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甲状腺ホルモン(T4)製剤の投与タイミングと効果の違いについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
レボフロキサシン.jpg

2010年のArch Intern Med誌に掲載された、
甲状腺ホルモン製剤(T4製剤)の内服するタイミングと、
その効果を比較した論文です。

レボチロキシンは化学合成された甲状腺ホルモン(T4)製剤の代表で、
商品名はチラーヂンSなどです。
飲み薬として使用したレボチロキシンの吸収率は、
70から80%で小腸から吸収されます。

レボチロキシンは、
他の食事や薬と一緒に摂取されると、
その吸収率が低下することがあるため、
欧米では朝食前空腹時の内服がスタンダードとされています。

ただ、日本の添付文書では、
1日1回の内服ということのみが記載されていて、
内服の時間や食事との関係は特に書かれていません。
ただ、元になった臨床試験は朝食前で行われています。
そのため、通常の処方では、
朝食後の内服となっていることが多いと思います。

今回の文献の著者らは、
この文献の以前の時点で、
就寝前にレボチロキシンの内服をスライドしたところ、
明らかにその効果が高まった、
という事例を複数報告しています。

この文献はオランダの単独施設において、
レボチロキシンによる治療を行っている、
105名の原発性甲状腺機能低下症の患者さんを、
本人にも主治医にも分からないようにくじ引きで2群に分け、
一方は朝食前にレボチロキシンを内服し、
もう一方は就寝前に内服して、
3ヶ月の治療を継続し、
それから両群を入れ替えてもう3ヶ月の治療を行います。
朝がホルモン剤であれば、
就寝前には同じに見える偽薬を使用して、
どちらが選ばれたのかが、
患者さんにも分からないように工夫されています。

その結果、
同じ量のレボチロキシンを使用したにも関わらず、
就寝前に使用した方が、
甲状腺刺激ホルモン(TSH)の数値は有意に低下していました。
これは、甲状腺ホルモン剤の効果が、
朝食前より就寝前でより高かったことを示しています。

この現象のメカニズムは明らかではありませんが、
甲状腺ホルモン剤を内服していてその効果が不安定であったり、
数値の変動が大きな場合には、
その飲み方をもう一度検証する必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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腎機能低下時のメトホルミンの安全性について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
メトホルミンと乳酸アシドーシス.jpg
2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
2型糖尿病の世界的な第一選択薬であるメトホルミンの、
腎機能低下時の安全性についての論文です。

メトホルミンはインスリン抵抗性を改善する作用を持つ、
飲み薬の血糖降下剤で、
血糖を低下させると共に、
糖尿病の患者さんの長期予後にも良い影響を与えることが、
精度の高い多くの臨床試験で実証されていることから、
2型糖尿病の基礎薬としての位置が、
世界的に確立されている薬です。

ただ、その副作用である乳酸アシドーシスのリスクが増加する懸念から、
腎機能の低下している患者さんに対しては、
慎重投与という対応が取られています。

腎機能は血液のクレアチニンという数値から推算される、
糸球体濾過量(eGFR)という指標で臨床的には区分けされます。

アメリカのFDAは、
現在ではこの指標が30mL/min/1.73㎡未満は、
メトホルミンの禁忌で、
45未満の時は新規導入は不可としています。

別のガイドラインにおいては、
30から60は慎重投与という扱いであったり、
30から45では低用量で使用する、
というように記載されているものもあります。

ただ、実際にはその根拠は、
それほど科学的なものではありません。
実臨床でのデータは不足しているのです。

そこで今回の研究では、
アメリカの有名な医学研究施設である、
ゲイシンガー・ヘルスシステムの医療データを活用して、
推算糸球体濾過量とメトホルミンの使用の安全性との関連を検証しています。

67578名の新規メトホルミン使用者と、
14439名のSU剤という経口糖尿病薬の使用者などを比較して、
乳酸アシドーシスの発症リスクを検証したところ、
推算糸球体濾過量が30以上の場合には、
他の治療と比較して有意な乳酸アシドーシスの増加は認められませんでしたが、
30未満では2.07倍(95%CI: 1.33から3.22)と、
有意な副作用の増加が認められました。

今回の実臨床のデータによる検証では、
メトホルミンの乳酸アシドーシスのリスクは、
推算の糸球体濾過量が、
30mL/min/1.73㎡で増加し、
それ以上では明確な増加はないことが確認されました。

この知見も踏まえて考えると、
現状のFDAの見解は、
まずは妥当なものとそう考えて良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「ファントム・スレッド」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ファントム・スレッド.jpg
名優ダニエル・デイ=ルイスの引退作で、
1950年代のロンドンを舞台として、
アメリカ製作ですがイギリス映画的な作品です。

ルイスはカリスマ的なオートクチュールのデザイナーで、
マザコンで死んだ母親と洋服のみを偏愛する変態ですが、
モデルとして見初めた、
ピッキー・クリープス演じるアルマという女給と付き合ったことから、
彼女に翻弄されて自滅への道を辿ります。

典型的な堅物男が若い女性に翻弄される話のようで、
お互いにかなりの変態なので、
決してそうも展開はしない、
という辺りが面白く、
特に女性が男性に毒を盛るというやり取りが、
生々しくて凄みがあります。
この辺り今世間をにぎわしている事件と、
良く似ている感じがするのが、
偶然とは言えちょっと不気味な感じがします。

映像は格調高くて美しく、
ルイスの芝居は確かに見応えがあります。

ただ、対するアルマ役の女優さんが、
どうも魅力に乏しいのでかなりゲンナリします。
後半は特にただのストーカーのようにしか思えず、
あまり入り込むことが出来ませんでした。
ラストはある意味常道から外れているのですが、
中途半端に終わっている感じもあります。
個人的にはもっと徹底して主人公が追い込まれで破滅し、
女優さんに十全な魅力がある方が好みでした。

そんな訳で芸術的かつ変態的な、
面白い映画ではあるのですが、
かなり好みは別れるように思います。
個人的には、ちょっと駄目でしたね。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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唐十郎「吸血姫」(唐組・第61回公演) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも、
石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
吸血姫.jpg
唐組の30周年記念公演として、
状況劇場で1971年に初演され、
唐先生の全ての劇作の中でも、
代表作と言って過言でない作品の1つ、
「吸血姫」が唐組では初めて再演されました。

僕にとってこの作品は、
唐先生の作品の中でも最も愛着のある1本です。

勿論初演は観ていませんが、
最初に観たのは1982年頃にシェイクスピアシアターで上演されたもので、
その後大学時代に僕自身が演出をして
(許可は得ていません。すいません)、
大学劇団の本公演として上演しました。
その後新宿梁山泊が初演のキャストの大久保鷹さんを迎えて、
地下の劇団アトリエと花園神社のテントで上演した舞台を観ています。
唐ゼミでも上演されましたが、
これはさすがにもういいかな、
と思って行きませんでした。

今回の上演は期待もしましたが、
今の唐組の役者さんで、
果たしてあの芝居を上演出来るのだろうか、
唐先生の花形を久保井研さんがやるとして、
悪役の両輪である麿赤児さんの袋小路と、
大久保鷹さんの川島浪速を、
誰が出来るのだろうかと思っていたのですが、
実際に幕が開いてみると、
袋小路浩三を大鶴佐助さん、
ヒロインの海之ほおずきを大鶴美仁音さん、
川島浪速を久保井さんという座組になっていて、
なるほど唐先生の血脈を、
堂々と押し出す作戦かと、
言われてみればこれしかないなと、
納得の行くものがあったのです。

これで舞台が詰まらなければ話にならないのですが、
上演された舞台はキャストも演出も、
僕がこれまで経験した「吸血姫」の上演の中では、
間違いなくベストの出来映えで、
アングラ演劇というものの1つの典型であり、
今なお最高到達点でもある、
2幕の後半と3幕の怒濤のラストが、
今の観客にその真価が伝わるように、
ある意味初演以降で初めて再現されたことは、
ちょっと感涙さえ覚えたのです。

この作品は勿論、
1971年という時代性と切り離しては、
その面白さが伝わらない部分があり、
初演のキャストでなければ伝わらない部分もあるので、
その限界は当然あるのですが、
そうした点を考えると、
今回の上演は今望みうる最高のものと言って、
間違いはないように思います。

この作品は僕も演出までしているので熟知しているのですが、
通常の上演で頭を悩ますような勘所が幾つかあるのです。
その第一は2幕の風呂屋の上げ板の処理で、
これがどういう位置関係で出て来るのか、
どうやって引っ込むのか、
その点が何度戯曲を読んでもよく分かりません。
それから、3幕でさと子の人形と本人が、
鏡が回転すると交互に客席に向かう、
という部分があるのですが、
一体どういう位置関係と動きになっているのか、
これも良く分からないのです。

この2つの点に、
今回の上演では鮮やかな正解を提示していて、
なるほどそうかと、
特に回転する鏡については、
その場で拍手をしたい思いに囚われました。

今回の舞台の成功の一番は、
ヒロインを鮮やかに演じた美仁音さんと、
袋小路という元々麿赤児さんへの当て役で難役を、
格闘するように演じた佐助さんの熱演にあって、
唐先生の血脈が、
このようにして今回大輪の花を咲かせたということが、
昔からのファンにとっては、
とても嬉しく感動的なことだったのです。

上演時間は2時間半で、
3幕劇の2幕と3幕をそのまま繋げて、
1回の幕間で上演しています。
ノーカットでありながらこの尺に納めているのは、
人力車の登場など、
要所を鮮やかなカッティングで、
緩みなく展開させているからで、
今回の久保井さんの演出は、
いつも以上に冴え渡っていたと思います。
唯一の不満はいつの上演においても、
原作に書かれている「幌付きトラック」が登場しないことで、
これは一時期状況劇場のどさ回りに使用していたものだと思われますが、
一度くらいは本物のトラックが舞台にあり、
それが原作のト書き通りに、
テントの外へと出て行くというラストを、
観てみたいという思いはいつもあるのです。

そんな訳で終わるのが勿体ないくらいの上演で、
アングラ演劇の真価を、
感じることも出来る極めつけの舞台でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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超高齢者の血圧と生命予後(2018年中国の疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
超高齢者の血圧.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
80歳以上の高齢者の血圧と生命予後との関連を検証した、
中国の疫学データについての論文です。

高血圧は心血管疾患のリスクになり、
生命予後にも大きな影響を与えることは、
多くの研究により実証された事実ですが、
80歳以上の高齢者において、
適切な血圧がどのくらいであるか、
というような点についてはまだ結論は出ていません。

多くの臨床試験においては、
75歳以上の高齢者はその対象となっていないからです。

今回の研究は中国において、
80歳以上の一般住民(年齢の中央値が92.1歳)という超高齢者において、
その血圧値と3年間の生命予後との関連を検証しています。

対象者は4658名で、
半数程度の方は降圧剤による治療を受けています。

その結果、
最も3年間の死亡リスクが低かったのは、
収縮期血圧が129mmHgの時で、
それが107未満でも154を超えていても、
いずれも死亡リスクは増加していました。
そのリスクの増加は主に心血管疾患による死亡によるものでした。
脈圧や拡張期血圧では、
同様の傾向は有意には確認されませんでした。

このように超高齢者においても、
高血圧は一定のリスクになることは間違いがありませんが、
降圧剤による治療の有無に関わらず、
収縮期血圧が107を下回るようになると、
むしろそのリスクは増加に転じてしまうようです。

これは治療による介入試験のようなものではなく、
治療の有無の影響などの検証も充分ではないので、
データの精度はそれほど高いものではありませんが、
これだけの超高齢者のまとまったデータは、
これまでにはあまり例がなく、
その意味で意義のあるものだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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カルシウムチャネルとインフルエンザ感染 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
カルシウム拮抗薬とインフルエンザ感染.png
2018年のCell Host & Microbe誌に掲載された、
A型インフルエンザウイルスの感染に、
カルシウム拮抗薬という降圧剤のターゲットである、
細胞膜の電位依存性カルシウムチャネルが、
強く関係しているという、
興味深い知見を実証した論文です。

北海道大学の藤岡容一朗先生らの研究です。

A型インフルエンザウイルスの感染の最初のステップは、
その表面にあるHA抗原という部分が、
細胞の表面にあるシアル酸という構造に、
結合することによって起こります。

ただ、人間の細胞表面には、
多くの種類のシアル酸があり、
どのような性質のシアル酸が、
インフルエンザウイルスのターゲットとして利用されるのかは、
これまであまり明確に分かっていませんでした。

上記論文の著者らの研究グループは、これまでに、
インフルエンザウイルスの感染に、
細胞内のカルシウム濃度の上昇が必要である、
という知見を報告しています。

通常細胞内のカルシウム濃度の上昇は、
細胞膜にある電位依存性カルシウムチャネルを介して起こります。

そこで今回の研究では、
ウイルスの感染モデルとして使用される培養細胞において、
カルシウムチャネルの働きをブロックする作用のある、
カルシウム拮抗薬のジルチアゼムを使用したところ、
充分量のジルチアゼムにより、
A型インフルエンザウイルスの感染は阻害されました。

そして、この電位依存性カルシウムチャネルに結合しているシアル酸に、
A型インフルエンザウイルスは結合して、
そこからカルシウムイオンが細胞内に流入することが確認されたのです。

このインフルエンザ感染における、
カルシウムチャネルの役割は、
培養細胞のみならず、
ネズミの実験でも確認されました。

このように、まだ動物実験レベルの知見ですが、
A型インフルエンザウイルスの感染においては、
電位依存性カルシウムチャネルと結合しているシアル酸に、
まずウイルスが結合することにより、
細胞内にカルシウムが流入し、
それがウイルスの感染に必須であることが今回確認されたのです。

単純にカルシウム拮抗薬を使用していると、
インフルエンザに感染しにくいとは言えませんが、
カルシウムチャネルの開放がインフルエンザ感染に必要だ、
という知見は大変興味深く、
これが感染の最初のステップであると考えると、
それを阻害するようなメカニズムの薬剤が、
今後開発される可能性が示された、
というようには言っても良いように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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第32回健康教室のお知らせ [告知]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はいつもの告知です。

こちらをご覧下さい。
コーヒー.jpg
次回の健康教室は、
6月16日(土)の午前10時から11時まで(時間は目安)、
いつも通りにクリニック2階の健康スクエアにて開催します。
先月は開催出来ずに申し訳ありませんでした。

今回のテーマは「最新版コーヒーの健康知識」です。

コーヒーには100種類以上の生理活性物質が含まれていて、
嗜好品としての性質から、
以前はカフェイン含有飲料として、
健康に良いという認識はなかったのですが、
近年の複数の大規模な疫学データにおいて、
ほぼ一致して心血管疾患や一部の癌などの予防効果と、
生命予後への肯定的な効果が相次いで報告され、
適度なコーヒー飲用の習慣が、
健康に良い可能性が高い、
という見解はほぼ実証されたと言って良いと思います。

ただ、その一方で多量のカフェインには有害な作用があり、
また複数の発癌物質が含まれていることを、
重要視するような見解も残っています。

カフェインとその代謝物、クロロゲン酸、ニコチン酸、
油の成分のジテルペンなど、
コーヒーには多くの成分があり、
その作用は単独の成分の良しあしでは、
必ずしもクリアにはならない部分も多くあります。

以前からコーヒー関連の論文には比較的目を通していたのですが、
先日テレビでコーヒーをテーマに番組に関わる機会があり、
その時に幅広く情報収集をすることになりました。
そこからこぼれた部分などもお話出来ればと思います。

今回もいつものように、
分かっていることと分かっていないこととを、
なるべく最新の知見を元に、
整理してお話したいと思っています。

ご参加は無料です。

参加希望の方は、
6月14日(木)18時までに、
メールか電話でお申し込み下さい。
ただ、電話は通常の診療時間のみの対応とさせて頂きます。

皆さんのご参加をお待ちしています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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胃痛(ディスペプシア)の診療ガイドライン(2018年アメリカ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ディスペプシアの治療.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
アメリカの胃痛についての診療ガイドラインの解説記事です。

ディスペプシア(Dyspepsia)は、
消化不良や胃もたれなどと訳されることがあり、
そうしたお腹の不快感を総称する言葉として、
一般的には使用をされていますが、
ここで医学用語として使用されているディスペプシアは、
1か月以上続く胃痛(心窩部痛)のことで、
それは胸やけや膨満感、吐き気などを伴っても良いのですが、
症状の中で最もつらいのが痛みである時に、
この用語を用いると、
アメリカとカナダの合同の消化器学会の、
ガイドラインでは記載をされています。
http://gi.org/wp-content/uploads/2017/06/ajg2017154a.pdf

胃痛というのは極めて一般的な症状で、
日本においては年齢には関わらず、
症状が持続するようなら胃カメラ検査が、
検討されることが多いと思います。

ただ、欧米では少し考え方は異なっています。

上記の解説記事の記載によれば、
年齢が60歳以上であれば、
一か月以上持続する胃痛は胃癌などを否定するために、
胃カメラ検査の適応になると、
弱い推奨として提言されていますが、
年齢が60歳未満である場合には、
たとえ体重減少や貧血などを合併していても、
すぐに胃カメラ検査をすることは推奨されていません。

これは18から70歳の年齢で、
胃痛の症状に対して胃カメラ検査を適応しても、
悪性腫瘍の発見率は0.22%と低く、
また悪性を疑う所見とされる貧血や体重減少の信頼性も、
高いものではないことが報告されているためです。

ただし、これは欧米に限った話で、
日本を含むアジアでは、
胃癌の有病率はより高いと指摘されているので、
日本において同様の基準を当て嵌めることは、
適切ではない可能性があります。

一方で60歳より若い年齢で胃痛が持続する時に、
必ずするべき検査として推奨されているのは、
ピロリ菌の感染診断のための検査です。
ピロリ菌が陽性であれば除菌をすることにより、
胃痛は改善する可能性があり、
この治療はそのコストに見合ったものとして評価されています。

裏打ちとなるデータとしては、
機能性ディスペプシアのメタ解析において、
ピロリ菌陽性で除菌を行なわない場合、
胃痛症状は76.4%で持続したのに対して、
除菌治療を行なうと67.9%に低下した、
というものがあります。
この症状に対する治療効果は、
胃酸の分泌を抑制するプロトンポンプ阻害剤の効果と、
ほぼ同等と報告されています。

ピロリ菌が陰性の胃痛と、
ピロリ菌が陽性で除菌後も持続する胃痛に対しては、
年齢が60歳未満であればプロトンポンプ阻害剤の使用が推奨されています。
この裏打ちとなる臨床データとしては、
プロトンポンプ阻害剤の4週間の治療は、
偽薬と比較して27.8%、H2ブロッカーと比較して15.5%、
有意に胃痛症状を改善していた、
というものがあります。

ただ、プロトンポンプ阻害剤は、
長期の使用において感染症リスクの増加や、
急性の腎障害の増加など、
多くの副作用や有害事象のある薬でもあり、
その長期使用の安全性や高齢者への使用については、
今後より検証される必要があると思います。

日本においては前述のように、
欧米より胃癌の有病率は高いので、
胃カメラ検査の適応については、
上記のガイドライン通りでは良くないと考えますが、
かと言って今のように、
すぐに胃カメラ、というのもあまり合理的とは言えず、
今後日本においても、
より地域性に合った、
合理的で有効性の確認された基準が必要ではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ビリルビン濃度と肺機能との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ビリルビン濃度と肺機能.jpg
2018年のBMC誌に掲載された、
血液のビリルビン濃度と肺機能の低下が関連するという、
韓国の疫学データを解析した論文です。

それほど画期的な研究というようなものではないのですが、
健診などでも簡単に測定されている数値が、
意外に大きな意味を持っているかも知れない、
と言う点が興味深く、
上記論文以外の知見も含めて、
今日はご紹介したいと思います。

ビリルビンというのは、
血液で酸素を運んでいるヘモグロビンの一部が、
分解されて生じる黄色の色素で、
肝臓に運ばれると胆汁として分泌され腸に流れます。
便が茶色いのは、
このビリルビンが更に代謝されて排泄されるためです。

血液のビリルビン濃度は、
0.3から1.2mg/dLくらいに保たれていますが、
肝臓や胆道の異常などでスムースに排泄されないと、
血液中に溜まって、
そのために皮膚が黄色くなります。
これが「黄疸」です。
この黄疸は、溶血と言って血液自体が壊れて、
血液中のビリルビンが増加した時にも起こります。

従って、
通常血液のビリルビンを測定する目的は、
肝臓や血液の病気を診断するためです。

ただ、このように病的ではないレベルのビリルビンは、
抗酸化作用や抗炎症作用を持ち、
血液中で身体を病気から守るような働きを、
持っている可能性が示唆されています。

これまでの臨床研究のデータでは、
正常範囲でビリルビンが高めであると、
心筋梗塞や虚血性心疾患、脳卒中、
肺癌、慢性閉塞性肺疾患のリスクの低下が報告されていて、
肺癌の死亡リスクの低下も報告されています。
おそらく外的な細胞障害から、
ビリルビンが身体を守るような働きを持っているのでは、
と推測されています。

今回の韓国の研究では、
40から69歳の韓国住民7986名の疫学データを活用して、
肺疾患のない対象者において、
血液のビリルビン濃度と呼吸機能との関連を検証しています。

血液のビリルビン濃度は、
男性で2.34mg/dLを超える場合と、
女性で1.75mg/dLを超える場合は、
明らかな異常値として除外されています。

その結果、
基準値の範囲でビリルビン濃度が高いほど、
1秒量や肺活量などの呼吸機能の数値は有意に高く、
経過観察におけるその低下率も、
ビリルビン濃度が高いほど抑制されていました。

このように、
ビリルビンが高値であることは、
肺機能の維持にも重要であることが示唆されたのです。

具体的には血液のビリルビン値は1.0mg/dL近傍か、
正常範囲であればそれより高値の方が、
肺機能低下のリスクは低くなっているようです。
(論文のビリルビン濃度の単位は表のみμmol/Lとなっていますが、
単位の誤りであるようです。ややずさんな感じです)

今回のデータはまだ参考程度のものですが、
血液のビリルビン数値が身体の多くの機能の維持に、
関わっているという指摘は興味深く、
今後の知見の集積に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「虎狼の血」(2018年映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
虎狼の血.jpg
柚月裕子さんの同題の警察小説を、
白石和彌監督が外連味たっぷりに映画化した、
正調の東映ヤクザ映画を観て来ました。

これは原作を先に読みました。
詰まらなくはなかったのですが、
善悪があまりにはっきりしていて、
良いヤクザと悪いヤクザというような構図が、
最初から最後まで変化しないので、
個人的にはあまり面白いとは思えませんでした。
最後の展開のみちょっと面白いのですが、
後は意外に地味な話ですよね。

映画版はどう料理するのだろうと思っていると、
ほぼほぼ原作通りのストーリー展開で、
ラストはさすがに原作の通りだと、
映像的には尻すぼみになってしまうので、
派手な抗争場面をクライマックスとして付け加えていました。
ただ、それでも物語的には弱いなあ、
という感じが抜けきれませんでした。

最初から最後まで悪いヤクザと良いヤクザという構図が、
一切変わることがありません。
裏切りとか寝がえりとか意外な展開とか、
そうしたものが何もないのは詰まらないですよね。
原作はもう少し良いヤクザの人間模様などが描かれているので、
もう少し理解はしやすいのですが、
映画はそうしたことはないので、
江口洋介がどうして良いヤクザなのかなど、
さっぱり分からない感じになっています。

これは原作がそうなので仕方がないのですが、
主人公の役所広司さん演じる大上が、
クライマックスの前に姿を消してしまうのは、
矢張り詰まらないですよね。
姿を消すにしても、
その前にもっと派手なドンパチが欲しいと思います。

演出は最初など「仁義なき戦い」そのままにしたりして、
引用上等の外連味たっぷりなのは良いと思います。
映画オリジナルの松坂桃李さんと阿部純子さんの、
昭和の匂いたっぷりのラブロマンスも、
昔の東映映画のテイストで良いですよね。
真木よう子さんが過去を語る時の、
祭りの移動撮影も良い感じです。
ただ、「アウトレイジ」と比べると、
キャラは弱いですよね。
江口洋介さんも竹野内豊さんも、
もっと個性的で唯一無二の感じが欲しかったと思います。

総じて意欲作ではありましたが、
原作のストーリー的な弱さもあって、
突き抜けた魅力を持つまでには至らなかったのは、
やや残念に感じました。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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