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あくびの伝染のメカニズム [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
あくびの伝染.jpg
今年のCurrent Biology誌に掲載された、
あくびがうつるメカニズムについての論文です。

他人が目の前であくびをすると、
特別眠くなくても、
何かつられるようにして自分もあくびをすることは、
皆さん誰でも経験があることではないかと思います。

まるで風邪がうつるように、
「あくび」という現象がうつるのは何故でしょうか?

あくびがうつるという現象は、
相手の行為や音声を無意識に真似るという意味で、
反響現象(echophenoena)の1つの典型と考えられています。

あくびの伝染という現象は、
当初は人間だけの特徴と考えられていましたが、
チンパンジーなどの類人猿でも確認され、
類人猿以外の猿や犬でも同様の現象が確認されています。

人間の脳にはミラーニューロンという、
相手の行動や音声をそのままに模倣する、
という仕組みがあり、
赤ちゃんがお母さんの動作や言葉を真似て、
そこから成長してゆくのも、
このミラーニューロンの経路が関与していると言われています。

反響現象も,
当初はこのミラーニューロンの関与が大きいとされていましたが、
上記文献の著者らのデータでは、
むしろ運動を司る大脳の一次運動野の興奮と、
その生理学的抑制との関連が強いのではないか、
という仮説が得られていました。

今回の研究では、
TMS(経頭蓋磁気刺激)という手法を用いて、
あくびが伝染する時に脳内で起こる現象を検証しています。

TMSは磁気刺激によって、
非侵襲的に脳の特定部位を刺激することにより、
その反応パターンを解析して、
脳のどの部分がどのような機能を持っているのかを分析するもので、
最近ではうつ病などの治療にも応用が試みられています。

ボランティアの成人36人に、
あくびをしたくても我慢する、
という指示と、
我慢をしなくても良いという指示を出して、
他人があくびをしている映像を見せ、
その時の反応を検証してみたところ、
あくびは我慢するようにという指示を出すことにより、
より伝染し易さが増し、
それは大脳運動野の興奮のしやすさと、
その生理学的抑制の強さとに関連していることが、
機能的に確認されました。

つまり、
運動野が興奮しやすいか、
その抑制が掛かりにくいという体質があると、
あくびの伝染が起こりやすく、
それはあくびをするな、という命令により、
増強されるというのです。

無意識の癖が、
それを指摘されしないように命じられると、
却って強くなったり、
それをしたいという衝動が強くなることは、
誰でも実感として感じていることだと思いますが、
それはこの反響現象のメカニズムと、
深い関連のある現象のようです。

チックや発達障害における同じ動作の反復など、
コントロールの困難な無意識の動作の異常は、
おそらく同様のメカニズムで生じている可能性が高く、
今回の知見はその非侵襲的で薬物を用いない治療の可能性を、
開くもののように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。



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治療抵抗性高血圧の頻度とその推移(2017年イギリスの報告) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は木曜日なのですが、
午後は石原が研修会出席のため休診とさせて頂きます。
受診予定の方はご注意下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
治療抵抗性高血圧の疫学.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
イギリスにおける治療抵抗性高血圧の頻度を、
年代毎に検証した論文です。

治療抵抗性高血圧というのは、
利尿剤を含む3種類以上の降圧剤を、
充分量使用しても血圧が140/90mmHg以上ある、
という重症の高血圧のことを指していて、
上記文献では利尿剤を含む4種類以上の降圧剤を使用しないと、
目標血圧に達しない場合も、
その定義に含めています。

治療抵抗性高血圧の患者さんは、
通常の高血圧の患者さんの2倍以上、
心血管疾患のリスクがあると報告されていて、
その管理をどうするかは臨床上の大きな問題です。

これまでの報告によると、
高血圧の患者さん全体の14から16%は、
この治療抵抗性高血圧であると推計されています。

ただ、こうしたデータはそれほど精度の高いものではなく、
また時代による変化も反映はしているとは言えません。

今回の検証は、
イギリスのプライマリケアのデータベースを活用したもので、
1995年から2015年という20年間の、
131万人余りのデータを解析した、
非常に大規模なものです。

その結果、
年齢を平均化した1996年の治療抵抗性高血圧の発症率
(その年に新規に診断された患者さんの比率)は、
高血圧の患者さん年間100人当たり0.93件(95%CI;0.87から1.00)で、
2004年には2.07件(95%CI;2.03から2.12)とピークに達し、
その後は低下に転じて、
2015年には0.42件(95%CI; 0.40から0.44)まで低下しています。

年齢で平均化した、
その時点での高血圧の患者さんに占める比率である有病率は、
1995年には1.75%(95%CI;1.66から1.83)であったものが、
2007年には7.76%(95%CI;7.70から7.83)とピークに達し、
その後はほぼ横ばいとなって、
2015年には6.46%(95%CI;6.38から6.54)とやや減少に転じています。

年代は問わない傾向として、
治療抵抗性高血圧は、
65から69歳の年齢層と比較して、
80歳以上でより有病率が高い傾向にありました。

このようにイギリスにおいては、
1995年から2004年までは増加していた、
治療抵抗性高血圧の発症率が、
それ以降は著明に減少に転じています。

この説明として上記文献の解説では、
1995年以降高血圧の健康への悪影響が重要視され、
より多くの患者さんが診断されることになったため、
その頻度は増加したが、
治療の進歩や強力な降圧作用を持つ薬剤の普及、
また生活習慣の改善などによって、
その発症率は減少に転じたのではないかと推測しています。

確かに減塩の普及は1つの要因ではあると思いますし、
上記文献には記述はありませんが、
原発性アルドステロン症などの二次性高血圧症が、
より適切に診断されることが多くなったことも、
その現象の一因にはなっているように思います。

どうやらこれまで言われていたより、
一般の高血圧の患者さんにおける、
治療抵抗性高血圧の比率は低いものであるようです。

おそらく日本においても同様の傾向はあると思いますが、
高齢化の進行に伴い、
その発症率は減少しても、
実際にはその有病率は当面は増加を続けると思われるので、
治療抵抗性高血圧の管理の重要性は、
今後も増すことは間違いがないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。



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形成外科的に最も魅力的な女性の唇を科学する [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
理想の唇を科学する.jpg
今年のJAMA Facial Plastic Surgery誌に掲載された、
理想の女性の唇の形を検証する、
というちょっと科学誌としてはユニークな感じのする論文です。

これは実際にどのような唇の形が、
最も理想的な形状であるかを、
複数の画像への評価から解析したもので、
インターネットを利用して、
多くの意見を集積したもののようですが、
その集計などの詳細については、
本文を読んでも良く分かりません。

引用文献があって、
詳細はそちらにと書いてあるのですが、
それを読むのにも結構お金が掛かるので、
馬鹿馬鹿しくなってあきらめました。
ただ、男性のみにアンケートする、
というようなものではないようです。

何故こうしたミスコンテストまがいの調査をするのかと言うと、
病気で顔面が変形した方や失われた方の形成治療をするのに、
その基本となる理想の形状として、
必要になる、ということのようです。

勿論、それだけの理由ではなく、
興味を惹くという部分もおそらくはあるのだと思います。

また欧米的な考えの基礎には、
物には理想の形があるという、
プラトンから連なるイデア論や、
神様が理想的な形状で人間を作った、
という宗教的な考えもあるのだと思います。

唇の形状の複数の女性の写真でCGにより修整を加え、
様々なパターンを作って比較をしています。
具体的には唇が顔全体に占める面積と、
その上下のバランスの理想形を検証しています。

こちらをご覧下さい。
唇の大きさ.jpg
これが元画像の唇の大きさを複数パータンで変えて、
そのうちのどれが最も魅力的で理想的な形状であるかを、
検証してもらうためのテスト画像です。

もう1つご覧下さい。
唇の上下.jpg
こちらは唇の上下のバランスを変えて、
同様の検証を行なっています。

検証の結果としては、
テスト画像そのものの唇の占める面積を、
53.5%大きくするのが最も理想的な形状で、
上の唇と下の唇の幅の比率は1対2が最も理想的で、
逆に上が大きい2対1が最も評価が低いという結果になっていました。
実際の唇の占める面積は、
顔面の下3分の1の9.6%が最も理想的である、
という結果になりました。

それがどうした、
という気がしないでもありませんが、
形成外科の分野では、
こうした基礎データが手術の方向性を決める上で、
重要な情報の1つになることは、
間違いがないのだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。



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甲状腺機能と生命予後について(2017年の住民研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
9月28日(木)の午後は休診になりますのでご注意下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
甲状腺機能と生命予後.jpg
2017年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
甲状腺機能と生命予後についての住民研究の論文です。

甲状腺は首ののどぼとけの下の辺りに、
蝶が羽を広げたような形状で、
左右に広がる腺組織で、
そこから身体の代謝や交感神経の働きを調節する、
甲状腺ホルモンが分泌されています。

甲状腺ホルモンの分泌量は、
脳下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)で調節されていて、
一般的に甲状腺機能の簡単なスクリーニングとしては、
このTSHと遊離T4という甲状腺ホルモンの2種類の測定が行われます。

下垂体に大きな異常がなければ、
TSHが高くて遊離T4が低ければ、
甲状腺機能低下症ということになりますし、
TSHが低くて遊離T4が高ければ、
甲状腺機能亢進症ということになります。

現在病気のない健康な人の95%が含まれる範囲を、
TSHも遊離T4も正常値(基準値)として設定していて、
今回のヨーロッパの研究で採用されている基準値は、
TSHが0.40から4.0mIU/L、
遊離T4が0.86から1.94ng/dLとなっています。
日本の検査機関などが設定している基準値も、
それほど大きな差はありません。

それでは、この範囲にデータが収まっていれば、
甲状腺機能については健康上の問題はないと、
言ってしまって良いのでしょうか?

その点については疑義を呈する報告が複数存在しています。

この基準値は現行健康成人であれば、
年齢に関わらずに適応されています。

しかし、高齢者においては、
少し機能低下に傾いた状態、
つまりTSHは少し高めで遊離T4は少し低めであった方が、
心血管疾患のリスクが低く、
生命予後も良いとするデータが複数存在しています。

これは交感神経が心臓を刺激するため、
高齢となり心機能が生理的にやや低下した状態においては、
その刺激が少ない方がむしろ健康上のメリットが大きい、
というように考えると理に適っているようにも思えます。

それでは基準値内であっても、
数値がやや高めの人と低めの人の間で、
その後の健康や生命予後に違いはあるのでしょうか?

今回の研究は、
オランダの大規模な疫学データを活用して、
基準値内のTSHと遊離T4の数値の高低が、
その後の生命予後に与える影響を、
心血管疾患の有無によって比較し、
またこれまであまりデータ化されていなかった、
余命の延長や短縮への影響について検証しています。

対象となっているのは、
大規模疫学研究の対象者のうち、
TSHと遊離T4濃度が基準値内の7785名で、
平均で8.1年の経過観察を行なっています。
その間に789名が心血管疾患を発症し、
1357名が死亡しています。

ここでTSHと遊離T4のデータを、
低いものから高いものへ3等分にして比較すると、
心血管疾患の発症とTSHの数値との間には有意な関連はなく、
遊離T4との関連についてみると、
遊離T4が高めの群は、
低めの群の1.32倍(95%CI;1.10から1.58)
心血管疾患の発症リスクが有意に高くなっていました。

心血管疾患の発症がない場合の死亡リスクは、
TSHについては低めの群よりも、
高めの群で24%(95%CI; 0.64から0.91)有意に低下していて、
遊離T4については低めの群よりも、
高めの群で1.45倍(95%CI; 1.21から1.73)有意に増加していました。

心血管疾患の発症がある場合の死亡リスクは、
TSHについては高い方がリスクの低い傾向はあるものの有意ではなく、
遊離T4については低めの群よりも、
高めの群で1.64倍(95%CI; 1.32から2.02)有意に増加していました。

つまり、
甲状腺機能が基準値内であってもやや高めであると、
その後の死亡リスクは高くなる可能性があり、
それが心血管疾患を発症しているような人では、
より高くなる可能性がある、
ということになります。

ここで以上のデータを元に、
50歳の時点の男女の甲状腺機能の数値が、
その余命に与える影響を計算してみると、
心血管疾患を発症した場合、
TSHが基準値内で高めであることは、
低めであることと比較して、
その後の余命を男性で2.0年(95%CI;1.0から2.8)、
女性で1.4年(95%CI;0.2から2.4)、
それぞれ有意に延長していました。
これが心血管疾患を発症していない場合では、
同様にその後の余命を男性で1.5年(95%CI;0.2から2.6)、
有意に延長していましたが、
女性では有意な延長は認められませんでした。

遊離T4について同様に見てみると、
心血管疾患を発症している場合、
低めでることと比較して遊離T4が高めであることは、
男性で3.2年(95%CI;-5.0から-1.4)、
女性で3.5年(95%CI;-5.6から-1.5)、
それぞれ有意に余命を短縮していました。
これが心血管疾患を発症していない場合で、
男性で3.1年(95%CI;-4.9から-1.4)、
女性で2.5年(95%CI;-4.4から-0.7)、
それぞれ有意に余命の短縮を認めていました。

このように基準値内での変化であっても、
50歳の時点での甲状腺機能が、
やや高めであることがその後の余命に与える影響は、
今回の検討では意外に大きなもので、
それも特に心血管疾患のリスクのあるような人で、
顕著になっていました。

ただ、3群間で必ずしも直線的なリスクの増加はなく、
本来鋭敏である筈のTSHよりも、
遊離T4でより明確な差が出ているなど、
数値の信頼性にやや疑問を覚える点もあり、
中高年になるとやや甲状腺機能は低下していた方が、
その後の心血管疾患のリスクは少ない、
という知見は事実であると思いますが、
今回のデータのみを元に、
基準値の妥当性を議論することはやや時期尚早であるように思います。

また今後の知見の積み重ねを注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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急性の咽頭痛へのステロイド使用のガイドライン [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
今週木曜日(28日)の午後は休診となりますのでご注意下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ステロイドを咽頭痛に.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
急性の咽喉の痛みに対して、
1回のみ比較的大量のステロイド剤を使用する、
という治療の新しい考え方の、
一定のガイドラインを提示した記事です。

急性の咽喉の痛みというのは、
非常に良く見られる症状で、
その多くは短期間で治療をしなくても改善するものですが、
中には急激に悪化して、
食事が全く摂れなくなって、
入院を要するような事態になることもあります。

扁桃腺の炎症の場合には、
原因が溶連菌という細菌であれば、
お子さんでは抗生物質を使用して、
除菌を図ることが推奨されています。
そのために、一般の臨床において、
溶連菌の迅速テストが普及しています。

ただ、大人の場合には、
それほど明確な方針が定まっている、
という訳ではありません。

未治療で様子を見るのと比較して、
炎症を抑える作用が強いステロイド剤や、
抗生物質を症状出現後すぐに使用した場合に、
より早期に症状が改善した、
という臨床データが幾つかあります。

ただ、抗生物質とステロイドを併用している研究が多く、
ステロイドの単独の作用については明確ではありません。

2017年の4月のJAMA誌に、
急性の咽頭痛の症状に対して、
すぐにステロイドを単回大量経口投与した場合と、
何もしなかった場合とを、
厳密な方法で比較検証した論文が掲載されて話題になりました。

同時期にブログ記事にもしています。

イギリスのプライマリケアの複数の医療機関において、
1週間以内に発症した、
咽喉の痛みと嚥下時の痛みのある18歳以上70歳以下の患者さんで、
すぐに抗生物質などによる治療は必要ないと、
主治医が判断した576名を登録し、
患者さんにも主治医にも分からないように、
クジ引きで2つの群に分け、
一方はステロイド剤を1回内服し、
もう一方は偽薬を使用して、
登録後24時間と48時間の時点での、
症状の消失の頻度を比較検証しています。

患者さんには抗生物質をあらかじめ渡しておいて、
病状が48時間後に改善しなければ使用が指示されます。
直近のステロイド剤の使用や抗生物質の使用者、
妊娠中の女性やその可能性のある人、
糖尿病の患者さんなどは除外されています。

ステロイドはデカドロンが10ミリグラム、
1回で使用されています。
これはプレドニゾロンで60ミリグラム、
コートリルで250ミリグラムくらいに相当する、
かなりの高用量です。

その結果…

登録後24時間で完全に症状が消失した頻度は、
ステロイド使用群で全体の22.6%に当たる65名だったのに対して、
偽薬群では全体の17.7%に当たる49名で、
統計的には2群に有意な差はありませんでした。
48時間後に症状が消失した頻度では、
ステロイド使用群で35.4%に当たる102名であったのに対して、
偽薬群では27.1%に当たる75名で、
この差は8.7%(95%CI;1.2から16.2)で有意と判断されました。

咽頭培養は施行されていて、
溶連菌は2割弱くらいで検出されていましたが、
その差はステロイドの効果の差とは関連していませんでした。

このように、
咽頭炎もしくは扁桃炎と判断した段階で、
重症でなければステロイドを単回大量で使用すると、
48時間以内に症状が消失する頻度は、
10%程度増加する可能性があります。

これが最善の治療であるとは、
勿論現時点では言えませんが、
症例を選んでのステロイドの使用は、
症状が強い場合には1つの選択肢ではあると考えられます。

この研究結果及び、幾つかの先行研究の結果などをまとめて、
今回のガイドラインが作られました。

その一部がこちらです。
ステロイドの咽頭痛への使用の図.png
5歳以上の年齢の強い咽頭痛の症状に対して、
1回のみ成人では10ミリグラム、
小児では体重1キロ当たり0.6ミリグラムの、
デキサメサゾンという高力価のステロイド剤を、
経口で1回のみ使用します。

抗生物質や消炎鎮痛剤の使用は、
必要に応じて併用されます。

免疫低下状態や伝染性単核球症というウイルス感染症、
手術や人工呼吸器の装着による咽頭痛は、
ステロイド治療の禁忌となっています。

このステロイド治療により、
咽頭痛の改善や症状の持続期間の短縮が期待出来ます。
一方で使用するのは1回のみですから、
強い副作用は通常はあまり想定はされません。

そのために今回のガイドライン作成となったのです。

ただ、これは敢くまで「弱い推奨」というレベルのものなので、
常に行った方が良い、というものではなく、
症例に応じて、1つの選択肢として検討するべきものなのだと思います。

現時点で不明であるのは、
単回とは言え大量のステロイドを使用することが、
本当に重篤な副作用に繋がることはないのか、
と言う点と、
しばしばみられる再発性の扁桃炎に対して、
ステロイドを使用することが適切かどうか、
というような点にあり、
今後の検証が必要だと記載されています。

欧米では臨床的なやや些細な、と思われるような事項や、
それぞれの医師の個性によって、
変わりがちな事項について、
その都度検証が行われ、
ガイドラインが作成されていて、
そうした点は是非、
日本でも見習うべきではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。



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味噌や納豆の高血圧予防効果(多目的コホート研究サブ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診です。

今日は1年に一度の人間ドックの日です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
味噌の血圧上昇予防作用.jpg
今年のthe Journal of Nutrition誌に掲載された、
大豆の発酵食品に高血圧の予防効果があるのでは、
という有名な日本の疫学データのサブ解析結果の論文です。

大豆に含まれているイソフラボンというポリフェノールには、
血管の平滑筋の増殖を抑えるなど、
動脈硬化を予防するような作用のあることが報告されていて、
心血管疾患の予防や、
高血圧の予防に有効であるという可能性が示唆されています。

ただ、動物実験では高血圧予防効果が報告されている一方で、
大豆蛋白の摂取と高血圧との関連を検証したデータを、
まとめて解析したメタ解析の論文では、
あるものでは血圧降下作用が認められたとされている一方で、
別のものでは有意な降下作用が認められていないなど、
その結果は一定していません。

ここで1つ原因として考えられるのは、
大豆食品と大豆発酵食品(味噌や納豆など)との違いです。

大豆に含まれるイソフラボンは、
腸内細菌の働きによって代謝されてから吸収されるので、
その吸収には個人差があってかなり不安定なのですが、
発酵食品に含まれているイソフラボンは、
アグリコン型と呼ばれる小分子となっていて、
腸内細菌によらずにそのまま吸収されるからです。

今回の研究は、
日本の有数の大規模疫学データである、
多目的コホート研究のデータを活用して、
この問題を日本人で検証しています。

多目的コホート研究に参加した一般住民のうち、
収縮期血圧が130mmHg未満で拡張期血圧が85mmHg未満という、
血圧上昇のない人だけを対象として、
食事調査から大豆製品の摂取量を、
発酵食品とそうでないものとに分けて算出し、
その摂取量と5年後の血圧上昇との関連を検証しています。

対象人数は登録時点で40から69歳の4165名です。

その結果…

トータルの大豆蛋白の摂取量と5年後の血圧上昇との間には、
有意な関係は認められませんでしたが、
味噌や納豆のような発酵大豆食品の摂取量についてみると、
摂取量が少ない場合と比較して、
摂取量が多いと血圧が130/85を超えるリスクが、
23%(95%CI; 0.66から0.91)有意に低下していました。
この量は納豆を毎日1パック摂っていれば、
達する程度の分量です。

今回のデータは元々このために調査されたものではありませんし、
食事調査から推測された大豆蛋白の摂取量も、
それほど正確なものとは言えませんから、
1つの参考として考えるレベルのものだと思いますが、
味噌や納豆をどのようにして摂取することが良いのか、
その塩分量との関連も含めて、
再検証が必要であるようには思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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2型糖尿病の既存薬による併用治療の長期効果(2017年イタリアの研究) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
糖尿病併用治療の比較.jpg
今年のthe Lancet Diabetes Endocrinology誌に掲載された、
2型糖尿病の2種類の飲み薬による併用治療の効果についての論文です。

2型糖尿病の第1選択薬がメトホルミンであることは、
世界的に認められている大原則ですが、
実際には充分量のメトホルミンを使用しても、
血糖コントロールが不充分であることは、
臨床ではしばしば遭遇することです。

この場合欧米のガイドラインにおいては、
メトホルミンに上乗せする形で、
別の種類の血糖降下剤を、
併用することが推奨されています。

ただ、併用薬としてどの薬が最も優れているのか、
と言う点については、
未だ結論は得られていません。

最近インクレチン関連薬やSGLT2阻害剤という、
新しいメカニズムの薬の評判が高く、
そうした薬の併用は臨床医にとっては魅力的ですが、
新薬は高価ですし、
その長期効果もまだ分からない面は多いので、
長く使用され薬価も安い併用薬の可能性を、
検証することも非常に重要なことです。

以前よりメトホルミンの併用薬として使用されている薬は、
SU剤とピオグリタゾンです。

SU剤は飲み薬の血糖降下剤としては最も強力な薬で、
その血糖降下作用が一番強いことは間違いがありません。
その一方で低血糖を起こしやすいという欠点があり、
またインスリン濃度の上昇により体重増加を来しやすく、
長期的な心血管疾患の予防にも、
悪い影響を及ぼすのではないか、
という危惧があります。

ピオグリタゾンはインスリン抵抗性を改善する効果があり、
その血糖降下作用はSU剤より弱いのですが、
低血糖を起こしにくいという利点があります。
また、心不全に対しては悪化させるという危惧はあるものの、
トータルには心血管疾患の進行予防効果も期待されています。

2型糖尿病の治療目的は、
現在では心血管疾患の予防が最大のものとなっています。

それでは、
メトホルミンへの上乗せ治療として、
SU剤とピオグリタゾンの、
どちらが心血管疾患の予後に良い影響を与えるのでしょうか?

今回の研究はイタリアにおいて、
その点を直接比較で検証したものです。

患者さんはイタリアの57か所の糖尿病専門施設で、
2年間以上メトホルミン単剤の治療を受け、
1日2000mgから3000㎎(日本での使用量は原則2250mg まで)という、
充分量の治療を継続していても、
血糖コントロールの指標であるHbA1cの数値が、
7から9%の50から75歳の2型糖尿病の患者さんで、
トータルな人数は3028名です。
クジ引きで2つの群に分けると、
一方はSU剤を使用して、
もう一方はピオグリタゾンをそれぞれ上乗せで使用して、
半年毎にHbA1cを測定、
それが8%を下回ることを目標に、
量の調整を行います。
ピオグリタゾンは1日15から45㎎(日本での使用量と同じ)で使用され、
SU剤はグリベンクラミドが5から15㎎(日本では10㎎が上限)、
グリメピリドが2から6㎎(ほぼ日本の使用量と同じ)、
グリクラジドが30から120㎎(ほぼ日本の使用量と同じ)、
で使用されます。

試験はもっと長期行われる筈でしたが、
中間解析においてそれ以上の継続をしても、
結果が変わる可能性はほぼないとの判断で、
平均観察期間が57.3か月の時点で途中終了となっています。
それでも5年弱の観察期間です。

試験の目的は、
総死亡と心血管疾患の新規発症とを併せたリスクで、
これは両群に差はありませんでした。
SU剤は結構高用量を使用していますが、
意外にも長期のHbA1cはピオグリタゾンの方が安定して低下しています。

そして、これは当然と言えば当然ですが、
低血糖のリスクについては、
ピオグリタゾンよりSU剤で高くなっていました。
ピオグリタゾンで指摘されることの多い心不全と膀胱癌については、
今回の試験の範囲では、
特に問題になることはありませんでした。

このように、
ピオグリタゾンもSU剤も、
生命予後を含めた心血管疾患の5年程度の予後については、
それほどの差はないと考えて良く、
後は低血糖のリスクや他の有害事象のリスクに勘案して、
その選択を行うことが妥当であると考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。



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卵円孔閉鎖術とその脳梗塞予防効果(2017年の臨床データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
卵円孔閉鎖の効果.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
若年性脳梗塞の原因として多いとされる、
卵円孔開存の心臓カテーテル手術の有効性を検証した論文です。

今回の紙面にはこれを含めて3編の、
ほぼ同じ内容の臨床研究が、
別個の研究グループから報告されています。

3つの研究ともこのカテーテル治療の有効性を明確に示したもので、
今後のこの問題についてのトレンドが変わる、
きっかけとなる知見であると思います。

若年性脳梗塞の原因の1つとして、
卵円孔開存症による奇異性脳塞栓症が、
近年注目されています。

脳梗塞には脳血栓と脳塞栓とがあり、
脳塞栓というのは、
別の場所から飛んで来た血の塊などが、
脳の血管に詰まることにより起こります。

脳に詰まる血栓は、
通常は心臓から飛んで来ます。

心房細動という不整脈があると、
心臓の中の左房という場所に、
血の塊が出来易くなり、
それが動脈の血流に乗って、
脳に至るのです。

その一方で足などの静脈に静脈瘤と呼ばれるこぶが出来、
そこに炎症などが起こると、
そうした場所にも血の塊が出来易くなります。

この静脈に出来た血の塊が、
血流によって運ばれると、
心臓の右房から右室を介して、
肺の動脈に詰まることがあります。
これを肺血栓塞栓症と呼んでいます。

動脈と静脈の血液は混ざらないように出来ていますから、
通常は静脈の血栓が、
脳塞栓を起こすことはありません。

ただし…

脳塞栓の原因が、
足などの静脈にある血栓であるとしか、
考えられない事例が稀にあり、
それを奇異性脳塞栓と呼んでいます。

この奇異性脳塞栓症の原因は、
主に卵円孔開存症であると考えられています。

卵円孔というのは、
胎児期に心臓の左房と呼ばれる部分と、
右房と呼ばれる部分の間に開いている小さな穴で、
生まれてからすぐに塞がるのですが、
完全に塞がらずに一種の弁のようになり、
一定の交通が残ってしまう場合があります。

これが卵円孔開存症です。

卵円孔開存症は、
心房中隔欠損症の一種ですが、
交通する血流の量はごく僅かで、
それも咳込んだりいきんだりして、
腹圧が掛かるような時のみに、
血液の漏れが起こるだけなので、
通常は病気とは見做されません。

その頻度も解剖の所見などでは、
人口の25~30%に見付かるとされていますから、
実際には多くの人が知らずに持っているのです。

心房中隔欠損症の診断は、
通常は心臓の超音波検査で可能ですが、
卵円孔開存症の場合、
孔を通る血流が少なければ、
通常の超音波検査では診断は困難で、
胃カメラを太くしたような管を、
口から入れてそこから超音波検査を行なう、
経食道超音波検査を行わないと、
診断は出来ません。

従って、
実際には多くの卵円孔開存症は、
診断はされてはいないのです。

問題になるのは、
若年性脳梗塞を起こした患者さんで、
その原因がはっきりしない場合です。

海外の統計によると、
若年性脳卒中の3割は原因が分からず、
そうした患者さんの半数で、
卵円孔開存症が見付かる、
とされています。

人口の3割近くで、
卵円孔開存症が見付かる可能性のあることから考えると、
この頻度は非常に微妙です。

ただ、当然のごとく、
こうした知見があれば、
卵円孔を塞ぐ治療を行なうことにより、
若年性脳卒中の再発が予防出来るのでは、
という考え方が生まれます。

そうした臨床試験が複数行われ、
まずその結果が発表されたのが、
2012年3月のNew England…誌においてでした。

この試験はCLOSURE1と名付けられ、
アメリカとカナダにおいて、
18歳から60歳までの患者さん909名を対象に、
行なわれました。

一過性の脳虚血発作か脳卒中を来し、
その原因がはっきりしない患者さんで、
経食道超音波検査により、
卵円孔の開存が、
確認されている患者さんを、
2つの群にくじ引きで分け、
一方にはSTARFlexと呼ばれる器具を用いた、
卵円孔の閉鎖術を行ない、
もう一方では抗血小板剤や抗凝固剤による、
抗凝固療法のみを行なって、
その後の2年間の経過を観察しています。

しかし、
当初の期待とは裏腹に、
この研究においては、
卵円孔の閉鎖を行なっても、
その後の脳卒中の再発率には、
統計的に有意な差は付きませんでした。

ただし、
この研究に使われた器具はあまり良い出来のものではなく、
施行により心房細動という不整脈が、
未施行の10倍も多く発症する、
という問題がありました。

現在最も多くこの目的で使用されているのは、
アンプラッツアー閉塞栓と呼ばれる、
特殊な金属を用いたメッシュ状の閉塞栓で、
この用具を用いれば、
より良い結果が得られると期待がされました。

そして2013年の同じNew England…誌に、
今度は2編の論文が同時に掲載されました。

いずれもそのアンプラッツアー閉塞栓を用いて、
同様の検討を行なったものです。

こちらをご覧ください。
卵円孔閉鎖デバイス.jpg
これが新しいタイプの卵円孔を塞ぐ器具で、
2つのパラボラアンテナのような部分が開いて、
両側から穴を塞いで固定するように出来ています。
これ以降複数の器具が発売され使用されていますが、
基本的な構造は大きくは変わっていません。

2013年に発表された論文の1編では、
患者さんはヨーロッパ、カナダ、ブラジル、オーストラリアの、
29の施設の患者さん414例を2群に分けて、
一方では閉塞栓を用いた閉鎖術を行ない、
もう一方では抗血小板剤もしくは抗凝固剤による、
薬物のみの治療を行なって、
平均4年というより長期の経過観察を行なっています。

その結果…

観察期間中の死亡や血栓症や脳卒中の再発は、
閉鎖術群で3.4%、薬剤治療群で5.2%に認められました。

この比率だけを見ると、
閉鎖術群の効果が認められたように思えますが、
実際には統計的な有意差は認められていません。

もう1つの試験はRESPECTと呼ばれる臨床試験で、
同じ雑誌のもう1篇の論文になっています。

こちらはアメリカの69の施設において、
980名の患者さんが対象になっています。
この研究ではその観察期間中に、
閉鎖術群では9名、薬物療法群では16例が、
脳卒中の再発を来し、
相対リスクは51%の低下となりましたが、
統計的に有意な差は矢張り認められませんでした。

要するに、
これまでの3つの臨床試験の結果として、
卵円孔の閉鎖術の効果は、
その後の脳卒中の予防効果としては、
いずれも再発を抑制した、
という傾向は認められるものの、
統計的に有意な差は見られていません。

ただ、
古いタイプの器具と比較して、
アンプラッツアー閉塞栓を用いた手技では、
術後の心房細動の発症率が、
高く見積もっても未施行の2~3倍程度に留まっていて、
その点は明確に優位性が示されています。

いずれの試験においても、
抗凝固療法は複数の方法で行なわれていて、
比較としては問題がありますし、
脱落の事例が非常に多く、
その点が有意差の出ない、
1つの大きな理由になっています。

それから4年が経ち、
今回またNew England…の紙面の巻頭を飾った上記の論文では、
卵円孔開存のある全ての患者さんを治療対象とするのではなく、
卵円孔を通る血流量が多いか、
心房中隔瘤という、
より塞栓症のリスクが高いと想定される所見のある患者さんに限って、
治療を行なうという患者さんの絞り込みを行なっています。

対象となっているのは他に原因の明確ではない脳梗塞を起こした、
年齢は16から60歳までで、
検査により上記の所見のある卵円孔開存症が診断された663名で、
クジ引きで3つの群に分け、
第1群は抗血小板療法に加えてカテーテルによる卵円孔閉鎖術を施行し、
第2群は抗血小板療法のみを、
第3群は抗血小板療法より予防効果が高い抗凝固療法を、
それぞれ継続して脳梗塞の予防効果を比較しています。

平均の観察期間は5.3年です。

その結果、
観察期間中の脳梗塞の発症は、
カテーテル治療群ではなかったのに対して、
抗血小板療法群では14例発症していて、
抗血小板療法の単独と比較して、
カテーテル治療は脳梗塞の発症を、
97%有意に低下させていました。
ちょっと出来すぎの感じもありますが、
これまでにない画期的な結果です。

ただ、カテーテル治療後の心房細動の発症率については、
カテーテル治療群では4.6%に認められたのに対して、
抗血小板剤治療のみの群では0.9%しか認められていませんから、
合併症としての心房細動は、
矢張りカテーテル治療により増加することは間違いがありません。

これ以外に抗凝固療法と抗血小板療法との比較が行われていますが、
こちらは抗凝固療法の方が脳梗塞の発症は少ない傾向はあるものの、
有意な差は認められませんでした。

同じ紙面に載っている他の2編の論文においても、
解析法や対象とする患者さんの絞り込みの方法には、
それぞれ違いはあるのですが、
両者とも卵円孔閉鎖術によって、
抗血小板療法単独との比較べ、
その予防効果は有意に高いものとなっていました。
そのうちの1つは2013年の時点では差が見られなかったデータの、
より長期の解析結果となっています。

このようにカテーテル治療の手技や使用する器具の進歩、
また確実に卵円孔開存が関連していることが疑われる患者さんの絞り込みと、
以前の臨床研究とは別個の要素が加わることにより、
今回発表された3つの臨床研究においては、
いずれも一定の有効性がカテーテル治療により認められています。

今後どのような患者さんに対して、
最もこの治療の有効性が高く、
合併症などのリスクが少ないのか、
その検証を元に的確なガイドラインが、
作成されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。



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原発性アルドステロン症の術後評価の国際基準(2017年作成) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
原発性アルドステロン症の予後判定.jpg
今年のthe Lancet Diabetes Endocrinology誌に掲載された、
片側副腎切除を施行された原発性アルドステロン症の患者さんの、
予後判定を国際的に行った結果をまとめた論文です。

原発性アルドステロン症は、
アルドステロンという水と塩分を保持する役割をするホルモンが、
過剰に分泌されることによって、
高血圧や低カリウム血症を生じる病気で、
治療抵抗性の高血圧の患者さんの2割はこの病気である、
という報告があるほど、
高血圧の原因としては多い病気です。

この原発性アルドステロン症は、
片側の副腎に腺腫というしこりがあって、
そこからアルドステロンが分泌される場合と、
両側の副腎に複数の過形成というしこりがあって、
そこからホルモンが分泌される場合とがあります。

両側性の場合には通常薬による治療が選択され、
片側のみにしこりがある場合には、
その切除の手術が検討されることが一般的です。

それでは、片側の副腎切除術を施行した場合の、
治療の成功率はどのくらいでしょうか?

これはどのような基準で治療が成功したと判断するのかによって、
異なって来る事項です。

手術前には高かったアルドステロンが正常化し、
低かったカリウムが正常化するという検査値で考えると、
成功した手術であればほぼ100%検査値は改善します。
これを生化学的寛解(biochemical remission)と呼んでいます。
これまでの報告では、
専門施設の手術後の生化学的寛解率は、
96から100%と報告されています。

しかし、原発性アルドステロン症の主症状である高血圧が、
手術後に治る患者さんはそこまで多くはありません。

手術の治療後に高血圧の症状が改善することを、
臨床的寛解(clinical remission)と呼んでいますが、
この臨床的な寛解率は報告された施設や地域によって、
非常にばらつきがあり、
報告では16から72%とされています。
要するにてんでバラバラです。

何故こうした違いが生じるのかと言うと、
それは1つには臨床的寛解についての明確な国際基準のようなものがなく、
報告する個々の施設や研究者の独自の基準によって、
臨床的寛解が決められている、と言う点が大きいと考えられます。

このように基準がバラバラであれば、
施設や地域の違いを比較検証することは出来ません。

そこで今回世界中の研究者が協力をして、
一定の手術後の寛解の基準を定め、
それに基づく寛解率をそれぞれの施設の患者さんで適応して、
その世界的な比較を初めて試みました。

今回参加しているのは世界12か所の専門施設です。
具体的には、オーストラリア、フランス、ドイツ、イタリア、アメリカ、
ポーランド、スロベニア、ニュージーランド、日本が協力し、
日本では横浜労災病院、東北大学医学部附属病院、
国立病院機構京都医療センターが協力しています。
まず片側副腎切除後の改善の評価を、
次の6段階で行うことを取り決めています。

①臨床的完全寛解(Complete clinical success);これは術後に降圧剤なしで外来血圧が140/90mmHg未満が維持されることです。
②臨床的部分寛解(Partial clinical success);これは降圧剤の減量が可能になるか、術前と同じ治療で血圧は術前より低下している状態です。
③臨床的改善なし(Absent clinical success);これは術前と同じ治療で血圧が同等であるか、むしろ悪化する場合です。
④生化学的完全寛解(Complete biochemical success);これはカリウム値とアルドステロン濃度、アルドステロン・レニン比が正常となることです。
⑤生化学的部分寛解(Partial biochemical success);これは一定の数値の改善があるものの、術後も異常値が続いている状態です。
⑥生化学的改善なし(Absent biochemical success);これは術後もカリウム値やアルドステロン分泌の異常が術前と変わりなく継続するものです。
以上の6段階の判定は術後3か月後に最初に行い、
術後半年から1年後に最終判定を行うとされていて、
最終判定後も1年毎に判定は継続するとされています。
(以上の文面の訳語は個人訳で正式ではありません)

この判定基準で個々の専門機関の患者さんを判定したところ、
全体で705名の患者中、
臨床的完全寛解率は37%、
施設間での差は17から62%と幅の広いものになっていました。
ちなみに最も臨床的完全寛解率が高かったのはオーストラリアで、
日本の3施設の臨床的完全緩解率は、
東北大学附属病院が63例中28.6%、
横浜労災病院が76例中46.0%、
京都医療センターが40例中42.5%となっていました。

臨床的部分寛解率は47%、
そして生化学完全寛解率は94%でした。

臨床的完全寛解率は、
男性より女性が高く、
術前の高血圧の程度が軽く、
年齢も若いほど高い傾向が認められました。

世界中の一流の専門機関において、
このような統一基準での比較がされたことは非常に有意義なことで、
今後はこの基準をより広く活用することにより、
本当の意味での原発性アルドステロン症の予後が、
明確になることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(付記)
数字に誤りと不充分な点がありましたので、
その部分の修正を行ないました。
(2019年9月20日午前8時22分修正)
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ニューヨークにおける認知症発症率の低下について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
認知症は減少している.jpg
今年のJAMA Neurology誌に掲載された、
アメリカにおいて認知症の発症率(incidence)は減っている、
というデータを詳細に解析した論文です。

認知症は人口の高齢化に従って、
その有病率(人口の中で認知症の人の割合)は増加していますが、
実際に新規に認知症と診断される数は、
1980年代以降アメリカにおいては減少している、
という複数の疫学データが存在しています。

今回の研究は、
アメリカのニューヨーク州ブロンクス郡で行われた、
アインシュタイン加齢研究という疫学調査のデータを活用して、
出生年齢毎に診断される認知症の頻度が、
どのように異なっているのかを検証したものです。

対象者は70歳以上の1348名で、
平均で4.4年の経過観察が行われています。
観察期間中に150例の認知症が診断されています。
この認知症の発症率を出生年毎に見てみると、
1920年以前に生まれた人では、
年間100人当たり5.09人が認知症を発症したのに対して、
1920年から24年に生まれた人では、
年間100人当たり3.11人、
1925年から29年の出生者では1.73人、
1929年以降の出生者では0.23人と、
認知症とその後診断されるリスクは、
出生年度が下るほど明らかに低下していました。
診断を受けた年齢毎に検討してみても、
矢張りその年齢層毎の発症率も出生年が下るほど低下していて、
この傾向は間違いのない事実であるようです。

この間糖尿病の発症率は上昇している一方で、
脳卒中や心筋梗塞の発症率は低下していて、
心血管疾患はアルツハイマー病のリスクでもありますから、
心血管疾患のリスクの低下が、
認知症の発症率の低下に結び付いたという可能性はありますが、
一方で糖尿病のリスクは増加していて、
その解釈は難しいところです。

従って、その原因は不明ではあるのですが、
認知症の発症率がニューヨークでこの20年に低下していることは、
間違いのない事実で、
それは1920年以降の出生年齢と強い関連が認められます。
つまり、1920年以前と比較して、
それ以降に生まれた人は、
認知症になるリスクが年ごとに低下しているのです。

そうは言っても、
高齢化は先進国では世界的に進行するので、
認知症の患者さんが増えることは間違いがなく、
ただ今後の対策においては、
認知症発症率の低下傾向についても、
同時に織り込むということが必要になるのだと思います。

日本でもおそらく、
同様の傾向は存在しているのだと推察されますが、
それを裏付ける精度の高いデータが、
発表されることを待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

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  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: 総合医学社
  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 単行本


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