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甲状腺微小乳頭癌のアクティブ・サーベイランス(2018年隈病院) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
アクティブサーベイランスの歴史隈病院.jpg
2018年のThyroid誌に掲載された、
神戸の甲状腺専門病院である隈病院で、
1993年以降継続されている、
微小甲状腺乳頭癌に対するアクティブ・サーベイランスの歴史を、
まとめた論文です。

ここで対象となっている甲状腺微小乳頭癌(Papillary thyroid microcarcinoma)
というのは、甲状腺乳頭癌のうち、
診断された時点での大きさが、
最大径で1センチ以下の腫瘍のことです。

1センチ以下の甲状腺のしこりは、
通常触診では感知することは困難で、
別個の検査をした時に、
たまたま見つかるというのが通常でした。

それが超音波検査の進歩により、
診断される頻度が最近増加したのです。

これまでの別個の病気などで亡くなった方を解剖した結果では、
その5から36%に甲状腺微小乳頭癌が見つかっています。
15の研究データをまとめて解析した論文では、
併せて989体の解剖所見として、
その11.5%で甲状腺微小乳頭癌が発見されています。
こうした潜在癌の多くは非常に小さなもので、
報告によれば33から79%は1ミリ未満の大きさです。
その27から50%は多発性です。

大雑把に言って、
臨床的に診断される甲状腺乳頭癌の、
100から1000倍は多くの潜在癌が、
実際には存在していることになります。

癌の発見が増えるのは、
主に無症状の人に対して、
首の超音波検査やCT検査が行われることによります。
韓国では一時期甲状腺の超音波検査が、
公費による癌検診の安価なオプションとして、
一般住民に対して施行されたので、
甲状腺癌の診断数はそれ以前の15倍にまで増加しました。
その多くは微小癌の範疇に属するものです。

甲状腺微小乳頭癌の生命予後は非常に良好で、
リンパ節転移や遠隔転移を伴う事例を含めて解析しても、
死亡率は0.3%に満たないというレベルです。

微小癌であっても、
これまでの治療方針は原則は手術による切除でした。
しかし、甲状腺外に進展したり遠隔転移を起こすようなリスクの低い癌では、
手術をしないで慎重な経過観察のみを行うという方針も、
1つの選択肢として存在しても良い筈です。

同じく生命予後がトータルには非常に良い癌で、
検診による発見率の増加が問題となっていた前立腺癌においては、
進行のリスクが低いと判断される時に限って、
アクティブ・サーベイランスと言って、
定期的な経過観察を行いつつ、
進行の兆候がなければ治療はせずに様子をみる、
という方針が推奨されるようになってきています。

それでは、甲状腺微小乳頭癌においても、
アクティブ・サーベイランスが試みられても良いのではないでしょうか?

実はこれまでに行われた、
甲状腺癌についてのアクティブ・サーベイランスの研究は、
ほぼすべてが日本で行われたものです。

中でもその先陣を切ってこの試みを行なっているのが、
神戸にある甲状腺専門病院の隈病院です。

隈病院は小さなしこりであっても、
細胞診で癌と診断されれば、
切除することが当たり前であった1993年に、
既にアクティブ・サーベイランスの試みを開始しています。

上記文献によれば、
1993年から2016年の24年間に、
4023名の低リスク甲状腺微小乳頭癌の患者さんが、
アクティブ・サーベイランスの対象候補となっています。

ただ、実際には1993年の時点では、
隈病院に勤務する外科医の中でも、
その是非についての見解は割れていたようです。

こちらをご覧下さい。
アクティブサーベイランスの効果隈病院.png
上記文献の中にあるグラフで、
各年ごとに診断された低リスク微小甲状腺乳頭癌の患者さんのうち、
どのくらいの比率でアクティブ・サーベイランスと手術が選択されたのかを、
示したものです。
黒い部分がアクティブ・サーベイランスで、
グレイの部分が手術です。

1993年の時点では、
実際にアクティブ・サーベイランスが選択されたのは、
患者さんの1割に満たなかったのですが、
その後急増して2014年以降は8割を超えています。

最近では2011年のみサーベイランスが選択される比率が低くなっていますが、
これは震災の年であることが影響をしていると思います。

当初は外科医が手術かサーベイランスかの決定をしていることが、
殆どであったのですが、
サーベイランスが選択されることが多くなって来ると、
内分泌内科医がその決定に当たるケースが、
最近では多くなっているようです。

アクティブ・サーベイランスの有効性と安全性については、
上記文献には詳しい記載がありません。

現状最もまとまっているのが、
以前にもご紹介したことのあるこちらの文献です。
隈病院の.jpg
2010年のWorld Journal of Surgery誌に掲載されたものですが、
1センチ以下の甲状腺乳頭癌が診断され、
細胞診での悪性度が低く、
臨床的に検出可能なリンパ節転移や、
周辺への浸潤が疑われる所見のないケースに限って、
患者さんの希望ですぐに手術と経過観察の2つの方針に振り分け、
平均で74か月の経過の比較を行った報告です。

アクティブ・サーベイランスを選択した患者さんは340例で、
腫瘍径が3ミリ以上拡大した事例は10年間で15.9%、
リンパ節転移が新たにみつかった事例は10年間で3.4%でした。
そして、腫瘍が増大したりリンパ節転移が見つかった時点で、
待機的な手術を行っても、
最初から手術を行った場合と比較して、
明確な予後の差は認められませんでした。

その後2015年にはすぐに手術をした場合と、
アクティブ・サーベイランスとの比較において、
手術の方が患者さんにとっての有害事象が多かった、
という結果が論文化されています。

ただ、このデータは単独施設のものである上に、
手術かアクティブ・サーベイランスかの振り分けを、
クジ引きではなく患者さんの希望になどにより、
主治医が決定するというプロセスを取っていて、
そこには当然かなりのバイアスが想定されます。
前立腺癌においての同様のデータは、
厳密にランダムな方法で施行されていますから、
比較するとかなり見劣りのする研究方法です。

ただ、現状はこれを超えるような研究は、
国内外を問わず存在していないのです。

低リスクの微小甲状腺乳頭癌の診断後の対応として、
積極的な治療以外にアクティブ・サーベイランスという選択肢を設けることは、
国内外のガイドラインにおいても、認められている事項ですが、
その有効性と安全性については、
より精度の高い多施設の臨床試験において、
確認をされる必要があるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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水分を多く摂ると腎機能は低下しにくいのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
水分摂取と腎機能.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
水分摂取を増やすことが、
慢性腎臓病の患者さんの予後改善に結び付くかどうかを、
検証した論文です。

水を沢山飲むと健康に良い、
というのは意外に良く耳にする健康情報ですが、
その根拠が明確にされることはあまりなく、
具体的な水分の摂取量についても、
曖昧であることが殆どです。

アメリカでは1日にグラス8杯の水を飲むと良い、
というように言われることが多く、
これは1945年に専門機関が、
1日の水分量は2.5リットルを推奨したことから来ています。
ただ、この推奨は水分量全体でということで、
その大部分は食事から摂取していることが前提となっています。
つまり、食事以外に2.5リットルを追加で飲め、
という意味ではありません。

こうした水分摂取の推奨の殆どは、
根拠となる臨床データなどはないものですが、
唯一腎機能の低下予防という観点では、
一定の根拠が存在しています。

腎不全のモデル動物においては、
より多くの水分を摂取することが、
腎機能低下の要因となる、
AVP(抗利尿ホルモン)を抑制し、
腎機能の低下を予防することが報告されています。
人間においても水分摂取量が多いほど、
腎機能が保たれ、尿路結石のリスクが減少することが、
報告されています。

ただ、実際に腎機能が低下した慢性腎臓病の患者さんで、
より水分を多く摂ることが予後の改善に繋がるかどうかは、
これまでに明確な結論が出ていませんでした。

そこで今回の研究ではカナダの複数の腎臓病クリニックにおいて、
ステージ3の慢性腎臓病の患者
(推算糸球体濾過量が30から60mL/min/1.73㎡)
で1日の尿量が3リットル未満の631名をくじ引きで2つの群に分け、
一方は通常の飲水量を維持し、
もう一方はより多くの水分摂取を促して、
1年間の経過観察を行っています。

水分の具体的な摂取量はこちらをご覧下さい。
水分摂取量.jpg
これはこの量の水分を、
食事以外に摂るという意味ですが、
たとえば体重が70キロ以上の男性では、
1日に1.5リットルの負荷を目指し、
3回の食事で500ミリリットルずつ水を飲む、
ということになります。

これは1つの目安ですので変動はあるのですが、
実際には平均で登録時には各群とも、
1日尿量は1.9リットル程度で変わらないのですが、
それが水分摂取群では、
1年後には平均で0.6リットル増加しています。

この水分負荷を行なうことにより、
AVP(抗利尿ホルモン)の状態を反映するコペプチン濃度は、
未施行と比較して有意に低下し、
腎機能の指標の1つであるクレアチニンクリアランスにも、
有意な低下の抑制が認められました。
ただ、今回主な判定目標とした糸球体濾過量については、
両群で有意な差はありませんでした。

今回の結果はそういう訳で、
水分負荷を行なっても腎機能の低下には有意な差はなかった、
ということになるのですが、
数値によっては一定の差は認められ、
どうやら、そう悪くはない、
ということは言えそうです。
今後より試験のデザインを工夫して、
症例数も増やして観察期間も長く取った、
より精度の高い検証が行われる必要があると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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高齢者低血糖時グルカゴン反応に対するDPP4阻害剤の影響について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
DPP4阻害剤と低血糖高齢者.jpg
2018年のDiabetes Obes Metab誌に掲載された、
65歳以上の高齢者糖尿病における、
低血糖時のホルモンの反応が、
糖尿病の薬によりどのように影響されるのかを検証した論文です。

これは今少しトピックとなっているテーマの1つです。

今糖尿病の治療薬として、
大きな柱となっているのがインクレチン関連薬です。

「インクレチン」とは一体何でしょうか?

インクレチンとは、
小腸から分泌される一種の消化管ホルモンで、
主に膵臓の細胞を刺激して、
インスリンを出させる作用を持っています。

インスリンを出させる、
最も強い刺激は、
勿論ブドウ糖です。

食事を取ると、その中の糖分が、
吸収されて血液に入り、
膵臓の細胞の中に入ると、その刺激が、
膵臓の細胞からインスリンというホルモンを出させるのです。
このインスリンが筋肉の細胞などに、
ブドウ糖を使わせる作用があるので、
ブドウ糖は速やかに細胞の中に入って利用され、
上がった血糖は正常に戻るのです。
このインスリンが足りなくなったり、
その効きが悪くなって、
余分な糖分が血液に増える病気が、
皆さんお馴染みの糖尿病です。

さて、ブドウ糖がインスリンを刺激するのは当然ですが、
食事をすると同時に小腸からは、
インクレチンという物質が分泌され、
それが膵臓の細胞にくっつくと、
その刺激も矢張り、インスリンを出させる作用があるのです。

つまり、インクレチンとは、ブドウ糖以外に、
食事に伴って分泌され、
膵臓のインスリンを出させる物質のことです。

インクレチンにはGIP(glucose-dependant insulinotropic polypeptide )と、
GLP-1(glucagon-like peptide-1 )の2種類があります。

このうちGLP-1 は、
小腸の下の方や大腸の一部から分泌され、
GIP は十二指腸から分泌されます。

どちらのホルモンも、食事の刺激があると、
分泌されて膵臓を刺激し、
インスリンを出させる作用は同じです。
また、膵臓の細胞を増加させる作用も、
共に持っていると言われています。
インクレチンは、膵臓の、一種の再生因子なのです。

ただ、GLP1が血糖値の高い時に、
膵臓α細胞からのグルカゴンの分泌を抑制する作用がある一方で、
GIPは低血糖時のグルカゴン分泌を促進すると報告されています。

GIPのこの作用は、
血糖の上昇に結び付く可能性がある一方で、
糖尿病薬に付きものの副作用である、
低血糖を予防するような効果があるとも思われます。

インクレチン関連薬にはDPP4阻害剤とGLP-1アナログの2種類があります。

DPP4阻害剤は飲み薬で、
DPP4というインクレチンなどを代謝する酵素を阻害して、
結果としてインクレチンの作用を増強する、
というタイプの薬です。
一方でGLP-1アナログは注射薬で、
インスリンのようにGLP-1そのものを注射します。

ここでお分かりのように、
同じインクレチン関連薬でも、
DPP4阻害剤はGIPとGLP-1を共に増加させ、
GLP-1アナログはGLP-1のみを増加させる、
という違いがあります。

この違いや薬の効果や安全性に、
何か影響を与えるものなのでしょうか?

糖尿病の患者さんの長期予後を改善する上で、
食後のグルカゴンの上昇を極力抑えることと、
医原性の低血糖を起こさないことが、
2型糖尿病の患者さんの管理においては重要なことです。

ここでインクレチン関連薬は、
高血糖時にのみインスリン分泌を促進する性質があるため、
低血糖を起こしにくいことが期待されています。
特にDPP4阻害剤はGLP-1だけではなくGIPも増加させるため、
低血糖時にグルカゴンの上昇反応を、
刺激するという可能性も想定されます。

グルカゴンはインスリンに拮抗するホルモンで、
その上昇は糖尿病の合併症などの進行に、
大きな影響を与えると考えられ、
最近ではインスリンより糖尿病の病態に本質的な役割を持っている、
というような意見もあります。
その一方で低血糖時に速やかにグルカゴンが上昇することが、
重症な低血糖の予防に、
これも非常に重要な役割を果たしています。

ただ、これまでの研究においては、
低血糖時のグルカゴン上昇の反応に、
DPP4阻害剤とGLP-1アナログで特に差はない、
という結果が多いのです。

今回の研究はスウェーデンにおいて、
血糖降下剤の副作用の低血糖のリスクが高い、
65歳以上の高齢の2型糖尿病患者で、
メトホルミンによる治療を行って、
コントロールの指標であるHbA1cが6.0から8.3%の28名を対象として、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はDPP4阻害剤のシタグリプチン(商品名ジャヌビア、グラクティブなど)
を1日100ミリグラムで1回で上乗せ使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
4週間の治療を行い、治療終了後に、
朝食負荷によるインスリンやグルカゴンの反応と、
人工膵臓を活用して人工的に低血糖を誘導し、
低血糖時のグルカゴンの反応を比較検証しています。
更に4週間の未使用期間をおいて、
両群を入れ替えて同じ検証を再度施行しています。

その結果、
食後のグルカゴン濃度の上昇と、
血糖値が3.5mmol/L(63mg/dL)の時点でのグルカゴン濃度は、
偽薬と比較してDPP4阻害剤使用時には抑制されていましたが、
血糖値が3.1mmol/L(56 mg/dL)の低血糖の時点では、
グルカゴン濃度には両群で差はありませんでした。

今回の検証ではDPP4阻害剤を上乗せした方が、
低血糖時のグルカゴン上昇が促進される、
という結果は得られませんでしたが、
高血糖時のグルカゴン分泌を抑制して、
患者さんの長期予後の改善に結び付く可能性があり、
低血糖時のセイフティガードとしてのグルカゴンの上昇にも、
悪影響を及ぼしていないという点から考えて、
高齢者に適した糖尿病治療薬であるというこれまでの見解を、
サポートする知見であると言えそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「君の名前で僕を呼んで」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
君の名前で僕を呼んで.jpg
「モーリス」のジェームズ・アイボリーが脚本を書き、
新進気鋭のスタッフとキャストが顔を揃えた、
原作は異なりますが、
「モーリス」のリメイクといった狙いの映画です。

北イタリアの優雅な別荘で、
17歳の高校生の大学教授の息子と、
24歳の大学院生の青年が一夏の恋に落ちます。
今ならすぐに同棲、結婚の流れにもなるのですが、
時代は1983年に設定されていて、
その恋は秘めたるもののまま終わります。

物語は繊細かつ濃厚に、
その一夏の美形の男性同士の恋愛を、
ひたすらに綴って終わります。
それ以外の要素、社会性とか貧富の差とか、
性感染症とか上流社会の嫌らしさとか、
そうした余計なものは何もありません。
エリートの美少年が美しくホモセクシュアルな初恋をして、
切なくなってお終いです。
その意味でとても純粋な映画です。
ただ、イージーリスニング風のバロックに、
ポップス調の主題歌がポイントで被ったり、
電車の別れなどの如何にもの構図や、
水や果実などを使った露骨な性愛の象徴的表現など、
ちょっと昔の文芸映画のようでいて、
そのまがい物のような胡散臭さもなくはありません。

それでも、かつての同性愛の文芸映画の系譜を、
ここまで忠実に再現した辺りは、
演出にもなかなかの技量が伴っているとは言って良いと思います。

主役を演じているのは、
もう人気者のセレブ俳優アーミー・ハマーと、
新鋭でこれ以上はない美少年のティモシー・シャラメで、
ハマーはやや風格があり過ぎて、
大学院生というより助教クラスに見えますが、
いずれ劣らぬ美しさであることは確かで、
その2人が北イタリアの抜けるような青空の下、
ほぼ全編半裸での営みを繰り返すのですから、
個人的にはあまりそうした興味はないので、
それほどのめり込む感じにはなりませんが、
好きな方にはたまらないのではないかと思います。

映像は陰の部分の表現が素晴らしく、
夜の木陰の青さの複雑な階層であるとか、
昼間の家の中の日差しの当たらない部分の色合いなどが抜群で、
これは是非映画館で観て頂きたいと思います。

客席は女性中心で結構大入りになっていて、
その一方で男性客は、
「ああ、よく寝た」というような感想を漏らしている方が多い、
という印象でした。

そうした訳でかなり好みが分かれる映画ですが、
映像のクオリティは非常に高く、
こうしたものだと割り切って、その世界に浸り込めれば、
なかなか極上の後味が待っている映画だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

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「サバービコン 仮面を被った街」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前中は石田医師が外来を担当し、
午後2時以降は石原が担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
サバービコン.jpg
1950年代のアメリカ郊外の「理想の街」を舞台にした、
ブラックコメディ映画で、
コーエン兄弟が脚本を担当し、
ジョージ・クルーニーが監督を務めています。
主演はマット・ディモンとジュリアン・ムーアが夫婦を演じていますから、
非常に全てが豪華なメンバーで期待は高まります。

コーエン兄弟は近作の「ハイル・シーサー」でも、
ハリウッド黄金時代の裏の顔を描いていましたが、
この映画でもアメリカが最も輝いていた時代の、
「嫌な部分」をかなり辛辣に描いています。

ただ、今回の作品はかなりのB級テイストで、
下品でグロテスクで悪趣味な感じが強く、
人種差別の描写もあまりにステレオタイプで一方的です。

豪華キャストが、
普段はあまり演じないような、
かなり嫌な役柄を演じているのですが、
それが意外性や面白さに昇華しておらず、
演じた意味があまりないような結果になっていました。

物語自体もひねりがなく、
人種差別の話と主人公一家の話とが、
大して絡み合うこともなく終わってしまうので、
単調で工夫がなく感じましたし、
ギャグも不発に終わっていました。

要するに、
コーエン兄弟の欠点が全部出た、
という感じの映画で、
クルーニーの演出の力量も、
凡庸な台本を救うような物ではないと感じました。

このジャンルでは、
昨年「ゲットアウト」という快作があり、
良く似た宣伝がされていたので、
その再来を期待してしまったのですが、
実際にはコーエン印の失敗作でした。

個人的にはお薦めは出来ない映画でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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電気自動車と心臓埋め込み機器の安全性について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
電気自動車と心臓.png
2018年のAnnals of Internal Medicine誌に掲載されたレターですが、
電気自動車と医療機器の安全性についての短報です。

携帯電話が普及した時には、
病院内での使用は他の医療機器に影響を与える、
という懸念があり、
その使用は禁止をされていました。
ただ、その後携帯電話の端末の進歩もあり、
医療機器との電磁気的な干渉は殆どない、
という研究結果が明らかになったことで、
その懸念はほぼ払拭されました。

唯一人工ペースメーカーや除細動器などの、
心臓に埋め込んで使用する医療機器については、
心臓に非常に近接した位置に電磁気の発生源があると、
その影響を完全には否定できない、
という考え方から、
電車などでは優先席付近での使用のみが制限されています。

ただ、これも新しい機器を使用する範囲においては、
ほぼ問題にはならないと考えられています。

最近電気自動車が実用化され、
ガソリン使用の自動車の環境問題などもあって、
今後急速にその使用が拡大する可能性があります。

電気自動車はその性質上、
充電や放電の際には強力な電磁波の発生源となります。

それでは、この電気自動車による電磁場は、
心臓埋め込み機器に誤作動などを起こす危険はないのでしょうか?

今回の小規模な研究では、
人工ペースメーカーや除細動器などの、
心臓埋め込み機器を連続使用している、
心臓病の患者さん150名を対象として、
BMW、日産、テスラ、フォルクスワーゲンという、
代表的な電気自動車メーカー4社の製品で、
その充電や運転時の電磁波の強さと、
心臓埋め込み機器に対する影響を検証しています。

その結果、
4社全ての製品において、
現状使用されている心臓埋め込み機器に、
誤作動などの影響は認められませんでした。
ちなみに電磁場の強度は、
充電時に最も強く、
30.1から116.6μテスラと算出されています。

こうした電磁波を発生させるような身近な機器は、
今後更に増えることが想定され、
想定外の医療機器への影響が、
起こる可能性はないとは言えません。
今後もこうした検証が丹念に行われることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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腹鳴とそのメカニズム [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日は腹鳴についての話です。

お腹がグーグーと鳴って気になる、
ゴロゴロという音が鳴り響いて、
周りの人が変な目で見る、
というような訴えは、
外来でしばしば耳にするものです。

ひどい下痢になる訳でもなく、
痛みが出ることもないのですから、
それほど気にしなくても…
と思うところなのですが、
当の本人にとっては、
それがかなりつらいもののようです。

特に女性の場合には、
人前に出ることが出来ない、とか、
一緒に友達と食事をすることが出来ない、
とうような深刻な事態にもなりかねません。

それでは、そもそも何故お腹は鳴るのでしょうか?

これはシンプルには、
胃腸にガスが溜まり、
それが胃腸の動きによって、
急激に移動することによる現象です。

正常でお腹が鳴るのは、空腹の時です。

お腹がグーと鳴ることが、
お腹が空いた合図のように言われるのは、
決して迷信などではないのです。

この空腹時にお腹が鳴る原因は、
食後10から12時間後に、
胃から十二指腸に掛けての平滑筋に、
伝播性の強い収縮運動が起こるためです。

この生理現象を、
migrating motor complex(MMC)と呼んでいます。

このMMCという生理現象は、
ラットや犬などの動物でも確認されていて、
胃や小腸の食べ物の残りかすや細菌などを、
洗い流す一種のお掃除のような作用があると言われています。

このMMCは生理現象ですが、
この時の音が通常より大きいとすれば、
胃腸に多くのガスが貯留しているか、
胃腸の収縮の仕方が、
通常より過大であるという可能性が想定されます。

食物残渣が食後10時間経っても、
まだ残っていたり、
消化が不充分でガスが発生していたりすると、
大きく腫れている胃腸が、
急激に大きくMMCで収縮することになるので、
それだけ大きな音がする、
ということになります。

つまり、
胃腸の働きが低下していたり、
消化や吸収が悪い状態であれば、
それがMMCの音を大きくする要因になりうる、
ということになります。

具体的には慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、
セリアック病などの吸収不良症候群は、
いずれも腹鳴の原因となるのです。

以上は空腹時の腹鳴の話です。

実際にはお腹の鳴る音が大きくて悩んでいる方は、
食事からの時間に関わらず、
お腹が鳴るという症状に苦しんでいることが多いようです。

こうした腹鳴は何故起こるのでしょうか?

これは基本的には空腹時のMMCと、
同じ現象が起こると考えて良いのですが、
それが何故か空腹時以外にも起こるのです。

その原因は明らかではありませんが、
不摂生な生活を繰り返していたり、
生活リズムが不規則であると、
正常なMMCのリズムが崩れ、
こうした現象が起こりやすくなるのでは、
と推測されています。

また、過敏性腸症候群においては、
おそらくは自律神経系の異常により、
矢張りMMCが空腹時以外にも起こっている、
という知見が報告されています。

従って、腹鳴が明らかに強く、
それが空腹時以外にも起こる場合には、
まず吸収不良の病気や、
胃、十二指腸の器質的な病気がないかを検査で確認し、
不規則な生活や暴飲暴食があれば、
そうした生活習慣を改めることが必要です。

今日は腹鳴のメカニズムとその対応についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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卵の摂取と心血管疾患リスク(2018年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
卵の摂取量のメタ解析.jpg
2018年のEuropean Journal of Nutrition誌に掲載された、
卵の摂取量と心血管疾患リスク、
総死亡リスクとの関連についての論文です。

卵と健康との関連については、
色々な見方があります。

卵黄には1個に200ミリグラムを超えるコレステロールが含まれています。

血液のコレステロールが高いと、
動脈硬化が進行しやすいという知見が得られてから、
食事のコレステロールを制限しようという動きが、
世界的に高まり、
そこで提唱された基準が、
食事のコレステロールを1日300ミリグラム以下にする、
というものです。

これを達成するためには、
卵をなるべく食べないことが、
必要不可欠ですから、
卵の制限が、
健康のためには必要であると考えられたのです。

ところが

2016年に公表されたアメリカのガイドラインにおいては、
食事のコレステロールを制限しても、
血液のコレステロールを減らせるという根拠は乏しいとして、
その目標値は削除されました。

これは、
「コレステロールの食事制限は不要」として、
一般にも報道されました。
その報道には誤解を招く点があり、
実際には数値目標が外れただけで、
コレステロールの制限自体は推奨されていたのですが、
コレステロールに制限は要らない、
という誤ったメッセージに受け取られたことは、
残念でした。

卵の摂取量と健康との関連については、
日本の疫学データでは、
NIPPON DATA 80の解析結果が、
2004年に発表されています。

それによると、
女性においては、
週に1から2個の摂取と比較して、
毎日1個卵を食べる習慣のある人は、
血液のコレステロールが高く、
総死亡のリスクも有意に増加していました。
一方で男性にはそうした関連はありませんでした。

ただ、2017年に発表された女性の追跡調査を含めた解析結果では、
卵の摂取量と血液のコレステロール値、
また心血管疾患のリスクとの間には、
有意な関連は認められませんでした。

しかしここでもなお、
1日1個摂取した場合と比較して、
毎日2個以上卵を食べる習慣のある人は、
総死亡のリスクが2.05倍(95%CI: 1.20から3.52)、
癌による死亡のリスクが3.20倍(95%CI: 1.51から6.76)、
それぞれ有意に増加していました。

癌による死亡のリスクについては、
1日1個摂取した場合と比較して、
週に1から2個食べる習慣のある人は、
32%(95%CI: 0.47から0.97)有意に低下していました。

つまり、アメリカのデータと同じように、
卵の摂取量とコレステロール値や心血管疾患リスクとの間には、
今回の追跡調査ては関連は認められなかったのですが、
総死亡と癌による死亡のリスクについては、
卵を多く食べると生命予後が悪いという、
一定の関連が認められたのです。

この問題はそう単純ではないようです。

今回の研究は今度は中国において、
登録の時点で心血管疾患のない、
トータル28024名を、
平均で9.8年という長期の経過観察を行なっているもので、
1週間に1個未満という卵の摂取と比較して、
1週間に7個以上の摂取は、
心血管疾患のリスクや総死亡のリスクに、
有意な影響を与えていませんでした。

更にこのデータを含めて、
過去の主立ったデータをまとめて解析したメタ解析においても、
1週間に7個以上の卵の摂取は、
心血管疾患のリスクや総死亡のリスクを上昇させることはなく、
脳卒中のリスクについては、
若干のリスクの低下を認めました。
(HR 0.91, 95%CI 0.85-0.98)

今回のデータも、
無尽蔵に卵を食べて良いというものではなく、
毎日1個を超える卵の安全性は示されていない、
という点には注意が必要ですが、
少なくとも毎日1個卵を食べるという習慣については、
健康上の害は確認をされていない、
というように考えて間違いはないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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抗コリン剤の種類と認知症リスクとの関連(2018年イギリス大規模データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日からクリニックはいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
抗コリン剤と認知症(2018年).jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
抗コリン作用という、
色々な診療科で使用される薬が持っている作用による、
認知症リスクについての論文です。

抗コリン作用と言うのは、
副交感神経に代表される、
アセチルコリン作動性神経の働きを抑えるというもので、
非常に多くの薬剤がこの作用を持っています。

その中には抗コリン作用そのものが、
薬の効果であるものもありますし、
副作用として抗コリン作用を持つものもあります。

アセチルコリン作動性神経により、
胃や気管支、膀胱などの平滑筋は収縮しますから、
胃痙攣を抑える目的で使用されたり、
気管支拡張剤として、
また過活動性膀胱の治療薬として使用されます。
パーキンソン症候群の補助的な治療薬として、
使用されることもあります。

その一方で、
鼻水や痒みを止める抗ヒスタミン剤や、
抗うつ剤や抗精神薬は、
副作用としての抗コリン作用を持っています。

この抗コリン作用は基本的に末梢神経のものですが、
脳への作用も皆無ではありません。

一方で認知症では脳のアセチルコリン作動性神経の障害が、
早期に起こると考えられています。

そのために、
現在認知症の進行抑制目的で使用されている、
ドネペジル(商品名アリセプトなど)は、
脳内のアセチルコリンを増やす作用の薬です。

抗コリン剤はアセチルコリン作動性神経を抑制する薬ですから、
これがそのまま脳に働けば、
脳のアセチルコリン作動性神経の働きを弱め、
認知症のような症状を出すであろうことは、
当然想定されるところです。

実際に高齢者に抗コリン剤を使用することにより、
せん妄状態や、記憶障害や注意力の障害など、
認知症様の症状が急性に見られることは、
良く知られた事実です。

通常こうした急性の症状は、
薬剤の中止により回復する、
一時的なものと考えられています。

しかし、
高齢者が長期間こうした薬剤を使用している場合はどうでしょうか?

それが認知症の発症に繋がるようなことはないのでしょうか?

この点については、
あまり長期間の観察を行なったようなデータが、
これまで存在していませんでしたが、
2015年1月のJAMA Internal Medicine誌に、
アメリカにおける、
高齢者の大規模な健康調査のデータを活用して、
抗コリン剤の長期処方と、
認知症の発症との関連を検証した論文が掲載されました。

これは発表の時期にブログ記事にしています。

65歳以上の認知症のない高齢者3434名を登録し、
平均で7.3年間の経過観察を施行したデータを解析したところ、
65歳以上の高齢者が、
3年以上常用量の抗コリン作用のある薬を使用すると、
その薬の種別に関わらず、
最大で1.5倍程度の
認知症のリスクの増加が生じる可能性がある、
という結果が得られています。

ただ、このデータにおいては、
個別の抗コリン作用のある薬の種別と、
認知症リスクとの関連は明らかではありません。

通常に考えると、
泌尿器科などで高齢者に長期使用が常態化している、
過活動性膀胱の治療薬などは、
その脳への作用は限定的であるように、
薬の添付文書などを見る限りはそう思えます。

しかし、それは本当に正しい考え方なのでしょうか?

これまでの文献上での検討から、
抗コリン作用を持つ薬の脳への影響の強さは、
ACBスケールという指標により、分類されています。

これによると、
抗コリン作用自体はあることが確認されているものの、
それが認知機能に悪影響を与えたという報告のない薬が、
ACBスコアで1点、
脳への抗コリン作用が臨床的に確認されている薬が、2点、
そして更にせん妄などの発生が報告されている薬が、3点、
それ以外の薬は0点となっています。

具体的には三環系の抗うつ剤やパロキセチンなどのSSRIの大部分、
胃痛などを抑える、アトロピンやスコポラミン、
過活動性膀胱の治療薬である、
トルテロジン(デトルシトール)やオキシブチニン(ポラキス)、
ソリフェナシン(ベシケア)、
オランザピンなどの抗精神病薬、
ヒドロキシジン(アタラックスP)やプロメタジンなどの、
第一世代抗ヒスタミン剤などが、
このACBスコア3点となっています。

今回の研究はイギリスのプライマリケアのデータベースを元にしたもので、
40770名の認知症の患者さんを、
283933名のコントロールと比較して、
抗コリン作用のある薬剤の使用歴と、
認知症のリスクとの関連を検証しています。

その結果、
ACBスコア3点の薬剤の使用により、
他のリスクを補正した結果として、
認知症のリスクは1.11倍(95%CI; 1.08から1.14)
有意に増加していました。

ACBスコア3点以外の薬剤のリスクは有意なものではなく、
3点の薬の中でも、
抗うつ剤、パーキンソン病治療薬、泌尿器科治療薬のリスクが、
より高いものとなっていました。
こうした薬剤に関しては、
認知症と診断される15から20年前の処方についても、
関連が認められました。

このように抗コリン作用を持つ薬剤の中でも、
抗うつ剤とパーキンソン治療薬、泌尿器科治療薬の認知症リスクが高い、
という知見は非常に重要なもので、
抗うつ剤については抗コリン作用を持つ薬剤は、
次第に使用されなくなる流れにある一方、
リスクの高い過活動性膀胱治療薬が、
やや漫然と長期使用がされている現状は、
問題が大きいように個人的には思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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日照時間と急性心筋梗塞との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日からクリニックは通常の診療に戻ります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
日照時間と心筋梗塞リスク.jpg
2018年のJournal of the American Heart Association誌に掲載された、
急性心筋梗塞の発症と季節や日照時間との関係についての論文です。

急性心筋梗塞というのは、
主に心臓を栄養する冠状動脈のという血管の、
動脈硬化による変化を原因として、
狭くなった血管に血栓が詰まるなどして、
心臓の筋肉の一部に血液が流れない状態となり、
その部分の心筋の細胞が死んでしまう状態のことです。

ここで心臓の筋肉の一部ではなく全層が死んでしまうと、
心電図においてはST上昇という変化が見られます。
このためにこうしたタイプの心筋梗塞のことを、
ST上昇型急性心筋梗塞と呼んでいます。
最も典型的な心筋梗塞と言って良いのがこのタイプの梗塞です。

このST上昇型急性心筋梗塞は、
その発症時期に季節性があり、
冬の寒い時期に多く、夏は少ないという報告が、
以前から複数寄せられていました。
また、1日の中でも昼間に多く夜には少ないという違いがありました。

ただ、その原因についてはあまりはっきりしたことが、
分かっていませんでした。

今回の研究は、
経度も緯度も異なる世界中の7つの地域、
具体的には日本、中国、シンガポール、
オーストラリア、フィンランド、イギリス、イタリアにおいて、
季節や時間帯とST上昇型急性心筋梗塞の発症頻度との関連を、
比較検証するという、これまでにない性質のものです。

その結果、
日照時間が長く日差しが強い夏の時期には、
世界の地域に関わらず急性心筋梗塞は減少し、
昼夜の差は小さくなって、
他の季節より夜の発症が増えるという、
一種のサマーシフトが起こるという現象が確認されました。

ビタミンDは紫外線により合成されるため、
血液中のビタミンD濃度(25水酸化D濃度)は、
その日の日照時間と強く相関しているのですが、
このビタミンD濃度と急性心筋梗塞の夜間帯へのシフトとの間にも、
北欧のデータの解析において強い相関が認められました。

この事実は急性心筋梗塞の発症リスクのサマーシフトが、
日照時間と関連の深いことを強く示唆しています。

こうした現象が何故起こっているのかは現時点では不明ですが、
ビタミンDの関与も含めて、
今後急性心筋梗塞の発症メカニズムに直結した、
新しい知見の発見に結び付くことを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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