So-net無料ブログ作成

治療抵抗性高血圧におけるアルドステロンの影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スピロノラクトンと治療抵抗性高血圧.jpg
2018年のLancet Diabetes Endocrinology誌に掲載された、
治療抵抗性の高血圧についての論文です。

高血圧は脳卒中や心筋梗塞など、
多くの病気のリスクを高め、
そのコントロールがそうした病気の予防に効果のあることは、
実証され確認された事実です。

ただ、それでは生活改善により下降しなかった高血圧を、
薬物治療によって何処まで下げるのが適切か、
というような具体的な治療の基準については、
まだ色々と議論の余地が残っています。

それに加えて治療抵抗性の高血圧の存在が、
治療においては問題になります。

通常の高血圧診療において、
国際的に第一選択として推奨されている降圧剤には、
次の3種類があります。

その第一は少量の利尿剤で、
これは元々おしっこを多く出す作用の薬ですが、
ナトリウムの排泄を促す作用があるので、
それが主に降圧に有効であると考えられています。
ただ、カリウムの低下や尿酸の増加、
血糖値の上昇や脱水の出現など、
副作用や有害事象の多いことが難点です。
そのため、現在では単独の治療より、
少量を他の薬剤と組み合わせて使うことの方が、
多く行われています。
ただ、長期の効果や有効性のデータは、
間違いなく利尿剤が一番あるのです。

次にカルシウム拮抗薬というタイプの薬があり、
これは主に血管を拡張することにより、
血圧を低下させる薬剤です。
降圧作用は現在使用可能な降圧剤の中では、
基本的に最も強力です。

最後に身体に水と塩分を保持させるための、
レニン・アンジオテンシン系という一種のホルモンシステムを、
抑制するというメカニズムの薬があります。
代表はACE阻害剤とアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)です。

以上の3種類の薬の、
どれか1種類から使用を開始し、
徐々にその用量を増加させて血圧値を確認。
コントロールが良好となればそれで維持し、
もし最大用量まで使用してもコントロールが不良であれば、
上記3種類のうち別個の薬剤を追加して、
治療を継続するという方法が一般的です。

通常はこの方針で問題はありません。

しかし、中にはこうした薬物治療に抵抗性の事例が存在しています。

治療抵抗性の高血圧の定義は、
上記の3種類の薬を全て使用しても、
目標とする降圧には至らない、
という状態を指しています。

高血圧の診療をしている医者なら、
必ずこうした事例には遭遇します。

しかし、こうした場合に次にどのような手を打つべきか、
という点については、
現時点で明確なガイドラインは設定されていません。

4種類目の薬の候補としては、
β遮断剤もしくはα遮断剤という、
交感神経の遮断剤と、
スピロノラクトンという、
カリウムを保持するタイプの利尿剤が挙げられています。

レニン・アンジオテンシン系を抑制する薬を、
たとえばARBとACE阻害剤というように、
2剤以上併用することが一時期盛んに行われたのですが、
その組み合わせはカリウムが上昇するなどのリスクが高いため、
現状は推奨をされていません。
スピロノラクトンはカリウム保持性の利尿剤として、
従来の利尿剤の欠点をカバーする側面があり、
レニン・アンジオテンシン系の最後に当たる、
アルドステロンの作用のみを抑えるので、
ARBとACE阻害剤の併用時のような、
大きな弊害は生じにくいと判断されているのです。

それでは、
この3種類の薬剤のうち、
どれを第一選択とするべきでしょうか?

それを検証する目的の臨床試験が、
PATHWAYのナンバー2と題された、
イギリスで行われた臨床試験です。
その結果は2015年のLancet誌に掲載されました。

これは3種類の降圧剤を最大用量使用しても、
非糖尿病で140、糖尿病で135より低下しない、
治療抵抗性の高血圧の患者さんトータル346名を、
くじ引きで4つのグループに分け、
α遮断剤、β遮断剤、スピロノラクトン、偽薬の、
4種類の処方を12週間毎に繰り返し、
どの薬がいつ使われているかは、
患者さんにも治療者にも教えない、
という形式で52週間の経過観察を行なう、
という非常に緻密で手間の掛かる形式のものです。
個々の薬剤の用量は6週間で増量されます。
全ての患者さんが、
結果として全ての処方を経験するのです。

その結果は、
他の2剤と偽薬と比較して、
スピロノラクトンがより血圧を大きく降下させ、
血圧目標を達成した、
というデータになっています。

つまり、治療抵抗性高血圧の上乗せ処方としては、
スピロノラクトンが優れていることを示唆する結果です。

それでは、何故このような結果が得られたのでしょうか?

スピロノラクトンは利尿剤であると共に、
二次性高血圧症の代表の1つである、
原発性アルドステロン症の治療薬でもあります。

この研究では原発性アルドステロン症と診断されている患者さんは、
対象から外されているのですが、
この病気の診断は必ずしも簡単ではないので、
実際にはこの病気である患者さんも、
対象者には含まれている可能性があります。
またこの病気の基準を満たしてはいなくても、
アルドステロンの分泌が通常より亢進していて、
塩分や水分の貯留傾向があり、
それが治療抵抗性高血圧に繋がっているという可能性もあります。

今回のサブ解析では、
全例ではありませんがレニン活性とアルドステロン濃度、
その比率で原発性アルドステロン症のスクリーニングに使用される、
ARRという指標とスピロノラクトン反応性との関連をみたところ、
スピロノラクトンが有効な患者さんでは、
アルドステロンは高く、レニンは低く、
ARRは高いという関連が認められました。

このように、
治療抵抗性高血圧では、
原発性アルドステロン症かその類似の病態で、
アルドステロン分泌が、
過剰であることが多く、
そのためにスピロノラクトンが有用である可能性が示唆されました。

まず高血圧症の患者さんでは、
一度は原発性アルドステロン症のスクリーニングを行うことが重要で、
そこで診断が確定しなくても、
充分量のカルシウム拮抗薬やACE阻害剤、
ARBや利尿剤を組み合わせて使用しても、
血圧が充分にコントロールされない場合には、
もう一度その時点でレニンとアルドステロン分泌を評価し、
薬剤投与中であってもレニンが低値であれば、
アルドステロン拮抗薬を使用するのが、
一番合理的な対処であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

nice!(7)  コメント(0) 
メッセージを送る