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超高齢者の血圧と生命予後(2018年中国の疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
超高齢者の血圧.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
80歳以上の高齢者の血圧と生命予後との関連を検証した、
中国の疫学データについての論文です。

高血圧は心血管疾患のリスクになり、
生命予後にも大きな影響を与えることは、
多くの研究により実証された事実ですが、
80歳以上の高齢者において、
適切な血圧がどのくらいであるか、
というような点についてはまだ結論は出ていません。

多くの臨床試験においては、
75歳以上の高齢者はその対象となっていないからです。

今回の研究は中国において、
80歳以上の一般住民(年齢の中央値が92.1歳)という超高齢者において、
その血圧値と3年間の生命予後との関連を検証しています。

対象者は4658名で、
半数程度の方は降圧剤による治療を受けています。

その結果、
最も3年間の死亡リスクが低かったのは、
収縮期血圧が129mmHgの時で、
それが107未満でも154を超えていても、
いずれも死亡リスクは増加していました。
そのリスクの増加は主に心血管疾患による死亡によるものでした。
脈圧や拡張期血圧では、
同様の傾向は有意には確認されませんでした。

このように超高齢者においても、
高血圧は一定のリスクになることは間違いがありませんが、
降圧剤による治療の有無に関わらず、
収縮期血圧が107を下回るようになると、
むしろそのリスクは増加に転じてしまうようです。

これは治療による介入試験のようなものではなく、
治療の有無の影響などの検証も充分ではないので、
データの精度はそれほど高いものではありませんが、
これだけの超高齢者のまとまったデータは、
これまでにはあまり例がなく、
その意味で意義のあるものだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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カルシウムチャネルとインフルエンザ感染 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
カルシウム拮抗薬とインフルエンザ感染.png
2018年のCell Host & Microbe誌に掲載された、
A型インフルエンザウイルスの感染に、
カルシウム拮抗薬という降圧剤のターゲットである、
細胞膜の電位依存性カルシウムチャネルが、
強く関係しているという、
興味深い知見を実証した論文です。

北海道大学の藤岡容一朗先生らの研究です。

A型インフルエンザウイルスの感染の最初のステップは、
その表面にあるHA抗原という部分が、
細胞の表面にあるシアル酸という構造に、
結合することによって起こります。

ただ、人間の細胞表面には、
多くの種類のシアル酸があり、
どのような性質のシアル酸が、
インフルエンザウイルスのターゲットとして利用されるのかは、
これまであまり明確に分かっていませんでした。

上記論文の著者らの研究グループは、これまでに、
インフルエンザウイルスの感染に、
細胞内のカルシウム濃度の上昇が必要である、
という知見を報告しています。

通常細胞内のカルシウム濃度の上昇は、
細胞膜にある電位依存性カルシウムチャネルを介して起こります。

そこで今回の研究では、
ウイルスの感染モデルとして使用される培養細胞において、
カルシウムチャネルの働きをブロックする作用のある、
カルシウム拮抗薬のジルチアゼムを使用したところ、
充分量のジルチアゼムにより、
A型インフルエンザウイルスの感染は阻害されました。

そして、この電位依存性カルシウムチャネルに結合しているシアル酸に、
A型インフルエンザウイルスは結合して、
そこからカルシウムイオンが細胞内に流入することが確認されたのです。

このインフルエンザ感染における、
カルシウムチャネルの役割は、
培養細胞のみならず、
ネズミの実験でも確認されました。

このように、まだ動物実験レベルの知見ですが、
A型インフルエンザウイルスの感染においては、
電位依存性カルシウムチャネルと結合しているシアル酸に、
まずウイルスが結合することにより、
細胞内にカルシウムが流入し、
それがウイルスの感染に必須であることが今回確認されたのです。

単純にカルシウム拮抗薬を使用していると、
インフルエンザに感染しにくいとは言えませんが、
カルシウムチャネルの開放がインフルエンザ感染に必要だ、
という知見は大変興味深く、
これが感染の最初のステップであると考えると、
それを阻害するようなメカニズムの薬剤が、
今後開発される可能性が示された、
というようには言っても良いように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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胃痛(ディスペプシア)の診療ガイドライン(2018年アメリカ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ディスペプシアの治療.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
アメリカの胃痛についての診療ガイドラインの解説記事です。

ディスペプシア(Dyspepsia)は、
消化不良や胃もたれなどと訳されることがあり、
そうしたお腹の不快感を総称する言葉として、
一般的には使用をされていますが、
ここで医学用語として使用されているディスペプシアは、
1か月以上続く胃痛(心窩部痛)のことで、
それは胸やけや膨満感、吐き気などを伴っても良いのですが、
症状の中で最もつらいのが痛みである時に、
この用語を用いると、
アメリカとカナダの合同の消化器学会の、
ガイドラインでは記載をされています。
http://gi.org/wp-content/uploads/2017/06/ajg2017154a.pdf

胃痛というのは極めて一般的な症状で、
日本においては年齢には関わらず、
症状が持続するようなら胃カメラ検査が、
検討されることが多いと思います。

ただ、欧米では少し考え方は異なっています。

上記の解説記事の記載によれば、
年齢が60歳以上であれば、
一か月以上持続する胃痛は胃癌などを否定するために、
胃カメラ検査の適応になると、
弱い推奨として提言されていますが、
年齢が60歳未満である場合には、
たとえ体重減少や貧血などを合併していても、
すぐに胃カメラ検査をすることは推奨されていません。

これは18から70歳の年齢で、
胃痛の症状に対して胃カメラ検査を適応しても、
悪性腫瘍の発見率は0.22%と低く、
また悪性を疑う所見とされる貧血や体重減少の信頼性も、
高いものではないことが報告されているためです。

ただし、これは欧米に限った話で、
日本を含むアジアでは、
胃癌の有病率はより高いと指摘されているので、
日本において同様の基準を当て嵌めることは、
適切ではない可能性があります。

一方で60歳より若い年齢で胃痛が持続する時に、
必ずするべき検査として推奨されているのは、
ピロリ菌の感染診断のための検査です。
ピロリ菌が陽性であれば除菌をすることにより、
胃痛は改善する可能性があり、
この治療はそのコストに見合ったものとして評価されています。

裏打ちとなるデータとしては、
機能性ディスペプシアのメタ解析において、
ピロリ菌陽性で除菌を行なわない場合、
胃痛症状は76.4%で持続したのに対して、
除菌治療を行なうと67.9%に低下した、
というものがあります。
この症状に対する治療効果は、
胃酸の分泌を抑制するプロトンポンプ阻害剤の効果と、
ほぼ同等と報告されています。

ピロリ菌が陰性の胃痛と、
ピロリ菌が陽性で除菌後も持続する胃痛に対しては、
年齢が60歳未満であればプロトンポンプ阻害剤の使用が推奨されています。
この裏打ちとなる臨床データとしては、
プロトンポンプ阻害剤の4週間の治療は、
偽薬と比較して27.8%、H2ブロッカーと比較して15.5%、
有意に胃痛症状を改善していた、
というものがあります。

ただ、プロトンポンプ阻害剤は、
長期の使用において感染症リスクの増加や、
急性の腎障害の増加など、
多くの副作用や有害事象のある薬でもあり、
その長期使用の安全性や高齢者への使用については、
今後より検証される必要があると思います。

日本においては前述のように、
欧米より胃癌の有病率は高いので、
胃カメラ検査の適応については、
上記のガイドライン通りでは良くないと考えますが、
かと言って今のように、
すぐに胃カメラ、というのもあまり合理的とは言えず、
今後日本においても、
より地域性に合った、
合理的で有効性の確認された基準が必要ではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ビリルビン濃度と肺機能との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ビリルビン濃度と肺機能.jpg
2018年のBMC誌に掲載された、
血液のビリルビン濃度と肺機能の低下が関連するという、
韓国の疫学データを解析した論文です。

それほど画期的な研究というようなものではないのですが、
健診などでも簡単に測定されている数値が、
意外に大きな意味を持っているかも知れない、
と言う点が興味深く、
上記論文以外の知見も含めて、
今日はご紹介したいと思います。

ビリルビンというのは、
血液で酸素を運んでいるヘモグロビンの一部が、
分解されて生じる黄色の色素で、
肝臓に運ばれると胆汁として分泌され腸に流れます。
便が茶色いのは、
このビリルビンが更に代謝されて排泄されるためです。

血液のビリルビン濃度は、
0.3から1.2mg/dLくらいに保たれていますが、
肝臓や胆道の異常などでスムースに排泄されないと、
血液中に溜まって、
そのために皮膚が黄色くなります。
これが「黄疸」です。
この黄疸は、溶血と言って血液自体が壊れて、
血液中のビリルビンが増加した時にも起こります。

従って、
通常血液のビリルビンを測定する目的は、
肝臓や血液の病気を診断するためです。

ただ、このように病的ではないレベルのビリルビンは、
抗酸化作用や抗炎症作用を持ち、
血液中で身体を病気から守るような働きを、
持っている可能性が示唆されています。

これまでの臨床研究のデータでは、
正常範囲でビリルビンが高めであると、
心筋梗塞や虚血性心疾患、脳卒中、
肺癌、慢性閉塞性肺疾患のリスクの低下が報告されていて、
肺癌の死亡リスクの低下も報告されています。
おそらく外的な細胞障害から、
ビリルビンが身体を守るような働きを持っているのでは、
と推測されています。

今回の韓国の研究では、
40から69歳の韓国住民7986名の疫学データを活用して、
肺疾患のない対象者において、
血液のビリルビン濃度と呼吸機能との関連を検証しています。

血液のビリルビン濃度は、
男性で2.34mg/dLを超える場合と、
女性で1.75mg/dLを超える場合は、
明らかな異常値として除外されています。

その結果、
基準値の範囲でビリルビン濃度が高いほど、
1秒量や肺活量などの呼吸機能の数値は有意に高く、
経過観察におけるその低下率も、
ビリルビン濃度が高いほど抑制されていました。

このように、
ビリルビンが高値であることは、
肺機能の維持にも重要であることが示唆されたのです。

具体的には血液のビリルビン値は1.0mg/dL近傍か、
正常範囲であればそれより高値の方が、
肺機能低下のリスクは低くなっているようです。
(論文のビリルビン濃度の単位は表のみμmol/Lとなっていますが、
単位の誤りであるようです。ややずさんな感じです)

今回のデータはまだ参考程度のものですが、
血液のビリルビン数値が身体の多くの機能の維持に、
関わっているという指摘は興味深く、
今後の知見の集積に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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治療抵抗性高血圧におけるアルドステロンの影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スピロノラクトンと治療抵抗性高血圧.jpg
2018年のLancet Diabetes Endocrinology誌に掲載された、
治療抵抗性の高血圧についての論文です。

高血圧は脳卒中や心筋梗塞など、
多くの病気のリスクを高め、
そのコントロールがそうした病気の予防に効果のあることは、
実証され確認された事実です。

ただ、それでは生活改善により下降しなかった高血圧を、
薬物治療によって何処まで下げるのが適切か、
というような具体的な治療の基準については、
まだ色々と議論の余地が残っています。

それに加えて治療抵抗性の高血圧の存在が、
治療においては問題になります。

通常の高血圧診療において、
国際的に第一選択として推奨されている降圧剤には、
次の3種類があります。

その第一は少量の利尿剤で、
これは元々おしっこを多く出す作用の薬ですが、
ナトリウムの排泄を促す作用があるので、
それが主に降圧に有効であると考えられています。
ただ、カリウムの低下や尿酸の増加、
血糖値の上昇や脱水の出現など、
副作用や有害事象の多いことが難点です。
そのため、現在では単独の治療より、
少量を他の薬剤と組み合わせて使うことの方が、
多く行われています。
ただ、長期の効果や有効性のデータは、
間違いなく利尿剤が一番あるのです。

次にカルシウム拮抗薬というタイプの薬があり、
これは主に血管を拡張することにより、
血圧を低下させる薬剤です。
降圧作用は現在使用可能な降圧剤の中では、
基本的に最も強力です。

最後に身体に水と塩分を保持させるための、
レニン・アンジオテンシン系という一種のホルモンシステムを、
抑制するというメカニズムの薬があります。
代表はACE阻害剤とアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)です。

以上の3種類の薬の、
どれか1種類から使用を開始し、
徐々にその用量を増加させて血圧値を確認。
コントロールが良好となればそれで維持し、
もし最大用量まで使用してもコントロールが不良であれば、
上記3種類のうち別個の薬剤を追加して、
治療を継続するという方法が一般的です。

通常はこの方針で問題はありません。

しかし、中にはこうした薬物治療に抵抗性の事例が存在しています。

治療抵抗性の高血圧の定義は、
上記の3種類の薬を全て使用しても、
目標とする降圧には至らない、
という状態を指しています。

高血圧の診療をしている医者なら、
必ずこうした事例には遭遇します。

しかし、こうした場合に次にどのような手を打つべきか、
という点については、
現時点で明確なガイドラインは設定されていません。

4種類目の薬の候補としては、
β遮断剤もしくはα遮断剤という、
交感神経の遮断剤と、
スピロノラクトンという、
カリウムを保持するタイプの利尿剤が挙げられています。

レニン・アンジオテンシン系を抑制する薬を、
たとえばARBとACE阻害剤というように、
2剤以上併用することが一時期盛んに行われたのですが、
その組み合わせはカリウムが上昇するなどのリスクが高いため、
現状は推奨をされていません。
スピロノラクトンはカリウム保持性の利尿剤として、
従来の利尿剤の欠点をカバーする側面があり、
レニン・アンジオテンシン系の最後に当たる、
アルドステロンの作用のみを抑えるので、
ARBとACE阻害剤の併用時のような、
大きな弊害は生じにくいと判断されているのです。

それでは、
この3種類の薬剤のうち、
どれを第一選択とするべきでしょうか?

それを検証する目的の臨床試験が、
PATHWAYのナンバー2と題された、
イギリスで行われた臨床試験です。
その結果は2015年のLancet誌に掲載されました。

これは3種類の降圧剤を最大用量使用しても、
非糖尿病で140、糖尿病で135より低下しない、
治療抵抗性の高血圧の患者さんトータル346名を、
くじ引きで4つのグループに分け、
α遮断剤、β遮断剤、スピロノラクトン、偽薬の、
4種類の処方を12週間毎に繰り返し、
どの薬がいつ使われているかは、
患者さんにも治療者にも教えない、
という形式で52週間の経過観察を行なう、
という非常に緻密で手間の掛かる形式のものです。
個々の薬剤の用量は6週間で増量されます。
全ての患者さんが、
結果として全ての処方を経験するのです。

その結果は、
他の2剤と偽薬と比較して、
スピロノラクトンがより血圧を大きく降下させ、
血圧目標を達成した、
というデータになっています。

つまり、治療抵抗性高血圧の上乗せ処方としては、
スピロノラクトンが優れていることを示唆する結果です。

それでは、何故このような結果が得られたのでしょうか?

スピロノラクトンは利尿剤であると共に、
二次性高血圧症の代表の1つである、
原発性アルドステロン症の治療薬でもあります。

この研究では原発性アルドステロン症と診断されている患者さんは、
対象から外されているのですが、
この病気の診断は必ずしも簡単ではないので、
実際にはこの病気である患者さんも、
対象者には含まれている可能性があります。
またこの病気の基準を満たしてはいなくても、
アルドステロンの分泌が通常より亢進していて、
塩分や水分の貯留傾向があり、
それが治療抵抗性高血圧に繋がっているという可能性もあります。

今回のサブ解析では、
全例ではありませんがレニン活性とアルドステロン濃度、
その比率で原発性アルドステロン症のスクリーニングに使用される、
ARRという指標とスピロノラクトン反応性との関連をみたところ、
スピロノラクトンが有効な患者さんでは、
アルドステロンは高く、レニンは低く、
ARRは高いという関連が認められました。

このように、
治療抵抗性高血圧では、
原発性アルドステロン症かその類似の病態で、
アルドステロン分泌が、
過剰であることが多く、
そのためにスピロノラクトンが有用である可能性が示唆されました。

まず高血圧症の患者さんでは、
一度は原発性アルドステロン症のスクリーニングを行うことが重要で、
そこで診断が確定しなくても、
充分量のカルシウム拮抗薬やACE阻害剤、
ARBや利尿剤を組み合わせて使用しても、
血圧が充分にコントロールされない場合には、
もう一度その時点でレニンとアルドステロン分泌を評価し、
薬剤投与中であってもレニンが低値であれば、
アルドステロン拮抗薬を使用するのが、
一番合理的な対処であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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アトピー性皮膚炎と心血管疾患リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アトピー性皮膚炎と心血管疾患リスク.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
アトピー性皮膚炎と心血管疾患リスクについての論文です。

アトピー性皮膚炎は、
アレルギー素因(アトピー素因)を元に発症する皮膚の炎症で、
皮膚のバリア機能の低下と、
免疫機能の低下を伴います。
世界的には成人の1割に達するほどその罹患者は多く、
しかも増加を続けているとされています。

アトピー性皮膚炎による全身の皮膚の炎症性変化は、
心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の、
発症リスクにもなるのではないか、
という見解があり、
実際にそうしたことを示唆する疫学データも、
これまでに複数報告されています。
ただ、データによってもそのリスクにはばらつきがかなりあり、
アトピー性皮膚炎の重症度などが、
データに反映されていないという批判がありました。

そこで今回の研究では、
イギリスのプライマリケアのデータベースを活用して、
成人のアトピー性皮膚炎の患者さんを、
年齢、性別、全身状態などをマッチさせたコントロールと比較して、
アトピー性皮膚炎の重症度と心血管疾患リスクとの関連を検証しています。

この場合のアトピー性皮膚炎の重症度というのは、
強力なステロイドを長期間処方されているなどの、
診断や入院、処方のデータを元にして分類されています。

387439名のアトピー性皮膚炎の患者さんを、
1528477名のコントロールと比較して解析したところ、
中間値で5.1年の観察期間において、
10から20%の有意な心血管疾患の発症リスクの増加が、
アトピー性皮膚炎の患者さんでは認められました。

この心血管疾患リスクはアトピー性皮膚炎の重症度と関連していて、
重症のアトピー性皮膚炎の患者さんでは、
脳卒中のリスクが1.22倍(95%CI; 1.01から1.48)、
心筋梗塞や不安定狭心症、心房細動、心血管疾患による死亡のリスクは、
いずれも相対リスクで40から50%増加していて、
心不全のリスクは1.69倍(95%CI: 1.38から2.06)と有意に増加していました。
他の心血管疾患のリスクで補正すると、
そのリスクは小さなものにはなりましたが、
矢張り重症のアトピー性皮膚炎については、
有意なリスクの増加が認められていました。

このように、
アトピー性皮膚炎が少なからず心血管疾患と関連している、
というのはほぼ間違いのない事実で、
今後はその治療やコントロール状況が、
そのリスクにどのような影響を与えているのか、
心血管疾患の予防をどう考えるべきなのかに、
その関心は移りつつあるのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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タクロリムス軟膏(プロトピック)で白斑を治療する [医療のトピック]

こんにちは。

北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は特殊健診や産業医面談がある予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
白斑の治療論文.jpg
2018年のJAMA Dermatology誌に掲載された、
白斑を免疫抑制剤の軟膏で治療した症例を紹介した論文です。

白斑(尋常性白斑)というのは、
皮膚が部分的に白く抜けてしまう状態で、
皮膚の基底層に分布する色素細胞(メラノサイト)が、
何らかの原因で減少消失することにより起こります。

原因は不明ですが、
自己免疫的機序によって、
メラノサイトに対する抗体や、
細胞障害性T細胞がメラノサイトを攻撃する、
という可能性、
またそれ以外の原因による細胞障害などが、
その原因として推測されています。

白斑の治療は、
ステロイドの外用剤と、
紫外線による光線療法の単独もしくは併用が、
主に施行されています。

ただ、光線療法は有効である反面、
再発も稀ではありませんし、
長期の使用においては、
目の周囲では白内障のリスクを高め、
皮膚癌のリスクも高めることが知られています。
ステロイドは小さな病変には一定の有効性がありますが、
長期使用では皮膚を萎縮させます。

タクロリムスは免疫抑制剤の一種で、
その外用剤(商品名プロトピック)は、
アトピー性皮膚炎の治療薬として保険適応されています。

このタクロリムスの細胞障害性T細胞の抑制作用は、
自己免疫疾患の可能性が高い白斑にに対しても、
一定の有効性がある可能性があり、
これまでにも有効性の報告があります。

ただ、その効果は必ずしも確立されたものとは言えません。

今回の症例報告では、
著効と判断された3例を報告しています。
白斑改善の画像.jpg
著効した3例のうちの2例の画像です。
上の2枚は唇の周辺の白斑で、
下の2枚は瞼の部分の白斑です。
治療前後の画像の色調がかなり違うのが難点ですが、
タクロリムス軟膏(0.1%)の4ヶ月間の使用により、
白斑が著明に改善した、と記載されています。

特に瞼の白斑は、
光線療法が白内障のリスクのため施行不可であるので、
より意義のあるものなのです。

タクロリムス自体にも動物実験では発癌性の指摘があり、
現行の他の治療より安全とは言い切れないのですが、
白斑治療の1つの選択肢として、
その有効性や安全性、他の治療との併用の可能性などにつき、
今後も臨床知見の蓄積に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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苦いカボチャによる脱毛症 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
カボチャで脱毛.jpg
2018年のJAMA Dermatology誌の短報(レター)ですが、
苦いカボチャの中毒で脱毛が生じたという、
ちょっと興味深い症例報告です。

一部の植物毒の影響で、
成長期脱毛と呼ばれる一時的な脱毛症が、
生じることは以前から知られています。
ただ、原因となる植物やイヌサフラン、
ユリグルマ、パラダイスナッツなど、
一般の人があまり口にはしないような植物です。

今回の報告では、
通常はあまり脱毛症の原因とはならないカボチャで、
成長期脱毛の生じた事例が2例紹介されています。

1例目は苦いカボチャのスープを飲んで、
数時間で嘔吐や下痢などの中毒症状を起こした成人女性で、
消化器症状は1日で改善したものの、
それから1週間くらいしてから脱毛が生じています。
一緒に食べた家族も消化器症状はありましたが、
脱毛は生じていません。
患者は2か月後に皮膚科を受診し、
後半な脱毛を認めていましたが、
2センチ程度の毛が既に再生し始めていました。

2例目は苦いカボチャを含む食事を摂取してから、
1時間でひどい吐き気と嘔吐が起こり数時間持続した、
これも成人の女性の事例です。
その3週間後に頭のみならず外陰部も脱毛し、
半年後の回復期の画像がこちらです。
カボチャで脱毛の画像.png
脱毛からの回復部位は6センチの短い毛髪となっていて、
6センチを超える毛髪では、
末端から6センチの位置に、
白い結節が認められ、その部位が脆くなっています。
後天性結節性裂毛症と呼ばれる所見で、
毛髪に物理的な刺激があった時などに生じるものです。

この2例では苦いカボチャを食べた後で、
食中毒と思われる消化器症状の後、
時間差を置いて脱毛が生じています。
食中毒の原因はウリ科の植物の苦み成分に含まれている、
ククルビタシンという一種のステロイドにあります。
この成分は食中毒様の症状を起こすことが知られています。

通常食用のカボチャなどでは、
品種改良によりククルビタシンは、
殆ど含まれていないとされていますが、
自然種の遺伝子が交配されるなどして、
ククルビタシンが多く含まれているカボチャが、
混じってしまうことがあります。

ククルビタシンには強い細胞毒性があるので、
その影響により成長期脱毛が起こってもおかしくはありません。
ただ、通常は嘔吐や下痢などの消化器症状は知られているものの、
脱毛のまとまった報告は、
今回が初めてのようです。

ゴーヤの苦みは別の成分なので問題はありませんが、
カボチャやキュウリなどのウリ科の野菜や果物で、
非常に苦みが強い場合には、
ククルビタシンが多く含まれている可能性があるので、
食べるのを控えるのが賢明であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ため息とそのメカニズム [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ため息のメカニズム.jpg
2016年のNature誌に掲載された、
ため息のメカニズムを解明した論文です。

ため息というのは特殊なパターンを持つ、
深くて大きな単発的呼吸のことですが、
自覚的には緊張の緩んだ時や退屈な時、
悲しみに心が乱れた時などに出るという特徴があります。

ただ、こうした時のみにため息は出ている訳ではなく、
哺乳動物では定期的に、
このタイプの呼吸が通常の呼吸の合間に、
出現していることが知られています。

その頻度は人間で1時間に12回(5分に1回)くらいで、
ネズミでは1時間に40回くらいです。

ため息は通常の呼吸と比較して、
どのような特徴があるのでしょうか?

実はため息をすることにより、
縮んだ肺胞が拡張し、
呼吸機能が改善することが確認されています。
通常の呼吸のみを継続していると、
徐々に肺胞が縮んで、
呼吸機能は低下してしまいます。
それをリセットして肺胞に空気を送り込むような働きが、
ため息タイプの呼吸にはあるのです。
このために哺乳動物は定期的に、
ため息を吐いているのです。

ため息はそのために、
低酸素状態で呼吸機能が低下すると、
それに伴って刺激されその数が増加します。

何故感情的に落ち込んだときや悲しい時、
緊張が取れてほっとした時などに、
このため息が起こるのかは明確には分かっていません。

一種のリラクゼーションの効果があるのでは、
というような推測は可能ですが、
それが習慣化したことの原因は、
自律神経のバランスが元に戻る、など、
もっともらしい説明はあるものの、
特に実証されたようなものではないようです。

上記論文はそれまで詳細が不明であった、
脳におけるため息の発生メカニズムを、
ネズミの実験で明らかにしたもので、
脳の髄質に存在している2種類の小さな神経細胞群が、
プレベツィンガー複合体と呼ばれている呼吸リズムの中枢と、
関連するネットワークを形成していて、
その2種類の細胞群から呼吸リズム中枢への信号が遮断されると、
1種類の遮断によりため息の回数が減少し、
2種類の遮断により完全にため息が消失する、
ということが実験的に確認されました。

ただ、この2つの神経細胞群からの信号が遮断されても、
通常の呼吸自体のリズムには、
特に変化は見られませんでした。

このように通常の呼吸リズムを作る中枢があり、
そこにため息を差し挟むためのボタンのような仕組みが存在していて、
おそらく感情の変化がその部位を刺激するために、
低酸素など本来の目的以外でも、
ため息のシステムが作動して、
ため息が起こるという可能性が示唆されました。

現時点で感情とため息との正確な関連は、
まだ明らかではありませんし、
これは敢くまで動物実験に留まるものですが、
ため息のメカニズムが明確になった意義は大きく、
今後の研究の進歩にも期待したいと思います。

今日はとても不思議な、
ため息のメカニズムについての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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大腸癌の治癒切除後のフォローアップ間隔と予後 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
大腸癌の手術後の経過観察の頻度.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
大腸癌の治癒切除後のフォローアップの頻度についての論文です。

大腸癌の患者さんの3分の2は、
癌が固有筋層を超える進行癌ではあるものの、
遠隔転移はないⅡ期もしくはⅢ期の癌です。

Ⅱ期もしくはⅢ期の大腸癌の多くは、
治癒切除が可能ですが、
切除後の再発も稀ではないため、
定期的な検査などによるフォローアップが行われます。

ただ、
そのフォローアップをどの程度の間隔で、
どのような検査を組み合わせて行うことが、
最も有効であるのか、
というような点については、
国や地域によっても考え方は様々で、
世界的にスタンダードな方法が、
決められているという訳ではありません。

そこで今回の研究では、
1から2年に一度というフォローアップと、
半年に一度というより頻回の経過観察とを比較して、
その予後に与える影響を比較検証しています。

対象はスウェーデン、デンマーク、ウルグアイの24の専門施設で、
Ⅱ期もしくはⅢ期の大腸癌で治癒切除を受けた、
2509名の患者さんで、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は術後6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、36ヶ月で、
腫瘍マーカーのCEAと胸腹部のCT検査を施行し、
もう一方は同様の検査を、
12ヶ月と36ヶ月でのみ行います。
そして、術後5年の時点での両者の予後を比較するのです。

その結果、
患者さんの5年の時点の死亡率は、
2回のみの検査で14.1%、5回の検査で13.0%で、
有意は差は認められませんでした。
大腸癌による死亡リスクでみても、
2回のみの検査で11.4%、5回の検査で10.6%と、
これも統計的な差は認められませんでした。
その間の大腸癌の再発率は、
2回のみの検査群で19.4%、5回の検査群で21.6%と、
これも殆ど差はありませんでした。

このように、
治癒切除後であっても、
5年で2割の患者さんは再発している訳ですから、
術後の経過観察の必要性は間違いがないのですが、
通常の検査を間隔を詰めて行っても、
結果としては再発率や生命予後には、
差は認められませんでした。

この問題は必ずしも統計的な差のみで、
決定出来るような事項ではないと思いますが、
検査の内容など、
今後より多角的な検証が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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