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DPP-4と認知機能との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
DPP4と認知機能.jpg
今年のFrontiers in Aging Neuroscience誌に掲載された、
糖尿病との関連で指摘されることの多い、
インクレチンを分解するDPP-4という酵素と、
認知機能との関連についての論文です。

老化と関連のある物質というのは、
昨日取り上げたオステオポンチンなど複数が指摘されていますが、
インスリン分泌を刺激するインクレチンを分解する酵素であるDPP-4も、
その1つの候補となる物質です。

インクレチンであるGLP-1は、
血糖を下げる以外に酸化ストレスを抑制し、
炎症を抑えるような働きがあります。
その反対に血液のGPP-4活性が高いと、
炎症や酸化ストレスが促進されるという知見もあります。

つまりDPP-4は老化を促進する物質である、
という可能性があるのです。

今回の研究は中国において、
60歳以上の年齢の糖尿病のない1229名の住民において、
血液のDPP-4活性の高さと、
認知機能との関連を検証しています。

対象者を登録してその経過を追ったものではなく、
ある時点での認知機能とDPP-4活性との関連を検討したものなので、
それほど精度の高いデータとは言えません。

その結果、
血液のDPP-4活性が4分割して最も低い群と比較すると、
最も高い群は2.26倍(95%CI; 1.36から3.76)、
有意に認知機能低下のリスクが増加していました。

これはまだそうした傾向があった、
と言う程度のものなのですが、
動物実験においてはDPP-4阻害剤による治療が、
認知機能の低下を予防した、という報告もあり、
DPP-4阻害剤やGLP-1アナログを、
治療に使うという選択肢がすぐに浮かぶ、
と言う点がこの知見の1つの大きな魅力です。

まだインクレチン関連薬で認知症が明確に予防された、
というようなデータはありませんが、
老化の1つの現れである筋肉量の病的な低下(サルコペニア)に対しては、
100例程度のデータですが、
DPP-4阻害剤で糖尿病の患者さんにおける改善がみられた、
という2つの報告があります。

このように老化の病態の一部に、
DPP-4が関連しているという知見は興味深く、
まだ確実性があるというレベルのものではありませんが、
今後の知見の積み重ねに期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

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長寿の予測因子としてのガレクチン3とオステオポンチン [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
オステオポンチンと長寿.jpg
2015年のClinical CHemistry and Laboratory Medicine誌に掲載された、
100歳を超える長寿の人と通常の高齢者で、
2種類のバイオマーカーを測定して、その比較をした論文です。

100歳を超えて持病のない長寿の人に、
そうでない大多数の人と比べてどのような特徴があるのか、
というのは長寿医学や老年医学において注目をされる分野で、
日本でも研究が行われ幾つかの知見が報告されています。

今回の研究ではイタリアにおいて、
100歳を超える高齢者81名と、
70から80歳の通常の高齢者46名を対象として、
血液中のガレクチン3とオステオポンチンという2つのマーカーを測定し、
その違いを見たものです。

オステオポンチンについては、
このところ連日のように話題にしていますが、
そもそもは骨代謝のマーカーとして発見されたものですが、
炎症を誘発する炎症性サイトカインとしての性質を持ち、
老化によって特徴的に増加する免疫細胞から過剰に分泌されるため、
老化のマーカーの1つと想定されて多くの研究が行われています。
ただ、血液の濃度でどの程度のことが言えるのかは、
まだ議論の余地があります。

ガレクチン3というのは、
糖尿病の臓器障害で指摘されることの多い、
AGEs(終末糖化産物)と関連の大きなマーカーです。
過剰な糖により変成したタンパク質が、
これも炎症などを惹起して、
生物の老化の一因となっていることは広く知られています。
老化との関連という点では、
少し前まではその主役の位置にいました。
ガレクチン3というのはAGEsが結合する受容体タンパクの1つで、
ここに結合したAGEsは分解処理されるので、
老化を抑制するために働いていると想定されています。
老化の進行に伴いガレクチン3は増加するので、
ガレクチン3の増加というのは、
老化の原因ではなくその結果を示していると思われます。

さて、今回の検討においては、
ガレクチン3もオステオポンチンも、
通常高齢者と比較して100歳を超える高齢者で有意に低値を示していて、
この2つのマーカーを使用することにより、
健康な老化を高い精度で予測可能だ、
という結果になっていました。

これは2つのマーカーを使用しないとそうした結果にはならない、
という辺りがややトリッキーな感じがしますし、
この2つの組み合わせが適切であるという根拠も、
かなり弱いという気がします。
年齢をマッチングして比較したと言っても、
100歳のデータなどそもそもほとんどないのですから、
それが妥当なものなのかも疑問です。

正常な老化というものがあるのかどうかは、
ある種哲学的な問題かも知れませんが、
「健康で長生き」という抽象的な概念が、
科学的に検証され一定のデータとして算出可能、
という試みはそれなりには興味深く、
今後もこの分野のリサーチは続けたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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オステオポンチンと心血管疾患との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日でクリニックは午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
オステオポンチンと心血管疾患.jpg
これは昨年のPLOS ONE誌に掲載されたものですが、
老化に関わる炎症性サイトカインであるオステオポンチンの血液濃度と、
心血管疾患との関連を、
PEACE研究という過去の大規模臨床研究のデータを活用して、
検証した論文です。

オステオポンチンが何かについては、
11月13日のブログ記事をご覧下さい。

PEACE研究というのは、
心機能が正常かやや低下した安定狭心症の患者さんに対する、
ACE阻害剤の上乗せ効果をみたものです。
そこに登録された3567名の冠動脈疾患の患者さんにおいて、
オステオポンチンの血液濃度を測定し、
心血管疾患の予後との関連を検証しています。

自然対数変換したオステオポンチン濃度の1ポイントの上昇に対して、
心血管疾患による死亡と非致死性心筋梗塞と心不全による入院を併せたリスクは、
1.56倍(95%CI; 1.27から1.92)有意に増加していました。
年齢と性別で補正しても、
そのリスクは1.31倍(95%CI; 1.06から1.61)、
喫煙や腎機能、糖尿病などの因子を全て補正しても、
1.24倍(95%CI; 1.01 から1.52)と、
弱いながら有意に相関が認められました。

個別のリスクに関してみると、
心不全による入院のリスクが、
2.04倍(95%CI; 1.44から2.89)と、
最も大きなリスクの増加を認めていました。

このように解析自体はちょっとトリッキーな感じもしますが、
心機能がそれほど低下していない安定狭心症の患者さんにおいて、
オステオポンチンの血液濃度は、
特に心不全のリスクについて関連のある可能性という結果が得られました。

オステオポンチンは老化や慢性の炎症性疾患などにおいて、
重要な意味合いを持つ物質であることは間違いがありませんが、
そのデータの解析法やその判断については、
まだ確立されたものはないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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よろしくお願いします。

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DHAの非アルコール性脂肪肝炎進行予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
オステオポンチンがDHAで低下する.jpg
今年のPLOS ONE誌に掲載された、
オステオポンチンと脂肪肝炎に関する論文です。

非アルコール性脂肪肝炎というのは、
お酒をあまり飲まない人に、
アルコール性脂肪肝炎に似た、
中性脂肪の過剰な肝臓への蓄積が起こるもので、
進行すると肝硬変や肝臓癌のリスクも高まります。
内臓脂肪の蓄積と大きな関連があり、
メタボリックシンドロームの、
内臓病変の1つとして考える見方もあります。

内臓脂肪の蓄積が、
免疫老化と呼ばれるようなT細胞の変化をもたらし、
オステオポンチンという炎症物質の過剰な産生が、
慢性の炎症を惹起して老化を進行させるのでは、
という仮説があります。

この考え方からすれば、
内臓脂肪の蓄積によって生じる非アルコール性脂肪肝炎というのも、
この免疫老化の1つの現れということになる訳です。

今回の論文は免疫老化と直接に関連するものではなく、
DHA(ドコサヘキサエン酸)という、
青身魚の脂に多く含まれる多価不飽和脂肪酸(ω3脂肪酸)の、
高脂肪食によってもたらされた非アルコール性脂肪肝炎への、
進行予防と治療効果をみた動物実験の論文ですが、
脂肪肝炎の炎症マーカーの1つとして、
オステオポンチンを測定していて、
その変化を見ているという点で、
DHAのオステオポンチンへの効果もみるような結果となっています。

高脂肪食を22週間継続する負荷で、
メタボリックシンドロームと、
非アルコール性脂肪肝炎の状態となったネズミに対して、
その時点で解剖して検査をした場合と、
高脂肪食にオリーブオイルを加えた場合、
高脂肪食にDHAを加えた場合、
普段の飼料に戻してオリーブオイルを加えた場合、
普通の飼料に戻してDHAを加えた場合の、
4種類のパターンの食事を8週間継続し、
その後に解剖して検査を行なった場合の比較を行っています。

その結果…

オリーブオイルの補充では、
肝細胞の炎症や線維化は抑制されなかったのに対して、
DHAの補充を行なうと、
炎症性マーカーを含めて脂肪肝炎の進行が抑制されていました。
オステオポンチンも、
血液濃度においてはあまり変化を認めていませんが、
肝細胞内の発現量についてみると、
DHA群で強い抑制が認められました。

更に食事を高脂肪食から通常の飼料に戻し、
そこにオリーブオイルやDHAを添加すると、
肝臓の状態はほぼ高脂肪食負荷前の状態に、
改善していることが確認されました。

これを昨日の免疫老化と内臓脂肪との話と組み合わせて考えると、
内臓脂肪の蓄積に伴い、
肝細胞にも免疫老化が起こって炎症が持続し、
脂肪肝炎や肝臓の線維化などの変化が進行しますが、
DHAには内臓脂肪の組成を変化させて、
炎症を軽減する効果があり、
更に食事の脂肪量を低下させることにより、
その効果は持続可能なものとなって、
一旦進行した脂肪肝炎も、
改善する可能性がある、
ということになります。

これはまだ動物実験のレベルの知見で、
そのまま人間に適応可能であるかどうかは分かりませんが、
多くの慢性病に実は老化の促進という共通項があり、
それが食事+薬もしくはサプリメントという組み合わせで、
一定レベル改善させることが可能だ、
というデータは興味深く、
今後の検証を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

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内臓脂肪と老化との関係 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
オステオポンチンと免疫変化.jpg
今年のPLOS ONE誌に掲載された、
肥満による免疫細胞の老化の影響が、
減量後も持続しているという興味深い動物実験のデータです。

最近老化の研究でテレビなどにも沢山出演されている、
慶應大学の佐野政明先生などの研究グループによる知見です。

老化の本態はまだ解明されているとは言えませんが、
最近話題となっていることの1つは、
リンの蓄積を誘導するクロトー遺伝子で、
もう1つが最近佐野先生が広められている、
オステオポンチンです。

オステオポンチンはその名の通り、
骨の組織に豊富に含まれる物質として発見された、
酸化リン酸化タンパク質で、
細胞に結合してその増殖などを調整する、
一種のホルモンやサイトカインのような働きを持っています。

当初は骨吸収を促進する物質として、
主に骨の状態のマーカーとして測定されていました。

それがその後の研究により、
骨以外の場所でも産生され多彩な働きをしていることが、
次第に明らかとなり、
現時点では身体に炎症を引き起こす、
炎症性サイトカインとしての働きが主に注目されています。

長寿の高齢者では相対的にオステオポンチンの血液濃度が、
低値であることが報告されています。
つまり老化とオステオポンチンとは何らかの関連がありそうです。

その関連とはどのようなものなのでしょうか?

身体の細胞の老化に伴い、
身体をウイルスや細菌などの病原体から守る働きをしている免疫細胞も、
老化をするということが知られています。

これを免疫老化と呼んでいます。

加齢に伴い、T細胞と呼ばれる免疫細胞の機能が、
低下することが分かっていて、
それにより免疫力が低下するとともに、
過剰な慢性の炎症が身体に起こります。

2009年に京都大学の湊長博先生のグループが、
この免疫老化というのは、
T細胞全体の老化ということではなく、
若い人には存在しない特殊な性質のT細胞が増殖して、
それが大部分を占めることで生じている、
という新たな知見を報告しました。

佐野先生達のグループは、
内臓脂肪の増加とこの免疫老化との関係に着目し、
研究を重ねています。

内蔵脂肪が増えたいわゆるメタボの状態では、
インスリン抵抗性が高まって動脈硬化が進行し、
全身の臓器の障害に結びついて寿命も短縮することより、
メタボでは老化が進行する、
という言い方が可能です。

ネズミに脂肪の多い食事を摂らせて、
内臓脂肪が増加したメタボのネズミを作ると、
そのネズミの脂肪細胞は慢性の炎症を起こし、
そのときに血液のオステオポンチンは増加します。
そして、オステオポンチンを過剰に産生している細胞は、
若い痩せたネズミにはほとんど存在しない、
CD153とPD-1というマーカーが表面に見られるT細胞でした。

この特殊なT細胞は高齢のネズミにおいて増加していて、
オステオポンチンを産生して細胞に炎症を起こし、
その一方で正常な免疫反応は起こさないので、
そのネズミでは慢性に炎症が持続して動脈硬化は進行し、
インスリン抵抗性により糖尿病を発症、
免疫力は低下して感染には弱くなります。
当然そうしたネズミの寿命は短くなりますから、
かなりの蓋然性を持って、
このT細胞こそ免疫老化の本態であろうと推測されるのです。

つまり、高齢になると、
免疫の働きはなく、炎症を起こすという、
有害な免疫細胞が何故か増加して、
そのために全身の老化が進行してしまいます。
このときに炎症の主体になるのが、
異常な免疫細胞から分泌されるオステオポンチンで、
このオステオポンチンが欠損しているネズミでは、
炎症やインスリン抵抗性は生じないことも分かっています。

オステオポンチンが老化物質の1つであることは、
動物実験のレベルでは間違いはなさそうです。

興味深いことはこの免疫老化は、
加齢ではなく脂肪過多によるメタボでも、
同じように誘導されることで、
その意味でメタボというのは、
老化とかなり近い現象である、
という言い方が可能です。

さて、最初にご紹介した文献においては、
高脂肪食で内臓脂肪を増やしたネズミにおいて、
免疫老化が起こっていることを確認してから、
今度は低脂肪食により内臓脂肪を元の量に落とします。
つまり、ダイエットをする訳です。
ところが体重が減少した後も長期間、
有害なT細胞が増殖する状態は続き、
オステオポンチンも前値には戻りませんでした。

つまり、肥満により一旦免疫老化が起こってしまうと、
その後ダイエットで体重を元に戻しても、
免疫老化自体はすぐには元には戻らない、
ということが明らかになったのです。

これは人間において、
メタボの人が食事をコントロールして体重を落としても、
必ずしも全てのデータが元に戻る訳ではなく、
動脈硬化の進行は抑制出来ない、
という疫学データにも一致する知見で、
今後より免疫老化の実態が分かって来れば、
オステオポンチンの抑制など、
根本的に老化を抑制するような治療が、
実現する日が来るかも知れません。

それほど楽観はすることなく、
今後の研究の結果を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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尿路感染症に対する消炎鎮痛剤の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
尿路感染症に対する消炎鎮痛剤の効果.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
合併症のない尿路感染症に対する、
抗生物質の使用の可否についての論文です。

近年抗生物質の害が強く指摘されるようになり、
日本でも抗生物質の使用を抑制しよう、
という動きがあります。

抗生物質は細菌感染症の治療薬で、
医療の歴史において、
非常に画期的なブレイクスルーをもたらしたものですが、
その一方で万能薬的なイメージが付き過ぎたために、
あまり意味のない予防的な使用や、
ウイルス感染症の可能性の高い風邪症候群への、
適応を考慮しない使用などが行われるようになり、
抗生物質の効かない耐性菌の問題などが、
生じる結果となっているのは、
皆さんもご存じの通りです。

そのため抗生物質の使用の適正化の試みが、
色々な面で行われるようになりました。

今回はその流れの中で、
抗生物質の使用頻度が多く、
その適応と考えられている、
膀胱炎などの合併症のない尿路感染症に対する、
抗生物質の使用が、
本当に必要なものであるのかを検証しているものです。

スイスの17のプライマリケアの医療機関において、
203名の合併症のない尿路感染症の患者さんを登録し、
患者さんにも主治医いにも分からないように、
一方は消炎鎮痛剤であるジクロフェナクナトリウム(商品名ボルタレンなど)を、
1日75mgで3日間使用し、
もう一方は同じ見た目のカプセルで、
抗生物質のノルフロキサシン(商品名バクシダールなど)を、
1日400mgでおなじく3日間使用して、
3日後の症状や合併症の有無を比較検証しています。

その結果、
3日後に症状が改善したのは、
消炎鎮痛剤群の54%に対して、
抗生物質群では80%で、
有意に抗生物質が有効という結果になっています。
更には腎盂腎炎への悪化は、
消炎鎮痛剤群では5%に当たる6名で認められたのに対して、
抗生物質群では1例も認められませんでした。

このように女性の合併症のない尿路感染症に対しては、
対処療法より抗生物質の使用の方が、
その使用が適正であれば明らかに有用性が高く、
その使用は必要と考えられますが、
その一方で抗生物質を使用している患者さんでは、
濫用に繋がり易いこともまた事実で、
濫用にならないようにどのように歯止めを作ってゆくのかが、
今後は重要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コレステロールが低いと死亡リスクが高いのは何故か? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
コレステロールと寿命.jpg
今年のthe Journal of Gerontology誌に掲載された、
高齢者における血液のコレステロール値と死亡リスクとの関連についての論文です。

血液のコレステロール、
特にLDLコレステロールの高値が、
動脈硬化性疾患のリスクとなり、
そうした病気のリスクの高い方においては、
スタチンというコレステロール降下剤を使用することが、
そのリスクの軽減や生命予後の改善に繋がることは、
主にスタチンを使用した多くの精度の高い臨床試験において、
長期的にもほぼ確立された事実です。

ただ、その一方で一般住民を対象としたような、
疫学データの解析においては、
コレステロールが高齢者で低値であると、
総死亡のリスクが高くなるという結果が、
複数報告されています。

コレステロールが低い方が動脈硬化の病気のリスクは低下する筈なのに、
何故コレステロールの低い高齢者は、
むしろ生命予後が悪いのでしょうか?

このことの1つの説明は、
低栄養状態ではコレステロールは低下するので、
別にコレステロールが低いことそれ自体が、
生命予後を悪くしているのではなく、
栄養状態を悪くするような状態があるので、
その結果としてコレステロールが低いのではないか、
という考え方です。

このことを検証する目的で今回の研究では、
イギリスのプライマリケアの医療データを活用して、
年齢が80から105歳の高齢者を登録し、
年齢性別などの因子を補正した上で、
生命予後と血液中の総コレステロールとの関連を検証しています。

その結果、
総コレステロールが4.5から5.4mmol/L(174から209mg/dL)と比較して、
3.0mmol/L(116mg/dL)未満では、
その後の総死亡のリスクは、
スタチンで治療をされている患者さんで1.53倍
(95%CI;1.43から1.64)、
スタチン未使用の方で1.41倍
(95%CI; 1.29から1.54)、
それぞれ有意に増加していました。

これを死亡前の2年間に限って解析すると、
同様の総コレステロール116mg/dL未満の死亡リスクは、
スタチンを使用中の患者さんで1.88倍
(95%CI; 1.68から2.11)、
スタチン未使用の方で3.33倍
(95%CI; 2.84から3.91)、
それぞれ有意に増加していいました。

このように、
確かに高齢者において、
総コレステロールが低いことはその後の死亡リスクを増加させますが、
そのリスクは死亡前の2年で急激に上昇し、
その時点ではスタチンを使用している患者さんより、
使用していない人の方がリスクは高くなっています。

この解釈は単一ではありませんが、
1つの考え方として、
コレステロールを下げること自体が生命予後へのリスクになるのではなく、
死亡に結び付くような体調変化の結果として、
おそらくは栄養状態を反映して、
コレステロールは低くなっているのではないか、
という流れが想定されます。

スタチンの臨床試験ではそうした傾向はないのに、
疫学データではコレステロールが低値であると生命予後が悪いという点、
死ぬ前のリスクが高い時点では、
むしろスタチンを使用している方が予後が良い点などから考えて、
一応筋の通った考えのように思います。

この問題はこれで解決が付いたということではないのですが、
コレステロールを下げることの生命予後への影響は、
以前指摘されていたような単純なものでは、
ないと考えた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ビタミンD濃度と癌リスクとの関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ビタミンDとがん.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
血液のビタミンD濃度と癌のリスクとの関連についての論文です。

基礎実験や動物実験のレベルでは、
ビタミンDは細胞の成長や分化を調節し、
癌の発症を抑制するような効果があると報告されています。

ただ、実際にビタミンD濃度が高いことが、
癌の発症を抑制するかどうかは、
まだ明確ではありません。

観察研究のメタ解析のデータによると、
25(OH)D濃度が高いと大腸癌のリスクが低い、
という結果が報告されています。
乳癌と前立腺癌についても、
それを示唆するデータが報告されています。
ただ、癌になって消耗した状態では。
血液のビタミンD濃度も低くはなることが想定されるので、
これが本当にビタミンDが高いことの影響であるとは、
これだけでは言えません。

そこで今回の研究では、
ビタミンD濃度の低下に結びつく遺伝子変異を解析して、
その癌リスクとの関連を多数例で検証しています。
遺伝子の変異自体は無作為に生じるという性質を利用した、
メンデル無作為化解析という手法による解析です。

70563名の癌の患者さんの検体と、
84418名のコントロールの検体とで、
遺伝子の解析を行った、
これまでで最も大規模なデータです。

その結果、
前立腺癌、乳癌、肺癌、大腸癌、卵巣癌、膵臓癌、神経芽細胞腫の、
7種類の癌での検証において、
ビタミンDが低下する遺伝子変異と、
癌のリスクとの間には明確な関連は認められませんでした。
弱い関連のある可能性は残るものの、
現時点でビタミンD濃度を測定して癌のリスクを判断したり、
ビタミンDの補充を癌予防のために行うという治療の妥当性は、
現時点では低いものと考えた方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

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慢性腎臓病に伴ううつ病に対するセルトラリンの効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
セルトラリンの慢性腎臓病に対する効果.jpg
今年のJAMA誌に掲載された、
慢性腎臓病の患者さんの抑うつに対する、
セルトラリンというポピュラーな抗うつ剤の効果についての論文です。

慢性腎臓病(CKD)と呼ばれる腎機能の低下は、
透析に至ることがなくても、
動脈硬化を進行させるなど、
全身の血管や神経、筋肉や骨にも影響を与え、
生命予後を悪化させる代表的な内臓の病気です。

その原因の1つはリンを排泄することが困難となって、
身体にリンが蓄積することで、
最近の考えではリンの蓄積が、
老化の主な原因の1つと考えられています。

さて、このように多くの病気を合併する慢性腎臓病ですが、
上記文献に引用されているアメリカの統計によると、
慢性腎臓病の患者さんの25%がうつ病を合併していて、
その有病率は一般人口の4倍になると推計されています。

そして、うつ病を合併した慢性腎臓病の患者さんは、
当然そうでない患者さんより病気も進行しやすく、
生命予後にも悪影響を与えているのです。

抗うつ剤、特に最近主流となっているSSRIという薬剤による治療は、
一般のうつ病に対しては一定の有効性が確認されています。
しかし、そうした薬の臨床試験においては、
腎機能が一定以上低下している患者さんは除外されているので、
慢性腎臓病の患者さんにおいても、
こうした薬が有効であるという根拠は、
あまり明確なものはありません。

慢性腎臓病でうつ病を合併した患者さんに対しても、
SSRIによる治療は有効なのでしょうか?

それを確認する目的で今回の研究では、
アメリカの複数の専門施設において、
ステージ3から5で維持透析は導入されていない慢性腎臓病の患者さん、
トータル201名をくじ引きで2つの群に分け、
一方はSSRIであるセルトラリン(商品名ジェイゾロフトなど)を、
1日50mgから開始して段階的に200mgを目標に増量し、
もう一方は偽薬を同じように使用して、
12週間の経過観察を行っています。

対象となった患者さんの腎機能は、
推計糸球体濾過量で60ml/min/1.73㎡未満が条件になっています。

セルトラリンは肝臓で代謝され、
活性のない代謝物として尿中に排泄されるため、
透析の患者さんを含めて、
腎機能低下に関わらず通常の用量で使用可能な薬で、
そのために今回抗うつ剤として使用されています。

その結果…

セルトラリンの使用は偽薬と比較して、
12週間の使用においては有意なうつの指標の改善を認めませんでした。
実際には偽薬もうつの指標を改善させていて、
その改善の程度には実薬と差がなかったのです。
一方で吐き気などの消化器症状はセルトラリン群で有意に高く、
急性の薬剤性肝障害の事例も1例認められました。

要するに腎機能低下の患者さんにおけるうつ症状に対しては、
セルトラリンは有効とは言えない結果です。

抗うつ剤の有効性は患者さんの身体状況によっても、
異なる可能性があり、
今後もっとそうした病態毎の有効性の検証が、
必要なのではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

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  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: 総合医学社
  • 発売日: 2016/10/28
  • メディア: 単行本


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インフルエンザ感染防御における女性ホルモンの役割 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
インフルエンザと女性ホルモン.jpg
2015年12月のAmerican Journal of Physiology誌にウェブ掲載された、
インフルエンザ感染の性差についての論文です。

ウイルス感染に対する免疫の働きには性差があり、
それが患者さんの予後に大きな影響を与えていることは、
様々なワクチンで良く知られている事実ですが、
そのメカニズムはまだあまり分かっていません。

動物実験の多くは性差を無視して行われているからです。

インフルエンザに関しては、
特に鳥インフルエンザなど重症化に多いウイルスの感染において、
若い成人女性は、同年齢の男性と比較して、
2から6倍死亡率が高いと報告されています。

そこで上記文献においては、
副鼻腔の手術に伴って採取された鼻の粘膜の細胞を使用して、
女性ホルモンであるエストラジオール(E2)を加えて培養したり、
特定の女性ホルモン受容体の刺激剤を加えて培養し、
そこにインフルエンザウイルスを感染させて、
ウイルス感染に対する免疫の性差について検証しています。

その結果、
2型のエストロゲン受容体刺激剤とエストラジオールの刺激により、
感染したインフルエンザウイルスの粘膜細胞での増殖は抑制されましたが、
その反応は女性の粘膜でのみ認められ、
男性では認められませんでした。
また、1型エストロゲン受容体を刺激しても、
同様の反応は得られませんでした。

要するに鼻の粘膜でのインフルエンザウイルスに対する防御機能には、
明確な性差が存在していて、
女性の場合にはそれが女性ホルモンにより大きく変化しています。
そして、おそらくは女性ホルモンの変動の影響により、
女性でインフルエンザの重症化が起こりやすいと想定されるのです。

まだ不明の点も多いのですが、
インフルエンザ感染にこのように明確な性差が存在する、
という指摘は非常に興味深く、
今後のデータの蓄積を期待したいと思います。

なお、この論文を紹介した医師向けのサイトがあるのですが、
男性はインフルエンザが重症化する、
という真逆の説明が平然と書かれていて、
今回唖然と思ったことを追記して置きます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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