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宇宙旅行の脳に与える影響(MRIによる検証) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
宇宙旅行と脳変化.jpg
今年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
宇宙旅行が脳の与える影響について、
脳のMRIを撮影して検証した論文です。

宇宙旅行、特に宇宙ステーションへの長期滞在は、
人間の脳のどのような影響を与えるのでしょうか?

2011年に長期の宇宙旅行から帰還した飛行士が、
視力障害と脳圧亢進症状を来したという報告が発表されました。
これは無重力もしくは低重力の環境に長期滞在することで、
脳脊髄液中の浮かんでいる脳の偏りが起こり、
それが地球に戻って重力の影響を受けることで、
一部の神経が圧迫されたり、
脳の圧力が変動することがその原因と想定されていますが、
その根拠はあまり明確ではありませんでした。

今回の研究では平均で6.7日という短期間の宇宙滞在と、
平均で287.5日という長期の滞在をした飛行士達の、
宇宙旅行前と帰還後の頭部MRIを撮影して、
その変化を検証しています。
NASAが主導した研究で、
18名の長期滞在者と16名の短期滞在者が対象となっています。

その結果、
脳の上方への偏位と頭頂部髄液腔の狭小化が、
長期の滞在では高頻度に認められました。

こちらをご覧ください。
宇宙旅行前の脳.jpg
これは宇宙滞在前のMRIです。
次にこちらをご覧ください。
宇宙旅行後の脳.jpg
こちらは宇宙から帰還後の脳です。
明らかに脳が上方に偏位しているのが、
お分かり頂けるかと思います。

こうした変化のおそらくは結果として、
長期滞在者のうちの3名では、
視神経乳頭浮腫と中心溝の狭小化が認められ、
それが視力障害や脳圧亢進の、
原因であると想定されました。

そうしたリスクはおそらく脳の構造の個人差にも、
影響をされていると思われますから、
飛行前のMRIなどによるチェックを行うことにより、
リスクの高い個人を選別し、
予防的な対策を取ることが、
可能となるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

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ホルモン療法を5年で中止した場合の乳癌再発リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ホルモン療法中止の後の効果.jpg
今年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
女性ホルモンに反応性の乳癌に対する、
ホルモン療法の中止後の再発についての論文です。

乳癌の治療の歴史において、
女性ホルモンの受容体がある癌では、
手術後に女性ホルモンの作用を抑制することにより、
その後の乳癌の再発が抑制され、
生命予後にも良い影響を与えるという知見は、
非常に画期的なものでした。

タモキシフェンという女性ホルモンの受容体の拮抗薬を、
術後に5年間使用することにより、
使用しない場合と比較して癌の再発がほぼ5割低下し、
その効果は5年の治療終了後も、
5年間は3割の低下を認めていました。
また治療期間5年を含む15年間の死亡リスクは、
未治療と比較して3割の低下を認めていました。

その後アロマターゼ阻害剤という、
エストロゲンの合成酵素を阻害するという、
タモキシフェンとは違う作用を持つ、
ホルモン療法治療薬が開発され、
閉経後の女性においてのタモキシフェンとの比較試験では、
タモキシフェンより再発予防において、
優れた結果を示しました。

通常癌の予後は治療開始後5年で評価されます。
そのために乳癌のホルモン療法についても、
5年間の治療を行ない、
それで中止をするという方法が取られたのですが、
乳癌の再発自体は5年後以降も見られることが明らかになり、
5年を超える長期のホルモン療法の継続を試みた結果としては、
タモキシフェンの継続は、
より多く長期の再発を減らすことも、
知見が得られています。

こうした知見からは、
タモキシフェンやアロマターゼ阻害剤の使用は、
期限を設けずに生涯継続するべきではないか、
という考え方が生まれます。

その一方で女性ホルモンを強力に抑えるという治療は、
身体にとって無害なものではありません。

更年期と同様の症状が現れますし、
関節痛などが生じることもあります。
骨粗鬆症や静脈の血栓症、
子宮癌のリスクなども、
軽微ではあっても増加することが分かっています。

ホルモン療法は何年継続し、
いつ止めることが本当に正しい選択なのでしょうか?

現時点ではその結論は出ていませんが、
それを検証するために、
早期にホルモン療法を中止した場合の、
その後の癌の再発がどの程度起こるものなのか、
その点の検証が非常に重要になります。

そこで今回の研究では、
これまでの臨床試験のデータから、
診断の時点で75歳未満の女性で、
比較的早期癌(T1もしくはT2でリンパ節転移は10個未満)
で遠隔転移はなく、
5年間のホルモン療法を使用して終了し、
その後の経過を追った、
88の臨床研究のトータル62923名のデータをまとめて解析して、
ホルモン療法中止後の再発率を検証しています。

その結果、
治療中止後の5から20年の間において、
乳癌の再発はほぼ一定の頻度で継続していました。
そして、遠隔転移のリスクは、
診断時のリンパ節転移の状態と高い関連がありました。
原発巣が2センチ以下のT1ステージにおいては、
リンパ節転移のないT1N0の遠隔転移の発症率が13%、
リンパ節転移が1から3個のT1N1-3の遠隔転移の発症率が20%、
4から9個のT1N4-9の発症率が26%となっていました。

原発巣が2センチを超え5センチまでのT2ステージにおいては同様に、
T2N0の遠隔転移の発症率が19%、
T2N1-3の発症率が26%、
T2N4-9の発症率が41%となっていました。

以上をまとめた図がこちらになります。
2017-11-26.jpg
このようにホルモン療法中止後の期間において、
乳癌の再発はほぼ同じ頻度で認められ、
そのリスクは原発巣の大きさと診断の時点でのリンパ節転移の有無に、
大きく影響を受けていました。

今後はこうしたデータも検証した上で、
個々の患者さんにおいて、
より科学的にホルモン療法の継続期間と中止の時期を、
決める必要があるのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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白内障の手術と生命予後のとの関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
白内障の術後の予後.jpg
今年のJAMA Ophthalmology誌に掲載された、
高齢女性の白内障手術と、
その後の生命予後の変化についての論文です。

誰でも年齢を重ねると、
加齢性変化として白内障という、
目のレンズの部分の濁りが徐々に現れ、
それが進行すると視界はぼやけ、
太陽の光などを異常にまぶしく感じるようになります。

白内障の治療の主体は手術で、
濁ったレンズの成分を吸い取るようにして除去し、
そこに人工のレンズを挿入します。
人工のレンズは焦点の調節は自然のレンズのようには出来ないので、
術後も見づらい距離を見るためには、
眼鏡などの矯正が必要ですが、
最近多焦点のレンズも導入されるようになっています。

熟練した術者による白内障の手術は、
局所麻酔で短時間で終わりますから、
高度の認知症などがない方であれば、
高齢者でも治療は可能です。

さて、白内障の手術は、
高齢者の予後にどのような影響を与えるのでしょうか?

白内障自体は目の病気で、
全身の病気とは違います。
しかし、目が不自由であることは、
生活においても大きなストレスになりますし、
視力が落ちることで、
転倒や骨折の危険性が増したり、
意欲低下から外出の頻度が減り、
全身の筋力低下や認知症の進行などに、
影響を与える可能性は否定出来ません。

そして、
実際に白内障の手術をした方が、
その後の総死亡のリスクが低下した、
という疫学データが実際に発表されています。

ただ、これまでのデータは、
個々の病気による死亡のリスクなどについては、
踏み込んだ検証が行われていませんでした。

そこで今回の研究では、
アメリカで閉経後の女性の、
大規模な疫学研究のデータの一部を活用して、
65歳以上の白内障と診断された女性74044名のうち、
手術を行なった41735名を、
手術をしなかった女性と比較しています。

年齢などの因子を補正した結果として、
手術をしない場合と比較して白内障の手術を行うと、
その後の総死亡のリスクは60%(95%CI; 0.39から0.42)、
血管系の疾患による死亡リスクが58%(95%CI; 0.39から0.46)、
癌による死亡リスクが69%(95%CI; 0.29から0.34)、
事故による死亡リスクが56%(95%CI; 0.33から0.58)、
神経疾患による死亡リスクが57%(95%CI; 0.36から0.53)、
肺疾患による死亡リスクが37%(95%CI; 0.52から0.78)、
感染症による死亡リスクが56%(95%CI; 0.36から0.54)、
全て有意に低下していました。

このように白内障と診断されて手術を行うと、
診断されても手術を行わない場合と比較して、
トータルな死亡のリスクが6割低下するのみならず、
個別の病気や事故による死亡リスクも、
全てにおいて有意な低下を示しました。
その中にはほぼ目の病気とは無関係と思えるような原因が、
多く含まれています。

何故こうしたことが起こるのでしょうか?

目が見えないことで事故による死亡が減少することなどは、
推測の可能な原因ですが、
全身病による死亡が減るというのは、
因果関係を見つけるのは困難なようにも思います。

1つの可能性としては、
白内障の診断を受けてすぐに治療するような人というのは、
健康に対して高い意識を持ち、
他の面でも健康管理をきちんと行っていた可能性が高かったり、
経済的にも恵まれている人が多いなどの、
環境要因のバイアスがかかっている、
という可能性も想定されます。

いずれにしても複数の疫学データにおいて、
かなりクリアに白内障の術後の生命予後の改善効果が得られていることは、
大変興味深い知見で、
今後その原因をより掘り下げた、
更なる検証を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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コーヒーの摂取量と健康(2017年のアンブレラレビュー) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コーヒーの摂取量と健康.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
コーヒーの健康影響についてのメタ解析の論文です。

コーヒーはカフェインを含み、
常用性のある飲み物ですが、
その一方で抗酸化作用のある生理活性物質を、
多く含むという報告などもあり、
また最近ではコーヒーを飲む人の方が、
総死亡や心血管疾患のリスクが低下する、
という報告が複数存在しています。

その代表的なものは、
2012年のNew England…誌の論文で、
以前記事でご紹介したことがあります。

40万人以上の健康調査において、
コーヒーを沢山飲む人の方が、
1割程度総死亡のリスクが低下した、
という結果になっています。

日本の疫学データも2015年に論文化されていて、
例の有名なJPHC研究の解析ですが、
矢張り総死亡のリスクが1から2割低下した、
とする結果になっています。

こうした知見からは、
コーヒーには何らかの健康保持作用が、
あるのではないかということが示唆されますが、
その実態は必ずしも明らかではありません。

今回の研究はこれまでの臨床データや疫学データを、
まとめて解析したメタ解析の複数の論文を、
更にまとめて解析したアンブレラレビューと呼ばれる手法による論文です。

これまでのデータをまとめて解析した結果として、
コーヒーを飲む習慣のない人と比較して、
1日3、4杯のコーヒーを飲む人は、
総死亡のリスクが17%(95%CI; 0.83 から0.88)、
心血管疾患による死亡のリスクが19%(95%CI; 0.72 から0.90)、
心血管疾患の発症リスクが15%(95%CI; 0.80 から0.90)、
それぞれ有意に低下していました。

癌の発症リスクについても、
あまりコーヒーを飲まない人と比較して、
多く飲む人は18%(95%CI; 0.74 から0.89)、
有意に低下していました。

一方でコーヒー摂取での健康リスクのデータについては、
喫煙の影響を補正することにより、
ほぼ有意差は消失しました。

ただ、妊娠中のコーヒー摂取についてみると、
摂取量が少ない場合と比較して多い場合には、
出生時の低体重のリスクが1.31倍(95%CI; 1.03から1.67)、
妊娠早期の早産のリスクが1.22倍(95%CI; 1.00 から1.49)、
妊娠中期の早産のリスクが1.12倍(95%CI; 1.02 から1.22)、
流産のリスクが1.46倍(95%CI; 1.06から1.99)、
それぞれ有意に増加していました。

また女性の骨折リスクについて、
コーヒー摂取量の多い人は有意ではないものの、
骨折リスクが高い傾向があり、
追加でコーヒー1杯を飲む習慣により、
女性の骨折リスクが1.05倍(95%CI; 1.02から1.07)
有意に増加していました。

つまり、これまでの多くのデータをまとめた結果として、
1日に3、4杯程度のコーヒーを飲む習慣は、
概ね健康に良い影響をもたらす可能性が高く、
心血管疾患や癌、生命予後にも、
良い影響を与えるというデータが得られています。
ただ、妊娠中の使用は妊娠の経過に悪影響を与える可能性があり、
また高齢女性においては骨折リスクを上昇させる可能性があります。

そのメカニズムは不明ですが、
妊娠中はカフェインの半減期が延長し、
カフェインは胎盤を移行して胎児にも影響を与えるので、
その悪影響は否定出来ません。
骨折についてはカフェインがカルシウムの吸収に影響を与える可能性や、
女性ホルモンの働きを抑える可能性が報告されていて、
それが影響をしているという可能性は想定されます。

従って、現状の認識としては、
1日に3、4杯くらいのコーヒーを飲むことは問題なく、
健康にも良い影響を与えるというデータがありますが、
妊娠中と閉経後の女性においては、
悪影響を指摘するデータもあるので、
なるべく飲用を控える方が安全だと考えられます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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ワルファリンの抗癌作用について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ワルファリンと癌リスク.jpg
今年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
抗凝固剤の抗癌作用の可能性についての論文です。

ワルファリンは最も広く使用されている抗凝固剤で、
その目的は心房細動などの原因による血栓症の予防になります。

ただ、基礎実験や動物実験のレベルでは、
ワルファリンはその抗凝固作用とは独立に、
AXL受容体チロシンキナーゼによる腫瘍形成を阻害して、
抗癌作用を持つことが報告されています。

それでは、
ワルファリンを使用している患者さんは、
未使用の患者さんより癌が少ないのでしょうか?

この点については、
これまで不充分なデータしかなく、
一部の癌のリスクが低下した、
という報告がある一方で、
トータルな癌のリスクには差はなかった、
と言うデータもあって一定の結論には至っていません。

そこで今回の研究では、
国民総背番号制を取るノルウェーの健康データを活用して、
6ヶ月以上継続されたワルファリンの処方と、
処方開始後2年以降の癌の診断との関連から、
ワルファリンと癌のリスクとの関連を検証しています。
対象人数は1256725名で、
ワルファリン使用者は92942名です。

その結果、
ワルファリン未使用者と比較した使用者のトータルな癌のリスクは、
年齢や性別を補正した結果として、
16%(95%CI; 0.82から0.86)有意に低下していました。
個別の癌では、
肺癌が20%(95%CI; 0.75から0.86)、
前立腺癌が31%(95%CI; 0.65から0.72)、
乳癌が10%(95%CI; 0.82から1.00)、
それぞれ有意に低下していました。
一方で大腸癌にはワルファリンによるリスクの低下は、
認められませんでした。
これを心房細動や心房粗動の患者さんに限って解析すると、
全ての癌のリスクはより大きく、
38%(95%CI; 0.59から0.65)有意に低下していました。

このように、
どうやらワルファリンの使用が、
その抗凝固作用とは別個に、
癌のリスクを低下させるような作用があることは、
そう眉唾でもなさそうで、
今後多方面からの検証が必要のように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

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体重減少の生命予後への効果(2017年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
体重減少の生命予後への効果.jpg
本年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
肥満の人がダイエットすることの健康への効果についての論文です。

肥満が生命予後に悪影響を与え、
心血管疾患やある種の癌、糖尿病などのリスクになることは、
主に疫学データや観察研究としては、
ほぼ実証されている事実です。

この場合の健康に悪影響を与える肥満というのは、
BMIという指標において、
WHOの現行の基準では27.5以上で、
日本やインドの基準では25.0以上、
中国の基準では28.0以上を指しています。

このように基準には幅があるのですが、
それでも肥満の一定のリスクがあることは間違いがありません。

肥満の治療は第一選択としては、
カロリー制限や運動習慣などによる、
体重減少への努力(一般の言葉ではダイエット)ですが、
そうして行った体重減少が、
実際に病気のリスクを減らし、
生命予後に良い影響を与えるかどうかは、
必ずしも実証をされているとは言えません。

2015年のPLOS ONE誌に掲載されたメタ解析の論文によると、
15の介入試験をまとめて解析した結果として、
総死亡のリスクに15%の低下が認められましたが、
ぎりぎり有意差が出るというレベルで、
心血管疾患や癌のリスクについては明確ではありませんでした。

今回の研究ではこれまでのデータより、
54の介入試験のトータル30206名のデータを、
まとめて解析する方法で、
肥満に対する体重減少の健康への影響を検証しています。

その結果、
高いレベルのエビデンスとして、
総死亡のリスクについては、
ダイエットによる18%(95%CI; 0.71 から0.95)
の有意な低下が認められています。
心血管疾患と癌のリスクについては、
ダイエットによる明確なリスクの低下は、
確認されませんでした。

このように、
適正な方法で無理なく行われる体重減少は、
肥満の患者さんの生命予後を改善することは、
ほぼ間違いがありません。
ただ、心血管疾患などの個別のリスクについては、
実際には明確ではないと考えた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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治療前の血圧値から見た降圧治療の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

本日は石原が研修会出席のため、
午後の診療は休診とさせて頂きます。
ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
降圧目標と予後JAMA.jpg
今年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
治療前の血圧値と降圧治療の効果との関係についての論文です。
スウェーデンの研究者によるもので、
これまでの論文や臨床研究のデータをまとめた、
システマティック・レビューとメタ解析の論文です。

高血圧が心筋梗塞や脳卒中などの病気のリスクを上げ、
生命予後にも影響を与えることは、
多くの疫学データで実証された事実ですが、
血圧の高い人に降圧剤の治療をして血圧を下げると、
そのリスクが下がるかどうかは、
またそれとは別の問題です。

疫学データでは収縮期血圧が120mmHgを超えると、
病気のリスクが増えることは事実としても、
120を超える全ての人に、
120を下回ることを目標として治療を行った方が、
その方にとって良い結果になるとは限りません。
それはまた別の話なのです。

現行の多くのガイドラインにおいては、
収縮期血圧が140mmHgを降圧目標として治療が行われていますが、
最近幾つかの臨床試験やメタ解析において、
より低い目標値を設定した方が、
患者さんの予後には良い影響を与えるのではないか、
という指摘がされるようになりました。

最も大きな影響を与えたのはSPRINT試験という、
大規模臨床試験で、
ここでは収縮期血圧が140未満を目標としたコントロールと、
120未満を目標としたコントロールを比較したところ、
総死亡のリスクも心血管疾患のリスクも、
120未満を目標としたコントロールの方がより低下した、
という結果が得られています。

ただ、糖尿病の患者さんを対象としたデータにおいては、
120を目標とするようなコントロールは、
あまり良い結果に結びついていません。
それが糖尿病の患者さんに限定したことであるのかは、
まだ結論は出ていないのです。

今回の論文の研究者達は、
どちらかと言うと120未満を目指したような、
厳格な血糖コントロールには懐疑的な立場のようで、
2017年2月までの最新のデータも含めた、
これまでの臨床データをまとめて解析して、
この問題の再検討を行っています。

74の臨床データに含まれる、
平均年齢63.6歳の306273名の患者さんのデータを、
まとめて解析した結果として、
まだ心血管疾患の既往のない患者さんの一次予防としては、
降圧治療の心血管疾患予防効果は、
治療開始の時点での収縮期血圧に関連が認められました。

治療開始時の収縮期血圧が160mmHg以上の場合には、
降圧治療により総死亡のリスクは7%(95%CI; 0.87から1.00)、
心血管疾患の発症リスクは22%(95%CI; 0.70から0.87)
の低下を示していて、
収縮期血圧が140から159mmHgでは、
降圧治療により総死亡のリスクは13%(95%CI;0.75から1.00)、
心血管疾患の発症リスクは12%(95%CI; 0.80から0.96)
の低下を示していました。
一方で治療開始時の収縮期血圧が140mmHg未満の場合には、
総死亡も心血管疾患発症のリスクにも、
治療による有意な低下は認められませんでした。
心血管疾患を発症した患者さんの再発予防についてのデータでは、
平均の登録時の収縮期血圧が138mmHgの状態で、
心血管疾患の再発のリスクは10%(95%CI; 0.84から0.97)
有意に低下していましたが、
総死亡のリスクについては有意な低下は認められませんでした。

このように、
治療前の収縮期血圧から見ると、
それが140mmHg以上であれば、
一定の病気の予防や生命予後の改善に、
血圧の治療が結び付くと言って良いのですが、
140を切るような場合には、
そうだと言い切ることは難しいとという結果が、
今回のメタ解析からは得られています。

これは血圧の測定法による違いがあるのでは、
という議論もあり、
患者さんの病態によっても差があるのも当然なので、
かなり大雑把な検証に過ぎないのですが、
降圧治療がどんな患者さんに対して有効であるのか、
と言う点については、
一筋縄で結論が付くような事項ではないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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DPP-4と認知機能との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
DPP4と認知機能.jpg
今年のFrontiers in Aging Neuroscience誌に掲載された、
糖尿病との関連で指摘されることの多い、
インクレチンを分解するDPP-4という酵素と、
認知機能との関連についての論文です。

老化と関連のある物質というのは、
昨日取り上げたオステオポンチンなど複数が指摘されていますが、
インスリン分泌を刺激するインクレチンを分解する酵素であるDPP-4も、
その1つの候補となる物質です。

インクレチンであるGLP-1は、
血糖を下げる以外に酸化ストレスを抑制し、
炎症を抑えるような働きがあります。
その反対に血液のGPP-4活性が高いと、
炎症や酸化ストレスが促進されるという知見もあります。

つまりDPP-4は老化を促進する物質である、
という可能性があるのです。

今回の研究は中国において、
60歳以上の年齢の糖尿病のない1229名の住民において、
血液のDPP-4活性の高さと、
認知機能との関連を検証しています。

対象者を登録してその経過を追ったものではなく、
ある時点での認知機能とDPP-4活性との関連を検討したものなので、
それほど精度の高いデータとは言えません。

その結果、
血液のDPP-4活性が4分割して最も低い群と比較すると、
最も高い群は2.26倍(95%CI; 1.36から3.76)、
有意に認知機能低下のリスクが増加していました。

これはまだそうした傾向があった、
と言う程度のものなのですが、
動物実験においてはDPP-4阻害剤による治療が、
認知機能の低下を予防した、という報告もあり、
DPP-4阻害剤やGLP-1アナログを、
治療に使うという選択肢がすぐに浮かぶ、
と言う点がこの知見の1つの大きな魅力です。

まだインクレチン関連薬で認知症が明確に予防された、
というようなデータはありませんが、
老化の1つの現れである筋肉量の病的な低下(サルコペニア)に対しては、
100例程度のデータですが、
DPP-4阻害剤で糖尿病の患者さんにおける改善がみられた、
という2つの報告があります。

このように老化の病態の一部に、
DPP-4が関連しているという知見は興味深く、
まだ確実性があるというレベルのものではありませんが、
今後の知見の積み重ねに期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

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  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: 総合医学社
  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 単行本


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長寿の予測因子としてのガレクチン3とオステオポンチン [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
オステオポンチンと長寿.jpg
2015年のClinical CHemistry and Laboratory Medicine誌に掲載された、
100歳を超える長寿の人と通常の高齢者で、
2種類のバイオマーカーを測定して、その比較をした論文です。

100歳を超えて持病のない長寿の人に、
そうでない大多数の人と比べてどのような特徴があるのか、
というのは長寿医学や老年医学において注目をされる分野で、
日本でも研究が行われ幾つかの知見が報告されています。

今回の研究ではイタリアにおいて、
100歳を超える高齢者81名と、
70から80歳の通常の高齢者46名を対象として、
血液中のガレクチン3とオステオポンチンという2つのマーカーを測定し、
その違いを見たものです。

オステオポンチンについては、
このところ連日のように話題にしていますが、
そもそもは骨代謝のマーカーとして発見されたものですが、
炎症を誘発する炎症性サイトカインとしての性質を持ち、
老化によって特徴的に増加する免疫細胞から過剰に分泌されるため、
老化のマーカーの1つと想定されて多くの研究が行われています。
ただ、血液の濃度でどの程度のことが言えるのかは、
まだ議論の余地があります。

ガレクチン3というのは、
糖尿病の臓器障害で指摘されることの多い、
AGEs(終末糖化産物)と関連の大きなマーカーです。
過剰な糖により変成したタンパク質が、
これも炎症などを惹起して、
生物の老化の一因となっていることは広く知られています。
老化との関連という点では、
少し前まではその主役の位置にいました。
ガレクチン3というのはAGEsが結合する受容体タンパクの1つで、
ここに結合したAGEsは分解処理されるので、
老化を抑制するために働いていると想定されています。
老化の進行に伴いガレクチン3は増加するので、
ガレクチン3の増加というのは、
老化の原因ではなくその結果を示していると思われます。

さて、今回の検討においては、
ガレクチン3もオステオポンチンも、
通常高齢者と比較して100歳を超える高齢者で有意に低値を示していて、
この2つのマーカーを使用することにより、
健康な老化を高い精度で予測可能だ、
という結果になっていました。

これは2つのマーカーを使用しないとそうした結果にはならない、
という辺りがややトリッキーな感じがしますし、
この2つの組み合わせが適切であるという根拠も、
かなり弱いという気がします。
年齢をマッチングして比較したと言っても、
100歳のデータなどそもそもほとんどないのですから、
それが妥当なものなのかも疑問です。

正常な老化というものがあるのかどうかは、
ある種哲学的な問題かも知れませんが、
「健康で長生き」という抽象的な概念が、
科学的に検証され一定のデータとして算出可能、
という試みはそれなりには興味深く、
今後もこの分野のリサーチは続けたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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オステオポンチンと心血管疾患との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日でクリニックは午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
オステオポンチンと心血管疾患.jpg
これは昨年のPLOS ONE誌に掲載されたものですが、
老化に関わる炎症性サイトカインであるオステオポンチンの血液濃度と、
心血管疾患との関連を、
PEACE研究という過去の大規模臨床研究のデータを活用して、
検証した論文です。

オステオポンチンが何かについては、
11月13日のブログ記事をご覧下さい。

PEACE研究というのは、
心機能が正常かやや低下した安定狭心症の患者さんに対する、
ACE阻害剤の上乗せ効果をみたものです。
そこに登録された3567名の冠動脈疾患の患者さんにおいて、
オステオポンチンの血液濃度を測定し、
心血管疾患の予後との関連を検証しています。

自然対数変換したオステオポンチン濃度の1ポイントの上昇に対して、
心血管疾患による死亡と非致死性心筋梗塞と心不全による入院を併せたリスクは、
1.56倍(95%CI; 1.27から1.92)有意に増加していました。
年齢と性別で補正しても、
そのリスクは1.31倍(95%CI; 1.06から1.61)、
喫煙や腎機能、糖尿病などの因子を全て補正しても、
1.24倍(95%CI; 1.01 から1.52)と、
弱いながら有意に相関が認められました。

個別のリスクに関してみると、
心不全による入院のリスクが、
2.04倍(95%CI; 1.44から2.89)と、
最も大きなリスクの増加を認めていました。

このように解析自体はちょっとトリッキーな感じもしますが、
心機能がそれほど低下していない安定狭心症の患者さんにおいて、
オステオポンチンの血液濃度は、
特に心不全のリスクについて関連のある可能性という結果が得られました。

オステオポンチンは老化や慢性の炎症性疾患などにおいて、
重要な意味合いを持つ物質であることは間違いがありませんが、
そのデータの解析法やその判断については、
まだ確立されたものはないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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