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小腸選択性ステロイドのIgA腎症への効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
IgA腎症に対する小腸選択性ステロイドの効果.jpg
今年のLancet誌にウェブ掲載された、
IgA腎症という非常に頻度の高い腎臓病に対する、
新しい治療薬の臨床試験の結果をまとめた論文です。
第2b相臨床試験のデータです。

IgA腎症というのは、
免疫グロブリンの一種であるIgAが、
腎臓に多量に沈着することにより、
腎臓の機能が慢性的に障害される病気で、
慢性腎炎の半数を占める、
日本で最も多い腎臓の病気でもあります。

この病気の治療として、
国際的なガイドラインにおいて推奨されているのは、
ACE阻害剤もしくはARBと呼ばれる薬剤の使用です。
おしっこに排泄される蛋白質が1日1グラム未満では、
上の血圧が130mmHg未満を目標とし、
尿蛋白がそれより多い場合には、
125未満が目標とされます。

数か月の治療により、
尿蛋白の改善が見られない場合には、
ステロイド治療や免疫抑制剤の使用が検討されます。

しかし、こうした免疫抑制療法の上乗せ効果は、
あまり精度の高いデータの裏付けがある、
というものではありません。

治療成績は必ずしも満足の行くレベルのものではありませんし、
レニン・アンジオテンシン系の抑制が、
充分であったかどうかの検証があまりなされていないので、
真の意味での免疫抑制療法の上乗せ効果が、
どのくらいのものであるのかが不明なのです。

日本ではそれ以外に、
扁桃腺の切除とステロイドのパルス療法を組み合わせた治療が、
非常に高い奏効率を持つものとして施行されていますが、
世界的にはあまり言及をされていません。

さて、免疫を抑制することが、
IgA腎症の腎機能を保つ上で重要であることはほぼ間違いがありませんが、
全身的にステロイドを使用した臨床試験は、
あまり予後に明確な結果を示していません。

その理由は1つには糖尿病や易感染性などの、
ステロイドの有害事象にあると考えられます。

最近、IgA腎症と小腸のパイエル板という構造との関連が、
指摘されるようになりました。
パイエル板というのは、
小腸の空腸から回腸に存在するリンパ組織で、
腸管免疫の主体として機能しています。
ここで産生されるB細胞というリンパ球は、
IgAを主に産生していることが分かっています。

IgA腎症においては、
糖鎖異常IgA(ガラクトース欠損IgA1; GdIgA1)という、
異常なIgAが産生されて、
それが血中のIgGと結合し、
免疫複合体となって腎臓に沈着し病気を進行させると考えられています。

とすれば、
小腸のパイエル板における、
免疫の働きのみを低下させるような薬があれば、
IgA腎症の進行を予防することが可能になると想定されます。

そこで開発されたのが、
標的指向性のステロイド製剤、
カプセルとして内服すると、
パイエル板が多く存在する空腸遠位部に、
高濃度で達するように設計された、
吸入ステロイドの成分と同じ、
ブデソニドというステロイド製剤です。

全身作用は少ないため、
全身的なステロイド剤の使用よりも、
少量で効率よく効果を表し、
全身的な副作用は少ないことが期待されたのです。

今回の第2b相の臨床試験では、
ヨーロッパの複数の専門施設において、
18歳以上の年齢で腎生検によりIgA腎症と診断され、
レニン・アンジオテンシン系の抑制療法を継続していても、
グラム・クレアチニン換算で0.5グラム以上のタンパク尿が持続している患者さん、
トータル150名の患者さんを登録し、
患者さんにも主治医にも分からないように、
クジ引きで3つの群に分け、
第1群は小腸選択性ブデソニドを1日8ミリグラム、
第2群は1日16ミリグラム、
そして第3群は偽薬を使用して、
レニン・アンジオテンシン系抑制療法への上乗せとしての、
小腸選択性ステロイドの効果を検証しています。

腎機能はeGFRという指標が45mL/min/1.73㎡以上が条件で、
治療は9か月継続され、
その後3か月の観察期間を置いています。

その結果…

9か月の時点でステロイド治療を行なった2群を合わせたトータルでは、
登録時より尿蛋白を24.4%有意に低下させたのに対して、
偽薬群では2.7%増加していました。
ステロイド治療群の内訳では、
8ミリグラム群で21.5%、16ミリグラム群で27.3%の低下となっていました。

腎機能については、
9か月の時点でステロイド治療群では維持されていましたが、
偽薬群では10%の低下を示していました。

重篤な有害事象としては、
実薬16ミリグラム群で静脈血栓症と、
予期せぬ腎機能低下が1例ずつ認められました。

つまり小腸選択性のブデソニドの使用により、
9か月という治療期間においては、
尿蛋白を低下させ腎機能を維持する効果が認められました。
従って、より長期の使用において、
腎機能の低下を抑制する可能性が想定されます。

IgA腎症の治療は有効性の明確なものがあまりなく、
まだその長期効果など未解明の部分は残りますが、
非常に有望な治療となり得ることは間違いがなく、
今後の知見の積み重ねを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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よろしくお願いします。

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スタチンのノセボ効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
スタチンのノセダ効果.jpg
今月のLancet誌にウェブ掲載された、
スタチンという薬による有害事象の、
臨床試験の方法による頻度の違いについての論文です。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
非常に広く使用されているコレステロール降下剤です。

その効果は特に心筋梗塞の再発予防において、
多くの精度の高い臨床試験により実証されています。

このように有効性の確立された薬であるスタチンですが、
多くの有害事象があることも知られていて、
患者さんの処方の継続率は、
必ずしも高くないことが報告されています。

中でも頻度的に最も高いのが、
筋肉痛や筋脱力などの筋肉に関する有害事象です。
確かにスタチンの使用により、
稀に横紋筋融解症という、
筋肉細胞が広範に障害されるような副作用の、
発生することがあるのは事実です。
しかし、実際には重症の横紋筋融解症が、
スタチンの使用により発生することは極めて稀で、
使用後に筋肉痛や筋脱力があっても、
筋融解の時に上昇する酵素であるCPKは、
上昇していないか、
上昇はしていても軽度に留まることが、
多いことが報告されています。

こうした場合には、
スタチンは必要性が高ければ継続をしても、
問題はないとされていますが、
実際には患者さんも症状があるのに薬を続けることは心配ですし、
処方した医師も患者さんの安全を第一に考えますから、
一旦は中止とされることが多いと思います。

しかし、こうした患者さんの感じる服用後の不快な症状は、
何処までが薬の薬理的な作用によっているのでしょうか?

こうした疑問が生じるのは、
一旦スタチンを有害事象で中止した患者さんでも、
その後に再開すると、
同じ有害事象が発生する頻度は、
それほど高いものではないからです。

このように、
「この薬を飲むと筋肉痛が起こる」
という事前の知識があると、
一種の心理的な作用によって、
筋肉痛が起こることがある、
ということが知られています。

これを偽薬によっても、
それを薬と信じることによって、
薬と同じような作用が生じるプラセボ効果の逆と考えて、
ノセボ効果(ノーシーボ効果)と呼んでいます。

今回の研究はASCOT試験という大規模な臨床試験のデータを解析することで、
このスタチンによるノセボ効果が、
どの程度あるのかを検証したものです。

ASCOT試験は高血圧の患者さんにおいて、
降圧剤の種類と、
そこにスタチンの上乗せの意義を、
総コレステロール値が250mg/dL以下の患者さんで検証したものですが、
スタチンの有効性は早期に確認されたため、
その後はスタチンの使用を患者さんに明らかにした上で、
処方の継続が降圧剤選択の試験のために続行されました。

つまり、
試験の前半の期間は、
スタチンか偽薬かを患者さんが知らない状態で処方が継続され、
後半の期間はそれがスタチンであることを、
知らされた状態で処方が継続されたのです。

その結果、
偽薬かどうか分からない期間においては、
偽薬群とスタチン群とで、
筋肉関連の有害事象は違いがなかったのにも関わらず、
処方内容が開示された以降の期間においては、
スタチン群において1.41倍(95%CI;1.10から1.79)、
筋肉関連の有害事象は多く認められました。
つまり、この差がノセボ効果の可能性が高い、
という想定が可能なのです。

薬を使用する以上、
プラセボ効果とノセボ効果は必ず生じることは間違いがありません。

ノセボ効果を少なくするためには、
薬の内容を患者さんが知らないことが必要で、
更には処方する医師や調剤する薬剤師も、
その内容を知らない方がより確実である訳ですが、
それは実際の臨床としては不可能で、
むしろ必要以上に何度も副作用や有害事象については、
説明がなされることが適切と考えられているので、
現行のシステムでは、
報告される作用も副作用も、
その頻度は実際のものではなく、
プラセボ効果とノセボ効果で修飾されている、
という言い方が可能です。

要するに科学としての医学というのは、
人間が独立した高い理性を持った存在であることを、
暗黙の前提としているので、
全てを患者さんに開示した上で、
治療を行なうことが正しいとされているのです。

しかし、実際には皆さんもご存じのように、
人間というのはそんな偉そうなものではなく、
心理的な影響で毒も薬と信じれば薬になり、
薬も毒と信じれば毒になるような呪術的な存在なので、
医療というものの仕組みとは、
根本的に合わない部分があるのです。

科学としての医療は確かに長足の進歩を遂げていますが、
その奥底にはプリミティブな呪術性のようなものがあり、
多くの医療者はまだそれを利用して、
患者さんを治療している側面が少なからずあるので、
今後の医療の方向性を、
どのように考えるのかは、
そうたやすいことではないように思います。

端的に言えば、
データを入れてロボットに診察と診断をさせ、
適切な薬を処方させて、
患者さんは皆その診断も知ることはなしに、
それを高度の科学による正しい治療であると信じて、
中身は知らずに皆で飲めば、
治る病気は治りますし治らない病気は治らないので、
それが一番科学的な医療であり、
極めて公平に治療効果は表れるのです。

しかし、本当に皆さんはそうした医療を望まれますか?

そこが一番の問題点であるように思います。

それは要するに、
あなたはどんな存在でありたいのか、という問いと、
基本的には同じ性質のものだからです。

すいません。
後半は思索的な感じになりました。
今少しそうした気分なのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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隔日超低カロリーダイエットの効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
隔日絶食ダイエットの効果.jpg
今月のJAMA Internal Medicine誌にウェブ掲載された、
1日おきに絶食に近い低カロリーと、
高カロリーを繰り返すというダイエットの効果を、
通常の連日のカロリー制限と、
比較検証した論文です。

体重減量目的のダイエットには、
それこそ星の数ほどの方法がありますが、
最近海外で注目されている方法の1つが、
1日おきに絶食に近い低カロリーと、
カロリー制限を緩めた食事を繰り返すという方法です。

これはならすと、
通常の維持量より少し少ないカロリーになるのですが、
1日おきにはそれより多い量を食べられるので、
継続がしやすいという利点が指摘されています。

しかし、本当に他のダイエット法と比較して、
この隔日超低カロリーダイエットが、
肥満症の患者さんに対して行った場合に、
有効で安全なものであるかについては、
科学的な検証があまり行われていませんでした。

そこで今回の研究では、
アメリカの単独施設において、
年齢が18から64歳で、
体格の指標であるBMIが25.0から39.9という、
過体重から肥満の人を対象として、
くじ引きで3つの群に分けると、
第1群は1日おきに超低カロリーと高カロリーを繰り返し、
第2群は低カロリーを連日続け、
第3群はカロリー制限をしないコントロールとして、
1年間の経過観察を行っています。

二重標識水法という、
放射能で標識した水を飲んでもらい、
尿中の放射線を測定する方法で、
個々人のエネルギー消費量を算出し、
体重を維持するのに必要なカロリーを算定します。

それを元にして、
隔日超低カロリー群では、
維持カロリーの25%という超低カロリーと、
125%というやや高カロリーの食事を繰り返します。
通常の低カロリー群では、
維持カロリーの75%というカロリー制限が継続されます。
6か月そのダイエットを継続した上で、
後半の6か月は体重の維持を目的として、
食事処方が変更されるのです。

対象者はトータルで100名で、
30数名ずつの3群に振り分けられます。
平均年齢は44歳で86%が女性です。

その結果、
コントロールと比較すると、
通常の低カロリー群と隔日超低カロリー群は、
ほぼ同等の減量効果を示しました。
減量期間終了の6か月の時点で、
コントロールと比較して、
通常の低カロリー群は5.3%(95%CI;-7.6から-3.0)、
隔日超低カロリー群は6.0%(95%CI;-8.5から-3.6)、
の体重減少を示し、
その後維持期間にはリバウンドが見られましたが、
両群には差はありませんでした。

ダイエット期間中のドロップアウト率は、
コントロール群が26%、
通常の低カロリー群が29%であったのに対して、
隔日超低カロリー群は38%で最も高くなっていました。
これは絶食に近い低カロリーが、
1日おきであっても継続は困難な場合が多かった、
ということを示していると思います。
代謝マーカーや栄養状態などの数値においても、
両群では差はありませんでした。

このように、
連日の軽度カロリー制限と、
1日おきの超低カロリーダイエットは、
いずれも同等の体重減少効果を示し、
きちんと管理された状態においては、
半年程度の継続で、
大きな健康上の問題は生じないようです。

従って、どちらが特に優越ということはなく、
継続しやすい方法を、
選んで施行することで、
当面は大きな問題はないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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ホットフラッシュへの最新治療の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ホットフラッシュへの最新治療.jpg
今月のLancet誌に掲載された、
更年期のホットフラッシュに対する、
新しい治療薬の第2相臨床試験の結果を報告した論文です。

ホットフラッシュと呼ばれる顔などのほてり感や、
寝汗などの大量の発汗は、
女性の更年期症状としてポピュラーな症状で、
閉経した女性の70%以上に見られる、
という統計もあります。

これは必要以上に体温を脳が高く認識して、
それが体温を下げようとする自律神経の反応をもたらし、
末梢の血管が広がってほてりになり、
かつ発汗量が増えるのではないかと考えられています。
ネズミでは同様の反応の時に尻尾を小刻みに動かしていることから、
落ち着きがなく体をゆするような動作も、
同様のメカニズムで起こっている可能性があります。

それでは、何故更年期の脳は、
体を実際より暑く感じるのでしょうか?

脳の視床下部に体温調節中枢があり、
そこは女性ホルモンの分泌の調節をする部位でもあります。
閉経になるとGnRHという視床下部のホルモンの調節を行う、
キスペプチン・ニューロキニンB・ダイノルフィンという、
神経ペプチドを産生する神経が肥大して、
過剰に神経ペプチドを産生します。

このキスぺプチンやニューロキニンBは、
GnRHのパルス状と言われる分泌を作る作用があると共に、
体温の調節や性的な欲求のコントロールにも、
大きな働きを持っていると想定されています。

これまでの基礎的な研究により、
ホットフラッシュの症状のない閉経前の女性に、
ニューロキニンBを注射すると、
ホットフラッシュの症状が誘発されることや、
ニューロキニンBの遺伝子に変異があると、
ホットフラッシュが起こり難いことなどが分かっていて、
ホットフラッシュの発生には、
ニューロキニンBの存在が不可欠であると推定されています。

そこで今回の臨床試験では、
ニューロキニンBの受容体の拮抗薬を、
ホットフラッシュのある閉経女性に使用して、
症状が抑制されるかどうかを検証しています。

対象となっているのは、
40から62歳で閉経から1年以上経過していて、
24時間に7回以上、
持続的に不快と感じるホットフラッシュが生じている女性で、
くじ引きで本人にも施行者にも分からないように、
2つの群に分けると、
一方はニューロキニンBの受容体拮抗薬の飲み薬を、
1回40mgで1日2回、4週間継続的に使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
ホットフラッシュの頻度などを、
スコア化して比較しています。

68名の女性が登録されましたが、
実際に最後まで臨床試験が完了したのは、
そのうちの28名にとどまりました。
ニューロキニンB受容体拮抗薬は、
1週間のホットフラッシュのトータルなスコアを、
偽薬と比較してポイントで45%有意に低下させていました。

副作用や有害事象としては、
治療薬を投与された患者さんの3名で、
正常上限の4.5から5.9倍のトランスアミナーゼの上昇が認められ
(肝障害が起こったという意味です)、
薬剤の中止により90日以内に正常化しています。

この薬剤の使用により、
実際に発汗などの皮膚の反応にも変化が見られましたが、
キスぺプチンが関与するとされる性欲などの面では、
偽薬との間に特に違いは認められませんでした。

更年期のホットフラッシュの治療には、
通常は女性ホルモン剤が補充療法として使用されます。

ただ、女性ホルモンの使用には、
若干ながら乳癌や子宮癌のリスク増加や、
静脈血栓症、脳卒中などのリスク増加などの有害事象があります。

特に乳癌でホルモンを抑制するような治療をしている患者さんでは、
ホットフラッシュに対してホルモン剤は使用できないので、
現状は有効な対処法がない、
という問題点がありました。
代用として使用されるSSRIは、
抗うつ剤でそれ自体の副作用や有害事象もあります。

今回の薬剤は使用されるようになれば、
かなり高額の薬品となると考えられ、
コスト的には問題があるのですが、
ホルモン補充療法が困難な患者さんにとっては、
福音となる可能性を秘めていると思います。

今回の臨床試験は例数も少ないので、
まだまだ多数例での検証が必要であると思いますが、
メカニズム的には非常に興味深く、
様々な別個の病気の治療にも、
有用な可能性もあるので、
今後の知見の積み重ねを注視したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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高齢者へのスタチンの一次予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
スタチンの高齢者一次予防効果.jpg
今月のJAMA Internal Medicine誌にウェブ掲載された、
65歳以上の年齢層におけるスタチンの一次予防効果を検証した論文です。

スタチンはコレステロールの合成酵素の阻害剤で、
最も広く使用されているコレステロール降下剤です。

スタチンを使用することにより、
心筋梗塞のなどの心血管疾患になった患者さんの、
再発予防効果は、
多くの精度の高い臨床データによって実証されています。

スタチンはまだ心血管疾患を発症してはいないけれど、
その危険性が患者さんに対して、
発症予防(一次予防)としての使用も行われています。

ただ、スタチンの一次予防を、
どのような条件の患者さんに対して施行することが、
最も適切であるのかについては、
まだ色々の議論があって一定の結論に至っていません。

以前ご紹介した2016年のアメリカ予防医学作業部会のガイドラインでは、
年齢が40から75歳で、
これまでに心筋梗塞などの既往がなく、
喫煙、糖尿病、脂質異常症、高血圧症のいずれかを持っていて、
10年間の心血管疾患のリスクが10%以上の人は、
低強度から中強度のスタチンの使用を推奨する、
という内容になっています。
年齢が76歳以上では、
明確なスタチンの一次予防効果は確認されていません。

今回の研究は、
この問題を単独の大規模臨床試験のデータの、
二次解析により検証したものです。

使用されているのは、
ALLHAT-LLTという大規模臨床試験です。

年齢は55歳以上で、軽症から中等症の高血圧を持ち、
心血管疾患の既往がなく、
糖尿病など高血圧以外の1つ以上のリスクを持つ対象を、
スタチンであるプラバスタチン(1日40ミリグラムという高用量)と、
主治医に任せる形の通常治療とに分け、
その経過を観察しています。

このデータのうち、
今回は年齢を65歳以上に絞って解析を行っています。
トータルは対象者は2867名です。

その結果、
65歳以上全体での試験開始後6年の時点での総死亡のリスクは、
スタチン未使用と比較して、
スタチン使用群では1.18倍(95%CI;0.97から1.42)、
年齢65から74歳では1.08倍(95%CI;0.85から1.37)、
年齢75歳以上では1.34倍(95%Ci;0.98から1.84)となっていました。

これはスタチンを一次予防として使用しても、
65歳以上の年齢層では有意な総死亡のリスクの低下は認められず、
75歳以上に限定すると有意ではないものの、
スタチンを使用した方が、
総死亡のリスクが高い傾向がある、
ということを示しています。

そして、心血管疾患の発症リスクについても、
65歳以上の年齢層においては、
スタチンの使用と未使用との間で、
有意な差は認められませんでした。

つまり、今回のデータからは、
65歳以上の年齢層ではスタチンを使用しても、
心血管疾患の一次予防効果は明確には認められず、
特に75歳以上においては、
生命予後を悪化させる可能性も否定は出来ない、
ということになります。

ただ、これは単独の臨床試験の結果を二次解析したもので、
スタチンもプラバスタチン(商品名メバロチンなど)という、
古いスタチンが使用されています。
心血管疾患のリスクも、
10年リスクを算出するような方法ではなく、
糖尿病などのリスクが1つ以上ある、
というようなやや大雑把な方法を取っています。

従って、これをもって65歳以上におけるスタチンの一次予防は不可、
というようには言い切れないと思うのですが、
少なくとも75歳以上の年齢層において、
スタチンによる心血管疾患の一次予防を行う場合には、
個別のリスクを勘案した、
より慎重な姿勢が必要であることは、
間違いがないと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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変形性膝関節症に対するステロイド注射の問題点 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ステロイドの関節注射の効果2017.jpg
今年のJAMA誌に掲載された、
変形性膝関節症による膝の痛みに対して,
ステロイドの関節内注射を継続した場合の、
関節軟骨への影響を検証した論文です。

変形性膝関節症は、
太った中高年の女性に多い膝の痛みで、
関節の軟骨がすり減ることによってそこに炎症が起こり、
その炎症が更に軟骨をすり減らせるという悪循環を起こします。

変形性膝関節症の治療は、
まずは体重のコントロールや生活改善、
運動療法などで、
次に飲み薬の痛み止めや関節内への注射、
病状が進行した場合には手術治療も検討されます。

このうち関節注射として使用されているのは、
軟骨成分を補充するヒアルロン酸と、
痛みや炎症と取る目的で使用されるステロイドです。

ステロイド剤の関節注射には色々な意見があります。

変形性膝関節症で起こる関節の炎症は、
痛風の関節炎などと同じ、
一種の自己炎症です。
軟骨のすり減りによる機械的な刺激が、
炎症の原因となり、
その炎症が更に軟骨を痛めてすり減らすという、
悪循環になるのです。

もしそうだとすれば、
炎症を抑えることにより軟骨の破壊の進行も抑制され、
痛みも軽減する筈だ、
ということになります。

ステロイドには強力な抗炎症作用がありますから、
その使用はその意味では理に適っています。

一方でステロイドは骨壊死の原因となり、
蛋白質の異化作用を持つので、
軟骨がそれによりすり減るという可能性もあります。

つまり、変形性膝関節症に対して、
関節内にステロイドを注入することは、
病状を改善する可能性もある一方、
悪化させる可能性もある、
ということになります。

一体どちらが正しいのでしょうか?

この問題については、
2003年のArthritis & Rheumatism誌に、
トピックとなる論文が掲載されています。
それがこちらです。
ステロイドの関節注射の効果2003年.jpg
この論文では、
68名の変形性膝関節症の患者さんを、
本人にも主治医にもどちらか分からないように、
くじ引きで2つの群に分け、
一方は3か月に一度ずつ、
ステロイド剤であるトリアムシノロン(商品名ケナコルトA)を、
40ミリグラム関節注入することを繰り返し、
もう一方は生理食塩水を注射して、
トータルで2年間の観察を行っています。

その結果、
関節所見には両群で有意な差はなく、
その一方で痛みなどの症状については、
ステロイド使用群で有意な改善が認められた、
というデータが得られています。

つまり、変形性膝関節症に対して、
3か月に一度ケナコルト40ミリグラムを注射することの、
効果と安全性とが確認された、
という内容になっています。

ただ、この研究においては、
関節の所見はレントゲンのみで判断されています。
それでは、実際に軟骨のすり減り具合は、
正確に計測することは出来ません。

そこで今回の研究においては、
上記の2003年論文と同じことを、
140人の患者さんに対して行い、
軟骨のすりへり具合はMRI検査により判定を行っています。

使用されたステロイド剤はトリアムシノロン40ミリグラムで、
3か月に一度の注射を2年間継続している点も全く同じです。

その結果…

全経過を通して、
ステロイド使用群と偽注射群とで、
痛みなどの症状には有意な違いはなく、
MRIで計測された軟骨の厚みは、
ステロイド使用群で有意に減少していました。

つまり、
ステロイドの関節内注射は、
変形性膝関節症の症状に対しての有効性はなく、
その異化作用により、
軟骨のすり減りを進行させて、
膝関節症の悪化に結び付く可能性が高い、
という結論です。

2003年とは正反対の結果で、
検証の精度も例数も今回の方が勝っていますから、
現時点では、少なくともケナコルト40ミリグラムの投与の継続は、
望ましくはないと考えた方が良さそうです。
ただ、今回の検証でも臨床的に、
明確な差が出るまでには至っておらず、
ステロイドの使用量や使用方法によっては、
また別の結果が出るという可能性も残っています。

今後のより臨床に直結するような、
知見の積み重ねを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

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  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: 総合医学社
  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 単行本


百日咳の臨床診断について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
百日咳の臨床診断.jpg
今月のChest誌に掲載された、
百日咳の臨床診断についてのメタ解析の論文です。

百日咳は百日咳菌による細菌感染症で、
その名前の通り3か月も続くことがある、
咳の症状で知られています。

通常は普通の風邪のような鼻水や咽喉の痛みで始まり、
それから1から2週間くらいすると、
発作性の咳に症状が変わります。
治療は抗生物質に一定の効果がありますが、
症状が出現してから4週間以内でないと、
症状を改善することは難しいと言われています。

この病気の診断はまず特徴的な症状で、
発作性の咳と、咳き込みの後の嘔吐、
息を吸った時の笛のようなヒューヒュー音がその特徴とされています。

こうした咳で百日咳の存在を疑うと、
咳の出現から2週間以内であれば、
鼻や咽喉から検体を取って、
最近培養の検査や遺伝子検査が行われます。
(遺伝子診断は咳が出てから3週間くらいは検出可能)
咳が出てから3週間以降になると、
今度は血液の抗体が上昇するので、
それによる診断が可能となります。
通常1回のみの測定での判断が可能な、
抗PT-IgG抗体が、
現在は使用されることが多いようです。

このように、
闇雲に検査をするのではなく、
症状から百日咳を疑った場合に検査をするのですが、
抗生物質の有効性は早期であるほど高い反面、
早期の診断は難しいというジレンマがあります。
また、小児と大人では症状経過が異なる場合が多いのですが、
そうした検証があまりこれまでに行われて来なかった、
という問題も指摘されています。

今回の研究は、
これまでの百日咳関連の臨床データをまとめて解析する方法で、
症状からの百日咳の診断の方法を検証しています。

その結果、
成人の百日咳では、
発作咳の咳があり発熱はないという所見の、
感度が93.2%で特異度が20.6%、
咳き込み後の嘔吐と息を吸うときの笛のような音という所見の、
感度は32.5%で特異度は77.7%でした。
この場合の感度というのは、
百日咳の患者さんでそうした所見のある確率で、
特異度というのは、
百日咳の感染がない場合のそうした所見のない確率です。

つまり、大人では、
咳き込み後の嘔吐や息を吸うときの笛のような音があれば、
百日咳の可能性が高いので診断のための検査を行う必要があり、
発作性の咳がないか発熱があれば、
百日咳の可能性は低いので、
診断のための検査をする必要も低い、
ということになります。

一方でお子さんの百日咳では、
症状にはばらつきが多くて、
大人のような感度や特異度の高い症状の組み合わせは、
存在しませんでした。
その中では咳き込み後の嘔吐が、
感度60.0%、特異度66.0%で、
一定の有用性があり、
それ以外の症状については全く参考にはなりませんでした。

このようにお子さんの百日咳の診断は、
必ずしも簡単なものではなく、
現状はワクチンの接種状況や流行状況も踏まえて、
総合的に判断する以外にはないように思われます。

それでは今日はこのくらいで。

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スタチンと腰痛との関係について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
スタチンと腰痛.jpg
今月のJAMA Internal Medicine誌にウェブ掲載されたレターですが、
コレステロールの降下剤の使用と、
腰痛との関連性を検証したものです。

スタチンは広く使用されているコレステロール降下剤で、
心血管疾患の予防薬として、
その有用性は確立しています。

ただ、筋肉や神経系の有害事象や、
糖尿病の新規発症リスクの増加など、
副作用や有害事象の多い薬でもあります。

スタチンは筋肉の炎症を誘発することがあるところから、
腰痛の原因であるぎっくり腰などの原因となることや、
腰椎椎間板ヘルニアや変形性脊椎症による腰痛を、
悪化させるような可能性も想定されます。

しかし、実際には多数例でそうした検証が行われたことは、
これまでにはあまりありませんでした。

そこで今回の研究においては、
アメリカの健康保険のデータを活用することにより、
スタチンの使用と腰痛との関連を検証しています。

その結果、
年齢などをマッチングさせた、
スタチン使用者6728名と、
スタチン非使用者6728名を比較したところ、
腰痛の診断は、
スタチン使用者では、
全体の49.3%に当たる3318名で見られたのに対して、
スタチン非使用者では、
全体の43.3%に当たる2913名で見られていて、
スタチンの使用により、
腰痛のリスクは1.27倍(95%CI;1.19から1.36)
推計では17.6人の新規のスタチンの使用により、
1人のスタチンを原因とする腰痛が発生する、
と計算されました。

このスタチンの使用による腰痛の増加は、
スタチンの使用期間が長く、高力価であるほど、
多い傾向のあることも確認されました。

スタチンによる腰痛の機序はまだ不明で、
その因果関係も推測の域を出ませんが、
背骨に病気を抱えているような患者さんにおいては、
スタチンの使用をより慎重に考える必要はあるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

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腸内細菌叢の発達における授乳の影響について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
授乳と腸内細菌叢.jpg
今月のJAMA Pediatrics誌にウェブ掲載された、
腸内細菌叢の発達における授乳の影響についての論文です。

赤ちゃんが生まれてから1歳になるまでの期間に、
その腸内細菌叢は大きな変化を遂げます。
そして、概ね3歳くらいまでには、
大人と同じようなバランスの細菌叢が成立すると考えられています。

この正常な腸内細菌叢の発達が妨害され、
菌叢に乱れが生じると、
それが1型糖尿病や炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎などの、
自己免疫による病気の誘因となると考えられます。

それでは正常な腸内細菌叢の発達を阻害するものは何でしょうか?

そのことを考えるには、
どのようにして正常な腸内細菌叢が生まれるのかを、
考える必要があります。

赤ちゃんの腸に最初に流れ込むものは母乳もしくはミルクです。
授乳の場合には赤ちゃんはお母さんの乳首を吸いますから、
母乳に元々含まれている細菌と、
乳輪近くの粘膜や皮膚にいる細菌が、
一緒に赤ちゃんの体内に入ることになります。

実際に母乳や乳輪周囲の皮膚から、
どれくらいの細菌が赤ちゃんの腸に入り、
それがどのくらいそこで定着することになるのでしょうか?

今回の研究ではアメリカにおいて、
生後すぐから1歳未満の乳児とそのお母さん228名を登録し、
お子さんが1歳までの経過観察を行っています。
このうち107組214名はお母さんとお子さんのペアで、
12人は赤ちゃんのみ、2人はお母さんのみです。

お母さんの母乳と乳輪周囲の皮膚、
そして赤ちゃんの便のサンプルを採取し、
そのRNAの分析を行なって、
菌叢を形成する細菌のパターンを解析します。

その結果、
赤ちゃんの腸内細菌叢を形成する細菌の27.7%は母乳から、
10.4%は乳輪周辺の皮膚から由来していることが明らかになりました。
母乳の摂取量が多いほどその影響は大きく、
離乳食が始まっても、
その母乳の影響は減弱することはありませんでした。

つまり、
出生から1歳くらいまでの腸内細菌叢の発達には、
少なからず授乳が影響を与えていて、
ミルクではその影響に変化が生じる可能性があります。

これをもって即ミルクが良くない、とは言い切れませんが、
人工乳での腸内細菌叢の発達の検証や、
母乳との比較などが今後是非施行されて欲しいところで、
今後のこの分野の知見の蓄積に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

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非ステロイド系消炎鎮痛剤の急性心筋梗塞リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
NSAIDSと急性心筋梗塞.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
一般に使用されている解熱鎮痛剤の、
心筋梗塞発症リスクについての論文です。

こうした研究は多くあり、
これまでにも何度かご紹介していますが、
実臨床の大規模なデータを用いて解析をしている点と、
最近流行のベイジアン解析という手法を用いている点が、
今回の特徴です。

非ステロイド系消炎鎮痛剤は、
商品名ではボルタレンやブルフェン、
ロキソニンなどがそれに当たり、
一般に幅広く使用されている解熱鎮痛剤です。

しかし、この薬には多くの有害事象や副作用があり、
心筋梗塞の発症リスクの増加は、
ほぼ確認されている有害事象の1つです。

しかし、個別の薬剤間でどの程度のリスクの差があるのか、
と言う点や、
薬剤の量や期間とリスクとの関連などの事項については、
論文によっても結論が異なる部分があり、
まだ確実と言えるような知見は得られていません。

今回の研究はカナダとヨーロッパの医療データをまとめて解析したもので、
61460件の急性心筋梗塞の発症者を、
385303名の対照群と比較して、
心筋梗塞のリスクと個々の薬剤の使用との関連性を検証しています。

その結果、
1から7日間という短期間の使用においても、
心筋梗塞を起こした当日24時間以内の非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用は、
有意にその発症リスクを増加させていました。

薬毎の解析では、
未使用と比較して、
急性心筋梗塞のリスク(オッズ比)が、
イブプロフェンで1.48倍(95%CI;1.00から2.26)、
ジクロフェナクで1.50倍(95%CI;1.06から2.04)、
ナプロキセンで1.58倍(95%CI;1.07から2.33)、
それぞれ有意に増加していました。

一般的な非ステロイド系消炎鎮痛剤より、
有害事象のリスクが少ないと想定される、
COX2選択的阻害剤では、
セレコキシブでは1.24倍(95%CI;0.91から1.82)と、
有意ではないもののリスクは増加する傾向を示し、
ロフェコキシブでは1.58倍(95%CI;1.07から2.17)と、
こちらは有意なリスクの増加を認めました。

薬の1日の使用量が多いほど、
心筋梗塞の発症リスクも高くなりましたが、
使用期間は1か月を超える使用であっても、
リスクはより増加するという傾向は示しませんでした。

このように、
非ステロイド系の消炎鎮痛剤を使用することにより、
若干ながら急性心筋梗塞の発症リスクが増加することは、
ほぼ間違いがなく、
1回の使用量が多いほどそのリスクは高まりますが、
慢性の使用が1か月未満の使用より危険、
ということはなく、
個々の薬剤間のリスクの差も、
それほどはないと考えておくことが妥当なようです。

特に心疾患のリスクのある患者さんにおいては、
非ステロイド系消炎鎮痛剤の使用は、
最小限最小用量に留めることが、
必要であると考えておいた方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

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石原がお送りしました。

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