路感染症も、
無菌性膿尿の原因の1つです。

以上は細菌培養では診断が出来なかったり、
診断が困難な感染症ですが、
感染症以外の原因でも、
尿路結石や尿路系の癌などでは、
細菌によらない炎症が起こるので、
無菌性膿尿が生じることがあります。

無菌性膿尿が所見の1つとして有名なのは、
お子さんの発熱の原因となる川崎病で、
細菌感染を伴う膿尿も合併するようですが、
他の川崎病の兆候と併せて、
無菌性膿尿があれば、
その可能性が高まります。

このように、
特に症状のあまりない無菌性膿尿は、
一般臨床ではスルーされがちですが、
治療の必要な感染症や全身疾患のサインであることも多く、
適切な鑑別診断を心がけたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。。

石原がお送りしました。

医者の先入観についての私的考察 [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は別箇の仕事で都内を廻る予定です。

今日は雑談です。

僕は数年前に山道で転んで左手を強く突き、
左の肘の部分を骨折すると共に、
左の手首の靭帯を損傷しました。

最初に転んだ場所の近くの病院に、
救急で受診し、
診た医者は肘のレントゲン写真を撮って、
肘の骨折の疑いと診断しました。

それで急遽東京に戻り、
近所の整形外科の医院を受診しました。
最初に何処が痛いのかと聞かれたので、
肘と手首が痛いと言いました。

すると、もう一度肘のレントゲンと、
それから追加で手首のレントゲンを撮りました。

レントゲンで手首には骨折はなかったので、
「今は痛みはあっても、段々と良くなりますよ」
という判断でした。

ところが、
4週間くらいが経過しても、
肘の痛みはなくなり、骨折の治癒も良好でしたが、
手の痛みは良くなりません。
手のひらを腕立て伏せをするように床に付けて、
少し力を加えるだけで、
耐え難いような痛みが起こります。

それで診察の際にそのことを話したのですが、
整形外科の先生は、
骨折はないから大丈夫、と言うだけで、
痛いという手首を触ってもくれませんでした。

ちょっと不信を持ったので、
紹介で手の外科の専門医を受診しました。

すると、手首に少し力を掛けるような診察をして、
靭帯の損傷がある可能性が高く、
手術で良くなると言われました。

MRIも撮ったのですが、
それでは靭帯の損傷の有無は確定的には言えませんでした。

後は手術の時に確認するしかありません。

それで手術に踏み切りました。

結果は靭帯の断裂が確認され、
それを縫合する手術が行われました。

経過は順調で、
今では痛みはなく普通に腕立て伏せも出来ます。

手の外科の先生が術前にしたことは、
診察で手首の関節の動揺性を確認しただけです。

つまり、
それなりの知識と、
診察のスキルとがあれば、
別に高い検査をしなくても、
診断は出来るのです。

一方で「レントゲンで骨折はないから大丈夫」
という先入観があり、
「多少靭帯など痛めていても、自然に治ることが多いから大丈夫」
という認識があると、
患者が幾ら痛いと主張しても、
スルーされて、
手も触れてもくれないで、
それでおしまいです。

もし手術をしなければ、
痛みは間違いなく一生残ったと思います。
実際診療所を受診される患者さんのお話しでも、
そうしたことはよく聞きます。

医療の持つこうした不平等性というものは、
憤りを感じますが、
なかなか修正はされないように思います。

それから今度は僕の親族の事例です。

白内障の手術をある第一人者の先生にやってもらったのですが、
手術後から目の奥の痛みが出て、
それが次第に強くなります。

それでその先生に恐る恐るそう申し上げたのですが、
「私の手術は完璧なので、そんな痛みが出ることはありません」
というひとことで終わりです。

その後のフォローは、
その先生の同期の開業医の先生が受け持つことになり、
今度はその開業医の先生に、
同じ話をしました。

開業医の先生は一通りの診察をした上で、
「さすが手術は完璧です」
と手術をした先生の太鼓持ちのようなことを言うと、
目には何の問題もないので、
他の原因で痛いのかも知れません、
と何となくメンタルな原因を仄めかすような言い方です。

薬も何も出してはくれません。

しかし、矢張り痛いことは痛いのです。
2週間くらい我慢しましたが、
それでも悪化するばかりなので、
別の病院の眼科を受診しました。

どうも手術をした先生の薫陶を受けた医者の診察では、
まともに取り合ってはもらえないように思えたからです。

病院の先生の診断はドライアイで、
それも角膜上皮が障害され、
捲れあがって目を刺激しているので、
かなり重症の部類で、
「これでは痛いでしょう」という判断でした。

ドライアイには多くの原因がありますが、
白内障などの手術のストレスは、
その隠れた要因の1つとして、
教科書などにも書かれていますし、
重症の事例の症例報告も沢山存在しています。

つまり、白内障の手術後に、
予期せぬ目の痛みが生じるなら、
当然想定して然るべき合併症です。

しかし、
「白内障手術のみの名医」である大先生はともかくとして、
フォローを任された開業の眼科の先生が、
「そんな痛みが出る訳がない、メンタルじゃないの?」
というような対応なのは如何なものでしょうか?

おそらくその先生の診察を受けた時点では、
ドライアイはそこまで重症の状態ではなかったのだと思います。

しかし、注意深く患者の話を聞けば、
その可能性を考えるのは理屈から言えば自然なことで、
それが全くなされなかったのは、
その先生には崇拝する先生への思いの方が、
目の前の患者の痛みの原因を追究しようという情熱よりも、
遥かに勝っていたことがその原因と考えられます。

つまり、
「あの先生の手術は完璧なので、
仮に手術後の患者さんが痛みを訴えれば、
それは目以外の原因によるものだ」
という先入観があったのです。

そんな曇った目では、
診断は出来ないのが当然のことです。

ドライアイの治療により、
症状は徐々に改善しました。

しかし、
手術をした名医と、
その太鼓持ちの先生の診断を真面目に信じていたら、
もっと病状は進行していたことは間違いがありません。

こうした経過で、
失明の事例も報告があります。

医療というのは不平等なもので、
こうしたことが現実にはしばしばあるのです。

その一番の原因は医者の先入観で、
僕も自身を振り返ればエラそうなことは言えません。
多くの患者さんを、
この先入観の犠牲にして、
適切な治療や診断から遠ざけて来たように思います。

しかし、
それで被害を被った患者さんは、
概ね別の医療機関を受診するので、
医者はそのことに気付いたり、
それを反省したりすることが少ないのです。

最初の事例で言えば、
僕は開業の整形外科の先生のところに、
二度と行くつもりはありませんし、
顔も見たくはありません。
本当はそのことをお伝えする方が、
多くの患者さんのためになることは分かってはいるのですが、
矢張りその苦痛を敢えてする気にはなりません。

2つ目の事例で言えば、
僕の親族はもう二度とその太鼓持ちの開業医のところには、
行くつもりは毛頭ありませんが、
矢張りそのことを相手に説明するのは、
その労力と相手の反応の不愉快さとを想定すると、
とてもそうする気にはならないのです。

医者は1つ1つの失敗から、
本当はもっと多くのことを学び、
その診療レベルを上げることが出来る筈ですが、
実際には人間同士の関係というのは、
非常に難しいもので、
こうした些細な先入観に基く誤りでも、
それを正すには多くのハードルが待ち構えているもののようです。

何故今日こうしたことを書いたのかと言えば、
今日はいつものように、
これから診療がある訳ですが、
少なくとも不用意な先入観を極力持つことなく、
患者さんの診察には当たりたいと思い、
その1つの意思表示として、
心の中のもやもやしていたものの幾つかを、
ここに形にしてみたのです。

こうした事例を何処かに全てストックして、
いつでも誰でも閲覧可能とし、
それを元にした研修などを、
自動車のように医師免許を更新制にして、
定期的に全ての医師に義務付けるようにすれば、
医療は少し良い方向に向かうかも知れません。

皆さんはどうお考えになりますか?

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

ピロリ菌除菌により著明に改善した慢性胃炎の1事例 [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日は診療所で胃カメラ検査を行ない、
慢性胃炎を認めたためにピロリ菌の除菌治療を施行、
それにより著明に胃粘膜所見が改善した事例の、
胃カメラ画像を見て頂きます。

まずこちらをご覧下さい。
除菌改善事例5.jpg
これは40代の男性の、
胃の中央部辺りの画像です。

色合いはかなり赤く、
全体に浮腫んだような粘膜で、
粘膜の襞も太くなっています。
表面の胃炎の所見ですが、
かなり慢性化した感じで、
軽度の萎縮性胃炎も伴っています。

次はこちらです。
除菌改善事例4.jpg
こちらは胃の上部を見たものですが、
矢張り粘膜の表面の慢性のただれがあり、
粘膜の萎縮も伴っています。

慢性のこのような所見は、
ピロリ菌に起因する慢性胃炎の、
比較的特徴的な所見です。

現在では慢性萎縮性胃炎は、
ピロリ菌除菌の保険適応となっています。

それで患者さんとも相談の上、
除菌の治療を行ないました。

その1年後の胃カメラ検査の結果がこちらです。
除菌後改善事例2.jpg
これは最初の画像とほぼ同じ部位ですが、
粘膜の赤味と浮腫みが取れ、
すっきりとした所見となっていることが分かります。
萎縮性の変化も殆ど認められません。

それでは次を。
除菌後改善事例1.jpg
これも2枚目の画像とほぼ同じアングルですが、
こちらも著明に改善していることが分かります。

このように、
粘膜がただれているような時期に、
慢性胃炎に対して除菌治療を行なうと、
その効果は極めて劇的です。

ただ、
これは必ずしも患者さんの症状の改善には、
結び付かないこともあります。
こうした胃炎が実際に症状を出すことは、
それほど多いものではないからです。

また、
同じピロリ菌の感染でも、
萎縮性胃炎が高度の進行したようなケースでは、
あまり除菌による粘膜の状態の改善は見込めません。

従って、
粘膜の状態が悪くなければ、
ピロリ菌に感染しているからと言って、
除菌治療をそう慌てることはないのですが、
萎縮性胃炎が進行する前に、
除菌をすることは肝要のように思います。

勿論、
進行した萎縮性胃炎における除菌治療も、
胃癌の予防という観点からは、
意義のあるものですが、
胃粘膜の状態を改善するには、
それより前の段階での除菌が必要なのだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。

健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣

健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣

  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2014/05/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)





甲状腺疾患超音波画像集(2015年新版) [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

雪はまだ雨ですが、
夜はどうでしょうか?

それでは今日の話題です。

今日は診療所で診断した、
甲状腺の病気の超音波画像を見て頂きます。

まずこちら。
甲状腺乳頭癌1.jpg
甲状腺の縦切りの超音波画像です。
画面の中央、赤い矢印の先にある、
周辺の甲状腺組織より低エコーで、
特に外側により低エコーの部分のある、
大きさが8ミリ大のしこりがあります。
ほぼ丸い形に見えますが、
よく見ると辺縁が少し不正に見えます。

専門病院で甲状腺乳頭癌が確定し、
手術の方針となりました。
治療方針は患者さんと専門医との相談の上、
決定されています。

比較的典型的な乳頭癌の所見だと思います。

では次を。
甲状腺乳頭癌2.jpg
こちらは5ミリを少し超えるくらいのしこりですが、
周辺の組織よりかなり黒っぽく(エコーレベルが低く)、
辺縁も不整になっています。

これも乳頭癌が確定して手術になり、
完治した1センチ未満の乳頭癌の事例です。

では次を。
甲状腺乳頭癌3.jpg
これも5ミリを少し超えるくらいのしこりで、
最初の事例に近く、
周辺により黒っぽい帯のような部分があり、
よく見ると辺縁がやや乱れています。

これも乳頭癌でした。

では次をご覧下さい。
異所性甲状腺内胸腺腫.jpg
これはちょっと違う所見で、
5歳のお子さんですが、
赤い矢印の先に、
紡錘形に近い辺縁のはっきりしないしこりがあり、
その中に白い点のように見える、
エコーレベルの高い部分が散在しています。

これは胸腺の組織が一部甲状腺内に残ったもので、
異所性甲状腺内胸腺腫と呼ばれています。

通常は年齢と共に消失することが多く、
経過観察は必要ですが、
治療の必要なものではありません。

それでは最後の画像です。
副甲状腺腫.jpg
矢印の先に黒いしこりがあります。
これは甲状腺の外側に位置していて、
副甲状腺のしこりです。

原発性副甲状腺機能亢進症の所見で、
手術の適応です。

今日は診療所で診断した、
甲状腺の病気の超音波画像を見て頂きました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

薬剤誘発性内臓血管性浮腫の1事例 [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

今日は興味深い事例の紹介と、
そのメカニズムについての話です。

実際の事例を元にしていますが、
守秘義務及び患者さんの特定を避ける観点から、
一部実際とは細部を変えていることをお断りしておきます。

Aさんは40代の女性で、
39歳の時に検診で高血圧を指摘され、
その後数年は生活改善で様子を見ましたが、
下がらないので、
アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)
というタイプの降圧剤である、
ロサルタンカリウム(商品名ニューロタンなど)が処方されました。

使用開始1か月後に、
あまり誘因のなく、
お腹の右下が強く痛み、
嘔吐と下痢も伴いました。
熱は寒気はありませんでした。

痛みが強かったので救急病院を受診しましたが、
血液検査では白血球も炎症反応も異常なく、
盲腸は否定的でした。
医師の診察では、
お腹を押すと確かに強い痛みを訴えますが、
筋肉が固くなっているような所見はなく、
強い炎症は否定的で、
腸の動きは低下していることが示唆されました。

その時の診断は「お腹の風邪」で、
より正確にはウイルス性胃腸炎です。

対処療法で経過を見ると、
すぐにすっきりはしませんでしたが、
強い痛みは1日で治まりました。

ところが…

それからも、
同様の痛みはしばしば彼女を襲いました。

決まって熱はなく、
あまり全身症状もないのですが、
強い痛みが突然襲い、
下痢と吐き気を伴って、
1から数日間持続してから治まります。

痛みの強い時期は、
食事を摂ることも困難となり、
病院の外来で点滴をしてもらったり、
翌日によくならないような時は、
入院することもありました。

しかし、
血液検査ではいつも異常がないので、
次第に医者の態度も冷淡な感じのものになり、
「何かストレスはありませんか?」
と、露骨に精神的な原因であるかのような対応に変わります。

勿論考えれば、
悩み事の1つや2つはありましたが、
特に強い症状の引き金になるようなものではありません。

それでも症状は繰り返し起こり、
その原因は身体には見付からないので、
次第にAさんも、
これはひょっとしたら精神的なものなのではないかしら、
とそんな風にも思えて来るのです。

それで、心療内科を受診すると、
ざっと話を聞いただけで、
「それでは薬を出しておきますね」
と抗うつ剤と安定剤が3種類処方されました。

説得力のある診断根拠が説明されるのなら、
そうなのかな、と思ったかも知れませんが、
あまりに最初から決め付けたような対応なので、
Aさんはとても納得が出来ません。

それでも藁にでも縋る思いで薬を飲みましたが、
頭がボーッとして吐き気とめまいがするだけで、
我慢して2週間飲んでも、
何の変わりもなく、
2週間後に再び腹痛の発作が起こったので、
これは意味がない、と飲むのは止めてしまいました。

以前ブログで「原因不明の腹痛の話」というのを、
書いたことがあります。
これは結論的には卵巣と腸との癒着による症状だったのですが、
それを読まれたAさんは、
診療所を受診されました。

診察上お腹は少し張っていて、
腸管の蠕動は落ちている印象ですが、
はっきりとした圧痛点はなく、
筋性防御もありません。

超音波検査では、
全体に腸管のガス像が多く、
小腸の一部に消化液の貯留と壁肥厚が疑われましたが、
はっきり腸閉塞と言えるような所見ではありませんでした。

それで造影CTを撮ると、
矢張り小腸壁の肥厚が認められました。
こちらをご覧下さい。
内臓血管浮腫のCT画像.jpg
これは実際のAさんの画像ではなく、
後でご紹介する文献にあったものです。
お腹の輪切りのCT画像ですが、
画面の左上(実際には右)に、
浮腫上の小腸が見えます。
ここまでクリアではなく、
現在画像が手元にないのですが、
Aさんも同様の所見を示していました。

そこから、
ロサルタンカリウムによる内臓血管性浮腫を疑い、
血圧値を見ながら、
ロサルタンを低用量のアムロジピンに変更して、
経過を見ました。

すると、
その後発作性の腹痛の症状は、
ほぼ完全に消失しました。
ここまではっきりなくなるとは想定しませんでしたが、
実際にはロサルタン中止後、
一度も腹痛発作は出ることはありませんでした。

勿論これだけで薬剤が腹痛の原因であると、
断定出来るものではありませんが、
少なくともAさんが、
その症状から解放されたのは事実です。

それでは、
仮にこの症状が薬剤によるものだとして、
何故高血圧の治療薬により、
内臓の浮腫が生じるのでしょうか?

こちらをご覧下さい。
内臓血管性浮腫の文献.jpg
これは昨年の、
Journal of Community Hospital Internal Medicine Perspectives誌に、
掲載された、
薬剤性内臓血管性浮腫の総説です。

上気のCT画像もここから取ったものです。

昨日の記事でご説明しましたように、
血管性浮腫はACE阻害剤の比較的よく知られた有害事象です。

この血管性浮腫は、
顔面や頸部、上気道に起こるのが典型的ですが、
内臓、主に腸管の浮腫として生じることがあります。

この内蔵血管性浮腫は、
繰り返す吐き気と下痢を伴う腹痛が特徴で、
症状は数日以内に治まりますが、
それから何度も繰り返します。

この血管性浮腫は、
ACE阻害剤にはあっても、
ARBにはないと最近まで考えられていました。

しかし、実際にはARBの事例も複数報告されています。

それは何故でしょうか?
こちらをご覧下さい。
ARBによる血管性浮腫のメカニズムの図.jpg
これも現状は仮説ですが、
ARBで血管性浮腫の起こるメカニズムを図示したものです。

ARBはアンジオテンシン2の受容体を阻害する薬ですが、
それによりアンジオテンシン2は増加します。
するとその影響でACEは抑制されるので、
結果としてACE阻害剤と同じように、
ブラジキニンやサブスタンスPが増加して、
症状が発生する、という理屈です。

ただ、同じメカニズムが関与している筈の、
空咳の副作用は、
明らかにARBでは少ないので、
ちょっと理屈に合わない部分はあります。

いずれにしても、
ACE阻害剤は勿論のこと、
ARBにおいても、
その使用後に生じる、
原因不明で繰り返す腹痛は、
この病気の可能性を想定し、
可能であれば一旦当該薬剤を中止して、
数ヶ月の経過を見ることが望ましいと思います。
全ての事例ではなく、
症状出現時以外は明確でないこともありますが、
造影CT検査による腸管壁の肥厚は、
一定の診断能を持つことが多いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。

健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣

健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣

  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2014/05/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)





インフルエンザの診療を巡るあれこれ [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

体調不良のため、
今日は小ネタでお許し下さい。

インフルエンザが昨年12月より流行しています。

先日ある医師の方が、
次のような経験を、
ネットで書かれていました。

うろ覚えなので、
実際の文面とは異なる点があると思います。
1つの架空の事案としてお読み下さい。

病院の外来に発熱の母親と小学生の男児が受診され、
問診で男児の妹さんが、
数日前に他の医院でインフルエンザと診断され、
薬を処方された、という話が聞かれます。

外来は混んでいましたし、
対応した医者は殆ど診察はせず、
「それではお母さんとお子さんもインフルエンザですね。
お薬をお出しします」
と診察を終わろうとしました。

すると、お母さんは、
「検査をしないでどうしてインフルエンザと分かるんですか?」
とやや詰問調に言います。

こうした場合の医者の対応には、
色々なパターンや考え方があると思いますが、
その医者は面倒を嫌ったので、
「分かりました。それでは検査をしますね」
と言い、
お母さんとお子さんの両方に、
鼻の奥に綿棒を入れて粘液を採取する、
インフルエンザの迅速検査を行ないました。

結果は陰性だったので、
「検査は出ませんでしたので、
インフルエンザの薬は出しませんね」
と医者が話をすると、
お母さんはそれはおかしいと言います。

「さっきは検査をしないで、
インフルエンザだから薬を出しますと言ったのに、
今は検査をして陰性だから薬は出さないというのは、
おかしいのじゃないですか?
何のために検査をしたんですか?」

その医師は結局薬を出したのか、
それとも出さなかったのかは、
はっきりしないのですが、
検査をしろと言われたからしたのに、
結果が気に入らないと、
今度は何故したのか、と言うとは、
これほど理不尽なことはない、
という趣旨のことを述べられ、
それに対して多くの医療関係者が反応されていました。

医療関係者の反応は、
概ねこの医師に同情的で、
インフルエンザの診断は確定的なものではなく、
迅速診断の検査も絶対的なものではないのだから、
医師の判断に従うべきなのに、
無理に検査を強要するような患者さんの姿勢は、
おかしい、というものです。

確かにそうした見方は出来ます。

ただ、この事例については、
最初は検査をしないで、
「インフルエンザです」と診断しているのに、
その後に検査で陰性であると、
「陰性なのでインフルエンザの薬は出しません」
と言っているので、
その論理が一貫していない、
という点については、
お母さんの指摘の方が、
的を射ているように思います。

何故こうした結果になるのかと言えば、
インフルエンザという、
極めて一般的な病気の診断と治療の手順が、
必ずしも理詰めで成立している訳ではないからです。

まず診断については、
臨床症状の経過が重要な要素で、
それに付随するものとして、
インフルエンザのワクチン接種の既往の有無や、
周辺での発生状況の情報などがあります。
それに追加するものとして、
インフルエンザの迅速診断があり、
より確定診断としては、
遺伝子検査があります。

インフルエンザの確定診断は遺伝子検査で、
海外の疫学データの多くも、
この遺伝子検査で確定した事例のみを扱っています。
しかし、日本においては、
遺伝子検査は保健所などを窓口にして、
極一部の事例に行われているだけなので、
日本の臨床では、
簡易の迅速診断が、
ほぼ確定診断として使用されています。

ただ、この迅速診断は、
一定の抗原量がないと陽性にならないので、
感度や特異度も、
施行する者の手技によっても、
かなり左右される性質の検査であるということが、
大きな問題です。

一方でたとえば家族内で感染した可能性が、
極めて高いという状況があり、
そのうちの1人がインフルエンザで確定していて、
その数日後に家族の成員が、
ほぼ同じような症状を発症したとすれば、
その事例はインフルエンザで、
ほぼ間違いないので、
迅速診断をその患者さんにする意義は、
そう大きなものではない、ということが言えます。

この臨床診断による診断は、
臨床においてはそれなりの意味を持っています。

家族内感染という条件などもそうですし、
扁桃腺の肥大を伴わない咽頭の後壁の強い発赤、
など所見もそうです。
予兆のない急な寒気や関節痛を伴う高熱、
というような症状もそうです。

臨床医としてはそれ以上に、
毎日の臨床の中で、
流行している感染症の症状が、
多くの患者さんを見ているうちに、
分かって来るので、
流行の最初は、
一般的なインフルエンザ感染のパターンで見ているのですが、
そのうちに今の流行では、
こうした症状の経過であれば、
インフルエンザの確率が高い、
ということが分かって来ます。

迅速診断が当てにならない場合のあることは事実です。

ただ、それに頼り過ぎることさえなければ、
臨床上の所見に基付く診断を、
サポートしてくれる有用な情報であることは確かです。

次に治療について考えると、
インフルエンザにはタミフルなどの、
ノイラミニダーゼ阻害剤という、
その作用もほぼ明確な治療薬があるのですが、
その有効性は自然治癒が望め、
重篤な合併症の発症リスクが少ない事例においては、
せいぜい1日程度発熱などの期間を短縮するに留まる、
という限定的なものです。

ただ、重症化の予防というような点については、
その有効性の有無に、
まだ明確に白黒は付いておらず、
重症化や合併症のリスクが高いと思われるケースでは、
より積極的な使用が、
否定をされてはいません。

つまり、ノイラミニダーゼ阻害剤の効果は、
かなりの幅を持って認識されていて、
一部の重症事例以外には、
使用する必要はない、という見解から、
重症化や合併症のリスクが想定されれば、
ある程度積極的に使用しても良いのではないか、
という見解まで存在しているのです。

ここにも1つの混乱の要因があります。

煎じ詰めれば、
インフルエンザの臨床現場におけるトラブルは、
迅速診断とノイラミニダーゼ阻害剤の使用の、
2点がそのほぼ全てで、
そこに明瞭な適応の基準がないために、
個々の診療の現場において、
患者さんと医療者との間で、
個別にある種の「一致点」を、
見出す努力が必要なのではないかと思います。
それは固定的なものではないので、
個々に設定する努力が、
患者さんと医療者の双方に必要です。

前述の事例で言えば、
最初に家族内感染の病歴が疑われた時点で、
医師は迅速診断が不必要と判断したのであって、
「無駄」と判断したのではないのです。
一方患者さんの側では、
基本的に迅速診断でインフルエンザは確定する、
という認識があるので、
それを行なう必要がない、
ということを字義通りに受け止めることは出来ないのです。
迅速診断に対する認識が、
両者で異なっているので、
そのままではトラブルの要因になります。

僕の個人的なこうした場合の対応は、
まず患者さんの診察所見をしっかりと取ることで、
病歴と診察所見からは、
これこれの病気が疑われる、
という話をまずします。

その上で、インフルエンザの迅速診断をすることの、
その時点での必要性がどのくらいかを説明します。

病状と診察所見が合致していれば、
迅速診断にはそれを少しサポートする以上の役目はないのです。
しかもそこには、
検査が診断をサポートしてくれないケースもある、
というリスクが潜んでいます。

個人的に考えるもう1つのポイントは、
インフルエンザの迅速診断が陽性であることと、
ノイラミニダーゼ阻害剤を処方することとを、
同義のものには絶対にしない、
ということです。

まず診断の確からしさを判断した上で、
ノイラミニダーゼ阻害剤を使用するという、
選択肢のあることは提示しますが、
その使用の是非は、
どちらかと言えば患者さんとご家族に、
委ねる態度を取ります。

ノイラミニダーゼ阻害剤の適応は、
明瞭に定まっているものではないので、
「この場合には処方は出来ません」
というような対応は矢張りあまり適切なものではなく、
患者さんとの間で、
理解出来る共通の1点を、
探す必要があると思うからです。

ネットの治療法などの議論は、
余白のない、白か黒か、というようなものになりがちで、
影響力のある声の大きな先生が正解を言えば、
それに追従するより他はないような空気が流れます。

ただ、インフルエンザの診療1つを取っても、
人間同士のコミュニケーションのコツのようなものが、
科学的事実以上に大きな部分があり、
末端の臨床医の1人としては、
基本的な診察の手技と情報収集という原点に返って、
それこそを患者さんにも見てもらい、
その後の検査や治療の適否に関しては、
あくまで患者さんと共同で、
個別に一致点を探す努力が、
必要なのではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

局所的感染症情報(2014年12月) [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から紹介状など書いて、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日は診療所周辺の感染症情報です。

インフルエンザの流行が本格化し、
診療所のある渋谷区でも患者さんが増加しています。

今のところA型(おそらくA香港型)が殆どで、
B型が極少数混ざっている、
という感じです。

診療所でも少数のB型の患者さんを経験していて、
熱の上がりがそれほどではない割には、
重症感が強く、
発熱期間も持続するため、
1例は点滴のラピアクタを使用しました。

ただ、敢くまで少数の事例のみの検討ですから、
全てに当て嵌まるという訳ではありません。

A香港型に関しては、
お子さんや若年成人では、
かなり典型的なインフルエンザの経過を取っています。

突然の高熱で発症し、
寒気や関節痛、頭痛などを伴い、
かなり重症感があります。

症状の初期には吐き気を伴うことが多いのですが、
ウイルス性腸炎とは違って、
下痢や腹痛が前面に立つことはほぼありません。

高熱の持続期間は短く、
多くは3日以内で速やかに改善に向かいます。

一方で高齢者に感染したケースでは、
あまり高熱にはならないことが多く、
咳や痰が症状としては目立つ印象です。
初期には比較的重症感があるのですが、
熱はすぐに微熱になり、
それでいて咳などの症状は結構持続します。

当初はあまりインフルエンザを疑わず、
検査もしなかったのですが、
高齢者施設で集団感染の事例があり、
それからそうした事例が、
結構多いことが分かりました。

今年のインフルエンザに関しては、
12月の初めにこんなニュースがありました。

今年のインフルエンザでは、
変異したウイルスが多く検出されていて、
インフルエンザワクチンは効かない可能性が高い、と言うのです。

その後で診療所に見えた患者さんからは、
「今年のワクチンは効かないんでしょ。
じゃ、今年は打つのは止めますね」
というような話を何度も聞きました。

その報道の元になっているのが、
おそらくこれです。
CDC.jpg
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が、
12月4日に出したプレスリリースです。

アメリカの話ですが、
今シーズンのインフルエンザの流行は、
A香港型(H3N2型)が主体になる可能性が高く、
しかもその半数ではワクチン株とは異なる変異が認められる、
という内容になっています。

日本のメディアは意地悪なので、
「今年のワクチンは効かない」というような文面になっていて、
アメリカの話なのに日本のことのように、
混同させるような表現も認められました。

ただ、元の文面を読んで頂くと、
決してそうした内容ではなく、
今年はややウイルス株と流行株が、
A香港型についてはマッチしていないので、
その有効性が低下する可能性が高い、
ということは事実なのですが、
一定の有効性はあるので、
ワクチン接種自体は推奨する内容になっています。

今年のインフルエンザは重症化する、
と言うのは、
単純にA香港型の性質を言っているもので、
特に変異があるから重症、という意味合いではありません。

インフルエンザワクチンの選定株については、
基本的には世界同一で、
A香港型と2009年に新型と言われたH1N1、
そしてB型の3種類なのですが、
アメリカを含む多くの国が、
A香港型については、
昨シーズンと同一の、
A/テキサス/50/2012という株を選定していますが、
日本では、
A/ニューヨーク/39/2012株を唯一選定しています。

この理由は、
現行のワクチンの多くが鶏卵で培養されていて、
その製造過程の中で、
元のウイルス抗原に鳥型の変異が起こり、
元の株と抗原性が変わってしまう、
「卵馴化」という現象の影響を加味してのものです。

どんなウイルス株を用いても、
製法上こうした抗原性の変化は、
僅かには起こるのですが、
それが現行のワクチン株では大きいのではないか、
という想定から、
より抗原性の変化の少ない流行株を選定し、
今回の決定となった、ということのようです。

従って、
これはCDCの言うA香港型の変異とは、
全くの別物ですが、
今シーズンのワクチンに関しては、
海外のものと日本のものとは、
少し抗原性が異なるので、
その効果にも差がある可能性がある訳です。

いずれにしても流行はこれからがピークと思いますので、
皆さんもくれぐれもご注意ください。

今日は診療所周辺の感染症情報をお届けしました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

デング熱情報あれこれ [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

先日デング熱の東京の事例について、
比較的まとまった話を聞きましたので、
今日はそのことを記事にしたいと思います。

代々木公園を中心としたデング熱事例は、
もう150例を超えていて、
終息傾向は明らかですが、
それでもポツポツとまだ新規の患者さんが報告されています。

患者さんの年齢分布は20代に多く、
お子さんは4歳から報告がありますが、
比率的には10歳未満は極少数です。

しかし、先日聞いた感染症科のある総合病院の報告では、
特に皮疹も見られず、
発熱が持続したお子さんに、
念の為と思って迅速キットの検査をしたところ、
陽性であった、という事例があったようです。
同様の事例は他にもあります。
皮疹は出現しているケースもありますが、
デング熱に特有の皮疹というものはなく、
溶連菌感染症などと判断されてもおかしくはないものです。

現行最もデング熱の感染を疑う兆候は、
発熱の遷延と白血球と血小板の低下で、
小さなお子さんの場合、
必要性が低ければ採血はすぐにはしませんから、
実際には別箇の感染症として、
デング熱の診断には至らない事例が、
多いのではないかと推察されます。

つまり、現行の年齢分布はあまり当てにはなりません。

皮疹は多い兆候ではあるのですが、
全例で認められる、というものではなく、
その出現の仕方も非常に多彩です。

僕が実際に診察した事例では、
全身の軽い発赤と風疹様の淡い湿疹でしたが、
テレビなどで報道されたテレビ局のレポーターの事例では、
全身が赤く腫れるような皮膚変化が強く、
蚊に刺された部位の周辺のみ、
発赤が少ないという、特徴的な所見を呈していました。
ただ、それ以外にも蕁麻疹様の皮疹や発赤が、
下肢のみに見られているケースもあり、
蕁麻疹のみというケースもあります。

従って、皮疹が症状発現数日後に出現することは、
デング熱の特徴の1つではありますが、
皮疹の性質でその可能性の高低を判断したり、
皮疹がないから否定的と考えることは、
出来ないように思います。

今のところ重症事例はない、という公式発表ですが、
血球貪食症候群の疑われるような、
高度の血球減少を伴って、
症状の遷延した事例の報告もありましたので、
現時点でも決して経過を楽観視することは、
危険なように思います。

症状は典型的な事例においては、
腹痛と下痢、目の奥に強い頭痛は、
比較的多い兆候で、
そのため当初はウイルス性腸炎と、
判断された事例も多かったようです。

平均の潜伏期間は短くて3日、
概ね7日くらいが多く9日を超える事例は稀のようです。

今日はデング熱関連の情報を補足的にお届けしました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。

健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣

健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣

  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2014/05/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)





臨床試験原理主義を憤る [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から意見書など20枚書いて、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

先日レビー小体型認知症に対して、
ドネペジル(商品名アリセプトなど)の適応追加が承認されました。

レビー小体型認知症は、
大脳と脳幹の神経細胞の脱落と、
レビー小体と呼ばれる構造物の出現を、
特徴とする変性性の認知症です。

ただ、この所見は、
解剖によってしか明らかにならないので、
通常生前の確定診断は困難です。

しかし、特徴的な症状が揃えば、
それをもってこの病気と診断されます。

アルツハイマー型認知症と同じ、
進行性の認知機能障害に加えて、
パーキンソン症状と言われる運動機能の異常や、
精神症状としての幻視がその特徴で、
認知機能にはかなりの波があり、
急にぼんやりして意識レベルの低下が起こり、
それがまたしばらくすると回復するのも、
その特徴の1つです。

その治療には、
まだ明確な方針がありません。

幻視などの精神症状には、
抗精神病薬と呼ばれる、
一種の鎮静剤が有効ですが、
少量でもパーキンソン症状の悪化することがあり、
使用には注意が必要です。

パーキンソン病に使用するような薬剤は、
逆に幻覚や妄想などの症状を、
悪化させることがあります。

そんな中で、
ドネペジルのようなコリンエステラーゼ阻害剤は、
レビー小体型認知症では、
脳のアセチルコリンの低下が確認されていることから、
その使用による症状の改善が期待され、
日本のおいて適応追加についての臨床試験が行なわれました。

その第2相の臨床試験の結果は、
2012年にブログ記事としてご紹介したことがあります。

トータル140名の患者さんを、
無作為に偽薬群と、
ドネペジルの3mg、5mg、10mgという、
3種類の用量に振り分けて、
認知機能や運動機能など、
複数の指標により、
その効果を12週間に渡り観察したところ、
CIBIC-plusというトータルな認知症の臨床評価の指標では、
偽薬に比べて、
少量の3mgを含む全ての用量で、
改善が認められました。

ただ、認知機能の指標や行動の指標では、
5mgと10mgでのみ有意な改善があり、
介護者の負担の軽減という指標では、
高用量の10mgのみに有意な改善が認められました。

副作用などの有害事象は、
概ねアルツハイマー型認知症に、
ドネペジルを使用した場合と、
同等であったとされています。

一番の危惧は、
ドネペジルの使用により、
幻覚なせん妄などの精神症状や、
パーキンソン症状が悪化するのではないか、
ということですが、
臨床試験の結果では、
そうした事例は少なく、
むしろ幻覚も歩行障害も、
トータルにはドネペジルの使用により、
改善が見られています。

ただ、パーキンソン症状が高度の方は、
除外されているので、
この臨床研究は、
レビー小体型認知症の患者さんを、
トータルに見ているとは必ずしも言えず、
認知機能の低下は中等度から高度で、
パーキンソン症状はそれに比較すると軽い患者さんを、
そのターゲットにしている、
という点には注意が必要なのではないかと思います。

その後第3相の臨床試験を経て、
ドネペジルのレビー小体型認知症に対する効果は、
再度確認がされ、
今月のレビー小体型認知症への、
適応拡大に至ったのです。

ここまでは特に問題はありません。

問題なのはその用法用量です。

レビー小体型認知症に対しては、
1日3ミリグラムから開始し、1から2週間後に5ミリグラムに増量する、
と明記されています。
5ミリグラムで4週間以上経過後、
10ミリグラムに増量すると書かれ、
症状により5ミリグラムに減量出来る、とされています。

これの何処が問題かと言うと、
アルツハイマー型認知症にある、
「症状により適宜減量する」という記載がないことで、
この薬は原則として、
最初の2週間以内を除いては、
5ミリグラムか10ミリグラムの用量しか使用してはならず、
5ミリグラムを継続する場合も、
一旦は10ミリグラムを使用してみて、
問題のあった事例に限られる、
ということになります。

認知症の診療をされている方なら、
感覚的にお分かり頂けるかと思うのですが、
患者さんによっては通常量のドネペジルでは、
興奮やイライラ、不眠などが生じ、
それが減量により落ち着くのは結構あることです。
ドネペジルは腎機能にはあまり影響されずに、
使用の可能な薬ではありますが、
それでも高齢の患者さんの場合、
通常より少量が最適用量であることも、
稀なことではないように思います。

しかし、上記のような添付文書の記載では、
たとえば10ミリグラムに増量しないで5ミリグラムを継続したり、
3ミリグラムを長期間使用することは、
査定の対象となることが充分に考えられます。

幾ら臨床試験の結果が、
10ミリグラムが適正の用量という結果であったとしても、
それは単なる1回の臨床試験の結果に過ぎないのですから、
このような用量の制限と、
減量を認めないというような方針は、
患者さんにとっても望ましいものではないように思います。

同様の問題は最近は数多く、
たとえば疼痛治療薬のプレガバリン(商品名リリカ)は、
神経障害性疼痛での用量の上限は1日600ミリグラムであるのに対して、
線維筋痛症に対する用量の上限は450ミリグラムという差があり、
これも承認時の臨床試験の用量設定がそうだったから、
というだけの理由で、
合理的な臨床上の理由は何らありません。

このような承認時の臨床試験の用量で、
厳格に処方を制限しようという考え方は、
人間の体質の違いを考える時、
あまり合理性のあるものとは言えず、
医療者がその裁量の広さを良いことに、
いい加減で非科学的な処方を繰り返したことが、
こうした制限を誘発した側面はあるので、
それを考えると忸怩たる思いがあるのですが、
基本的には「適宜用量増減」というような幅を持たせた記載は、
是非付け加えて欲しいと思うのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。

健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣

健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣

  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2014/05/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)





前の10件 | - 仕事のこと ブログトップ
メッセージを送る